しあわせのかたち

しあわせのかたち

2006/05/12
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 が、この映画の関係性は、人間対物質の関係性なのです。関係性という時、人間の可能性を探るために、一度、対物質の関係性に取り組んでみようとしているのです。世界との関係性という時、今は、世界という名の人間のことです。が、世界という言葉の中には、物質が存在しているのです。

            ★

 人間になった元天使はどうしたのだろう。いつか恋が終わり、それは少しも悲しいことじゃなく、それでも恋は終わり、そしてコーヒーであるだけで感動的だったコーヒーは、物質という存在から観念という存在へと、下落し、風景は風景でなくなる。その時、あの天使はどうしたのだろう。いや、どうすればいいのだろう。
 そして、彼の後に続く天使はどうしたらいいのだろう。

            ★

旅立ちを書くことはたやすく、可能性を歌い上げることは感動的にやさしい。僕は、その後を書き続けたい。それが、僕が芝居を続けている唯一の理由なのです。

 僕たちは、絶望よりも希望に鈍感で、希望よりも絶望に敏感です。
 ですが、この作品は決して、悲劇ではありません。

(引用終了)

 あまりにも『新世紀エヴァンゲリオン』という作品と親和性が高い文章なので、敢えて引用させていただいた。
 これは1988年に鴻上尚史が、『天使は瞳を閉じて』という戯曲を書き、それを上演するさいに観客に渡された「ごあいさつ」なるパンフレットの前文のようなものに記された文言である。全文は こちら を参照。


 以前この日記で書いたことがあったが、鴻上は『ベルリン天使の歌』という映画を見て、深く感動し、そして腹を立てる。
「大切なのはここからじゃないか。天使が人間になって関係性を構築し、そこから物語が始まるんじゃないか」と考え、この『天使は瞳を閉じて』を書くキッカケを得る。


 エヴァには「近代」という時代、思想、イデオロギーに、「人」が直面せざるをえない問題意識を内包している。
 そして(だからこそ)私がエヴァンゲリオンという作品に抱いた嫌悪感、忌避感、ジレンマは、鴻上が『ベルリン天使の歌』に抱いた感情に通じるのだ。なお、鴻上の諸作品にはエヴァに相通じる部分が多々見られる。『トランス』で描かれた精神病への記述もそのひとつである。機会があればこちらも論じてみたい。



 先行して映画版の最終回まで先に見ちゃったのがよくなかったのか。
 ハタとエヴァのレビューの続きを書くのが難しくなったことに気づく。

 このレビューの冒頭に記したとおり、エヴァには父性が最後まで登場せず(よって登場人物は一人残らず子供のままで)、これは「少年の成長の物語」であり(最終回の途中で庵野は「近代人が抱える宿痾」と「少年の自立」をすり替えているが)、さらに神殺しのニーチェが忌避した論理展開であり、おまけに「エヴァとヒト/アダムとシト(リリス)」のふたつのカップルの可能性の話であり、アニメというメディアの独自性をフル活用しつつ、ハッピーエンドの話ではあるものの、ミサトさん可愛いなあなんてロジックが、いま私の頭のなかをグルグルと回っている。どうにもね。ちょっとね。

 TV版25話、26話と、劇場版2話を、もう一度見直してみよう。
 以後のレビューを書くのはそれからだ。

 エヴァは(TV版も映画版もともに)「少年の自立」を言祝いで終わる。

「僕はここにいてもいいんだ」
「父に、ありがとう。母に、さようなら」
「おめでとう。おめでとう。おめでとう」

 おそらくこれは庵野監督の祈りだ。
 祈りと願いだとわかりつつ、私はあえて思う。



 私の探しものは、まだ見つかっていない。





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Last updated  2006/05/12 02:04:14 PM


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