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雨宿りで一緒になった二人「旦那、御出馬御出馬」と南町奉行所の右門のところへ伝六が事件を知らせて来ます。下谷の煉塀小路の榎妙見境内で侍が殺されていたというのです。斬り合ったあとは、と聞く右門に、刀には手もかけていないというのです。そこへ第二の殺人事件の知らせが入ってきます。それは柳原の髭すり閻魔堂だというのです。右門と敬四郎の駕籠が殺人現場へと走っていきます。あばたの敬四郎は、右門に手柄を越されまいと第一の殺人現場へ急いでいきます。右門は途中で方向を変え、第二の殺人現場に向います。髭すり閻魔堂にはたくさんの人が集まっていました。そのなかに、与吉の姿がありましたが、右門がやって来たのを見ると急いでそのばからいなくなってしまいました。 伝六が榎妙見境内で見た侍の死にかたと同じで、右門は絞殺と見たが、首筋に残った針の先ほどの傷に目がいきます。懐のものを確認すると金槌と三寸釘を持っていました。右門は「髭すり閻魔様にお参りするのは今日が初めてだ」と言い、ひと回りしようと伝六にいい、樹々のある裏に行くと、杉の木に呪の人形が打ちつけられているのを見つけます。すると、右門はこれから妙見様に行くといいます。妙見様へ来た右門は、何かを探すように見て回っていると、ここにも呪の人形が打ちつけられていたのです。二つとも同じものでした。翌日、右門は上野の天海寺に行く途中、侍の一団に囲まれている武家娘の千鶴を救います。昨日上野で与吉を囲んでいた侍達でした。右門の家を覗いてどうしょうかと迷っているような女の姿があります。そのとき右門は家にはいませんでした。また与吉の姿もありました。右門の家を覗いていた女と探るようにしていた与吉の二人が降りしきる雨の中雨宿りで一緒になります。与吉「とうとう本降りになりやがったぜ」与吉は女に声をかけて行きます。与吉「おっ、ねえちゃん、そこは濡れる、もっとこっちへ来な」 与吉「おっ、濡れたら体に毒だぜ」 引き寄せた相手も嫌な様子ではなかったのだが、何となくばつが悪くなり、二人は顔を見て愛想笑いをうかべますが、結局は気まずさでお互いそっぽを向き雨が止むのをまっている雰囲気になったとき、店の中からいい匂いがしてきたようです。 店の中をのぞき込み、与吉の胃袋は我慢できないようです。与吉「ちきしょう、・・・よえいんだ、おいらこの匂いに」 与吉「おっ、ねえちゃん、同じ雨宿りをするなら、中に入った方が利口だぜ。おれ、奢るよ、なあ、どうだい、いいだろう。・・・よし、早く来ねい」女は与吉に気を許したようで、にっこり笑って、与吉と店に入ります。 与吉はこの女のことを知ってての行動なのでしょうか。 続きます。🎥『右門捕物帖・南蛮鮫』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。右門捕物帖 南蛮鮫・・・(1)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方へスクロールしてみてくださいね。このブログのために今まで作った表題画像も掲載しています。
2026年02月28日
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与吉の表情が、一息ついたときに変った大友柳太朗の「右門捕物帖」の第3作。江戸の町を恐怖におとしいれた連続殺人事件に挑む、むっつり右門と謎の男・与吉が火花を散らす捕物娯楽作品。この巾着切りの与吉、実は幕府の隠密の役が橋蔵さんです。黒装束ものはお手のもの、隠密ものは「水戸黄門・天下の副将軍」から2度目になりますが、この作品では「お正月映画らしく、本来は暗い性格をもつ隠密稼業を溌溂とやってみたい」と言っていた橋蔵さんは、隠密ものの決定版ともいうべき演技で、のびのびとした演技を見せていました。この役は、橋蔵さんの軽妙な演技を発揮するのにふさわしい役でした。ラストでの右門と与吉とが対決するところがあるのですが、やはり大友さんと相対するには橋蔵さんでなければバランスはとれなかったでしょう。▲第71作品 1961年1月15日封切 「右門捕物帖 南蛮鮫」 むっつり右門 大友柳太朗お花 丘さとみ千鶴 大川恵子妙姫 松島トモ子徳川家光 山城新伍あばたの敬四郎 進藤英太郎おしゃべり伝八 堺俊二島右京之亮 柳英二郎松平伊豆守 山形勲南蛮鮫の辰 阿部九州男轟部平太 戸上城太郎下駄屋の平助 夢路いとしちょんぎれ松 喜味こいし土井大炊頭 香川良介水野甲斐守信之 坂東吉弥村井信濃 明石潮与吉 大川橋蔵3代将軍家光の頃、江戸の巷に次々とおこる連続侍殺し。首筋に針先のような傷、近くの木には呪の藁人形が残されていた。目前の杉の大木に釘づけされた呪の人形。着物の紋から、右門は殺された侍達は水野藩の侍と推理する。何者かが主君を呪い殺そうとしていた。上野天海寺に丑の刻まいりの場所を聞こうと出かけたさいに右門は、水野家の侍たちに追われている千鶴を救う。千鶴の父は、江戸家老によって放逐された松本藩の重臣だった。右門が丑の刻まいりの場所で見張っていると、新たな場所でまたしても殺人事件が……あばたの敬四郎の代わりに今夜むっつり右門と子分のおしゃべりでん六は、 品川に着く囚人船の出迎えに行っていました。その中の一人南蛮鮫の辰という男が右門は気になったのです。公方様のところでいい思いをしている同心あばたの敬四郎達、こちらも上野に花見に行こうということになりました。行った先の上野では、大勢の侍達を相手にひょっとこの面を付けた男が立ち廻っていて、ちょうど来合わせた右門にぶつかり、その男は右門の顔をみて驚いた表情を見せます。 侍達は男を追おうとしますが、右門が無粋な刃物三昧でかき乱されては、役目がら黙って見逃すわけにはいかないといわれ、侍達は引きあげて行きます。その様子を見ていて人達をかき分け、さっき右門にぶつかった男が右門に近づいてきます。 男「おう、右門の旦那」そう声をかけ、右門が振り返ると、近くに寄って行き、男「えへっへっへっへ、旦那にあやかりとうござんすよ。日本一だってねえ」伝六が「持てるんだぜ、旦那」男「はあ、おいらもぞっこんまいったね」 伝六が急に不機嫌な態度で、伝六「ふざけんじゃねえ、奴」男 「奴じゃねえやい。名めえのけんは与吉、生まれは江戸の葛飾台だ、分ったかい」 「わかったな」と与吉に言われ、「分かった」というように首をふる伝六、与吉「よーし、じゃ、仲良く頼むぜ」 右門が与吉に話しかけます。右門「おう、おめえ何で追われていたんだい」 与吉「えっ、えへっへっ、旦那のめえだがね、ちょいとやりそこないましてね」右門はそう言う与吉を笑いを浮かべた顔で見ます。 伝六が与吉に「スリか」と聞くと、与吉は「そう」とあっけらかんと答えると、慌てて与吉を取り押えようとしたので、与吉は右門の顔を見て、 与吉「旦那に惚れた証拠に、白状したんですぜ、捕まえるんですかい」右門「伝六、放してやんな」与吉「じぁ、お目こぼしを」という与吉を見みだけで、伝六に帰ろうといってさっさと行ってしまいます。 口惜しそうな伝六を笑っていた口惜しそうな伝六を笑っていた与吉の表情が、一息ついたときに変ったのです。たのです。 続きます。この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方へスクロールしてみてくださいね。このブログのために今まで作った表題画像も掲載しています。
2026年02月01日
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一緒に江戸へ帰るのじゃ群衆が見守る中、馬に載せられ刑場に荘太郎が連れて来られます。 犬山 「荘太郎、若君のお情けじゃ、衣江にこの世の別れを告げるがよいぞ」 荘太郎「衣江、わしだ、荘太郎だ」 衣江は荘太郎の方を見ますが、荘太郎の言葉には全く反応がありません。 荘太郎「これ、わしが分からんか」 その時、衣江が「櫛、櫛・・・あははははっ・・あははははっ」荘太郎「それほどまでに櫛のことを。許せ、そなたをその姿にしたのは、わし じゃ。すまん、すまん」 戸狩は櫛を持って志戸坂へ行った。銀家の財宝はわしに任せて、心置きなくあの世へ行け、と犬山が言います。罪状文が読み上げられ、刀が振りあげられた時、「待てー、その成敗待てー」の声が聞こえてきます。 やってきたのは、渋川十蔵「大公儀直参渋川十蔵、ご老中の名により巡検使として、田丸藩本多家の領内視察に参った。銀荘太郎は、旗本小松ご之輔の養子として、未だに高位ご直臣にある者、如何なる罪科があろうともご老中までお届けなくして遮断ならぬこと存ぜぬか。十蔵自ら取り調べる。縄目をとかれい」(渋川十蔵の声を聞いた時の荘太郎の表情を差し込みました) 荘太郎「危ないところを、お助け下さいまして」 その時、犬山が渋川の刀を振りかざしてきましたが、渋川がかわしたところを荘太郎が斬ります。 戸狩は阿波次郎を荘太郎にしたて銀家へ乗り込んでいました。何処からか笑い声が聞こえてきます。戸狩 「何奴だ、名を名乗れ。姿を見せい」荘太郎「姿はない。悪家老、犬山勘解由のため、刑場で首を斬られてしまった者 に、姿のあろうはずが無いわ、うわっはっはっは」戸狩が急いで櫛を取ろうとした時、手裏剣を投げて荘太郎が現れます。用人猿部甚内に迷うな、真の荘太郎は・・・。荘太郎「戸狩、実父荘左衛門の仇、養父小松権之輔の仇、今日こそは打たずには おかんぞ、覚悟せい」戸狩 「面倒だ、荘太郎から先にやってしまえ」荘太郎「見よ、天に口なし。汝自ら拙者を荘太郎と呼んだことこそ、ニセモノの 証拠だ」居直り、牛堀一平の「出会え出会え」の声に手下たちが出てきました、立回りとなります。(約3分30秒の荘太郎の立回りになります)庭に降りたり、廊下を上がったり下りたりして、大変!大変!!斬られた牛堀が小刀を投げます。素早く身をかわす荘太郎。 そこを狙ってただ一人残った戸狩が斬りこんで来ましたが・・・激しい戦いも終りました。休憩茶屋では渋川十内とお梶、そしてまだ気のふれている衣江が荘太郎の来るのを待っています。渋川 「どうであった」荘太郎「お蔭で、父の敵を討ち果たすことができました」渋川 「よかった、よかった」荘太郎「櫛もこの通り」 渋川 「この櫛のために、衣江殿は気の毒なことになった。よく見せてやれ」荘太郎「はっ」荘太郎「衣江、櫛じゃ」 衣江がその言葉に、櫛をじーっと見つめています。そして、荘太郎の顔を見つめました。荘太郎は、衣江の様子を見ています。衣江は、首をかしげながら荘太郎の顔を見つめています。荘太郎「櫛だよ、分かるか・・・分かるな。・・・取れ、櫛だ」 荘太郎、衣江に櫛を持たせます。櫛を手に取った衣江は櫛を見つめ、荘太郎を見つめていて、思い出したように櫛に頬ずりします。荘太郎「・・衣江、荘太郎じゃ、荘太郎じゃ」 その声に、衣江が「荘太郎様」荘太郎「衣江、苦労をかけたなぁ。さあ、これからはもう、心配はかけぬぞ。一緒に江戸へ帰るのじゃ」 渋川も安心したように・・二人も一緒に江戸へ向かいます。お梶には、荘太郎が幸せなら・・と分かってはいることです・・・三人とは離れて一人江戸へ向かうのでした。 (完) 月形龍之介さんとがっぷり四つでのものは、これが初めてだと思います。月形さんは、橋蔵さまにいろいろ教えてくださっていました。立回り以外は、本身を差しなさい。そうでないと動きに重みが出ないと言うことも。橋蔵さまが月形さんを訪ねると、いつもお着物をきちんと斬られているという方でした。この作品も月形龍之介さんで所々をしっかりと締められているのが分かります。悪人を演じても、善人を演じても流石魅力のある俳優さんです。 この作品でデビューしたお梶役の松風利枝子さん(後に松風はる美さん)、何となく雰囲気から宝塚の男役をやってた方だな、と分かります。テレビに移ってからは時代劇、現代劇に出演していました。橋蔵さまの作品では「花吹雪鉄火纒」のに組の娘役で、長次が好きなのですが長次はその気がないという役でした。「大江戸の侠児」では二代目のお中老でちょっとだけでした。でもこの作品でのお梶はとても合っていたと思います。 この作品、初めに書きましたように、伝奇小説ですから、あるようなないような世界が描かれています。ですから、好き嫌いが分かれると思います。しかし、これぞ、正にチャンバラ映画だというのは十分に味わえます。橋蔵さまの立回りは力強さがないと言われていましたが、反対に、橋蔵さまのような舞踊を見ているような流麗な動きをする殺陣を、他の人がマネできるでしょうか。当時でさえ、橋蔵さまのように綺麗に動ける俳優はいなかったのです。まして現代のバッタバッタと斬り倒せばよいという時代には、綺麗な流れの殺陣は新鮮に思えます。真似しようとしてもできるものではありません。流麗な動きで斬っていく殺陣は見ていて気持ちのよいものです。「修羅時鳥」では橋蔵さまの化粧法がちょっと変わってきましたね。眉の描き方、目の描き方、つけまつげと・・この映画もモノクロなので、くっきりとしたお侍で来るのかと思いましたら、違っています。また、この作品の中でも、恋焦がれている恋人を探し求めるという、切ない感情をだすのだからでしょうか、ちゃんとした髷の時は、ちょっと憂いがあるような目で、髷をおろした時の目は少しきりっとしている。どちらかと言うと、私は髷をおろした方の荘太郎さんの方がいいかな。掲示板の方に、刑場での撮影本番前の橋蔵さまのスナップ載せましたので、よかったら下記をクリックしてご覧になってみてください。 1234
2017年05月19日
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「笛吹若武者」「謎の挑戦状」いかがでしたでしょうか。橋蔵さまが東映の作品に出演する年代に、ちょうど老若男女が映画館に是非でも行きたいという作品を手掛ける時代、東映黄金娯楽時代劇の到来が来たのです。早くから東映が目をつけていた橋蔵さまですが、20年いた歌舞伎の世界、若手として人気があがっている時ですから、将来を考えた時新しい世界に飛び込むことは難しい判断だったと思います。それに、錦之助さんや雷蔵さんからすると映画デビューするには年齢が遅かったですもの。もう少し早く映画界に来ていたら橋蔵さまはどのようになっていたのかな?・・と時々考えてみることもあります。歌舞伎界におられたら、一生こんな素敵な方を見ることは出来なかったかも・・と思うと、映画界に来てくれたことは本当に有難うと感謝でいっぱいです。私は当時まだ、小学生になったばかりで、映画館にも連れて行ってもらえませんでしたが、橋蔵さまが映画に出られるまでの東映の若手のものと言えば、子供にも受ける痛快活劇的なものが多かったように思えます。錦之助さん、千代之介さんで、笛吹童子・里見八犬伝・紅孔雀・三日月童子なのシリーズものが流行っていた時代でした。そういえば、美空ひばりさん主演の1954年封切の「ひよどり草紙」という映画ご存知でしょうか。相手役の最初の候補者は大川橋蔵さまだったのですよ。なかなか難しい歌舞伎の世界、六代目菊五郎の養子ということもあり、劇団内部事情、家庭の事情、松竹さんとの関係と、複雑な環境にあった橋蔵さまであったため、この映画でのひばりさんとの共演企画は出来なかったようです。それで、次の候補に錦之助さん、雷蔵さんとあがって、錦之助さんになったようです。 この作品に橋蔵さまが出ていたら、何かがもう少し変わっていたのではと思えてなりません。「謎の挑戦状」の作品を書いたシナリオライター比佐芳武さんも橋蔵さまを映画界にとマキノ光雄氏に提案したひとりでした。東横ホールで公演した橋蔵さまの舞台写真を新聞でパッと見た瞬間に、「これはモノになるぞ」と思い、「大川橋蔵、これはいいですよ」とマキノ光雄さんに進言した一人です。第一回の「笛吹若武者」のスチールを見て、自分のカンは狂っていなかったという自信をもったと言っています。そこで比佐さんは自分の書いた「謎の決闘状」でつむじ風の半次という役を振って見たということです。女形出身なので、粋のよい半次をどうこなすか楽しみで期待していたのだと。いささかの心配もあったようでしたが、初日の撮影を見たところ、舞台臭はあったにしろ、そのキマリの良さは半次を演じてピッタリで成功であったと言っています。そして、比佐氏は撮影が進むにつれ橋蔵さまに幾つか新しい発見をしたそうです。同じ半次の役でありながらカメラ馴れするに従って、最初の舞台臭の芝居から日を追って映画的な演技になってきたということ。こんなに早く、長く身に沁みついた舞台の演技の殻を脱皮し、映画の演技を掴んだ、ということは、驚異であり、カンの良さと素質を物語るものだと感心したと言っています。(この件に関しては、他の人も同じようなことを言っています。今まで歌舞伎界から映画に来た人たちは皆その癖がなかなかとるのに苦労している様子が、作品を見ていてもわかる。だが、大川橋蔵さまも苦労はしたであろうが、作品からはそれが見受けられないと言っ ています。)その中で、ムシリのヅラがよく似あうやくざ役に、非常に独特の性質を発見したこと。橋蔵さまの個性を生かした股旅映画を書いて見たいと思ったのです。ムシリが似合う、お色気は十分だし、やくざの姿、土足裾取り(仁義を切る)、のスタイルも綺麗だ。ということで、1957年に「喧嘩道中」を書いています。橋蔵さまというと、「若さま」「新吾」がという方が多いのですが、比佐さんのおっしゃる「やくざ姿」・・・私も格好よく素敵、橋蔵さまを語るとき外すことは出来ません。専務のマキノ光雄さんから、橋蔵さまは東映入社当時に言われたそうです。「一度や二度は失敗してもかまわない。お前が失敗しようがつたなかろ うが主演主演で撮っていって、スターに仕立ててから、会社が儲けさ せてもらう。何も最初からお前の身体で会社が儲けようという気持ち は毛頭ない」と。橋蔵さまがのちに話しています。「それで楽な気持ちでやれ自信が持てたのと、時代劇ファンが若くて新 しいスターが出てくるのを待っていたという、ちょうどよい時期だっ たのが良かったのではないか」、と。そして、橋蔵さまが挑んだ若さま、橋蔵さまご自身もこんな急速に人気が出るとは思っていなかったでしょうね。はっきり言って、新人時代劇俳優として勉強、研究がこれから沢山あるのですから・・・ね、橋蔵さま。熱心で勉強家ですから、俳優になってからは、時間があれば剣会の人達と練習し、乗馬も必須であると習い始めます。その上達ぶりが一作品ごとに見えてきます。 そしてまず、びっくりすることは、第三作品「若さま侍捕物帖」からの橋蔵さまの声です。3か月で俳優としての発声に変えたのです・・・とても清々しくて、ほれぼれする声、になっているのです。橋蔵さまの人気も出てきていたので、新芸プロ福山社長はここらで橋蔵さまの人気を高めるために、シリーズ物を何か撮ろうではないか、とマキノ光雄氏と相談の結果、歌舞伎での特色を生かし、しかもその経験を十分活用できる役で、シリーズ物として可能な捕物帖ということから、城昌幸氏原作の「若さま侍」に目をつけました。岡田制作部長が書いています。クランクイン2日目頃、所内でおいと役の星美智子さんに出会った時に、「橋蔵さんてとても素晴らしいわね」と言ってきたそうです。「そんなにいいかね」とからかうと星さんはむきになって橋蔵さまのことをほめちぎったと。映画会における子役からの大ベテランの星さんをも感心させる大川橋蔵という男はなかなかの人物だなと思った、と言っています。なんともいえない気品のある美丈夫ぶりに「これでスターの地位は決まったな」と思ったということです。彗星のごとく現れ、一躍スターの座についたのです。橋蔵さまがその時言っています。「真冬のさなか、徹夜ロケで立回りをやりましたが、ほとんど辛いとは 思いませんでした。映画に慣れはじめると同時に、その面白さも分か りかけたのでしょう。なんとかこの道でやっていけそうな気がしてき ました。」若さま侍捕物帖における江戸の小粋な殿様の役は、橋蔵さまにうってつけで、2作連続撮影封切になります。さあ、橋蔵さまの意思も固まってきたところで、 次回は「若さま侍捕物帖」シリーズ一作目「前篇 地獄の皿屋敷」に入りたいと思います。
2016年09月18日
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誠は土井大老派遣の隠密、千波小次郎南蛮鮫の辰から水野家中の轟武平太から頼まれて、侍殺しをやったことを聞き出します。丑の刻詣り満願の日、三つ又稲荷に家老島右京之亮に命じられた水野藩の侍達がやってきて、辺りを見まわすと一人の侍が懐から呪の人形を出し打ちつけようとしたとき、侍達をめがけ屋根の上からはお花の吹き矢が飛び、そこに千鶴の投げ縄が飛んできます。侍達に二人が追い詰められたとき、右門が目の覚めるような剣のさばきで叩き伏せます。千鶴いや田鶴は偽りをいったと右門にいうと、右門「何もおっしゃらずに。世間に聞こえたら、御家名にかかわりましょう」「では、お縄は・・・」という田鶴に、そうですというようにくびを縦にゆっくり振り、事件の解決はこれからだといいます。そこへ、伊豆守が水野上屋敷に出かけたことを伝六が伝えに来ます。深夜においでとはどうしたのかという水野信之に、伊豆守は、「今夜は当水野家にとっても、わしにとっても大事な日なのだ」といいます。そして、伊豆守は、家老島右京之亮に、村井信濃の所在の件を聞くと、右京之介はそのおたずねお待ちしていたといい「村井信濃、捕えましてございます」と言ってきたのです。病の身の村井信濃が連れて来られます。自分の落度により藩を追われながら、殿に対して逆恨みをし、藁人形の呪などと卑劣な手段を用い、命を縮めんとした大逆人、せめてもの武士の情けだ腹を切れ、と右京之介がいいます。潔く切腹するよう追い込まれた村井が腹を刺そうとしたとき、「しば゜らく」と右門は入って来ると、一礼をして前へ出て行くと、胸ぐらをつかみ投げ飛ばします。右京之亮が自分の子を水野藩の跡目につけたいばかりに、轟武平太に命じ島から帰った南蛮鮫の一味をそそのかし人殺しをさせ、忠義ものの村井信濃に罪をきせようとした、というのです。証拠はあるのか、という右京之介に、証拠はこれだと藁人形にかかれた字と句会で読んだ句の字は同じ志津磨流のものだと暴かれ右京之介が右門に向かって行ったところを一刀のもとに斬り捨てます。 一段落したとき、右門は天井裏に目をやると槍を投げます。その先には、黒装束の与吉がいました。 屋根の方に出て来た与吉の先に右門が立ち塞がります。 右門 「与吉。誠は土井大老派遣の隠密、千波小次郎」 右門 「貴公は、今の一部始終を、そのまま大老に報告する所存だな」右門 「どうだ、小次郎」すると、小次郎はかぶり物を取り、口を開きます。小次郎「そうだと、言ったら」 右門 「近藤右門、命に代えて、貴公の任務を阻み申す」小次郎「阻む」右門 「断じて阻む」小次郎「斬るか」右門 「斬る」小次郎「あくまで刃を交えるか」右門 「いかにも。お花を生き証人として、このまま大老に、水野家の内紛を報告 されたら、水野家はもとよりのこと、伊豆守様御身辺も危ぶまれる。断じ て、貴公をこのまま見逃すわけにはいかん」 小次郎「御公儀の隠密に逆ろう大罪をおかしてまでもか」右門 「ううーん、言うな」小次郎「家禄没収、身は切腹と覚悟の上でか」 右門「武士は己を知る者の為に死す」その強い決心で小次郎に向かってくる右門。 小次郎が短刀をかまえたとき、右門が小次郎にかかっていくと、素早く身をかわす小次郎。 屋根の上での二人の攻防がしばらく続き、小次郎が庭に飛び降りました。 続きます。🎥『右門捕物帖・南蛮鮫』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。右門捕物帖 南蛮鮫・・・(1)右門捕物帖 南蛮鮫・・・(2)右門捕物帖 南蛮鮫・・・(3)右門捕物帖 南蛮鮫・・・(4)右門捕物帖 南蛮鮫・・・(5)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方へスクロールしてみてくださいね。このブログのために今まで作った表題画像も掲載しています。
2026年05月22日
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「美しい奴」今回は現在、「新吾十番勝負第一部・第二部総集版」になってしまった作品です。第一部・第二部それぞれに封切られた作品はどんなだったのでしょう。若き日の吉宗である松平頼方の場面がほんの少ししかないため、頼方とはどんな性格の人だったのかよく分からないまま、総集版の作品に入っていかなければならなくなっています。武田一真が頼方の剣の指南役であったことは省かれてしまっていますから、後々新吾が一真と巡り合うことになっての因縁というものもわからずにストーリーを追って行くことになりますね。全体的ストーリーの半分以上削ってしまったのか、それともフィルムがなくなってしまってのことなのか、一本分の長さになった総集版ですから、要所要所つながりを想像していくことも必要になります。◆第47作品目 1959年3月封切 「新吾十番勝負」 第53作品目 1959年8月封切 「新吾十番勝負 第二部」 松平頼方 大川橋蔵葵新吾 大川橋蔵お鯉の方 長谷川裕見子お長 長谷川裕見子綾姫 佐久間良子雪姫 花園ひろみお縫 桜町弘子お縫 大川恵子武田一真 月形龍之介井上河内守 薄田研二真崎庄三郎 岡田英次梅井多門 山形勲安藤対馬守 大河内傳次郎黒田綱政 三島雅夫俊太 堺駿二井出市右衛門 徳大寺伸坂本修理 沢村宗之助鉾田の虎松 阿部九州男繁蔵 田中春男宮野辺貢 原健策下島甚右衛門 吉田義夫淀屋辰五郎 御橋公要助 山城新伍鹿島佐吉 市川小太夫嘉平 杉狂児真崎備前守 高松錦之助須栄 五月みどり松平頼安 加賀邦男将軍吉宗 大友柳太朗◇まずは、『新吾十番勝負』総集版の作品の始まりは、鯖江城下はずれの街道を、国表へ入る紀州の三男坊が乗った・・?・・駕籠行列がやって来るところで、道を通っていた人たちが土下座しているところから始まります。行列が越前屋半六の近くまで来ているとき、風が吹き半六の笠が飛んでしまいます。慌てて笠を取りに行列の前に出てしまいます。「申し訳ございません」と頭を下げる半六に、行列を乱すとは・・と家臣の田部源蔵が言っていると、「待て」と言い家臣の装束を身につけ近づいて来たのは・・松平頼方です。ふるえている半六を前に、頼方は心の中でこうつぶやいたのです。頼方「この男は斬ってもいいのだ、斬られる罪を犯している」 そう心の中でつぶやくと、半六に向かって、頼方「面をあげい」言われた半六が面をあげ頼方を見たとき、頼方は刀を抜き半六を斬ってしまいます。宮野辺貢と武田一真が傍にかけより、宮野辺は興奮状態で頼方が握っている刀を手からはずします。 ◆何故頼方は半六を簡単に斬ったのか、そして何故駕籠に乗っていなかったのか、総集版のこの短い場面からではわかりませんね。この行列の前日に、本陣の宿で頼方と剣術指南役の武田一真がこのような話をしているのです。頼方「剣法は人を斬るためのものか、おのれを守るためのものか」「斬ってよい人間はいないのか」という頼方を一真が説き伏せるのですが・・・宮野辺が連れて来た犬で・・・犬は人を斬るのとよく似ているということで、しぶしぶ放生一真流の腕を試すのですが、やはり人を斬りたい、という頼方を宮野辺が諫めますと、明日は駕籠に乗らない、というのです。それで、半六が笠を追いかけて出て来て行列が止まったとき、頼方は駕籠に乗っていなくお供の中から出てきたというわけです。頼方が半六を斬った刀を宮野辺が頼方の手から放した場面で次の場面に移っていますが、この後、頼方は興奮状態から我にかえり、行列は何事もなかったように、半六の脇を通り過ぎていくのです。◆越前屋では、番頭の庄三郎とお長が見守る中で半六が息を引き取ります。その夜、頼方は床に入っても、昼間半六を無礼討ちにしたことが脳裏から消えず悔やまれ眠れないでいました。 頼方は自分自身に、「無礼討ちはいきすぎであったろうか、いや、自分が手をくださねば、他のものが斬ったに違いない。・・・だが、自分の心の中に、機会があれば人を斬りたいという気持ちがあったことは歪めない」頼方「人を斬ることは嫌なものだ・・・二度としたくないことだ」この後総集編は、川原で一人静かに月を見ている頼方を、お長と庄三郎が半六の仇討ちを決行するところになっています。◆お長と庄三郎は、この仇討ちを決行するまでに、家臣と川を泳ぎ、焚火をする頼方を偵察して、頼方にも隙があることを見て、月夜に一人きりになった頼方を見て仇討を決行することになるのです◆(頼方と家臣が川を泳ぐシーン・・この撮影は非常に寒い時で、ぶっつけ本番で撮った場面・・・皆さんが大変な思いをしてのところだったのですが、映像にはなくとても残念なことです)お長と庄三郎が、月明かりの中一人でいる頼方をじっと見据えています。座ってのんびりしていた頼方が動きます。その時、頼方は気配を感じ、頼方「貢か?」家臣の宮野辺が来たのかと思います。 庄三郎、続いてお長が頼方に向かって行きます。 頼方「何者だ」二人は答えず、頼方に向かって行きます。頼方「名をいえ」無言のまま二人は必死にかかっていきます。 頼方「頼方と知っての狼藉か、・・卑怯者、名をなのらんか」庄三郎「卑怯者は、お殿様だ」と言い、二人の攻撃は続きますが、庄三郎が頼方によって川に落ちてしまいます。 それを見たお長が「父の仇」と頼方にかかっていきます。頼方「仇だと」お長「越前屋半六の娘」頼方「なに?」 頼方「越前屋、・・・あっ、供先で斬られた男の娘か」そう言うと頼方はお長を突き放しますが、お長はまたかかって行ったところで、頼方に手を払われ短刀を落してしまいます。頼方は観念した様子のお長に対し 頼方「何事もなかったことにせよ、・・・忘れるから、ゆけ。・・・人目につかぬ うちに早く帰れ」 そう言いいきかせ、去ろうとしている頼方に、お長が短刀を持ちかかっていきます。頼方「分からぬか」と言いお長に当身をします。お長は気を失い頼方の胸に倒れ込みます。 頼方「困った奴だ」頼方は倒れ込んだお長を、どうしたらよいか辺りを見て迷っていました・・・しかし、気を失って腕の中で眠っているお長に魅せられ、頼方の心が動きます。頼方「美しい奴」お長をしっかりと抱きしめます。 続きます。
2020年10月09日
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おさらばでござりまする元禄十五年十二月十四日、その日は朝からの大雪でした。十平次が玄蕃の道場を訪れると、留守番をしていたお兼が玄蕃からの預かりものだと槍を持ってきて十平次に渡します。二人は何処に行ったのか聞くと、雪の中お詣りだといっていたというのです。十平次は来るかと待っていた玄蕃と妙でしたが、夜になってもくる気配はないので床につきます。赤穂浪士が終結し、吉良邸に入りました。内蔵助が打ち鳴らす山鹿流陣太鼓の音を聞いた玄蕃は「やったな」というと、布団から飛び起き身支度をすると、「神棚に燈明をあげて、平次の武運を祈れ」といい槍を持って雪の中を走り吉良邸の門の前にやってきます。 玄蕃が門の中にいる内蔵助に声をかけ、十平次も邸内に入り働いているということを聞き安堵して、自分はこれから両国橋に行き、上杉勢が押し寄せて来たら立ちはだかり、一人たりとも通さず防いでみせると伝え、玄蕃は両国橋の上に立ちはだかったのです。吉良邸内では入り乱れての決戦のなか、十平次、武林唯七、神崎與五郎の前に和久半太夫が立ちはだかります。十平次が槍をかまえたとき、「強敵だ、俺がやる」という武林を振り切り和久にかかって行きますが跳ねのけされてしまいます。その十平次に和久が刀を向けて危なくなったとき、とっさに畳に槍を突き立てたのです。 しかし、畳みは上りませんでしたが、二度目挑戦したとき畳があがり、和久がひるんだ隙に十平次の槍は和久を突いていました。 それを見ていた神崎に「どうしたんだ、その技は」といわれ、我に返った十平次は「出来た、先生できたあ」と喜びます。その後は、次々と畳が宙を舞いました。 両国橋では上杉の侍たちと斬り合いになったが、猿橋右門が家来たちをひき戻します。そして「かかる身でおぬしと対するのも武士の定めだ」という猿橋に「御意」と答えた玄蕃を残し帰って行きます。そのとき、「えいえいおー、えいえいおー」という勝ちどきの声を聞き玄蕃は微笑みます。翌朝、四十七士が泉岳寺へと向かう通りに玄蕃と妙の姿がありました。その前に来たとき内蔵助は玄蕃のところに行き礼をいい、列に戻ると、玄蕃のところへ・・・と主税が十平次に伝えに行きます。十平次は急いで二人のところへ行くと、十平次「先生、畳みが、畳みが跳ね上がりました」玄蕃 「そうらしいな、・・・わしも大石殿から、そなたが働いたと聞いて・・・ そう、察していた」十平次が「お嬢様」というと、「妙と、一言」と妙がいうが、十平次は「おさらばでござりまする」と二人に頭を下げると、かけて列に戻って行きます。 列に戻って来た十平次は泣いていました。堀部安兵衛に肩をたたかれた十平次は十平次「安兵衛殿、お笑いくだされ。武士らしくもない、この取り乱し方」安兵衛「おれら、武士としての本懐はもう遂げた。泣くもよい、笑うもよい、 ・・・十平次は思いっきり泣け、俺は思いっきり笑う」というと、高笑いをします。十平次も明るい顔になります。見送った玄蕃は妙に「わしの槍は、ついに十平次に生きた。が、そなたは・・・」というと、「いいえ、妙の幸せも、あの方の額のかんざしに・・・」「うん」と頷く玄蕃と妙のさびしさただよう姿が人ごみに消えていきました。 (完)
2021年08月31日
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そいつはおふくろの形見なんだよお火事と喧嘩は江戸の華、背中に咲いたいれずみと、美貌と度胸で男売り出す吉五郎。加賀百万石のお抱え火消が、町火消は組の娘を好きになったばかりに、火消稼業の仁義に泣きます。江戸情緒豊かに、鉄火と恋と友情を綴っての、橋蔵さん久々の纒ものです。この作品は、邦枝完二の「喧嘩鳶」が原作で、戦前長谷川一夫、山田五十鈴、花井蘭子、黒川弥太郎共演の「喧嘩鳶」で映画化されヒット作でした。そんなことでマキノ監督はこの映画化に乗り気ではなかったようです。 ぜひやりたいと橋蔵さんの熱心な申し出と、会社からの話もあり、マキノ監督が演出することになったのですが、この時代の若い人にもよく分かるように、恋愛の世界を中心にすることにして、脚本を大幅に改訂した内容になったようです。そして、橋蔵さんは、淡島千景さんとは「雪之丞変化」に続いての共演になり、マキノ雅弘監督とは「恋山彦」「雪之丞変化」に続いての3作目になります。マキノ雅弘監督の指導は、新人でも水を得た魚のように動く・・・監督自身が実にうまく演技をやってみせて指導をするのです。京都弁の荒っぽい口調で遠慮なく連射砲のようにぶっつけられるので、俳優は潜んでいた能力をパッと開いていくのだそうです。淡島千景さんの「女優というプリズム」という本の中に、「江戸っ子肌」のある場面でのマキノ雅弘監督について話しています。(抜粋していますので)《加賀鳶衆の宴会が終った後の二階座敷。紅襷をかけた女中たちが膳を片付けているところ、酔った芸者小いなが障子を開けて座敷に転がり込んでくる。銀の煙管を手に「いや、返さない」と横座りに座り込む小いな。加賀鳶の半纏を引っかけた吉五郎が後を追って座敷に入ってくる。煙管を取り返そうとする吉五郎から身をかわしながら、「これは女持ちよ」と咎める小いな。吉五郎は照れて畳に腹這いになりながら、それが母の形見であることを告げる。》---という場面で。----この最初の登場シーンで、淡島さんは、半回転しながら襖を開けて、泳ぐようにスーッと座敷を横切ってきて、婀娜っぽく横座りするという、かなり複雑な動きをされています。お相手の橋蔵さんも、畳の上に腹ばいに寝そべって、ゴロンと一回転したりしています。マキノ雅弘監督は、よく女優さんや男優さんを、「回らせる」ことで優美に色っぽく見せる演出をなさいますが、先ほどお話に出た”ワルツ”というのはそういうことだったのでしょうか?淡島 うん、そうね。普段自分が好きな足を使っていたんじゃ、決めた位置には行 かれないのよね。「イ チニッサン、ニーニッサン」という足運びにしない と。垣内 同じ歩幅で行ったって全然色っぽくないんですよね。トントントン、トトン と行かないとね。舞台出身だとそれがわかるじゃないですか。淡島は舞台を やってきましたから、マキノ先生も安心してやらせていたんじゃないかな。----ここでアップ、あるいはポーズをとる、というふうにカットで割ってしまうのではなく、動きのリズムやきれいな流れをみせるということを重視されていた監督だったということですね。淡島 マキノ監督は、ご自分ができるからね。それが違いますよね。「恋山彦」の無二斎や「雪之丞変化」の闇太郎で橋蔵さんが見せた痛快ぶりは、マキノ監督の演出の引き出し方のおかげといれるようです。この「江戸っ子肌」でもマキノ監督の連射砲が浴びせられて、橋蔵さんのまだねむっている面が開花しているかもしれません。◆第72作品 1961年2月7日封切 「江戸っ子肌」 吉五郎 大川橋蔵小いな 淡島千景おもん 桜町弘子おりん 千原しのぶ中原扇十郎 山形勲石町の勘五郎 柳英二郎助蔵 堺俊二次郎吉 黒川弥太郎猪吉 田中春男金太 本郷秀雄伊兵衛 香川良介向井左太夫 石黒達也三原国十郎 阿部九州男猫六 中村時之助伊藤四郎兵衛 月形哲之介赤尾弥左衛門 小田部通麿清吉 時田一男舟五郎 伊藤亮英村右衛門 北龍二お杉 霧島八千代おまき 赤木春恵加賀鳶衆の宴会が引けていきます。「今夜はぶれいこう、気を利かしてやんな」と言われ助蔵が気を揉んでいます。宴会が終った二階座敷では、女中達が芸者小いなの噂をしています。「あんなに酔ったのを初めて見たわ」「それもはじめは冗談かとおもったが、小頭が背中の金太郎の入墨を見せてからよ」「じゃ、姐さんは吉五郎さんに惚れたんじゃないのね」「そうよ、背中の金太郎さんに惚れたのよ」と楽しくおしゃべりをしながらかたずけをしていると、廊下の方から「いや」と言う声がしたと思うと、芸者小いなが障子を開け「いや、いやいや」と言い部屋へ入って来て倒れ込み胸に煙管をしっかりにぎり廊下の方を見て、小いな「返さない」と言っていると、吉五郎「おっ、おい」と小いなを追って加賀鳶の吉五郎が飛び込んで来ます。吉五郎は、女中達の顔を見て、ばつが悪そうなそぶりを見せます。 そして、吉五郎は女中に聞きます。吉五郎「おう、もうみんなけえったのか」残っているのは、小頭だけといわれ、吉五郎は「ほーら、みろ」と小いなに近寄っていき、 吉五郎「よう、頼むからその煙管けえしてくれよ」小いなは吉五郎をじらしにかかります。吉五郎「そいつはおれにとっちゃあ・・・」小いな「いやだったら」吉五郎「どうしてよう」小いな「うーん、だってさあ、この煙管は女もちよ」 煙管を取り返そうと手を伸ばす吉五郎、小いなが「みんな見てよ」と女中達にその煙管を見せると、「お安くないわ」の声に、吉五郎「やだなあ」と言いながら畳に寝ころぶと、 吉五郎「その煙管はなあ・・・」小いなは煙管を吉五郎の目の前に置くと小いな「誰にもらったの」ときいてきたので、吉五郎が「形見だよお」と言って煙管を取ろうとすると、「うそうそ」と煙管を取上げ、小いな「あんなに大切にするんだもん。𠮷さんには、きっといい人が・・・」吉五郎「そりゃあおるさ」 その返事に小いなが「ちきしょう」と煙管を振り上げるのを見て、吉五郎「おっと、待ってくれよ。・・・いい人っていうのはな、おふくろ。そいつ はおふくろの形見なんだよお」 「ほんと?」と聞く小いな、「うん」と答える吉五郎。そして、吉五郎「よう、小いな、そりゃあわけえ男が女持ちの煙管を大切に持ってるなんて えのは、みんなにとっていい笑いぐさかも知れねえが、この吉五郎にとっ ちゃ、そいつがたった一つの色香なんだい」 そう言った吉五郎は女中達を見ると起上りながら、「おう、可笑しいか、おい」と言うと、吉五郎「へっ、笑ったっていいんだぜ・・・なあに、加賀百万石のお抱えだって威 張ったって、おいら、ただの火消よ。今にもジャンとなりゃ、明日は背中 の金太郎が水っぷくれになって泣いてよって、へっ、はかねえ商売だ。お めえさんのような櫓下の姐さんに焼かれて喚かれるような男じゃござんせ んよ」 小いな「ふん、お気の毒さま。それが惚れたんだからどうしようもないでしょ」吉五郎「それがほんとならうれしいが、惚れた腫れたは娘のときに言って欲し いよ」 小いな「それは無理よ、野暮ってものよ。いわなきゃいえない女心ってえのを、 吉さんは」吉五郎「お気の毒だが、分らねえ」小いな「嫌い」 「好かれたって」と言った吉五郎に小いなが「何さ」と返します。吉五郎は「酔いが醒めちゃった、帰ろう」と部屋を出て行ったあと、小いなは呟きます「ほんとうにおっかさんの形見かしら」と。 📌(m.wの独り言・・櫓下の芸者小いなとしては、吉五郎に心底から惚れていても言えない歯がゆさ、それを知ってか知らずか、吉五郎には恋愛の相手としてはまだ見えていなかったのでしょう。もし、おもんという娘が出て来なければ気持ちは違ったかもしれませんね。マキノ監督は俳優さんをうまい具合に回転させていますね。ほんとにお色気が出ています。) 続きます。この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方へスクロールしてみてくださいね。このブログのために今まで作った表題画像も掲載しています。
2026年06月21日
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若さま侍捕物帖シリーズを見なおして見て、私は「鮮血の晴着」が若さま侍の作品の中で一番好きかもしれません。橋蔵若さまちょっとお顔が丸くなってきました。若さまのお化粧もこの「鮮血の晴着」はいいですね。そして、いよいよ若さまの秘剣「一文字崩し」が堂々登場します。着流しで片腕懐に入れての歩き方、立姿もより綺麗に、流れるようなべらんめえ口調、とぼけた様子もいい感じに、秘剣神道流一文字崩しという剣法も披露、目の使い方にもこれぞ橋蔵若さま、というものが出来あがった時です。それに若さまの活躍がよく描かれている作品です。久しぶりの若さま侍捕物帖シリーズ・・待ちに待っていたファンも多かったのではないでしょうか。今回はどのような事件を若さまが解いてゆくのでしょう。 作品を見ていただくと、分かりますが、前回の「修羅時鳥」も京都の底冷えのする時の撮影でしたが。この作品も、2月の撮影。台詞を言いますと、白く息がなっています。撮影所の中も外も寒い中での撮影だったことが分かります。 ★第22作品目 1957年3月4日封切「若さま侍捕物帖 鮮血の晴着」 若さま捕物帖シリーズ4作品目になります。城昌幸の原作「若さま侍」捕物シリーズの「五月雨ごろし」より構成、脚色した作品です。監督は小沢茂弘さん、この作品の前後を撮っている深田金之助監督とは違った魅力のある橋蔵若さまが見られるのも楽しみです。 若さま 大川橋蔵おいと 星美智子露 三笠博子おしゅん 浦里はるみ八代将監 薄田研二土居紀伊守 阿部九州男阿波屋六左衛門 徳大寺伸白坂源次郎 片岡栄二郎重蔵 富田仲次郎佐々島俊蔵 伊東亮英愛甲新七 山口勇遠州屋小吉 星十郎奥村勘解由 有馬宏治おかしな奴だったよ奴だったよ 最初から若さま登場になる作品です。江戸の深夜に豪商を狙って強盗団が密かに動いていました。佐々島や小吉たち町方は毎晩走り回っていました。そんな中のある夜、若さまが西光寺の近くを歩いて来ると、門の辺りでうろうろする男がいるのに目を止めます。そして少し歩いてゆくと、今度は怪しい老人が西光寺に入って行くのを見て、気になったのか少し待って見ますと、今度は風呂包みを持った町人が出てくるのを見たのです。(画像は若さまの不振に思い伺う表情です) 後をつけてみると、質商阿波屋に入って行きました。すぐその後から番頭らしき男が帰ってきました。若さま物陰に隠れ様子を見ます。 番頭は、木戸が閉まっているので、防火用水から中に入ろうとしますが上れないようです。それを見ていた若さまが声をかけます。若さま「手伝ってやろうか」 若さま「あははははっ、そう驚くなよ。おめえが塀を越せねえようだから・・」(橋蔵さまの口ともとに白い影みたいのがあります。空気が冷たい為、台詞を言うと吐く息が白くなっているのです) 番頭 「これはどうも」若さま「夜遊びかぁ、たまにはよかろう。どれ、手を貸してやるぜ」と言い、のぼるのを手伝います。 若さまは、昨夜見た件で、阿波屋がどうも気になっているようです。翌日阿波屋の前の居酒屋に若さまの姿がありました。若さまはお酒を飲みながら、阿波屋をずっと見ている侍(源二郎)が気になっています。 阿波屋から出てきた主人のあとを、その侍はつけるように慌てて出て行きます。若さまがあとをつけて行くと西光寺に入って行きました。侍は男見失い探している様子。若さま「見えねえようだな」声をかけられビクッとする侍。若さま「何処へ消えやがったか」 源二郎「何しに来た」若さま「お前さんなんだってあの男をつけるんだ、えぇっ」 源次郎「貴公の知ったことではない」若さま「言いたくねえか、はぁて 分からねえなぁ」 源次郎「貴公は何者だ」若さま「そう脇でがみがみ言われちゃ、考えがまとまらねえよ」(坊やが拗ねたような可愛い若さま) 若さまに邪魔をされて怒って侍は帰って行きます。若さまは後ろにあるお堂が気になっています。(このシーンの若さまの表情好きな一つです。着流し姿も綺麗で良いですね) 若さまは、気になる阿波屋の店へ戻って裏路地を見ますと、裏口から周りを気にしながら風呂敷包を持ち出てゆく番頭を見かけます。八代将監の娘露が婚礼を前にいなくなったようです。先ほどの侍白坂源次郎は恋仲であったのをひきさいたため、八代は源次郎が露を隠しているのでは、と思っているのです。わた打ち直しの店の前を通り過ぎて、老人風の男が一軒家の二階に上がって行きます。奥の部屋に露らしき女がいました。 若さまが喜仙に遅く戻ってくると、おいとがおかんむり。おいと「あら、若さまどこへいらしていたんです。さっきから佐々島様と遠州屋の 親分がお待ちかねよ」若さまこんな顔をしてから、 若さま「そんなに怒るない。まるで、ふぐみたいだぜ」(ここまで表情を作ってしまうのですか若さま、それはお糸ちゃんが可哀想・・)おいと「まあ・・・」(おいとちゃんとは、あいも変わらずの調子です) 与力の佐々島と遠州屋小吉が帰りを待っていました。深夜の江戸に豪商を狙う強盗団があるのだが、一味の動向は掴むことが出来ず盗まれた品物も見つからない、このままでは町方の威信にもかかわるので若さまの力を、といつものようにご出馬願いたいとお願いに来たのです。 若さま「もう、関わっているようだぜ」佐々島「つきましては、若さまのお力を拝借したいと存知まして」若さま「うぅーん、どうも分からねえな」佐々島、小吉「えっ?」若さま「おかしな奴だったよ」 と言いながら横になり、眠てしまう。お酒を持ってきたおいとも佐々島も小吉もどうしたのか、あっけにとられています。(若さま、何も聞かないうちから、強盗団と阿波屋が関連しているとお思いなのですか・・・) 続きます。
2017年05月24日
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