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彼岸になると、ちゃんと彼岸花が咲く。 あんなに暑かったのに、日も短くなり、朝方の空気は少しひんやりしていた。
墓地に着くと、土の匂いがした。 誰かが先に来ていたらしく、線香の煙が細く残っている。 水を汲む音がして、少し離れたところでは、誰かが草を取っていた。
お彼岸だから、いつもより人の気配がある。 いろいろな家のお墓に花が手向けてある。 菊やリンドウ、名前のわからない花もある。 いつもの墓地より、少しだけ明るい。
そういえば、春の彼岸には鳥の死骸があった。 墓地で見る鳥の死骸は、なかなかのホラーだった。
秋の彼岸はどうだったかというと、 蝉の腹かな?というような、小さな欠片があるだけだった。
春から秋へ。 鳥から蝉へ。
季節はちゃんと巡っているらしい。
そう言えば、彼岸花には毒があるらしい。 確かに、あの赤は少し毒々しい。 でも、魅力的な花だと思う。 墓地に咲いているのがよく似合う。
私の実家は核家族だったので、墓も仏壇もなかった。 お盆や連休といえば、レジャーへ出かけることが多かった。
嫁いだ先は、ずいぶん違った。
仏壇があって、お盆には人が来て、彼岸には墓参りをする。 最初の頃は、何をどうしたらいいのかよくわからなかった。
仏壇の前に何を供えるのか。 いつ墓へ行くのか。 お線香は何本だったか。
そのたびに、なんとなく周りを見ながら覚えていった。
いつの間にか、自分もお墓の草を取っている。 水をかけて、線香をあげて、家族をよろしくお願いします、と手を合わせている。
お墓参りなのだから、祈願とかするのは違うのかもしれない。 でも、手を合わせると、ついお願いしてしまう。
「どうか、これからも家族をよろしくお願いします」と。
帰り道には、少し線香の匂いが服に残っていた。
子供の頃は連休になると、海へ山へと繰り出していた。
今は、墓参りをして帰る。
途中で何かの死骸を見つけても、まあ、それも彼岸ということで。
こういう静かな連休も、悪くない。むしろ私に合っていると思う。
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