時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

PR

Profile

風竜胆

風竜胆

Favorite Blog

自由に捕らわれる。 … New! じらーるぺるごーさん

ステルス出社 ブラジョンさん

定期検診(19年目) As Oneさん

気まぐれんな旅行屋… 富士家のぱこさん
マークス・ストーリー マークス5406さん

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索

November 9, 2006
XML
 経済物理学(エコノフィジックス)とは、物理学の視点で、経済現象を解明しようと言う、まだ新しい学問分野である。元々、物理学には、統計物理学と言う分野がある。個々のミクロな物理現象の総体として現れるマクロな法則性について研究する物理学の一分野である。経済物理学とは、主に、この統計物理学のツールを借りて、不安定な市場の変動などの現象を解き明かしていこうとするものである。最近は、「金融工学」という分野もあり、科学や工学の研究者が、経済学の分野にどんどん入り込んでいる。

「経済物理学(エコノフィジックス)の発見」 (高安秀樹:光文社新書)は、この分野の草分けの一人である、高安氏が、経済物理学について解説した入門書である。




 論文をフィジカルレヴューレターズ(物理学の著名な論文誌)に投稿すると、物理学の論文ではないからと門前払いされ、しかたがないので他の雑誌に投稿する。また、市場価格の変異の分布がなぜ正規分布ではなくべき分布になるのかという問題に関する論文を、こんどこそ、なんとかフィジカルレヴューレターズに載せようと、作戦を練る。このあたりは、パイオニアとしての苦労がよく分かり、非常に興味深い。

 現実の市場は、不安定で常に変動をしている。経済学は、この問題に答えることができなかった。元々経済学は、現実をモデリングして、そのモデルの挙動がどうなるかを研究していると思う。しかし、モデルを現実より優先して、それが現実と合致しないような場合には、現実の方が間違っていると言いかねないところがあるように思える。だから採用するモデルやイデオロギーの違いにより○○派経済学というのが生まれるのだろう。自然科学や工学の分野では○○派物理学とか○○派化学というようなものは聞かないので、奇異に感じるところである。氏は、たくさんの現実のデータを解析し、「カオス」が市場価格変動を引き起こしていることを発見する。

 この本には、「くりこみ」、「カオス」、「フラクタル」など、通常の経済学の本では目にしない言葉が出てきてくるため、多少読みにくいかも知れない。この本の評判を、ネットで調べると、評価が結構分かれているようだ。従来の経済学を学んでいる人にはアレルギー反応があるように思える。もちろん、経済物理学的アプローチだけで、複雑な経済現象が全て説明できるとは思わないが、経済学が科学に脱皮するためには、このようなアプローチも必要ではないかと思う。これまで、十分な解析ができていなかった経済現象への応用を期待したい。

○面白かったらポチっと1票! 人気ブログランキング にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

○関連記事
「理工系人にとって経済学は趣味として最適では」 :文理両道


風と雲の郷 別館「文理両道」は こちら

風と雲の郷 貴賓館「本の宇宙(そら)」は こちら

○関連ブログ記事
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  September 26, 2009 12:31:47 PM
コメント(2) | コメントを書く
[日々の読書(学術・教養)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: