GOlaW(裏口)

2007/03/07
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──一度でも、愛されたかった。
 幼少時代からの、深い孤独。

 けれど本当は──本当の父親からは愛されていたのだ。
 その事実を隠し、自分に孤独を与えた人間を、彼は許せない。


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『愛されたかった』。
 その思いこそが、この物語の核なのでしょう。
>『笑顔を、僕にも向けて欲しかった』
 たったそれだけの愛情すら得られなかったことが、『鉄平からの父への拒絶』へと導くのです。

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 私は『血縁』以上に、『子どもを肯定できるか』が親子の関係にとって重要なことだと考えています。
 子供を最初に、『良いことも悪いことも全てひっくるめて存在を肯定し、許容できる』のが、親だと思っています。

 その親の『存在への許容』によって、子供は自分の『存在意義』を確信し、生きていくことができるのです。

 その『存在への許容』を、大介は与えられませんでした。


 そうして、鉄平は何度も『己の存在意義の希薄さ』に怯え、それを孤独と感じて育ってきたのです。

 本当は『自分を愛してくれている父親』がいることも知らずに。

 この『華麗なる一族』というドラマが始まる前から、既に『親子関係』ではなく。そのことを、鉄平も感じていたのです。

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 それでも尚、鉄平が『大介との血縁』を確認しに行ったのは、
『捨てきれない父の愛への渇望』
『父への背信行為という、道徳的な畏れ』
から決別するために過ぎないのです。

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 そして今、『自分が社会に出て築き上げた絆と存在意義』も崩れます。
 『過去と現在の存在意義』を失うこと。
 それは人に壮絶な恐怖を与えるのです。

 今、辛うじて『妻や子供』、『残っている作業員』が彼の存在を許容し、肯定しています。


 『自分の存在そのものを全力で否定する』父親という存在です。
 それをねじ伏せ、自分を認めさせること。
 それもまた、彼の『存在意義』を守るための戦いなのかもしれません。

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 今、鉄平を動かすのは『彼自身の真っ直ぐさ』ではありません。

──大川や玄さんの遺志が。

──まだ残る、会社の人々への義務が。
──家族への思いが。

 それら一つ一つのものを、背負っているのです。

 かつて人の行為に甘え、自分が望む道だけを、手を汚さぬ方法で、真っ直ぐ歩いていた鉄平。
 でも今、その責任を取り、重すぎるほどの想いと責務を引き受けています。──普通の人間ならば、耐えられないほどの。

 それはかつての光に満ちた道ではなく、暗い茨の道であります。

 でも、その姿が誰よりも偉大に見えるのは何故でしょうか。今の彼が、かっての彼よりもずっと、人間的に魅力的に見えるのは何故でしょうか。

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『僕の人間性や才能を認めてくれていたわけじゃない』

 息子を愛したのではなく、『息子の中の自分』を愛していたのだと。
 それは父の『自己愛』でしかないのです。
 大介は、銀平すらも愛せなかったのです。

 そして銀平は、そのことに気づき、やはり『過去の存在意義』を失うのです。

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 大介はずっと苦しんできました。
 真実を伏せ、妻を手放さず、二人の息子に対する複雑な思いを抱えてきました。

 しかし、彼が苦しむほどに、妻も息子達も苦しんできたのです。

 大介は『自分の苦しみ』ばかりを見つめ、『家族の苦しみ』までは見えなかったんですね。
 そのことを突きつけられ、大介はどんな思いで聴いていたんでしょうか。

 その衝撃と苦悶の表情は、決して演技だけではなかったと、私は思いたいです。

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>「何を謝ってるんだ!」

 …かつて、『風呂場の惨劇』の時、妻はずっと真実を伏せ続けていました。
 それはこのときまでも変わらなかったのでしょう。

 しかし、鉄平に問い詰められ、ようやく真実を認めるのです。

 それは、確信犯として『それまでずっと大介をも騙してきた』ことの証明でもあります。

 彼女自身が、記憶の混乱のままに『鉄平を大介の息子』と信じているなら、まだ許せたのでしょう。
 しかしそうではなく、ずっと分かっていて謀っていたと知った時。

 大介の中の激しい怒りが、彼女への暴行に変わったのだと思います。

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 大介は言います。
『正しさを世に知らしめる』『必ず勝利は手に入れて見せる』
…と。

 そんなことが、本当は大切なのでしょうか。
 一個人が狭い観点から見た、一面的な『正しさ』『勝利』…そんなものが、本当は大切なのでしょうか。

 本当に大切なのは、妻の、鉄平の、銀平の、娘たちの、『個性という存在』を許容し、肯定することなのではないのでしょうか。
 『本当の意味での愛の表現』を、彼らに示すことではなかったのでしょうか。

 その概念すら失った大介には、家族の破滅の徴候は見えない。
 故に彼は、家族を崩壊へ導くのでしょう。

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 …万俵家のモデルとなった頭取の一家が罹り付けにしていたのは、実は『神戸大学医学部付属病院』です。
 40年前の付属病院を知っている人には、伝説になっているようです(知人の語りからの印象。苦笑)。

 しかし、よく残ってましたよね、カルテ。
 最近ならともかく、当時の保管義務期間をとうに超していると思うんですよ(このまえ、7回忌でしたよね)。

 しかし、生物の『メンデルの法則』を思い出す展開に、思わず苦笑しました。
 鉄平が『AO型』、母親が『O型』、大介が『AB型』、敬介が『AA型、もしくはAO型』なんですね。

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 いよいよ、積もり積もった歪みが吐き出されようとしていますね。
 時に、地盤そのものを崩すかもしれない激震は、正常化を促す現象でもあります。

 万俵家の自壊は、再生に繋がるのでしょうか?

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 父が愛したのは自分ではない。
 自分の中に流れる、父自身の血なのだと。

──愛されることを忘れた時、人は肉親すら愛せなくなるのか。





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Last updated  2007/03/07 09:02:34 PM
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