GOlaW(裏口)

2006/03/22
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カテゴリ: 西遊記
─汝、死の儀礼を持って、経典へと転生せよ─

 その言葉を彼は静粛に受け止めた。


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 第十一話(SPが終わるまでは、第十一話と思っています)の感想、まずは大雷音寺の考察とインド密教と『雑密(ぞうみつ)』ついて。

 …実は、最終回の展開は予想の範囲内でした。
 ただ、予想することと、覚悟することはまた別です。
「本気でそのネタをやっちゃうんですか!」
と驚愕しましたし、その衝撃から立ち直るのにも時間が掛かりました(後で観返して始めて、ツボのシーンに気づく有様)。
 そして立ち直った頃に、『お釈迦様』登場。…そこからエンディングまでの“メタ・フィクション展開”は、また違う衝撃を与えました。

 インパクトが強すぎて、まだ最終回が昇華しきれないんです。

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 以下は 『2006/03/02 09:03:15 PM』に投稿した記事 より転載。
>それこそ『ボスコ・アドベンチャー』の最終回のようなオチすらありえそうで、ちょっぴり怖いです。



 この 『ボスコ・アドベンチャー』 最終回はまさに『悟空の説得を三蔵が最期まで拒絶した』かのようなラストでありました。
「こんな結末の為に、主人公達は護衛してきたのか!?」
 当時の私は悔し涙とやるせなさで号泣しましたっけ。

(このアニメの他にも『旅の末に、物体へと転生』するエピソードは結構あるそうです(ゲーム『聖剣伝説』など)。『ソードワールド』という小説シリーズに出てくる『ファーラムの剣』も特別な人間の体を素材として作られた剣でしたし、『魂の水晶球』も神官の命と引き換えに作られたものでした)。

「あの時の私と同じ想いで、悟空達は苦しんでいるんだろうな…」
 そんな奇妙な感慨と共に、ドラマを見ていました。
 もろにトラウマ直撃だったので、普通だったら泣いていたと思います。“当時のトラウマを払拭してくれるだけの痛快さ”を求めていたのも事実ですしね。
 …だけど“台詞過多によるゴテゴテさ”によってキャラクターに感情移入できなくなり、現実に引き戻されたのが残念です( 『新人賞の獲り方おしえます』 のP220-222『本マグロの大トロのセリフ』の章を参考ください)。
 いろんなポイントで過剰気味でしたね。せめて、もっとも余剰と思われる

という悟空の台詞を省いてください(凹)。この一言で、かなりドラマから冷めました(心情的&キャラクター的にそんな余裕は無いでしょうが!)。…CG映すなら、黙って映せっ(管理人、魂の叫び)!

 後、『三蔵法師は世の中を救う為に~』という台詞を繰り返すより、数秒でも『乱れた長安』のカットを挿入した方が良かったと思います。その方が、視聴者を葛藤の内容に共感させたのでは?

 “一言一言に全てを篭め、映像とエピソードで語る”。その方が視聴者の想像の余地も残し、そして視聴者の心もぐっと掴んだと思います。
 こんな”オイシイ”ネタを、ここまでゴテゴテにして扱わないで欲しかった(涙)。
 せっかく香取君と内村さん(←管理人が特別思い入れている対象)が、この展開で演技をしているんです。もっと印象に残る台詞や演出に仕上げて欲しかった(滝涙)。

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 今月の21日に購入した 『魔法・魔術 - Truth in Fantasy50』 (山北篤著 新紀元社)が早速役に立ちそうです(…1800円の出費は無駄にならなかった。嬉泣)。

『第八話 そのニ』 でも軽く触れましたが、この物語では『仏教の術が道教の術よりも強い』というように描かれています。
 では、この『仏教の術』とは一体何なのでしょうか?
 この答えが先述の『魔法・魔術』の本にありました。ここには『方術(仙術の事)』や『中国の魔法』と並び、『密教』も解説しています。P200-211を紐解いて見ることにしましょう。

 『密教』はインドで始まった仏教の一派です。
 仏陀(釈迦のこと。ドラマで堺正章さんが演じていたキャラクターであり、仏教の開祖でもある)は、実は“呪術・呪文の使用を禁止”しています。
 しかしながらその弟子達は、毒を消したり、痛みを癒す呪文などは許しました(これが防護咒(バリッタ)という)。
 これが『密教』の始まりであり、長い時間を掛けて発達します。そしてインドの仏教はやがて全て『密教』となるのです。

 一方で他の宗派に混じり、一部だけが伝えられたものを『雑密(ぞうみつ)』と言います。
 この『雑密』の達人として、日本では『弓削の道鏡』(奈良時代後期の僧侶)が有名です。
 そしてドラマの中の三蔵の術も、この『雑密』になり(彼が開いた『法相宗』は密教では無いため、『純密』ではありえない)、彼が口にしていたのは神咒(真言ともいう。“マントラ”の訳語)です。

 ちなみにインドの密教は現在ありません。1203年にビクラマシーラ寺の破壊と共に消滅してしまっています。
 また、中国の密教も現在では廃れています。故に密教の衣鉢を次ぐのは日本とチベットの密教ぐらいのようです。

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 『密教』のイメージとしては、日本における二大密教の一つ『真言宗』の開祖・空海のエピソードを連想していただけるといいでしょうか(話がそれるので、ここでは省略します)。

 また『密教』というと、『九字切り』を連想される方も多いでしょうか。でも実はこの『九字切り』、元々は道教の呪文です。
 日本では『修験道』という宗教があり(山伏などで有名ですね)、それが仏教や神道、道教などの教えを貪欲に取り込みました。
 このときに『密教の印』と『道教の呪文』を組み合わせ、更に神道の概念まで組み合わせて『九字切り』を完成させました。それが『密教』へと逆輸入されたのです。
 だからドラマの中の時代や舞台には、この『九字切り』はありません。

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 さて。ここからドラマの中の『大雷音寺』の考察にも絡めて行く事にします。
 史実上の大雷音寺そのものの考察は 『Sma-Station5』の西遊記特集 に委ねます。

 『密教』に置ける魔法儀礼を『修法(しゅほう)』と言います。これらの修法はあくまで“民衆を救うための手段としてのみ”看過された代物です。
 それを“自己のみを救う為”に使用する大雷音寺の僧達は、究極の破戒僧ともいえます。

 また『人の肉体を物体へ変化させる』術なども、実際の『密教』には当然存在しません(←どちらかというと西洋の『錬金術』の守備範囲っぽいかな)。
 『修法』の基本となるのは六種法(息災法、増益法(幸せを増やす)、調伏法、敬愛法(平和円満)、釣招法(神などを召し集める)、延命法)ですが、そのどれにも分類不可能と思われます。
 それだけ邪術といえる代物といえます。

 …そんな状況なら、お釈迦様がブチ切れて「山門を破れ(大雷音寺を民草へと開け)」と命令するのも分からないでもない(笑)。

 そんな左道使いの僧侶達ですが、禁錮児を締める『調伏法』は修めているようですね。
(ちなみに『調伏法』には『魔障の除去』も含まれます。第八話の符などもこれに含まれると思われます)

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 また、錫杖の音にびびる時点で、彼らの心には悪鬼が蔓延っているのかもしれませんね。
 『魔法・魔術』のP193-194に、錫杖の解説があります。これは持ち主の精神力や信仰力を表し、降魔の力があると言われています(また、野生動物への警告音という実用面もありました)。

 また、日本の山伏達の間には棒術の古い歴史があり、それを学んだ仏教の僧兵達が薙刀を使うようになったという歴史もあります。
 ドラマの中の僧兵(モンク)達が棒術しか使わなかったり、赤雲の衣装がどこか『修験者』を連想させるのも、実はそれのイメージを落とし込んでいるからかもしれませんね。

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 ファンタジーでは『腐敗しまくった宗教団体』は時折出てきますね。
 現代社会でこそ“宗教とは民衆を救うもの”というイメージがあります。でも、物語の中では“魔術団体的な側面を持ち、限られた人間のみで経典を占有し、選民思想に従って行動する教団”というのも少なくありません。
 大雷音寺の描かれ方はその『腐敗した宗教団体』の典型でした(笑)。その嫌らしさも秀逸だったと思われます。
 ただ、以前にもやはり言ったと思うんですが、“敵が嫌らしい分だけ、クライマックスにカタルシス”をお願いします。

 『釈迦の力によって、大雷音寺の建物が消滅。僧はすべて路頭に迷い、馬鹿にしていたはずの民草に混じらざるを得なくなる』
ぐらいのことはやっちゃっても良かった気はします(苦笑)。

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 今回のラストは、時期的・内容的にも『Sma-Station5』の西遊記特集の影響を受けていそうですね。
(経典の名が『三蔵』、大雷音寺が学院的な側面を持つ、etc.)

 でも、この冒険とも言える大幅改変は、見ていて楽しかったです。…だからこそ、「演出でとびっきりのネタを殺すな…」とも言いたかったですが(苦笑)。





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Last updated  2006/03/22 08:48:44 PM


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