時空の流離人(さすらいびと) (風と雲の郷本館)

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August 21, 2008
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「月は幽咽のデバイス」 (森博嗣:講談社)という作品。彼の作品には、Gシリーズとか、S&Mシリーズといったシリーズものが多いが、これは 「Vシリーズ」 に分類される作品らしい。

 このシリーズ、現在10作品が発表されているが、この「月は幽咽のデバイス」は、シリーズ第3作に当たる。「Vシリーズ」の名前は、主人公・瀬在丸紅子(Venico)の頭文字に由来しているようだ。紅子だったら普通は、Bだろうと思うのだが、「Bシリーズ」では、作品がB級のように聞こえるので、それを避けたのだろうか。

 このシリーズは、自称科学者で、没落した名家の令嬢瀬在丸紅子(せざいまる べにこ) を中心に、彼女と交流のある学生で、阿漕荘というアパートに住んでいる、小鳥遊練無(たかなし ねりな)、香具山紫子(かぐやま むらさきこ) たちが難事件を解決していくというものだ。そして、その話を、同じく阿漕荘に住んでいる探偵・保呂草潤平(ほろくさ じゅんぺい) が書いているというつくりになっている。

 出てくる人物は、名前も変わっているが、それぞれなかなか個性的である。瀬在丸紅子は、家が没落して貧乏暮らしをしているのに、全く気にしている様子もない。貧乏暮らしなのに、なぜか住まいには執事がいる。小鳥遊練無は、少林寺拳法の使い手ながら、女装趣味のいわゆる「男の娘」というやつだ。香具山紫子は、長身でボーイッシュな関西弁の女の子である。そして、保呂草潤平は、どこか怪しげな感じだ。

 物語の舞台は、篠塚邸。建設会社の社長を務める篠塚宏邦の屋敷だ。世間からは薔薇屋敷、月夜邸、黒竹御殿などとも呼ばれている。娘の莉英は、紅子とも交流があり、紅子も招かれたパーティの最中に、オーディオルームで、莉英の友人のファッションデザイナー・歌山佐季が死体で見つかる。部屋は密室になっており、死体は、衣服もぼろぼろで、部屋中悪魔にでも引きずりまわされたような悲惨な有様。そして、なぜか床には、大量の水がこぼれていた。

 この事件を、紅子たちが解決するというものだが、密室のトリックが、森博嗣作品によく見られるように、かなりの力技だ。このあたりは、さすがは、建築の専門家というべきか。建築学トリックという名前を贈呈してもいいかもしれないと思う。


○「月は幽咽のデバイス」(森博嗣:講談社)


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Last updated  August 21, 2008 07:05:59 AM
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