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みなさん、こんばんは。一年の3分の2が終わりですね。毎年同じことを書いているような気が…去り行く夏の最後の日にホラー映画を紹介します。残穢【ざんえ】 -住んではいけない部屋-原作小野不由美出演竹内結子 橋本愛 坂口 健太郎 佐々木 蔵之介 成田 凌 滝藤 賢一監督中村義洋ミステリー小説家である私に、読者の女子大生・久保さんから自分が住んでいる部屋で変な音がするという手紙が届く。早速二人で調べてみると、そのマンションに以前住んでいた人々が自殺や心中、殺人などの事件を起こしていたことが判明。久保さんの部屋で生じる音の正体、そして一連の事件の謎について調査していくうちに、予想だにしなかった事実がわかり……。映画には出てこないが、「私」が書いている短編ものが小野さんの『鬼談百景』。映画とは別に原作を読んでも相当怖い。子供の頃に見たら結構トラウマになったかもしれない。最初に音から入って、次にぼやけた映像、近づいてきて、遂に…というのはホラー映画の定番パターン。わかっているけど、記憶に刷り込まれたみたいにどんどん恐怖心が募っていく。現象が怖いので、俳優の「怖がっている演技」ってあまり重要ではない。竹内結子さんも橋本愛さんも、共通した硬質な美女のイメージで、あまりきゃーきゃー言わなかったが、それでも怖かった。ちなみに、竹内結子さんはとっても怖がりだったそう。こうした映画の常として、怪奇現象が起きたらしいが、今も何かに祟られていなければいいけれど。ちゃんとお祓いしたんだろうなぁ。 原因がわかっていても、相手が相手だからどうすれば逃れられるかわからない。現実的に考えられるものとしてお祓いという方法が浮かぶが、尺が終わればきちんと解決する映画みたいに確実に効き目があるのかわからない。原作を読んでいても怖かったのは、自分が何もしていなくても突然祟られてしまう件。最初は傍観者だった人も、話を聞いたり、見たり、つまりはそれに「触れて」しまうだけで何かに取りつかれてしまう現象がとんでもなく怖い。こうして見ている自分すら、その輪の中に取り込まれてしまうんじゃないかという思いが消えない。その思いが生じたことこそ、穢れの広まりではないか。ずっと心の奥底に澱んで、いつか自分も出会うのではないか。【送料無料】 ハピネット 残穢【ざんえ】—住んではいけない部屋— 【ブルーレイ ソフト】楽天ビック
August 31, 2018
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みなさん、こんばんは。お年寄りが病院の冷房のきかない部屋で死んでしまったニュース、ひどいですね。「責任はない」とはよく言えたものです。おかざき真理さんの漫画最新巻を紹介します。阿・吽 (8)おかざき真理第二巻初登場時の桓武天皇は左腕に鷹を従え一言「愛」と呟く。即位後、遷都、蝦夷征討、旧仏教勢力の排除と改革に取り組んできた彼の行動ベースは愛にある。全ては民を思う心から発したものだから正しいはず、というのが彼の考えだ。ところが政策は全て裏目に出て、民が天皇に向けるのは愛どころか恨みや憎しみだ。最大の誤算は後継者に選んだ安殿皇太子(のちの平城天皇)だった。 愛は諸刃の剣である。 桓武天皇晩年の安殿皇太子の行動ベースも愛にある。桓武天皇がどんなに愛情を注いでも安殿皇太子には届かず、父の寵愛を受ける異母弟の優秀な伊予親王に嫉妬を募らせていく。伊予親王の申し出も最澄との面会も断り、ひたすら「自分が後継者としてふさわしい」という父の一言を聞こうと病床の父の枕元に侍る。遂に父親からもらえなかった自己肯定の言葉をくれた藤原薬子に、安殿皇太子が傾くのは自然な流れだ。最初のシーンこそ強引だったが、次回以降「薬子の乳を吸う安殿皇太子」のシーンが登場する。二人の間に流れる感情は、男女のそれというよりは、母と息子の愛情のようだ。 薬子もまた夫から虐待を受けていたという設定で、本巻では第四巻同様台所でつまみ食いをしている姿で登場する。“貪欲”を現すカットで、彼女が抱く欲は食欲のみではない。本作では、初登場シーンがその人物の特徴を表現する場合が多い。 伊予親王の変により母子が自殺すると「次は我じゃないか」と神野皇子(後の嵯峨天皇)が呟く。伊予親王は黒目に白の点、安殿皇太子は白目と対照的に描かれているが、神野皇子は目を伏せた状態でしか描かれない。ニュートラル、或いは旗色を鮮明にしていないキャラクターということなのか。 征夷大将軍に任じられ蝦夷討伐に功を挙げながら、寺を建てる坂上田村麻呂は、矛盾に満ちたヒトそのものだ。その彼が「自分を苦しめることになろうとも」「より純粋に よりまっすぐに」を追及する最澄に惹かれる。「真理は絶えず存在し続ける しかしそれを絶つものは常に生きている人間だ」 愛が諸刃の剣であるように、人間もまた善悪両面を持っている。坂上田村麻呂は真理を経つ側の人になるのか。それとも逆の側に立つのか。【新品】【本】阿・吽 8 おかざき真里/著 阿吽社/監修・協力
August 30, 2018
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みなさん、こんばんは。8月ももうすぐ終わりですね。台風21号が発生したみたいですが少しは涼しくなるでしょうか?井上ひさしさんの戯曲を元にした映画を紹介します。母と暮せばNagasaki:Memories of My Son監督山田洋次脚本井上ひさし 山田洋次原作井上ひさし音楽坂本 龍一出演二宮和也 吉永小百合 黒木 華 浅野 忠信 加藤 健一 小林 稔侍 橋爪 功 本田 望結 1948年8月9日、長崎で助産師をしている伸子のところに、3年前に原爆で失ったはずの息子の浩二がふらりと姿を見せる。あまりのことにぼうぜんとする母を尻目に、すでに死んでいる息子はその後もちょくちょく顔を出すようになる。当時医者を目指していた浩二には、将来を約束した恋人の町子がいたが……。 戯曲「父と暮せば」では広島の原爆で亡くなった父が娘の元に戻ってきたが、本作では長崎の原爆で亡くなった息子が母親の元に戻ってくる。広島と長崎、父と娘、母と息子など対になる要素が多い。「父と暮せば」でヒロインの恋人役だった浅野忠信が、今度は亡くなった息子の恋人の結婚相手として登場。 浩二は伸子にしか見えず、愛しているはずの町子の前には姿を現さない。町子に未練がありながら、やはり自分がこの世の者でないことがわかっているからで、若いながらも諦めの良さは、昭和の男の潔さなんだろうか。黒木華さんも山田洋次監督に気に入られているようだが、昭和っぽい顔をしている。 吉永小百合さんのお母さんは町子にも近所の人にも優しい。非の打ち所のないような人に見えて、町子が他の誰かと結ばれてしまうことには複雑な気持ちを覗かせる。それでもやっぱりみんなが無条件に認めてしまうのはサユリストを生む演じる人の人柄なんだろうか。 加藤健一さんは久々に大画面で見た気がする。闇物資を持ってきては伸子の世話を焼き、見えないはずの浩二があれこれと茶々を入れたり、彼が登場する場面は、シリアスな内容が続く本編でユーモラスな雰囲気になる。 原爆描写は、従来の映画ではいきなり空が光ってきのこ雲と死者が積み重なるニュース映像に変わる事が多かったが、今回は浩二が授業を受けているといきなり空が光り、持っていたインク壺の形が見る見る変わって浩二の姿も消える…という爆弾の瞬時の熱が分かる形になっていた。母と暮せば【Blu-ray】 [ 吉永小百合 ]楽天ブックス
August 29, 2018
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みなさん、こんばんは。さくらももこさんが乳がんで亡くなりましたね。彼女も活躍した女性の一人でした。女性について書かれた本を紹介します。問題だらけの女性たちThe Trouble With Womanジャッキー・フレミング河出書房新社 邦題タイトルを見ると、まるで女性に問題があるかのようなイメージだ。「おっしゃる通りなのでしょう。」あら、本文の言い方がうつっちゃった。 まず、冒頭より「女性が存在しませんでした」「黒人女性が存在しませんでした」という否定文がぐさぐさ並ぶ。子供を産むことは女性しかできないはずなのに、存在しないでどうやって、いわゆる天才と呼ばれる男たちはこの世に現れたのか。いや、その言い方もまずい。まるで女性が産む性でしかないようで、これでは彼の国の政治家と同じだ。「知能が発明や創造には向いていない。男性を讃えるのが仕事だ」「男性が普通に成し遂げられるのと同等の程度にまで女性が学問や研究に精通していることはめったにない」など、ショーペンハウアー、モーパッサン、ジャン・ジャック・ルソーなど錚々たる面々の「えっ、あの人がそんなことを?」という衝撃のコメントが並び、思わず笑ってしまうイラストが添えられている。「ピカソによると、女性の存在価値は苦しむことだそうです。」(ふざけんな)のページには抽象画となりながらも涙を流す女性が描かれ、その次のページには恐らくエド・ハリスが演じたジャクソン・ポロックらしき男性と、傍らで称賛する女性画家リー・クラズナー(拍手してるけど顔が笑ってない)が描かれる。 未だに政治家が見当違いの発言をしている彼の国しかり、男性の頭の中は、世紀を越えようがなかなか変わっていないようだ。救いは、そうした男性ばかりではなかったから、本に書かれた時代にはなかった女性の権利や活躍の場が増えており、土俵際のせめぎあい、セクハラ疑惑に対するとんちんかんな対応などに「バカバカしい。いつまで前の時代を引きずってるんだ。」と自由に意見が言える世の中になっていることだ。 言われたからと言って、さあリベンジ!と息巻くのは、早計というもの。偏見を跡形もなく無くす方法を、じっくり考えてみましょうか。何せ、脳がスポンジでできていますからね。スローペースなんです。ところで、スポンジってぎゅーっと絞っても必ず元の形に戻るし、洗えば何度でも綺麗になったっけ。問題だらけの女性たち [ ジャッキー・フレミング ]楽天ブックス
August 28, 2018
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みなさん、こんばんは。今年は災害が多い年でしたね。でもまだ台風は来るでしょう。復興中の街もまだ数多くあると思います。こちらの映画にも復興中の街が出てきます。映画風のたよりを見ました。風のたより出演新木優子 加藤雅也 大杉漣監督向井宗敏 東京で生活しているくるみは、友人たちとカフェ開店を目指してきたがとん挫してしまう。ある日、故郷の仙台で東日本大震災を受けて閉店したカフェの再建を目指していた祖父・健が倒れたとの報せを受ける。慌てて病院に駆けつけたくるみに、健は自分の代わりに店の開店準備をやってくれないかと頼む。準備など一つも進んでいない店の様子を見て驚くと同時に、自分にはできないと投げ出しそうになるくるみは……。 今は亡き大杉蓮さんが孫想いの祖父を演じた。この映画でも心臓の病で亡くなっており、後付けとはいえなかなか見ていて辛い。イケメンだった加藤雅也さんもいつの間にか初老っぽくなっちゃって。主演女優が二人を「仕草一つにも意味がある!」と大絶賛していた。そういうことが自然にできる経験値になるにはまだ道が遠いでしょうな。くるみに手を貸す真面目で不器用な女の子は現役高校生だったらしく撮影が終わると涙ぐんでいた。うわぁ純情だ青春だ。いいですね一度しかない時代。 異常気象が続いて日本のどこでも災害が起こるようになっている。家を流され家族を失った人達の喪失感がおいそれと消えてくれるはずはない。「前向きに」なんて言葉がかけられるのは第三者くらいなものだろう。震災の仙台を舞台にするからこそこの映画のテーマとヒロインの再生に意味があるのかも。ただあんなにメニュー少なくてやっていけるのかな?とか二人で切り盛りするにはカフェ広すぎないか?とは思った。風のたより [ 新木優子 ]楽天ブックス
August 27, 2018
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みなさん、こんばんは。朝ドラで原田知世さん演じる和子さんが亡くなりましたね。さて、原田知世さんが江國香織作品に出演した映画を紹介します。カンノちゃんもまだかわいい感じです。落下する夕方Falling into the Evening出演原田知世 渡部篤郎 菅野美穂 大杉 漣 国生 さゆり 木内 みどり 中井 貴一浅野 忠信原作江國香織音楽西村 由紀江 リカは4年間共に暮らした健吾から他に好きな人ができたと突然別れを告げられる。健吾が出て行った部屋でリカはひとり彼の帰りを信じて何をするでもなく過ごしていた。そんなある日、健吾が好きになった相手華子が突然現れ、そのまま住み着いてしまう。混乱するリカだが華子は気にする風もない。そこへ、華子を求めて健吾もやってくるようになり…。 渡部篤郎さん、菅野美穂さん、原田知世さんが全員二十代の頃の作品。この中では原田知世さんが一番お姉さん。脇役も含めて皆若い!DVDには特典映像がついており、主役三人の喋り方がまた若くて幼くて。今見ると貴重。監督インタビューで、弁当屋の客としてふらふら登場する浅野忠信さんの出演経緯が語られている。江國香織さんの恋愛小説って「えっこういうシチュエーションってありなんだろうか?」と思うようなカップルが出てくる。今回も本来なら恋敵のはずの二人がルームシェアをするというありえない展開。かつ華子を追いかけて元カレが元カノの所へやって来る。修羅場になるはずがならないのは、華子の不思議な存在感&リカの押しの弱さ&健吾の中途半端なふてぶてしさ。「現実にあり得ない恋愛を映画でこそ見たい!」という人には良いかも。華子を演じる菅野さんの演技の匙加減が難しかったと思う。しゃべり方もふわふわしていて、言ってることもどこまで本当かわからない。仕事に言ってるのか別の恋人とどこかに行ってるのか「行ってくる」の一言で姿を消してはまたふらっと現れる。振り回されたい男性には、こういう謎めいた女性はたまらないのか。ちょうどこの時期渡部さんはエキセントリックな役ばかり演じていたので、逆に普通の―むしろ頼りない―男の役は新鮮。「壊れていく愛」という非常にシリアスなテーマなのに、敢えて悲惨さを前面に出さず、後からじわじわ寂しさを醸し出してくるみたいな映画。あの頃映画 松竹DVDコレクション 落下する夕方 [ 原田知世 ]楽天ブックス
August 26, 2018
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みなさん、こんばんは。みなさんの所では台風は酷かったでしょうか。まだ風が強いです。週末がやってきましたね。今日から三日間は大杉蓮さん出演作を紹介します。ボクの妻と結婚してくださいPlease Get Married with My Wife出演織田裕二 原田泰造 高島礼子 吉田羊 真島 秀和 小堺 一機 大杉 漣脚本金子ありさバラエティー番組の放送作家・三村修治は多忙な日々を送っていたある日、末期のすい臓がんで余命6か月と宣告されてしまう。ショックを受けながらも家族のため何ができるのか考えた彼は、自分の代わりに家族を支えてくれる人を見つけようとする。そこで、以前一緒に仕事をしたことがあり、今は結婚相談所の社長である知多かおりに、自分がこの世を去った後の妻の結婚相手を探してほしいと頼み……。 NHKでドラマ放送された時には確か何人も花婿候補がいたような気がするが、今回は原田演じる会社社長だけ。39才、結婚歴なし。千葉県出身・港区在住・慶応大卒、インテリア会社社長、年収1500万円、趣味はドライブとキャンプ、特技はピアノ。人柄も評判よし。まあ全部文句なしというか出来すぎ。会社社長なのに出先のレストランで故障があると手づから修理するというのも腰が低くて人柄良し。だったら、こんな小手先の事をやらないで、普通に妻がその気になった時に、相手を見つけてもらえばよかったのでは。ドラマの時は「いい話」と思ったのだが、映画でざっと通してみると、どうも夫の「死ぬ前に安心したい」という意図が家族を振り回して、妻や子供の気持ちを全く考えていないように見える。これは演者の責任ではなく、こういう筋立てなのだから仕方がない。ただ、自分は死んでいくのにもうすぐ元妻となる相手と見合い相手が夜遅くまで食事していても全く嫉妬もしないというのは、出来た夫と見るべきなのか。もう生きることをすっぱり諦めてしまっているようで、それこそ妻が言うように「一緒に生きることを考え」た方がよかった。今回見合い相手も快く応じてくれたからよかったものの、あれだけ元夫の愛情を見せつけられれば初婚の人はかえって引いてしまうのでは。ボクの妻と結婚してください。 [ 織田裕二 ]楽天ブックス
August 25, 2018
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みなさん、こんばんは。大阪の逃亡犯がなかなか捕まりませんね。気になります。今日は数奇な運命をたどることになった少年が主人公の小説を紹介します。ミムス 宮廷道化師 Mimus(Y.A.books)リリ・タール 表紙は東逸子さん。首を傾げて視線を送っているのが主人公のフロリーン。彼の視線の先にあるのが道化の師匠のミムス。師弟のほのぼのとした雰囲気を写し取ったもの、ではない。 フロリーンは敵国ヴィンランドとの和平が成ったとの報せに赴くが罠だった。父王ともども囚われの身になったフロリーンは、その時から身分も部下も名前さえ取り上げられ、仇の国王に宮廷道化師として仕えることになってしまう。チビミムスと呼ばれるフロリーンの新たな人生が始まる。 「貴族が宮廷道化師にさせられた」という史実に基づくフィクション。とはいえ、甘い所は少しもない。魔法使いが現れて都合良く助けてくれるわけでなく、頼りになるのは自分のみ。嫌々フローリンを押しつけられたミムスが次々と出してくる無茶な課題をこなさないと、満足な食事にもありつけない。 ここから甘ちゃん王子フローリンが成長する。今まで馬鹿にしていた道化師の賢さに気づき、自らも即興で歌を作ったり飛んだり跳ねたり、当意即妙な台詞で返したりと大活躍。王子の時には知ろうともしなかった庶民の気持ちや父王の過去の所業が明らかになる過程で、「見たままが本当ではない」ことを学んでいく。本当の帝王学を道化によって学んだと言える。 彼の師匠・ミムスは初老で意地悪かと思いきや、フローリンを助けるために思い切った行動を取る。本名すら明かさず、その真意も誰にもわからないが、その存在感は強烈で、シェイクスピアの『十二夜』に登場するキレ者道化(wise fool)のフェステを彷彿とさせる。一国ならぬ二国を結果的に救っておきながら、身分相応の事しか望まない。例え遠く離れていても彼が見守っていてくれるなら、フローリンは父より賢い王になれるだろう。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ミムス 宮廷道化師 (Y.A.books) [ リリ・タール ]楽天ブックス
August 24, 2018
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みなさん、こんばんは。夏休みもあと少し。台風の行方が気になりますね。さてこちらは年上の女性に恋をした少年の物語です。黙祷の時間Schweigeminuteジークフリート・レンツ 新潮社クレストブックス この物語は、学生クリスティアンが、英語教師シュテラの追悼式に参加する「現在」と、彼とシュテラが過ごしたひと夏の思い出「過去」が交錯して描かれる。不幸な海の事故で重傷を負い、亡くなってしまったシュテラとクリスティアンは恋愛関係にあった。うすうす感づいていた校長や彼女の同僚教師から、追悼式で何か述べるように、と言われるが、クリスティアンは断る。その理由は「過去」が語られることによって明らかになる。 語り手がクリスティアン一人であるため、あくまでも彼の見たこと、聞いたことしか物語上には現れない。そのため、シュテラの生活、人物像には多くの謎が残される。追悼式で号泣した同僚教師との関係。クリスティアンが見た、ホテルで話していた相手とは誰か。夏休み明けで数日間休んだ理由は何か。年老いた父と暮らしているが、彼が病気だったからではないことは、クリスティアンの訪問で明らかになっている。そして彼女の最後の手紙の意味とは。 もしこの作品が、成長したクリスティアンの視点で描かれたら、上記の謎が少しは明らかになっていたのではないか。勿論、当人が亡くなっているので推測の域は出ないが、シュテラはここに来る前、誰かと恋愛関係にあって、その相手から電話がかかってきたのではないか。クリスティアンとの恋愛に一歩踏み込めなかったのも、彼との年齢差以外に、別の存在があったからではないか、等々。おそらくこれを読む大人の読者ならば、あれこれと想像をめぐらせることができる要素はつまっている。ただ、その流れに沿って、何もかもを明らかにしてしまうと、この作品の恋愛小説自体の良さも消えてしまうようだ。誰かを愛そうという強い思いは、その誰かを全て知ってしまっても、なお持ち続けられるものではないからだ。全てが受け入れられたわけではなく、でも、明らかに体の関係だけではなかった。自分にとって彼女は大切な存在。でも彼女にとっては?その答えを受け取れぬままに放り出されたクリスティアン。彼の中途半端な思いが、彼女への執着とあいまって、物語を牽引する力となっている。だから、事故から何年も経った頃に、彼の視点から書かれた小説では、理性的になり過ぎていて魅力がなかったであろう。若者の未熟さ、まっすぐさを懐かしく思う。若い情熱に戸惑いを感じながらも羨ましさを感じる。読者の年齢によって感じ方がさまざまであろう。ページ数も少ないので、ぜひ読んでみて頂きたい。黙祷の時間 (Crest books) [ ジークフリート・レンツ ]楽天ブックス
August 23, 2018
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みなさん、こんばんは。高校野球も終わりました。金足農の吉田選手たちに注目が集まっていますね。こちらの本は第二次大戦の推移をドイツ側の視点で書いた本です。暗闇のなかでThe Dark Roomレイチェルシーファー(著者)高瀬素子(訳者) 本編は三章から成り、三人の登場人物を通して戦中、戦後、現在のドイツが描かれる。 第一章の主人公はヘルムート。1921年に先天的な障害を持って生まれた彼は、両親の配慮により、最初は障害を意識することはなかった。しかし学校で集団生活が始まり、戦争が始まると、「皆とは違う自分」を嫌でも意識させられる。第一次大戦後の莫大な賠償金に喘ぐ中生きてきた彼には、総統への不信感や忌避感はない。「戦争は不治の病人(身体障害者や精神障害者を指す)を抹殺する絶好の機会である」と総統が言ったことも知らず、兵隊となって戦場に行くことを夢見る。国を信じて揺るがないヘルムートが、これからドイツを襲う困難によって、どうなってゆくのか。 第二章はローレ。ヘルムートのエピソードが終わる1945年から始まる。このエピソードは映画「さよなら、アドルフ」になった。親衛隊員の父を持つローレの立場は、物語の最初と最後で大きく変わる。それまでは裕福な暮らしをしていたのに、突如母親が逮捕され、幼い弟妹を連れて、遠いハンブルグまで旅をする。ソ連兵が乗り込んできている中を旅行するなんて大人でも危険なのだから、経験値の少ないローレ達の旅は困難を極める。そしてローレは旅の途中でナチスドイツの所業を知る。ヘルムートとは異なり、作品中で心が大きく揺れ動くキャラクターだ。戦争までは天皇万歳、負けた途端に価値観の逆転が起こる日本人が、最も共感を寄せやすいのではないだろうか。 第三章はミヒャ。彼自身は差別意識も何も持っていないが、亡き父がナチス党員だった事を知り動揺する。ミヒャが戦後生まれながらもっとも罪の意識に苛まれるのは、作者の想いが最も投入されたキャラクターだからだ。 三人は一度もすれ違うことはない。時代が下るに従い、第二次大戦時のヒトラーやナチスの行為に対する彼等の意識が異なる。重要なモチーフとして登場するのが写真だ。ヘルムートはSSに連行されるロマの人達を写真に撮影するが、恐ろしさだけが先に立ち、写真をすべて廃棄する。無自覚だったローレは、強制収容所の写真を見たドイツ人が「ぜんぶでっち上げさ。写真は決まってピンぼけだろ?」「あれは芝居なんだよ。アメリカ人の俳優が演じてるのさ」と話すのを聞く。ミヒャは幸せそうなハネムーンの写真を見るにつけ、祖父が残酷な事をしたとは思えない。 写真は嘘をつかない。事実だけを掬い取る。誰かの優しい父、優しい息子が、国の命令とあれば、残虐な行為もやってのける。ドイツだけでなく、日本でもそうだった。過去をなかったことにしようとする人たちにとっては、写真は厄介な存在だ。しかし、過去を見つめ直して生きていこうとする人たちにとっては、写真は光となって手掛かりを照らす。【中古】 暗闇のなかで /レイチェルシーファー(著者),高瀬素子(訳者) 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店
August 22, 2018
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みなさん、こんばんは。高校野球も今日が決勝戦ですね。今日はフィリップ・K・ディックのSF作品を紹介します。高い城の男The Man in the High Castle フィリップ・K・ディックハヤカワ文庫SF アメリカ美術工芸品商会を経営するロバート・チルダンは、通商代表部の田上信輔に平身低頭して商品の説明をしていた。第二次大戦が枢軸国側の勝利に終わり、いまや日本とドイツの二大国家が世界を支配している。戦後真っ二つに分断されたのは、朝鮮半島ではなくアメリカだった。サンフランシスコは、日本の勢力下にある。一方、枢軸国が負けた設定の本『イナゴ身重く横たわる』が発禁処分を受けながら密かに話題になり…。 歴史改変のバリエーションは数々あれど、このジャンルではヒトラーが大人気だ。それほど現実の彼のインパクトは大きい。ところが本作では、生きてはいるものの台詞はない。戦争に勝って既にイデオロギーも浸透し、安定政権が望めるため、カリスマとしてあちこち出歩く必要がないのだ。首相はマルティン・ボルマン(リアルではナチスのナンバー2)で、作家フェルディナント・フォン・シーラッハの祖父バルドゥール・フォン・シーラッハがイケメン幹部として人気がある。 ディックの他作品でも扱われたモチーフ「本物と偽物」が登場する。田上はロバート・チルダンを介して得た装飾品に道(タオ)を感じ、不思議な体験をする。装飾品は模造品=偽物だったが、田上にとっての価値は本物以上の価値がある。ならば本物に価値はあるのか。 もう一つの「本物と偽物」はクライマックスに訪れる。『イナゴ身重く横たわる』の作者はタイトルロールの「高い城の男」だ。「世界を作り出す力を持ち」「難攻不落の高い城に住む」存在で、かつ名前がアベンゼン=ABEND(プログラムの異常終了)+SEN(=Son 息子)となれば、その象徴するものは見当がつく。その彼にして自分の意思ではない方法で未来を決めているが、人間はそうではなく、自分の意思で人生を切り開けるというメッセージが感じられる。 本作はもう一つの問いを投げかける。小説世界でも、お互いに勝者であるはずのドイツと日本は核開発競争に鎬を削り、結局敵対する羽目になる。一方現実でも東西冷戦で勝者同士のソ連とアメリカが宇宙開発と核開発で争う。もしかしたら、どちらが勝っても似たような問題が出て来たのかもしれないのではないか。「いいえ、今のこの状態で良かったんですよ」と言える人は、少なくとも現在、誰もいない。高い城の男【電子書籍】[ フィリップ・K・ディック ]楽天Kobo電子書籍ストア
August 21, 2018
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みなさん、こんばんは。戦争関連の番組もこの時期多く放送されましたね。第二次大戦時、ソ連を率いていたスターリンを知っていますか?彼の死後起こった政争をコメディタッチで描いた映画スターリンの葬送狂騒曲を見ました。スターリンの葬送狂騒曲THE DEATH OF STALIN出演スティーヴ・ブシェミ サイモン・ラッセル・ビール オルガ・キュリレンコ ジェイソン・アイザックス1953年のモスクワ。この国をおよそ20年もの間、独裁者スターリンと彼の秘密警察が牛耳っていた。中央委員会第一書記のフルシチョフ、秘密警察の警備隊長ベリヤ、スターリンの右腕マレンコフらが夕食に集う。翌朝近くまで続いた宴会を終え、スターリンは自室に引き上げる。自室でレコードをかけていたスターリンは発作を起こして倒れ込む。翌朝発見されたスターリンの元に側近たちが次々と集まってくる。間もなくスターリンは後継者を指名することなく亡くなる。次のトップを狙った側近たちの椅子取りゲームが始まる!スターリンの言葉に「ロシアの民衆には皇帝が必要なのだ。皇帝とは、ロシアの民衆がその前に頭を垂れて崇拝する対象である。ロシア人は皇帝のために生き、そして働く国民なのだ。」というのがあります。よって皇帝を倒し、レーニンが死んだとき、皇帝の座に座ったのがスターリンでした。圧制・投獄・収容所送りとマイナスイメージが外向けのイメージですが、彼の死に地方からあれだけ庶民が電車に乗ってやってくるというのは、スターリンを神と崇める人々も少なからずいたということです。 側近たちはもっと身近にいたので、もちろんスターリンが神でないことは知っています。シビアに、狡猾に動き回り、彼亡き後の自分の立ち位置を素早く見積もります。なぜなら、出遅れてしまったら、今度は自分がシベリア送りになるからです。 本作ではフルシチョフとベリヤの一騎打ちの様相を呈していますが、実際はもう少し複雑だったことでしょう。そして権力闘争はトップに立ったからと言って安心できません。倒れれば、すぐ後に次が控えているのはスターリンが証明済みです。 一夜にして状況が変わるのはこういった場合よくあることですが、悲劇も生みます。庶民の1エピソードで、スターリンが生きている時に息子が父親を連行して逮捕させますが、スターリン死後、釈放された父親が戻ってきます。母親は立ち上がって喜び、父親に抱き着きますが、父親は母親を抱き寄せながら、背中越しに息子をじっと見ています。密告しないと自分が助からないというせっぱつまった理由はもちろんあるでしょう。しかし、この後この家族が家族たりえていくのか。喜劇のような悲劇の一幕でした。ロシア政府は国内での上映を禁止したそうです。いやぁ、本気出してますね。スターリンの葬送狂騒曲【Blu-ray】楽天ブックス
August 20, 2018
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みなさん、こんばんは。行方不明の男の子が見つかってよかったですね。ボランティアの男性の爽やかさが話題になっています。今日紹介するのはデンマークのミステリシリーズです。特捜部Q-自撮りする女たちー (ハヤカワ・ミステリ)Selfiesユッシ・エーズラ・オールスン腕っ節と行動力には折り紙つきのカール&アサドだが、書類処理能力やら整理能力に関してはからっきし。そんな彼等を叱咤激励しバックアップも怠りない頼もしきロ―サの様子が最近何だか変だ。あがっては消える特捜部解散の噂も真実味を帯びた頃、元殺人捜査課課長から「最近発生した老女撲殺事件が、未解決の女性教師殺人事件に酷似している」との情報が入る。折しも失業中の若い女性を狙った連続轢き逃げ事件で別部署は大わらわ。 暗い過去を引きずっていたのはカールだけではなかった!ああ、なんてややこしいチームなんだ!とはいっても、アサドはどう考えても口を割りそうにない。一番脆いロ―サが最初に壊れたか。 今回カールは頑張っている。事件担当だけでも手に余るのに、ロ―サの心の闇を説き明かし彼女を救おうと奔走する姿は、主役として薄い存在感しかなかった前作『知り過ぎたマルコ』とは大違い。見直す読者もいるのでは。 本作の特徴として、冒頭に事件と関係のある人物の過去が描かれ、物語の進行に伴って全ての糸がほぐれてゆく展開が挙げられる。今回も同様だが、正直邦題の「自撮り」は実はそれほどキ―タームではない。「自撮り」は自分にしか関心のない人間の象徴だ。高福祉・高負担と言われている北欧では、他人の事も自分を思うように福祉の精神が行き渡っているかと思ったらとんでもない。なまじ手厚い救済措置があるものだから、かえって勤労意欲を削いでしまうという逆効果をも生む。今回は本来ならとても犯罪者になりそうにない人が、溜まりに溜まったストレスや社会への不満から、容易く一線を越えてしまう。考えてみたらこれは随分と恐ろしい事だ。フィクションの世界だけの話にして欲しい。【楽天ブックスならいつでも送料無料】特捜部Q-自撮りする女たちー (ハヤカワ・ミステリ) [ ユッシ・エーズラ・オールスン ]楽天ブックス
August 19, 2018
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みなさん、こんばんは。大雪山に初雪が降ったそうです。秋を通り越して一気に冬になりそうですね。ところで、ひと夏の体験の思い出はありますか?本日紹介するのはある少女のひと夏の物語です。夏をゆく人々LE MERAVIGLIE/THE WONDERS第67回カンヌ国際映画祭グランプリ出演モニカ・ベルッチ 気難しい父ヴォルフガングを中心に養蜂を営み、頼りになる長女のジェルソミーナが技術を継承していた。村ではテレビ番組の撮影が行われることになり、ジェルソミーナはひそかに気になっていた。そんなある日、ドイツ人の少年が「少年更生プラン」の一環で一家に預けられることになり……。 全てをわかりやすく説明してくれる映画ではない。例えば一家と共に暮らしている居候の女性ココがいるが、彼女が家族とどういう関係にあるのかを説明する台詞はない。仕事に行っている風もないのに、なぜ彼女は汲々とした生活を送る大家族と一緒に住んでいるのか。父親の命令一下で動くこの家庭の中で、唯一ヴォルフガングに物申せる存在であるから彼の縁者かと思うが、そうした台詞もない。 ドイツ人の少年を一家に受け入れた経緯も、ヴォルフガングは語らない。但し、いくばくかの謝礼が貰えることと、家内工業でやっているので働き手が欲しいからか、など推測はできる。彼はなりゆきで出演したテレビ番組で「世界は変わりつつある」と言う。彼自身は変化に必死で抵抗しようとするが、その抵抗はラクダに象徴されるように滑稽だ。昔ながらの養蜂業は行き詰まり、土地を離れなければならなくなった時、恐らく新天地で彼の今までのやり方は全く当てにならなくなる。 家族だけで養蜂業を営むには、強烈なリーダーシップを発揮する父親がいてくれた方が作業がスムーズにいく。そう思って割り切ってきたはずだったが、妻アンジェリカには徐々にストレスがかかってくる。家族に何も言わずにドイツ人少年を引き取った事に始まり、規格をクリアするために工場設備に金が必要なのに何ら金策が考え付かない事もストレスでしかなく、夫は「留守だとホッとする」存在になっていく。一度別れると口に出しているので、夫婦関係は危うい。 ヒロインのジェルソミーナは『道』の有名なヒロインと同名だ。父親の名前があからさまにドイツ系なのにイタリア系の名前なのは、土地に縛り付けられることのない人生を生きて欲しいという母親の願望か。責任者として頼られていたのに、少年が来た途端に「やっぱり男は頼りになる」と腕力だけで切り捨てられる。存在を脅かすライバルかと思いきや、綺麗な口笛を吹く少年が気になり始める。テレビ番組で言葉につまった父を救おうとしていつもの特技を披露する。台詞がなくても折々の彼女の心がわかる。一切心情吐露がない難しい役だったが本作が映画初出演の彼女は見事に演じきった。テレビ番組の司会者を演じるモニカ・ベルッチ以外ほぼ素人で撮影。但しミツバチは本物。夏をゆく人々【動画配信】楽天SHOWTIME
August 18, 2018
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みなさん、こんばんは。5日連続で台風が来てますね。今年の夏は異常気象です。さて、今日は記憶障害を持つ少女のラブストーリーを紹介します。フローラ (SUPER!YA)エミリー・バーOne Memory of Flora Banks小学館 記憶障害の少女フローラは、数時間前のことを何も覚えていられない。自分が誰なのか、どうしてここにいるのか、何をしているのか。「私はフローラ」「私は、17歳」フローラの手には、忘れてはいけないことが書いてあり、出かける前に母親は事細かに彼女についての説明文を残した。でもフローラが、たったひとつ覚えていたのは、あこがれの彼と海辺でキスをしたことだった。 映画『メメント』『50回目のファースト・キス』の主人公同様、フローラは前向性健忘である。後者の映画ではそれでも最初のうち、ヒロインの恋愛相手は「毎日新鮮な恋愛が味わえる」などと前向きな見方をしていたが「彼女の人生が失われてしまう」と危惧して記憶を補完しようとする。 そして今回の起爆剤は、原題One Memory of Flora Banks=キスの記憶。どんな治療薬よりもセラピーよりも、たった一度のキスの記憶がヒロインを冒険に踏み出させる。恐るべし、少女の恋ごころ。 保護されるべき存在として常に見守られてきたフローラが、行動力溢れる女性に短期間で変貌していく姿はスピード感があって良いのだが、当時ドレイクは、フローラの親友ペイジの彼氏だった。もし本当なら、彼女の親友に手を出す悪い男だ。本当にこんなのが相手役でいいのか。 相手役に疑問符がついたところで、胸熱だったのは、ヒロインの親友ペイジのフローラ愛だった。病気だから仕方がないとはいえ、フローラは覚えておくために何度もページの前で「私は、ドレイクとキスをしたI kissed Drake」と呟く。彼と親友の裏切りを張本人から聞かされているわけで、普通なら耐えられない。絶交宣言してフェイドアウトするかと思ったが、ある人物と協力してフローラの再生のために手を尽くす。幼馴染として長く築いた友情が、どこかの時点で打ち克ったわけで、ペイジサイドから見た今回の顛末も見てみたいと思わせるほど存在感があるキャラクターだった。フローラ (SUPER! YA) [ エミリー・バー ]楽天ブックス
August 17, 2018
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みなさん、こんばんは。平成最後の終戦の日も終わりましたね。暑かったです。さて、こちらは幼馴染の女の子の相談相手を母親に命じられた少年が、次第に変わってゆく映画です。ぼくとアールと彼女のさよならMe and Earl and the Dying Girl 男子高校生のグレッグは友達と呼べる相手もおらず、なぜか気が合うアールと共に名作のパロディー映画を作る冴えない日々を送っていた。そんなある日、幼馴染みだが疎遠になっていた女の子のレイチェルが白血病になり、グレッグの母親は彼にレイチェルの話し相手になるよう強制する。最初は無理やり付き合っていたグレッグとレイチェルだったが、次第に打ち解けていく。しかし、レイチェルの病状は次第に悪化していき、グレッグは彼女を励ますためにアールとオリジナルの映画を作ろうとするが……。 学校にはいろんなグループがいて、グレッグはそのいずれのグループともうまく距離を保つことで学校生活を目立たずやり過ごそうと思っていた。バカっぽいパロディ映画を撮影しても、それを誰にも見せず二人だけで楽しんでいる。見せようものならオタクというレッテルを貼られてしまうからだ。それが、大人からはよく見えていなくても、結構過酷な学校カーストを生き残るコツなのだろう。ところが母親から言われて白血病のレイチェルを訪問したことで、学友からは「最近よく彼女といるわね。彼女が病気だからつきあってるわけ?」と言われ、映画のこともばれてしまい、なぜかレイチェルのために映画を作ることになってしまう。 「恋愛映画なら僕がこうしてレイチェルが…するはずだが、やっぱりやらない。」というナレーションが度々入る。映画オタクなので、恋愛映画のパターンを知り尽くしているから、逆にやろうと思えばいくらでもロマンチックにできるのに、難病の少女と支える少年の恋愛という定番を次々と外していき、彼らなりの奇妙な友情物語になっている。 危ない薬入りのベトナム料理フォーを飲んだり、体に入れ墨ぎっしりの危ない教師が、グレッグに「死んでからでもその人を知ることができる」とアドバイスするシーンがよかった。外見と中身が逆で誤解されがちだけど、実は生徒のことをよく見ていて経験から学んだアドバイスができる大人っていい。 レイチェルの部屋に貼ってあるウルヴァリンのポスターが突如喋りだす(グレッグの妄想)シーンがあるが、ヒュー・ジャックマンが声だけの特別出演。原作本では語りだすのはダニエル・クレイグ。ぼくとアールと彼女のさよなら<特別編> [ トーマス・マン ]楽天ブックス
August 16, 2018
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みなさん、こんばんは。お盆ですね。戦争にちなんだ小説を紹介します。奥のほそ道リチャード・フラナガンThe Narrow Road to the Deep North白水社読んでいるとタイトルに目を惹かれるが、作者名を見て「ああ、芭蕉の本とは違うんだ」という目をして去っていくパターンが多かった。確かに、ほそ道はほそ道でもとんだ場所に続くほそ道であった。その道の名は、別名死の鉄路という。 捕虜収容所を舞台に、日本軍の捕虜となったイギリス軍兵士らと、彼らを強制的に動員しようとする日本人大佐との対立と交流を描いた映画『戦場でかける橋』はつとに有名だ。本書は映画のベースとなった泰緬鉄道建設をもとに書かれた。捕虜だった著者の父に仮託して書かれた主人公はタスマニア出身オーストラリア軍軍医のドリゴ。彼視点で物語が進めば物語は被害者寄りで進むはずだが、複数視点で書くことで日本軍への一方的な糾弾にはならない。 ブッカー賞作品は話がおそろしく曲がりくねり、一つのテーマに絞り切れない傾向が強い。本作もその例に漏れない。対比表現、形容語句を重ねる特徴ある文章は本作特有かもしれない。 今回着目したのは天皇という存在だ。戦争責任が一個人・一団体に帰されないのであれば一体誰に責任があるのか。敢えて責任を問われない存在が浮かぶ。 異国のドリゴが見た天皇は「日本人の不屈の精神、西洋が持ち合わせない精神、帝国が天皇陛下の御心と呼び、そう理解している精神。その精神をもって最後には勝利すると帝国は信じている。」とあるように日本人の拠り所というスタンスを踏襲している。 戦時中の日本軍兵士ナカムラは「少佐殿は、進歩はほかの理由から生じると言っておられる。ドクター、あなたはそれを非自由と呼ぶ。われわれはそれを、精神、国家、天皇と呼ぶ。ドクター、あなたはそれを残酷な行為と呼ぶ。われわれはそれを運命と呼ぶ。われわれが勝っても負けても、それは未来なのだ。」と語り、戦後においても「一言であらわされる詩、恐らくは最も偉大なる詩だと思っていた。宇宙を包含し、あらゆる道義とあらゆる苦難を超越する詩。そしてあらゆる偉大なる芸術同様、それは善悪を超えていた。だがどうしたものか―彼は考えないようにはしていたが―この詩は、恐怖、怪物、死体になった。そして哀れみを封じ、実を言えば愉快にも思う残酷さと戯れるという尽きせぬ能力を自分自身のなかに発見したことを、彼は自覚していた。 人間の命など一つとしてこの普遍的な善には値しないから」と、天皇を至高の存在に据えている。 だが、同じ日本軍でも韓国籍では批判的な見方が混ざる。戦犯として処刑される韓国人兵士チェ・サンミンは、日本人なら到底しないタブーを考える。「自分たちと自分たちのあらゆる行為が天皇の意向をそのままに表したものなら、なぜ天皇はいまも自由の身なのか。なぜアメリカ人は天皇を支持し、天皇の道具に過ぎなかった自分たちを縛り首にするのか。」 天皇に戦争責任があったのか―すなわちどこまで関与していたのか―という問題は、恐らくこの先日本では深く追求されることはない。外国の目を通してしか、我々は天皇を視る事ができない。今さら歴史をほじくり返して戦争責任を追及するつもりはないが、先に戦争に果たした役割を総括しないままでは、国民一人一人が歴史を判断することもできないのではないか。「戦争はいけない」というなら「その戦争はなぜ起こったか」を併せて知るべきだ。奥のほそ道 [ リチャード・フラナガン ]楽天ブックス
August 15, 2018
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みなさん、こんばんは。日本ではお盆に家族が揃いますよね。でもこの映画ではとんでもない事件が起きて家族が揃います。映画8月の家族たちを見ました。8月の家族たちAUGUST: OSAGE COUNTY出演メリル・ストリープ ジュリア・ロバーツ ユアン・マクレガー クリス・クーパーアビゲイル・プレスリン ジュリエット・ルイス ベネディクト・カンバーバッチ サム・シェパード ダーモット・マルローニー監督ジョン・ウェルズ オクラホマの片田舎に住む母親バイオレットと、父親がこつぜんと姿を消したことで集まった3姉妹。一癖ある母バイオレットは病を患い、長女のバーバラは夫の浮気と娘の反抗期に悩んでいた。一方、次女アイヴィーはひそかな恋に胸を躍らせており、三女カレンは家族の危機に婚約者を伴い帰宅した。 まあせいぜい、久しぶりに会った家族がお互いの腹の中をぶちまけあって和解する話だろうくらいに考えていたが、テネシー・ウィリアムスばりの暑い中西部以上に熱い家族のドロドロした話だった。今までで一番怖いメリルストリープ。魔女も演じた事もある彼女だが、今回が最も怖い。腹の底から響いてくるようなぞっとする声で「誰も私をごまかせない I told you nobody slips anything by me.」と言う。この台詞は何度も出てくる彼女の決め台詞だが、続く言葉が家族をぐさぐさ傷つけていく。 彼女の鋭いナイフが最も向けられるのは長女バーバラ。一番最初の子供だから両親の期待を一身に背負ったであろう事がうかがえるし、彼女は十分それに応えうる器量だ。それなのに、夫には背かれ反抗期の娘ともうまくいかない。それは彼女があまりにも「正しくあれ」「何事も白黒をはっきり」と言われて育てられ続けた所以だろう。息苦しくなり、真っ先に母親から逃げる術を見つけて出ていったが、優等生気質は抜けないままだ。他人を責める舌鋒は常に鋭く、周囲は「もっともでございます」とひれ伏すしかない。ただ誰も、心から彼女には同意していない。末娘のカレンが「世の中はどっちつかずであいまいなの みんなその中で生きてるのIt's not cut and dried, it lives where everything lives: somewhere in the middle.姉さん以外は」と捨て台詞のような言葉を残して去るが、一生バーバラは曖昧を許せない。それでいて、「彼女なら何とかしてくれる」「彼女なら大丈夫」とあれこれ相談事や秘密を打ち明けられるのもバーバラのような人。母と父、母と叔母、父と叔母、妹と従兄弟の秘密を一人で抱え込まされる彼女は本当に難儀なポジションだ。それはまた「意地悪な母が大嫌いだった」と告白する母ヴァイオレットが歩んできた道でもある。 あまりの事に家を飛び出したバーバラは一旦車を止め、それでも一人で故郷を去る。それでもやはり母親の臨終には帰ってきて正しい事を為すような気がする。それが長女の務めで、誰もが期待している彼女の姿だから。 8月の家族たち【Blu-ray】 [ メリル・ストリープ ]楽天ブックス
August 14, 2018
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みなさん、こんばんは。お盆ですね。海外に行かれた方もいらっしゃるのでしょうか。NHKのドラマを二つ見ました。NHKスーパープレミアム「悪魔が来りて笛を吹く」を見ました。銀座での殺人事件の容疑者にされた旧華族の椿英輔が自殺。その無実を信じる娘の美禰子からの依頼を受けた金田一耕助は、椿邸の住人が行う奇妙な占いに立ち会う。そのとき、夜の洋館に、死んだはずの英輔が奏でるフルートの音色が響く!そしてその夜、屋敷で殺人事件が起こる。横溝正史のゴシック・ホラーを映像化。金田一が連続殺人事件の謎に挑む!【原作】横溝正史【出演】吉岡秀隆 志田未来,中村蒼,筒井真理子,村上淳,篠原ゆき子,中島広稀,中村育二,池田成志,火野正平,益岡徹,市川知宏,山西惇,倉科カナ,倍賞美津子,黒沢あすか,見里瑞穂,小林涼子,山村紅葉,橋本マナミ,白井哲也,山西規喜,宮川サキ,岡崎美知子,小市慢太郎【脚本】喜安浩平印象的だったのは東太郎と美禰子との関係が分かった時一彦が「父が申し訳ないことを」みたいな内容を東太郎に言ったシーン。こんな時でも生まれつきの育ちの良さが出てしまう一彦と同じ立場ながら第三者への謝罪が言えないで怒りと困惑ばかりの東太郎の対比が際立っていた。自分にこれほどの苦しみを与えた相手こそ悪魔だと思っていたのに当の悪魔が思いがけない人物であったことを知らされた時の悲しさよ。自らの膿で滅びゆく特権階級と傷を抱えて生きる逞しき庶民&新世代の対比。この二人のシーン和む。そして次はいよいよ 八つ墓村 なんですね?椿子爵の最後の作曲を聞いて中指を使わない曲であることを知った金田一が彼の残したヒントに全てが終わってから気づくラスト「皆救えたのに」絶対事実を認めようとしなかった東太郎が実母の「いい男ね。する?」の一言で全てを悟り狂乱する。悪魔が来りて笛を吹く [ 吉岡秀隆 ]楽天で購入NHKスペシャルドラマ「花へんろ 特別編 春子の人形」を見ました。【作】早坂暁【脚本】冨川元文【出演】坂東龍汰 芦田愛菜 中西美帆 尾美としのり 田中裕子【制作統括】千葉聡史(NHK) 伴野智(東北新社)【プロデューサー】加藤邦英(プロジェクト暁)【演出】平山武之昭和初期の四国、松山。お遍路道に沿った商家の軒下に、人形と一緒に赤ん坊が置き去りにされていた。生活苦のお遍路さんらしい・・。この女の子は春子と名づけられ、少年・良介の3歳違いの妹として仲むつまじく育てられた。やがて戦争が始まり、16歳の良介は、海軍兵学校に合格して瀬戸内の海を渡った。思案した母親・静子は初めて春子に事実を告げた。「本当の兄妹ではない」と。兄にほのかな恋心を抱いていた春子は無邪気に喜び、それを兄に伝えるために広島へ向かった。その翌日・・・原子爆弾が、上空でさく裂する。終戦後、故郷に戻った良介は、信じるものもなく、妹を亡くした喪失感にさいなまれる。やがて苦悩する良介は、ある決心をする。13歳で亡くなった妹のことを、早坂はずっと書くことができなかった。しかし、数年前から“これだけは未来のために書き残したい”と脚本に向き合い始めた。病と闘いながら執筆を続けたが、途中から冨川元文にバトンタッチ、冨川が原稿を書き終えた2日後、この世を去った。人間の本質と社会を鋭い洞察力で描きつづけた早坂暁のいわば「人生の原点」を鮮やかに示す、遺作ともいうべきドラマ。 ゆったりした話のテンポと寂しげな音楽が 花へんろ を思わせる。電気が来ない電車の中で夏の暑さにじりじりと焼かれていた学生達が窓を開けたら真っ暗な中に無数の鬼火(原爆で焼かれた人たちの魂)が浮かんでいたシーンがぞっとした。花へんろ特別編 春子の人形 DVDNHKスクエア キャラクター館
August 13, 2018
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みなさん、こんばんは!幽霊の季節がやってきましたよ。こちらはオスカー・ワイルド原作です。レジェンド・オブ・ゴースト ~カンタヴィル城と秘密の部屋~LE FANTOME DE CANTERVILLE出演ミシェル・ラロック原作オスカー・ワイルド 18世紀に建てられたカンタヴィル城。かつて女主人エリナー・ド・カンタヴィルが謎の死を遂げたその城は、今も彼女と執事のゴーストがさまよっていると噂されていた。ある日、カンタヴィル家の子孫エルワンは、先祖の死の謎を解き明かそうと城を訪れる。すると城にはちょうど新しい住人一家が到着し、彼らを追い出そうとするゴーストたちの嫌がらせを受けているところだった。しかし、その一家はまったく動じず、逆に城からゴーストを追い出そうと決意。エルワンも彼らに協力し、一家の長女ヴァージニアとともに、ゴーストを成仏させる戦いに挑むことになった! やがて、大広間の暖炉に彫られた文章から、隠されたスイッチを見つけた2人は、暗闇に包まれた秘密の通路へと進んでいくのだが…。 オスカー・ワイルドの小説「カンタヴィル城の幽霊」。舞台をフランスへと移し、ストーリーも大胆アレンジ。血文字やポルターガイストなど、ゴーストものの定番で人間を驚かそうとするのだけれど、映画やら何やらで慣れてしまっているアメリカ人(現実主義ということでしょうか、原作でもアメリカ人という設定)の反応はこう。「静かにしろ 今大事な話をしてる」「血文字もやめて 幼稚すぎる ついでに言うと口臭が臭い」「子供が寝てるのよ」「何てダサいの」「ブスファッションが好みなのさ」全然応えないでゴーストがめげてしまう前半と、ゴーストの事情を知って何とか成仏させようとする後半の切り替えが分かりやすい。これはDVDの表紙だが、メイクから笑わせに来てる気が。 オリジナルでは幼い少女とゴーストが心を通わせるが本編ではティーンの男女で、ゴーストは自分も恋愛をこじらせているにも関わらず現代の男女の悩みにも乗るという結構いいひと。誇り高いエリナーと、彼女に付き従い何かというと「革命派が攻めてくる!」と首を落っことしてしまう召使のグィレルムのやり取りはコメディタッチ。レジェンド・オブ・ゴースト 〜カンタヴィル城と秘密の部屋〜 [ オドレイ・フルーロ ]楽天ブックス
August 12, 2018
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みなさん、こんばんは。翁長知事が亡くなりましたね。真面目な人でした。映画生きうつしのプリマを見ました。生きうつしのプリマDIE ABHANDENE WELT/THE MISPLACED WORLD出演バーバラ・スコヴァ監督&脚本マルガレーテ・フォン・トロッタ ドイツの小さなクラブをクビになった歌手のゾフィは、父親にインターネットのニュースを見せられて驚く。そこには死んだ母エヴェリンとうり二つの女性がいたのだ。彼女は、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で歌うプリマドンナのカタリーナ。ゾフィは、父からカタリーナのことを調べてほしいと頼まれてニューヨークへ旅立つ。ウェブ上で発見した亡き妻に生きうつしのプリマドンナ。彼女の正体を探れ。まなじり決して迫る父の命を受け、娘ゾフィはドイツからニューヨークへと飛ぶ――。 『ローザ・ルクセンブルグ』『ハンナ・アーレント』のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督と女優バルバラ・スコヴァが再びタッグを組み、バルバラが母とオペラ歌手の二役で熱演。一人の女の生きざまをテーマにしてきた監督がまたもやあぶり出したのは、やはり一人の女の生涯。但しローザやハンナのように歴史に名を残した有名人ではなく、平凡な妻であり母であった女性の生涯である。ところが一見平凡に見えた彼女には誰も知らない過去があった。彼女の過去を探るのはインターネットで彼女を見て動揺した父に煽られた売れない歌手。自分とは違って売れっ子で裕福な女性に会いに行ってどう話を始めるものやら?大体一般人がスター歌手の楽屋にほいほいと入れるもの?などツッコミどころはある。一番のツッコミどころは「彼女(カタリーナ)にドイツに来てもらえ」と自ら事態を動かしながら、予想外の事実が明らかになったら当事者と取っ組み合いの喧嘩をするゾフィーの父親だ。故人についての厭な事を知りたくないのならば、そもそも藪をつつかなければよかったのに。ミステリと見せかけたコメディ? ほぼ40年前、新たな家族を知った監督の実体験が本作のヒントになったという。生きうつしのプリマ [ カッチャ・リーマン ]楽天ブックス
August 11, 2018
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みなさん、こんばんは。台風はさほど大雨を降らさずに去りました。みなさんのところではいかがでしたか?映画オデッセイを見ました。オデッセイTHE MARTIAN監督リドリー・スコット出演マット・デイモン ジェシカ・チャステイン ジェフ・ダニエルズ マイケル・ペーニャショーン・ビーン キウェテル・イジョフォーゴールデン・グローブ賞コメディ/ミュージカル部門作品賞&男優賞 火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を企て、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。 宇宙に訪れる危機を描いたものでは実録ものの「アポロ13」あれだって宇宙から地球へどうやって帰って来られるのか?とハラハラしたものだったが、今度は火星だ。ましてや「アポロ13」では乗組員がいたが、今度は火星にひとりぼっち。孤独感やら絶望感やら負の感情がどっと押し寄せてくる。そして火星と地球の距離は絶望的なので単独でロケット噴射して帰れる距離ではない。また、いつ来るかわからない帰還の日まで生き残らなければならない。 こんな作品が何でGG賞のコメディ部門で作品賞になったのかと思ったが、内容を見ると結構コミカルな場面を入れてきているし、何より主人公がポジティブだ。TLでも話題になったジャガイモ栽培シーンをはじめ80Sのディスコミュージックをバックに火星の砂漠を探検するワトニーが何だか楽しげだ。 最近話題になっている成績による女性差別もない。フィクションだからと言うかもしれないが宇宙船の船長は女性だ。「女性は感情的で判断ができない」などと言われてリーダー職から外されていた時代もあったが、少なくとも未来において女性は瞬時に的確な判断を下す。帰還をもたらしたのはワトニーの自律心はもちろんだが、NASA長官、火星探査責任者、火星帰還計画を打ち出す無名の大学生、自国の宇宙計画を諦めて協力してくれる中国などとのコラボレーションの勝利である。オデッセイ [ マット・デイモン ]楽天ブックス
August 10, 2018
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みなさん、もうすぐお盆ですね。亡くなった人のことを一年に一度、しみじみと考える季節になりました。こちらの映画もそうですね。岸辺の旅Journey to the Shore出演浅野 忠信 深津 絵里 奥貫 薫 蒼井 優 小松 政夫 柄本 明監督&脚本黒沢 清3年間行方不明となっていた夫の優介がある日ふいに帰ってきて、妻の瑞希を旅に誘う。それは優介が失踪してから帰宅するまでに関わってきた人々を訪ねる旅で、空白の3年間をたどるように旅を続けるうちに、瑞希は彼への深い愛を再確認していく。やがて優介が突然姿を現した理由、そして彼が瑞希に伝えたかったことが明らかになり……。 黒沢清監督が、湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。 死んだ伴侶が戻ってくるという筋立ては海外でもよく目にする。まあ、大概コメディだ。「伴侶だけに見えて他人には見えない」から様々な騒動が起こるパターンが最も多い。 ところがこの映画の幽霊は規則性がない。瑞希の前に現れる優介の第一声が「俺、死んだよ。体は今頃海のカニに食われてる」のだから、彼が死者であるのは間違いない。だから思い入れの強い瑞希にだけ見えるものなのかな?と思っていたら、二人が旅するシーンで出会う現世の人(駅員)と普通に言葉を交わしていたりする。映画の中では生者と死者が混在していて、夫婦が最後に訪れる村では死んだ子供に弁当を届けにいく人妻がいたり、村人が優介の講義を聞いていたり、どこからが彼岸なのかわからない。ただ、ふとしたきっかけで、死者がこの世から去ることもある。まるで死者が現世を去る時のように。その有様を見せてくれたのが、夫妻が最初に訪れた老人の新聞配達員だ。死んだ自覚のない彼は夫婦だけに姿が見える、通常の幽霊パターンだ。しかし彼が二度目の死を迎えた途端、寝室も台所も廃墟と化す。老人の意識が部屋を見る生者の意識さえも支配していたとわかりぞっとした。 「岸辺の旅」というその岸とは彼岸である。優介は死んだことを自覚しており、この世にやり残したことへの執着もなさそうだ。浅野さんが演じているからそう感じるのかもしれない。いつでも行けるのに行かなかったのは瑞希の存在があったからで、この旅は彼女のためだ。その点を見ればメロドラマと受け取る人もいそうだが、やはりこの映画はただ分かりやすく怖がらせないだけで、ホラーではないか。岸辺の旅 [ 深津絵里 ]楽天ブックス
August 9, 2018
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みなさん、こんばんは。高校野球は開幕戦から好カードでしたね。タイブレーク方式も今年から採用されました。台風が心配ですね。映画海と大陸を見ました。海と大陸Terrafermaヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞20歳のフィリッポは、シチリア島よりさらに南の小さなリノーサ島で生まれ育った。父が2年前に他界したため、彼は70歳になる祖父と一緒に漁師として海に出ていた。先細りの漁業から早々に観光業にくら替えした叔父のニーノは船を廃船にするよう勧める。 映画の中で、海は様々なイメージで語られる。映画の中では富裕層に属する観光客としてやってきた人たちは、海はレジャーだ。船に乗って島巡りをし、青い海に飛び込んで思いっきり泳ぎを満喫する。 同じショットが更に海底に進む。すると船なのか、人なのかわからない物体にイソギンチャクが付着している姿が映る。漁師たちが不漁を嘆く台詞「魚よりも網にかかるのは、最近は死人か生きた人間ばかり」にもあるように、地図にも載っていない島は難民には狙い目なのだ。美しいものと恐ろしいもの(海に溺れた人の死体)が同じ場所にあるという、大変おぞましいショットだった。不法難民にとって、海は自由への扉であり、同時に危険が伴う障壁でもある。泳ぎ疲れても陸地に着かなければ休めず、船を見つけて乗り込もうとすると、法に触れることから入船を拒まれる。 主人公フィリッポの祖父にとっては、海は人生そのもの。廃船にするよりはと観光に目を向けるが書類の不備を警察に咎められ、これからの人生を閉ざされてしまう。 母親は、もはや海を主体とした生活は考えにない。むしろ海は邪魔ものだ。本土で暮らし、フィリッポにも父や祖父とは違う人生を歩ませたいと思っている。 フィリッポは主人公なので、周囲の思惑によって揺れ動くキャラだ。ベテラン漁師である祖父への尊敬の念があるので、海は自分のテリトリー。ところが、不法移民が灯りを目指して船にやって来ると、自分の生活を脅かす存在になる。主人公をきれいなままにしておかなかったのは、監督の誠意だろう。 フィリッポにとって最終的に海はどんな存在になるのか。それは最後の旅行の結果が教えてくれるはずだ。海と大陸 [ フィリッポ・プチッロ ]楽天ブックス
August 8, 2018
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みなさん、こんばんは。夏の全国高校野球が始まりましたね。こちらも高校野球絡みの映画です。映画アゲイン 28年目の甲子園を見ました。アゲイン 28年目の甲子園監督&脚本大森 寿美男出演中井貴一 波瑠 柳葉敏郎 和久井映見 門脇 麦 太賀 工藤 阿須加 西岡 徳馬安田 顕 阿南 健治原作重松清ある日、晴彦のもとを、高校時代共に甲子園出場を夢見た野球部仲間の娘・美枝が訪ねてくる。彼女は東日本大震災で亡くなった父親の遺品の中から、束になって投函されずに残っていた年賀状を見つけ、晴彦のところへやって来たのだ。その後晴彦は、美枝がボランティアとして参加する「マスターズ甲子園」に誘われ、昔の苦い思い出が頭をよぎるも……。 重松清原作の小説を映画化。「マスターズ甲子園」は高校野球部のOB/OGが、世代や性別関係なく、甲子園出場経験の有無や元プロ・アマチュアなども問わず出身校別にチームを結成して憧れの「甲子園球場」を再び目指すための実在する大会だとか。 甲子園は今も昔も球児たちの憧れの舞台。県ごとにある高校のトーナメント戦だから、全国大会に出場するのだって大変なのに、その一歩手前で断ち切られた無念さというのは、球児たちならよくわかるのでは。 最初は乗り気でなかった28年前の仲間達を一人一人訪ねながらメンバーを集めていく所は困難な出来事に挑んでいく時の定番パターン。仲間との関わりを描くことで、彼等と晴彦のキャラクターを両方描くことができ、かつドラマを生む。重松さんの作品ではよく親子間のぶつかり合いが出てくる今回も晴彦と娘、美枝と震災で亡くなった父など、絆が途切れたままの親子が登場。美枝は別れ際の父の「ちゃんと負けなきゃいけない」という別れの言葉がわからなかったが、晴彦を介して意味を理解し、晴彦もまた、二度と言葉を交わせない美枝親子の在り方を見て、疎遠な娘との仲を修復しようとする。 中井貴一さん演じる晴彦の若き日は工藤 阿須加くん。イケメンすぎる!「マスターズ甲子園」の決まりごとについては映画で説明してくれる。アゲイン 28年目の甲子園 (集英社文庫) [ 大森寿美男 ]楽天ブックス
August 7, 2018
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みなさん、こんばんは。二晩続いた花火大会も終わりました。夏ですねぇ。今日も森雅裕さんの作品紹介をします。この作品もお気に入りで購入しました。さよならは2Bの鉛筆森雅裕中央公論社朋恵が車を貸した照美が事故で死んだ。でも本当に事故なのか?「彼女はモデラート」暁穂の友人の恋人、台場が暴走族と警察の小競り合いで死んだ。事故と思われたが台場がつぶやいていた事故に関係がある殺人か?「郵便カブへ伝言」卒業式を迎えた暁穂がクラスメイトの祖父の死に遭遇する表題作の3作品収録。「レディとは働かない女を言うんだ。現在の君には資格がある。」「女らしいってのがどういうことか、わかってるのか?」「それがわからない女に生きる資格はないわ」「そんな話し方する探偵も、高校生も、おらん!!」と言いたくなるような言葉使い(もっと言ってしまうと…キザ)が頻繁に出てくるので、背中がぞぞっとする人もいるかも。私も、ファンでなければ、「うわ、キザ〜。」と鳥肌立つかも(笑)。 日活をこよなく愛し、酒もそこそこ飲めて、バイクも乗り回せる、ルックスも抜群のハマの女子大生・暁穂がヒロイン。孤高を愛する作家の父親も、世界を飛び回っているヴァイオリニストの母親も、ハードボイルドの世界にどっぷり浸かっている。表紙が写真だが、買ってしまった。何故だろう?この頃から出る本毎に出版社がまちまちになり始めたから?それもあるけど、まるっきりフィクションの格好良過ぎるキャラクター達に憧れを感じつつも、愛情が深ければ深いほどぶつかりあい、言いたい事の反対を言って自己嫌悪に陥る彼等の不器用さにも、惹かれたんだろう(オレンジエード沸騰させちゃったりとか…違う違う)。 装丁こそ魔夜峰央さんではなかったが、「彼女はモデラート」で暁穂と朋恵が死んだ友人の部屋を尋ねると、「本棚には魔夜峰中や赤川次郎が並んでい」たり、「さよならは2Bの鉛筆」では、暁穂が訪ねた図書館の受付にいた女性が「『パタリロ!』から顔を上げて」いたりと、しっかり存在をアピール。「郵便カブへ伝言」のバイクを駆る美大生・台場、その恋人の音大生・奈都美、二人を見守る友人・暁穂という微妙なトライアングルは『歩くと星がこわれる』で、名前を変えて再度登場。だからこの部分だけは実話だったのかな?【中古】 さよならは2Bの鉛筆 中公文庫/森雅裕【著】 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店
August 6, 2018
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みなさん、こんばんは。次の台風13号が来週来るようですね。昨日は地元の花火大会でした。みなさんの所ではどうですか?さて、今日も森雅裕さんの作品を紹介します。平成兜割り森雅裕新潮社休みともなれば若者が集う横浜元町で、流行らない刀屋を営む六鹿義巳。業界のメジャー路線とはいえない店には、なぜか厄介事を持ち込む客がやって来て…。日本刀初めて小説に登場させた、書き下ろし連作短篇ミステリー。音楽ミステリーをメインに活躍してきた著者は、この後『会津斬鉄風』『流星刀の女たち』『鉄の花を挿す者』と、ばんばん刀剣ものを書くようになる。『虎徹という名の剣』『はてなの兼定』『彼女と妖刀』『現代刀工物語』『平成兜割り』5編のうち、3編は真贋を問うミステリー。『はてなの兼定』『彼女と妖刀』のみ共通の人物、剣に詳しい女子高生・畑小路晶子が登場。『さよならは2Bの鉛筆』に登場する仙道朋恵とイメージがかぶる。また二人の関係は北森鴻『孔雀狂想曲』の越名と女子高生にもかぶった。森作品のヒロインの常として、彼女を含め、登場する凛とした、或ははかなげな女性は、いずれも主人公に対して隠し事をしているが、それと察した上で、ある解決策を差し出す義巳は、特に女性の裏切りを嘆くわけでもなく、クールに傍観者的立場を貫く。『彼女と妖刀』に出てくる「レーシングに入れこんでいるアイドル」と「彼の恋人で自殺を図る歌手」のモデルはすぐわかる。『はてなの兼定』『平成兜割り』に登場する今どきの若者(当時)を見ると、昔の不良はまだおとなしくて可愛いもんだった。『はてなの兼定』に出てくる落語『はてなの茶碗』は『蝶々夫人に赤い靴』にも登場。
August 5, 2018
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みなさん、こんばんは。首相が杉田議員に注意していたらしいけれどいかにもポーズって感じですね。さて、今日も森雅裕さんの作品を紹介します。鉄の花を挿す者森雅裕 講談社 若手刀鍛冶の角松一誠は、99歳の孤独な師匠・酒泉渉の訃報を聞き、岡山にかけつけた。鎌倉期の刀作りを再現する試みを最後の仕事と決めた酒泉は、二振りの刀を作っていたが、現場には一振りしか残されていなかった。相弟子の古志村捷が、師匠の遺作と同じ見事な作品を作り、「師匠の刀を使ったのでは」と噂が立つ。その矢先、古志村を始め刀剣関係者が次々と不審死を遂げる。社交性がなく頑固。TPOをわきまえずに本音を言うため、業界の主流からは鼻つまみだが、能力を認める奇特な人も少数存在する主人公、権威や名声にあぐらをかく業界の重鎮、はい上がろうと手を汚す下っ端、実情も知らず名声と権威にヘコヘコするその他大勢という図式は、刀剣業界を小説業界におきかえたら、主人公は森氏そのもの。また、ウィーンを舞台にした一連の音楽ミステリー『モーツァルトは子守唄を歌わない』『ベートーヴェンな憂鬱症』の探偵役、ベートーヴェンにも通じる。どこにおいても森作品の主人公は、現場の芸術家の苦悩を踏みにじり、芸術を金儲けの手段としてしか考えない権力者&主流派への怒りを静かに抱えながら、積極的に謎を探るというより、否応なく探偵役を割り振られながら、一人知る現実を苦く噛みしめるハードボイルド路線をまっしぐら。橘今日子は、森作品のヒロインの中では、比較的おとなしいので、尋深&音彦シリーズのような、小気味いい意地の張り合いの応酬はない。これは普通のラブストーリーに発展するかと思いきや、やっぱり彼女も謎を秘めていて、更に金あり権力ありの婚約者(このパターンも多い)がいる。やっぱりここでもキスシーンは外している。戦後の刀剣業者が辿った運命は、『蝶々夫人に赤い靴』でも登場。【中古】 鉄の花を挿す者 /森雅裕(著者) 【中古】afb
August 4, 2018
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みなさん、こんばんは。何かもうニュースで「危険な暑さ」と連呼されるのが当たり前になってしまいましたね。日本で涼しい所はどこ?さて、今日も森雅裕作品を紹介します。蝶々夫人に赤い靴(エナメル)森雅裕オペラ歌手の鮎村尋深と画家の守泉音彦。尋深は長崎のグラバー邸にて開催されるクリスマスコンサートで、『蝶々夫人』のタイトルロールを演じた後、地元の名士の息子と結婚式を挙げる予定になっていた。たまたま京都にいた音彦は、受け取りそこねた履物を届けるようにと尋深から依頼されたが、乗っていた列車で、無賃乗車の老人・愛子になつかれてしまう。刀鍛冶と結婚した元プリマドンナ・愛子は、坂本龍馬を殺した刀を持っている様子で…。オペラをメインモチーフにした尋深&音彦シリーズ第三弾にして、刊行された作品としては最終作。第一作『椿姫を見ませんか』では椿姫のモデルの謎、第二作『あした、カルメン通りで』ではカルメンを演じたマリア・カラスの謎に挑んだ二人が、本作では蝶々夫人の史実を探る。そして、友達以上恋人未満で続いてきた12年の腐れ縁にも、遂に決着の時が。謎解きと二人の関係の行方、後者が気になる。だって、謎の追求に向けては、何者をもおそれていない彼等なのに、お互いの本当の気持ちについては、矛先が鈍い。その理由は、シンデレラの忘れたガラスの靴よろしく届けに行く音彦も、意味ありげなオペラの一節を歌いまくる尋深も、筋金入りの意地っ張りで、臆病。傍観者が毎回挑発&助言するが、本人達は巧妙に躱すか、無言。特に音彦、『卒業』のダスティン・ホフマンと違って、教会ならぬ式場に入るパスポートもタキシードもあるのに、やっぱり腰が引けている。ああ、もう、じれったいったら。やっぱりヒロインは強かった。そうそう、「いつ沈没するか知れない船を待っていない」(『さよならは2Bの鉛筆』 )のが森ヒロイン。最後の最後に至るまで、キスシーンも抱擁もなしで、とどめに出てくるのがアレとは、さすが『パタリロ!』 ファン。それにしても、とことん照れ屋なんだなぁ、著者も主人公達も。この二人のその後を想像すると、『さよならは2Bの鉛筆』のヒロインの両親、ヴァイオリニストの諏訪幽穂と、ハードボイルド作家の鷲尾昌宏が浮かぶ。二人の娘が暁穂でも、全っ然問題ないでしょう。だって暁穂の得意技は、尋深と同じく中森明菜の物真似なんだから。【中古】蝶々夫人に赤い靴(エナメル) 雅裕, 森BOOKS 21
August 3, 2018
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みなさん、こんばんは。今回の台風は変でしたね。どれだけ日本列島が好きなんだっていう。さて、今日も森雅裕さんの作品を紹介します。自由なれど孤独にFrei Aber Einsam森雅裕講談社1864年ウィーン。作曲家にして合唱団の指揮者であるヨハネス=ブラームスは、弟子のアマリエから、話があるから宮廷歌劇場に来て欲しいと頼まれる。彼女はワーグナー作オペラ『トリスタンとイゾルデ』でイゾルデを演じる事になっていた。ところがブラームスにあるものを渡した後で、アマリエは舞台上で不審な死を遂げる。更にユダヤ人の富豪ロスチャイルドから、亡くなったはずのロベルト=シューマンを見たと聞かされて…。地位も富もある権力者側Vs名声はあるけど政治的には非力音楽家という対立構造と、本意にあらず探偵役を務める主人公が音楽家である事、そして故人が関係している点は『モーツァルトは子守唄を歌わない』と同じ。但し、主人公のキャラクターはだいぶ違う。といっても世間一般に知られている両者の性格自体が元々違うのだから仕方がない。『モーツァルト…』では、「寄るな触るな切るぞ」と言わんばかりの危うさがある世渡り下手のベートーヴェンを、如才ない弟子のチェルニーがカヴァーしていたが、今回ブラームスには相方がいない。そのため権力者におもねるおべっか使いや、皮肉をまき散らす偏屈という極端に走らず、マイルドな性格になっている。その分、脇役ワーグナーの書き方がどぎつい。かなり傲岸不遜な人物に描かれている。親友の妻と姦通し、後に再婚。自分に心酔する王に借金を払わせ、バイエルン王国を傾けた。そんな風評が後世に知れ渡っているワーグナーに毒を向けた方が、拒絶されにくいと見たのか。ヒロイン役はクリスタ・フォン・アムロート。王妃付きの近衛騎兵連帯の大尉で、伯爵令嬢。軍服をまとっているとなると、まるでフランスのマリー・アントワネットと対で語られた『ベルばら』のオスカルみたい。但し、ウィーンのオスカルはピアノをたたき壊し、オペラ歌手への転職も可能な才能の持ち主。気が強く、好意を素直に現せない性格と、森作品のヒロイン独特の言い回しで読者を唖然とさせる。今回のキメは何といってもこれ。「怒りという火にコーヒーという油を注いでしまった。」あなたが言うからキマルんです、はい。ユダヤ人の富豪ロスチャイルドや、『カフェ・デーメル』で有名なデーメル、ハンス・フォン・ビューロー、とびきりの有名人エリザベート王妃ら歴史上の人物が登場し、史実に伝えられる以外の素顔を見せてはくれるのだが、真相が明らかになった時のカタルシスについては、個人的には『モーツァルト…』の際の面白さを越えるものではなかった。
August 2, 2018
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みなさん、こんばんは。今日から8月ですね。火星が見えましたか?さて今日から森雅裕さんの小説を紹介します。あっと驚く人物が時空で出会いますよ!マンハッタン英雄未満森雅裕新潮社日本からの留学生・樹音(ジュネ)は、いきなり自分がメシアの母親で、聖ジョン大聖堂で育てられていた幼いメシアが悪魔に誘拐されたと聞かされびっくり。更に、悪魔を倒すことができるのは聖なる音楽と聖なる剣のみだという。そこで時空の彼方から二人の男がNYに呼び寄せられる。現代楽器を手にしたベートーヴェンと流星刀を持つ土方歳三。3人組は悪魔に勝てるか?これもまた魔夜峰央さんイラストで、何と!土方さんとベートーヴェンの4コマ漫画まで入ってる!これがまたいかにもお互い言いそうな台詞で、サイコーです。『モーツァルトは子守唄を歌わない』『ベートーヴェンな憂鬱症』に引き続き、ベートーヴェン三度目の登場となるわけですが、今回探偵役は、やってません。まあ土方と共にメシアの騎士となる内に、ある謎に迫ってはいくわけなんですが、どちらかと言えばメシアを守るのが任務ですので。だいたい、話自体何と言えばいいのか、迷ってしまう。ミステリーとするには割と早く善玉悪玉が分かっているし、強いていえば、SFなんだろうか、アクションも…あります。刀好き、音楽好きの森氏やりたい放題の一冊といった所でしょうか。もしかしたら、森ミステリファンでも、「これだけはふざけすぎでは?」と言う方もいらっしゃるかも。ベートーヴェンの探偵シリーズで、あまりにも、フィクションをノンフィクションと思った手紙が来たため、「ここは一つ、絶対フィクションとしか思えないキャラを作ってやる!」とでも思ったんでしょうか…なんて、作者の心のうちを探ってみたくなります。でも、そうして出てきたキャラクター、クールで口が悪い土方歳三はバンコランに、騒がしくてお茶目なベートーヴェンは、やっぱりパタリロなのだなぁ。さて、日本語しかしゃべれない土方歳三とドイツ語しかしゃべれないベートーヴェンは、どうやってコミュニケーションを取ったのでしょう?(笑)
August 1, 2018
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