時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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August 17, 2008
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 少し前にテレビで話題になった東野圭吾による 「ガリレオ」 「探偵ガリレオ」 「予知夢」 に続く第3段が、この 「容疑者Xの献身」 (文芸春秋社)である。第134回直木賞受賞作だ。このシリーズは、もともと物理トリックとか理系トリックといったものを売りにしていたのだが、本作はだいぶ方向性が異なって、犯人の内面を描いたような「ミステリーになってしまっている。そのあたりが、直木賞の選考委員には受けたのかもしれないが、私としては、やはりこのシリーズの持ち味である、科学技術を応用したトリックを見せてほしかったと思う。

「容疑者Xの献身」(東野圭吾:文芸春秋社)


 もっとも科学技術的なトリックが出てこないのは、今回の相手が数学者であることも関係しているのかもしれない。今回湯川准教授が対決するのは、「ダルマの石神」という男。現在は高校の数学教師だが、元々は湯川の大学時代の同級生で、湯川も認めた数学の天才である。

 今回の事件は、石神のアパートの隣の部屋に住む花岡靖子と娘の美里が、執拗につきまっとってくる靖子の前夫・富樫慎二を殺してしまったことから始まる。靖子に好意を持っていた石神は、二人を助けるために、彼の天才的な頭脳で、犯行の隠蔽を図る。

「崩せそうで崩れないアリバイ、これこそが石神が仕掛けた罠だった」 (作品中より引用)のである。そこには、想像を絶する恐るべきトリックが仕掛けられていたのだ。見どころは、湯川の「物理学的頭脳」と石神の「数学的頭脳」の戦いといったところであろうか。

 石神の身を捨てた、完璧なはずのトリック。絶対に崩れないはずの筋書きが破たんしたのは、人の心は、必ずしも論理的にはいかないということであろうか。それにしても、石神の心は哀しい。

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Last updated  October 12, 2008 11:15:46 PM コメント(4) | コメントを書く
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