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みなさん、こんばんは。外国人入管法が衆議院で可決してしまいましたね。何か最近強行採決が多いです。さて、こちらはパトリシア・ハイスミスが最も愛してやまない主人公の最終章です。死者と踊るリプリーRipley Under Waterパトリシア・ハイスミス河出文庫「そして二人はいつまでも幸せに暮らしました」は悪党に苦しめられた善人に許された結末だ。しかし例外もある。作者が悪党を愛している場合だ。トム・リプリーは、殺人も犯罪も犯しながら妻と「幸せに暮らして」いる。 そんな彼をまるで待ち伏せしているかのように現れるアメリカ人夫妻がいる。といっても積極的なのは夫の方で、妻は夫に怯えているようだ。彼等を避けようとするリプリーに、死んだはずのディッキーを名乗る電話がかかってくる。 内容的には『贋作』に続く。 他ならぬリプリーが殺したのだから電話は明らかに別人で、リプリーは早いうちに犯人の見当もつける。ただ、動機がわからない。相手はリプリーを「紳士気取りの悪党」と呼ぶが、偽者であることを告発したいなら脅迫という卑怯な手段を択ばず、警察に打ち明ければいい。ディッキーは圧力をかけられる町の名士ではないのだ。となれば、単に嫌がらせがしたい―今でいうストーカー心理―か。 一方、受けて立つ方のリプリーの動機は「自らの生活を守るため」とはっきりしている。『贋作』でも本物と偽物についての言及があったが、本作でも偽物を肯定している。「タフツとダーワットがこれほど混然一体であれば、すくなくともこれらのデッサンの一部、あるいは大半は、芸術的観点から両者を区別することは不可能ではないか」「いくつかの意味で、バーナード・タフツはダーワットと化していた。バーナードが恥辱にまみれ、錯乱状態で死んでいったのは、贋作が成功したためだ。それどころか、ダーワットになりきり、ダーワットの昔ながらの生活に倣い、その絵画、その準備デッサンにおいても、ダーワットそのものだった」「本物を超える偽物がある」ことを仕事と人生で実践している彼は、もう一つの真実―犯罪―を、悉く水底に沈める。もちろん簡単には浮かび上がってこないが、いつか水が干上がる時が来る。その時彼がもう一つの真実とどう向き合うのか。死者と踊るリプリー (河出文庫) [ パトリシア・ハイスミス ]楽天ブックス
November 30, 2018
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みなさん、こんばんは。ニコラス・ローグ監督が亡くなりましたね。そしてベルトリッチ監督も。どちらも20世紀を代表する映画監督でした。今日も皇后陛下お気に入りの作家の作品を紹介します。サンキュー、ジーヴス ウッドハウス・コレクションThank You JeevesP・G・ウッドハウス国書刊行会独身貴族バーティ=ウースターの、最近のマイブ-ムはバンジョレレ(よく知らないが、バンジョーとウクレレの中間のような楽器らしい)。バーティは至極ご満悦だが、アパートの住人からは騒音だと迷惑がられ、何とジーヴスに辞表を提出される羽目に。旧友のチャッフィーと偶然出会ったバーティは、新しい執事を雇い彼の領地にあるコテージで過ごす事に。これで一件落着と思いきや、やっぱりトラブルの連続で…。チャッフィーから、彼が惚れているポーリーンとの結婚成就に力を貸して欲しいと頼まれるバーティ。ポーリーンの父親はアメリカの大富豪で、領主とはいえ、決して裕福とは言えないチャッフィーとの結婚を認めてくれそうになかったのだ。そこへバーティといろんな所で因縁の出会いをしているサー・ロデリック・グロソップが登場して、益々事態はややこしくなる。おまけにポーリーンの突拍子もない行動で、バーティとチャッフィーの友情に亀裂が。そして偶然、別の雇い主に連れられてジーヴスも登場…と、お馴染みのメンバーが揃い、雪崩現象のようにトラブルが発生するいつものパターン。決して頭が悪いわけではないのだが、どこか箍が外れた高等遊民達の意外な行動は、傍観者としては誠に面白い。ところが彼等の割を食ってどんどんドツボに嵌ってゆくバーティにしてみれば、たまったものではないだろう。それでもやっぱり友情のために一肌脱ぐ彼は、オバカとはいえイイ奴だ!但し一つ文句を言わせてもらいたい。今までネクタイの好みやら少女のいる暮らしやら、思いつく限りのプランを悉くジーヴスに巧妙に潰されてきたのに、今回もまたバンジョレレにこだわるとは、つくづく学習能力のないお方だこと。脳天気お貴族様&怜悧な執事シリーズ第六弾。サンキュー、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション) [ ペラム・グレンヴィル・ウッドハウス ]楽天ブックス
November 29, 2018
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みなさん、こんばんは。皇后陛下が退位後に読みたい本として名を挙げたために一躍注目されている作家の作品を紹介します。面白いですよ!マリナー氏の冒険譚 (P・G・ウッドハウス選集 3)The Exploits of the MullinersP.G.ウッドハウス【著】岩永正勝,小山太一【編訳】酷暑刊行会呑気な貴族バーティと、頭脳明晰な執事ジーヴスを描く『ジーヴズの事件簿』1巻、次々と起こる事件に頭を悩ませるエムズワース卿を描く『エムズワース郷の受難録』2巻に続き、登場したのはミスター・マリナー。「釣遊亭(アングラーズ・レスト)」のバー・パーラーに夜毎現れ、皆の話が盛り上がった所で、「ひとつ〜の話を聞かせましょう」と切り出す。但し、タイトルには『冒険譚』と銘うっているが、何もこれ、「マリナー氏が世界各国で冒険を繰り広げた」「歴史的事件の背後にはマリナー氏あり」なんてしろものではない。マリナー氏はあくまで語り手で、主人公は彼の弟や姪っこ達である。それもどこまで本当だかわからない、という所からとってもアヤシイ。だって、知人、親類にこれだけ変人が揃っている人なんているだろうか?その豪華な顔ぶれを紹介してみると、ざっとこうである。ジーヴズシリーズにも登場した、「最初は不思議な魅力で男性を虜にするが、最後に酷い目にあわせて『もう二度と会いたくない!』と思わせる」ロバータ・ウィッカム、発明した強壮剤の誤飲によって、自身の出世ばかりか友人の結婚話まで解決するウィルフレッド、いいとこのボンボンなのに、メンドリの物まねくらいしか取り柄のないアーチボルド、そして飛ぶ鳥落とす勢いのハリウッド・タイクーンの典型なのに、作者の恨みを受けてか、酷い目にあってばかりいるスタジオの最高責任者、シュレネンハマー。実はこんな奇人変人と変わらぬ付き合いをしているマリナー氏こそ、極めつけの変人では?との推測がなされそうだが、さてそれは作者のみぞ知る永遠の謎である。呑気者が必ずしも不幸でなく、正義感を貫く者が必ずしも幸せになるわけではない、一見不条理ながら、こみあげてくる笑いをおさえる事などできない、不思議な魅力を持った短編集。2005年、日本でにわかに始まった刊行ラッシュはとどまらず、「ユークリッジの商売道」「ドローンズ交遊帖」(共に仮題)と続巻も決定しているウッドハウス選集第三弾。【中古】 マリナー氏の冒険譚 P・G・ウッドハウス選集3/P.G.ウッドハウス【著】,岩永正勝,小山太一【編訳】 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店
November 28, 2018
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みなさん、こんばんは。先週はゴーン・ショックが吹き荒れましたが今週は企業同士の話し合いになりそうです。ルノーも国の資本が入っていますし、日本も自動車産業には力を入れてますからね。このままの体制になるかわかりません。さて、今日も西部劇を紹介します。馬上の男Man in the Saddle出演ランドルフ・スコット監督アンドレ・ド・トス「♪馬上の男なんて孤独なもんだ 彼が死ぬまで旅は終わらない 愛馬よ進め ハゲタカが狙ってる 水場はまだまだ遠い この砂漠は約束の地ではない こんな所で死ぬもんか」タイトルソングの後、本編。ちなみに歌は3番くらいまである。「♪馬上の男なんて孤独なもんだ 家族や仲間からも遠く離れて一人 またがっている馬だけがたった一つの俺の持ち物 彼が死ぬまで旅は終わらない 愛馬よ進め ハゲタカが狙ってる 尻尾を振って進め この砂漠は約束の地ではない こんな地で死ぬもんか 馬上の男なんて孤独なもんだ 故郷に残した恋人から遠く離れて ロッキー山脈を越えるまで進み続けろ そしてようやく旅の終わりにたどり着くよ」 小さな牧場を経営するオーウェンは、無口だが誠実で責任感があり人望も厚い。だが、恋人のローリーはそんな彼よりも、大牧場主アイシャムとの結婚を決めてしまう。ケ近式当日にオーウェンが密かにローリーに会いにきたり、牧童頭というより用心棒のような血の気の多いスカッチャーがアイシャムに雇われるなど、序盤から争いの種がくすぶっている。幼い頃から貧しく苦労して育った彼女は愛よりも富を選んだ。ところが、オーウェンのことを忘れられないローリーに嫉妬したアイシャムが、卑劣な手段でオーウェンの牧場を潰そうとするが…。 オーウェンが煮え切らないキャラで残念。友人からは「このまま黙ってる気か オーウェン」「俺なら彼女と逃げてる」と煽られながらも行動を起こさず、かといってすっぱり忘れたかと言えばそうでもなく、結婚式前のローリーの所にいって「これでいいのか?」「それだけ?責めてるのね」「後悔はしないだろうね」「するわけないわ」「では幸福を祈るだけだ」「結婚式に来るでしょ?」「恥の上塗りだ」あーどうでもいい!って台詞をぐだぐだ続けてる。「今でもあなたを想ってるのよ わかるでしょ」まで言われたら行動に出てもいいのに。「君は野心がある 俺は野心に負けたんだ」と、彼女のせいにしたり、最後は彼女に決めさせようとする。ローリーの方が結婚したら金を夫からせびろうとする父親ときっぱり絶縁宣言するなどよほど男らしい。後のシーンでも夫がオーウェンを殺しにいったと知ると、見張りを銃で脅して一人で馬で出て行っちゃうとか、ホント、かっこいいんですよ。ただ彼女は彼女であまりにも自分を見せすぎるきらいがある。例えばアイシャムとの会話。「君の望みは何だ?」「もう手に入れた 今までの生活を抜け出せて感謝してる 結婚した以上失望はさせない 役に立つわ」「君にとって結婚はただの契約か」「何か期待させた?」「いや 君は正しい」愛してるから結婚したんじゃないってことをわからせすぎている。賢すぎるんですね。馬上の男 [ ランドルフ・スコット ]楽天ブックス
November 27, 2018
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みなさん、こんばんは。大相撲は千秋楽までもつれましたね。貴景勝がんばりました。あと少し貴乃花の決断が遅かったら優勝力士を出した部屋になったのに…。さて、今日も西部劇を紹介します。去り行く男JUBAL監督デルマー・デイヴィス出演グレン・フォード アーネスト・ボーグナイン ロッド・スタイガー チャールズ・ブロンソン 崖から転落し行き倒れとなった流れ者ジューバルを、気のいい牧場主シェップが救う。牧場で働き始めたジューバルは、カウボーイとしての腕も良く誠実な人柄からシェップの信頼を得て牧童頭となるが、牧童仲間のピンキーは彼に対抗心を燃やし、シェップの若い妻メイはジューバルを誘惑する。 ベースはシェークスピアのオセロ。牧場主シェップ→オセロメイ→デズデモーナジューバル→キャシオピンキー→イアーゴ 但しキャラクター設定はそのままではなく、今回のデズデモーナはピンキーとも前に関係があったことを匂わせるヴァンプ。カナダ育ちで特に男性との付き合いがないまま暮らし向きがよくなるという理由でプロポーズを受けた節がある。シェップは若い妻を喜ばせようと一生懸命なのだが、メイから見れば夫はがさつでソーサーにこぼれた茶をすするようながさつな男。カナダの上品な雰囲気を持ってきた彼女にはいちいち気に障り、ジューバルとも浮気する気満々。ジューバルの相手として宗教団体で西武を旅する一団の娘ナオミが登場する。自分の気持ち優先で他人を顧みないメイに母親を見てしまったジューバルは、ナオミに悲惨な自分の生い立ちを告白する。このカップル、歳が離れすぎでは?とも思ったが、後半牧場に向かったジューバルを一人馬で追いかけてくる強さもあるので、意外に肝っ玉母さんになる器かも。 グレン・フォードによると「ロッド・スタイガーはいい役者なんだけど、メソッド方式が過ぎて喧嘩シーンはやりすぎだった」とか。ロッド・スタイガーとアーネスト・ボーグナインには共通点がある。二人とも「マーティ」という作品でタイトルロールを演じている。スタイガーはテレビドラマ、ボーグナインは映画。映画版でボーグナインはアカデミー主演男優賞を受賞。髭がないのでぱっと見わからないが、チャールズ・ブロンソンがジューバルを助ける流れ者のガンマン役で出演している。去り行く男 [ グレン・フォード ]楽天ブックス
November 26, 2018
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みなさん、こんばんは。先日上野の美術館でムンクを見に行きました。こちらも混んでいましたが上野動物園はパンダで大人気でした。今日も西部劇を紹介します。アパルーサの決闘Appaloosa監督&出演エド・ハリス出演ヴィゴ・モーテンセン レネー・ゼルウィガー ジェレミー・アイアンズ ティモシー・スポールランス・ヘンリクセン 19世紀、ニューメキシコにある鉱山の町アパルーサ。この町にはランダル・ブラッグなるカウボーイが率いる悪の一味がのさばり、無法地帯となっていた。町の秩序を取り戻すため、新たに保安官として雇われたのは凄腕で知られるガンマン、ヴァージル・コールと、相棒のエヴェレット・ヒッチ。彼らは西部各地で流しの保安官業をして荒稼ぎする無頼な男たちであったが、腕は確かで、ブラッグ一味をたちどころに追い詰めていく。 だがそんな折、魅惑的な謎の未亡人・アリソンがアパルーサに流れ着き、コールと恋仲になる。アリソンにすっかり骨抜きにされてしまうコール、それを複雑な面持ちで見つめるヒッチ。そして、一度はブラッグの逮捕に成功するも、ブラッグの手下にアリソンを人質に取られてしまい形勢は一気に逆転、二人はブラッグを取り逃がす羽目になる。保安官ベル「ランダル、2人の男を連行しに来た。Randall, I'm afraid I gotta take two of your boys back into town with me.」ブラッグ「ここはお前の管轄外だ、保安官。俺の土地に侵入してる。You're outside your jurisdiction, marshal. And you're trespassing on my land.」 「 二人はシカゴから来た男とその妻を殺した。そいつらを連れていく。They murdered that fellow from Chicago, and then they raped and killed his wife. I'm taking 'em in.」「 そうはさせん No. I can't spare them.」「Them two on the end. Cut them out.」「Do like I tell you.」ランダルがベル達を撃つ。 銃が全てを支配する時代だったことを示すファーストシーン。彼らを倒すためにやってくる二人ヴァージルとエベレットの力の源もまた銃。流れ者が簡単に保安官になれてしまうことは、ガンマンが容易く暴君になる危険性も秘めている。街に銃を持ってやってきたブラッグとその部下にヴァージルが言い放つ。「I shoot them. Or Mr. Hitch does. That's the law.お前らをヒッチが撃つ。法だからな。 」「*Your* law. お前の法だろ?」「The same thing. 同じことだ」ところが後半、ブラッグが町の有力な企業家として現れ、ヴァージルの絶対的優位性が揺らぐ。法の下では表面真人間と化したブラッグを粛清できない。エベレットはヴァージルに「 お前の弱点は感情だ。The reason the above-named folks are better than you is because you got feelings.」と言う。結果的にエベレットの感情がヴァージルの危機を救うが、ヴァージルは町に残りエベレットは去る。都会慣れして無暗にドンパチしなくなる街に古き良きガンマンは不要だからだ。人気ハードボイルド作家ロバート・B・パーカーの同名ウエスタン小説を、監督2作目となるエド・ハリスが映画化。アパルーサの決闘 特別版 [ ヴィゴ・モーテンセン ]楽天ブックス
November 25, 2018
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みなさん、こんばんは。五輪大臣問題発言が多いですね。今日から4日間、西部劇を紹介します。今日ご紹介するのは極めて異色ですね。何でこんなの見るの?と言われてしまいました。トマホーク ガンマンVS食人種BONE TOMAHAWK出演カート・ラッセル パトリック・ウィルソン リチャード・ジェンキンス デビッド・アークエット マシュー・フォックス荒野に佇むアメリカの田舎町。ある夜、複数の住人が忽然と姿を消し、空き家の納屋では、体を八つ裂きにされた男の遺体が見つかった。現場に駆けつけた保安官のハントは、遺体の状態や落ちている矢じりから原住民たちによる犯行ではないかと疑い始める。その原住民は、人の腹を切り裂き、内臓や肉を食べる「食人族」として恐れられていたのだ!町は牛の群れを連れてカウボーイたちが出てしまい、人が少なかった。 連れ去られた人々を救うため、足跡をたどり荒野を進むハントら4人の男たち。やがて原住民たちの棲家と思われる洞窟へたどり着くが、そこで彼らを待っていたのは、暗闇に鳴り響く不気味な咆哮と、想像を絶するほどの恐ろしい光景だった…。家族と一緒に見ていたのですがいやぁ、不評でした。何でこんな気持ち悪い映画を見るのか、この映画にメッセージはあるのか、と。いや、多分ないでしょう。あるのかな?タイトルそのまんまの話。食人族に攫われた妻&町の民を救うために1.保安官→職務として2.アーサー→攫われた女医の夫として3.ブローダー→女医に好意を持っており原住民を嫌っている4.補佐官→職務としての4人が向かっていく。周り全てを敵に回さなければいられないブローダー、足がどんどん悪くなって足手まといになっていくのにそれでもあきらめないアーサー、ちょっととぼけたことを言ってこの殺伐とした探索行にユーモアをもたらす補佐官、みんなのまとめ役として常識を持っている保安官が反発しつつ旅を続けていく過程はよく使われたモチーフ。この中での憎まれ役一番はもちろんブローダーなのだが、彼がどうして原住民を嫌うかを旅の途中の会話でちらっと言う。それもストレートじゃなく、単語を繋げていけば「ああそうなのか」とわかる程度。カート・ラッセルとかマシュー・フォックスとか「ギャラたくさんもらってそうだから生き残るよねきっと」という想像を遥かに越えてくる。リチャード・ジェンキンスが元々キャスティングされていたが、途中でスケジュールの都合がつかずジム・ブロードベンドに。しかし製作が延びたので再びジェンキンズに回ってきた。マシュー・フォックスは西部劇に出たかったのでこの映画の出演をたいそう喜んでいたとか(でもこういう内容の映画だよ?)。トマホーク ガンマンvs食人族 [ カート・ラッセル ]楽天ブックス
November 24, 2018
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みなさん、こんばんは。日産のゴーン氏のニュースが連日続きますね。ルノーと日産の統合計画を阻止するためのクーデターだとかなんとか。さて、ホームズの漫画の最新刊を紹介します。憂国のモリアーティ 7コナン・ドイル(「シャーロック・ホームズ」シリーズ)、竹内良輔、三好輝MI6きってのモテ男がモリアーティ達の仲間に加わったが、モラン大佐はどうも彼の考え方に違和感を覚えて…「モリアーティ家の使用人たち」と「ホワイトチャペルの亡霊」が収録。ホワイトチャペルでぴんときた方もいるように、本編と次巻ではヴィクトリア朝きっての猟奇殺人が登場。聖典では絡まなかったはずのホームズも、レストレード警部の珍プレゼンではなく、自らの興味により捜査を開始。一方ウィリアムは元々あの有名なニックネームの持ち主だった人間と知己で、彼から依頼を受けたことからこの事件に挑む。ラストでウィリアムが呟くのは「地獄はもぬけの殻だ。すべての悪魔は地上にいるHell is empty and all the devils are here.」(シェイクスピアの「テンペスト」)さて、地上にいた悪魔とは? おまけで収録されている番外編は「221年B組ウィリアム先生」でホームズの学園バージョン。先生はタイトルの通りウィリアム、不良学生でタバコを咎められるのはモラン大佐、なぜかワインを飲んでいても咎められない同級生はアルバート、やたらホームズを敵視する学級委員がルイス、どこまでも運の悪い学生がワトソンと元キャラを反映した設定になっている。ホームズは授業をさぼって屋上で黙想中で、嵌りすぎの感があるのはアイリーン・アドラーの保健室の先生。唯一登場しないのが名前だけのレストレード。体育の先生という設定なので熱血漢で生徒をしごきそう。憂国のモリアーティ 7 (ジャンプコミックス) [ 三好 輝 ]楽天ブックス
November 23, 2018
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みなさん、こんばんは。台湾文学の翻訳者である天野健太郎さんが先ごろ亡くなりました。47歳でした。本書は彼の翻訳によるものです。13・67陳 浩基文芸春秋 13・67は物語の最初と最後の年を表す。第一話は2013年、最終話は1967年だ。その間には香港の中国返還という一大イベントが挟まれる。天眼と綽名される名刑事クワンと、熱血刑事ローの主人公二人の活躍を経糸に、香港現代史を経糸に織りなされる。 第一話でクワンは病院で口もきけない状態で登場し、安楽椅子探偵の上をいく活躍を見せる。しかし快刀乱麻を断つような名推理と仲間達との見事な連携で数々の事件を解決してきたクワンにも“若葉のころ”はあった。クワンのある行動をきっかけに、ある人物は警察を見限り悪の道を選ぶ。一方のクワンは生涯守っていくべき信条を見つけ、自分の若い頃を彷彿とさせるローと出会い、薫陶を授けていく。クワン&ロー師弟に象徴される、時代や国の姿かたちが変わっても、警官一人一人の真摯な想いは受け継がれていくという普遍的なモチーフは、共感を得やすいだろう。 「もしかしたら仲間になれるかもしれなかった相手と、ある事件をきっかけに別れてしまい、運命が再び交錯する」という展開は、香港の潜入捜査官と警察に潜入した男が主人公の香港映画『インファナル・アフェア』と似ている。香港返還期を舞台に据えた点も共通だ。 解説で「ウォン・カーウァイが映画化権を獲得したが、完成・公開がいつになるかわからない」と書かれていた。イメージは彼よりもむしろ『インファナル・アフェア』を撮ったアンドリュー・ラウ&アラン・マックなので、このコンビでぜひ映画化して欲しい。★2018年11月12日、本書の翻訳を担当した天野健太郎さんが亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。13・67 [ 陳 浩基 ]楽天ブックス
November 22, 2018
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みなさん、こんばんは。日産のゴーン会長のニュース、激震が走りましたね。うーん、あさましい!今日も昨日に続きダンスに関係のある映画を紹介します。マジック・マイクMagic Mike監督スティーヴン・ソダーバーグ出演チャニング・テイタム マシュー・マコノヒー アレックス・ペティファー実業家を名乗って複数の仕事を抱えるマイクは、夜になると男性ストリップクラブ「エクスクイジット」のスターダンサーとして活躍。ひょんなことから知り合った、19歳のアダムに女性を惹きつける天賦の才を見いだしたマイクは、彼をクラブへと連れていく。異様な世界に驚きながらも、ステージに上がった彼は女性客たちの圧倒的支持を得てダンサーの一員に。弟分のようなアダムの面倒を見てやるマイクだったが、彼が金の絡んだトラブルに巻き込まれたのを知る。 ストリッパーとしてのサクセスストーリーを描きたいなら、見た目ぱっとしないのに天性の才能を見初められるアダムを主人公にすべきだ。しかし今回の主人公はマジック・マイクというその世界での二つ名を持っているのに、ダンサー一筋でやっていこうとは思っていないマイク。だからここで描かれるのはサクセスではない。決断し、ストリッパーの世界から去っていく若者の物語だ。マイクを演じるチャニング・テイタム(プロデュースも担当)の体験が元になっており、ストリッパーから俳優になっていくテイタムがマイクに投影されている。 但しその場合でも、ストリップ業界に嫌気がさしたというよりは、海千山千のクラブオーナー、ダラス(いかにも本名っぽくない)のやり口や、弟をこの世界に引き込んだことをなじるアダムの姉のブルックに惹かれたことが理由になっている。 趣向を変えたダンスシーンは見ごたえあり。エキストラが大興奮したらしい。脱ぐイメージのなかったマシュー・マコナヘーもダンスシーンと鍛え上げた肉体美を疲労。ダラスが最後に服を脱ぐ場面では、彼が股を持っているすべての女性から離れていくところがある。エキストラが少し興奮し、誤って衣服を裂いたからだ。ダンスを止める代わりに、マシューはダンスに巧みにアクシデントを取り入れた。マジック・マイク【Blu-ray】 [ チャニング・テイタム ]楽天ブックス
November 21, 2018
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みなさん、こんばんは。秋田犬をもらった事が話題になったスケートのザギトワ選手、さすがですね。さて、今日は昔ならしたダンスに再挑戦する男性が主人公の映画を紹介します。カムバック!CUBAN FURY原案・製作総指揮・主演ニック・フロスト出演イアン・マクシェーン サイモン・ペッグ サイモン・ペッグ のニック・フロストイギリス中にその名を轟かせた天才サルサダンサーのブルースと妹のサム。しかし、ある悲劇を機にダンスを封印したのだった。 25年後、旋盤設計士として働くブルースは、立派なメタボ男に激変していた。押しの弱い性格のためか結婚はおろか、彼女なし。そんな彼に恋の稲妻が落ちた! お相手はアメリカから赴任した上司のジュリア。彼女に一目惚れしたイケメンの同僚、ドリューも加わり、恋の火花散る三角関係が始まった。圧倒的不利に見えたブルースに、まさかのチャンスが! なんと彼女はサルサダンサーだったのだ。運命を感じ、25年振りにレッスンを再開するブルースだったが、厳しい現実にぶち当たる。かつての天才サルサダンサーは、ステップすらまともに踏めないお肉タルタルダンサーに落ちぶれていたのだ。しかし、情熱を取り戻した男に“諦める"の文字はない!彼女のために、そして本当の自分を取り戻すために、踊れ、ブルース! ! 憧れの女性がダンスしているのを見て自分も始める展開は、日本映画の「Shall We Dance?」みたい。ニック・フロストは既にダンスはできたが、この映画のために1週間、或いは週5~6日レッスンに励み7か月の特訓の末サルサをマスターした。ジュリアを演じるのはクインシー・ジョーンズの娘ラシダ。コメディで何度もコンビを組んでいるサイモン・ペッグもカメオ出演。 ダンスして汗びっしょりになって痩せるのかな~と思っていたら体型は最初と変わらずメタボ。でもダンスはキレッキレ。 今回脇役としてのポジションしかなかったけれど、オリヴィア・コールマン演じる妹が良かった。大会のパートナーだった彼女も、決勝に兄が現れなかったことで夢見ていた未来を絶たれてしまったはず。なのに恨み言一つ言うことなく、兄の新しい恋愛とダンスを全力で応援するシーンはいい。それにしてもイギリスって化粧濃くない?カムバック!【Blu-ray】 [ ラシダ・ジョーンズ ]楽天ブックス
November 20, 2018
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みなさん、こんばんは。羽生君すごいですね。今日は昨日紹介した小説の後編です。回想のブライズヘッド(下) Brideshead Revisitedイーヴリン・ウォー小野寺健【訳】岩波文庫フライト家の諸悪の根源はマーチメイン夫人のように思われた。万事「~せねばならない」という彼女の規律で生きていく事が苦しくて、まずマーチメイン郷が逃げ出し、次にセバスチアン。女性であるがゆえにジューリアとコーデリアは逃れられず、長兄ブライディーは母の期待を一身に背負う優等生として存在を許されている。ところが、あたかも彼女への反発が残りの家族を繋ぎ止めていたかのように、彼女の死でこの一家は箍が外れる。ヴェニスにいたマーチメイン郷は病気になって屋敷に戻り、長男の結婚計画を台無しにする。ジューリアは成金のレックスと結婚するが夫婦仲はうまくいかず、チャールズとの結婚を夢見るが、二人の関係は世間では不倫と見なされる。 そして皮肉な事に、ばらばらになった家族を立ち直らせるのもまた、不在の母=カソリックの信仰である。あれほど堅苦しい母を嫌っていたセバスチアンの最期は僧院だ。ジュリアは、放蕩息子だった父親の臨終の際の行為によって神を相手に、神と対抗できるほどの幸せを選ぶということはできないとチャールズとの別離を決める。グレアム・グリーンの『情事の終わり』に続き、神に敗れた男がまた一人…と思っていたら、当のチャールズでさえ、再び現代に戻った場面では、戦争を経ても同じ姿のままのブライズヘッドのチャペルに跪く。マーチメイン侯の臨終の際には終油の秘蹟をどうするかでジューリアと激しく言い合ったというのに。輝かしい青春とそれが失われる様を描きながら、一方で、裏テーマは変わらぬカソリックの信仰を讃えている。【中古】 回想のブライズヘッド(下) 岩波文庫/イーヴリンウォー【作】,小野寺健【訳】 【中古】afbブックオフオンライン楽天市場店
November 19, 2018
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みなさん、こんばんは。昨日まで紹介していたBBCドラマ『ホロウ・クラウン』で国王を演じていたジェレミー・アイアンズが出演したドラマ『ブライズヘッドふたたび』の原作本を二回にわけて紹介します。回想のブライズヘッド〈上〉Brideshead Revisitedイーヴリン・ウォー小野寺健【訳】岩波文庫やや長い序章は、第二次大戦の最中から始まる。国内を移駐するばかりの連隊は、だれきっていた。中隊長のチャールズは、下からは不満たらたら、上からは叱咤激励される、いわゆる管理職ポジションに疲れていた。その彼の耳がしゃんとしたのは、ある場所を聞いた時だ。庶民出身の部下フーパ―に「あんなのはあんただって見たことがない」と言われたライダーは「わたしは前にここに来たことがあった。ここのことは何でも知っていた。I had been there before; I knew all about it.」と答える。 ここからライダーが「前に来たことがある」邸に「家族が住んでい」たセバスチャンの回想に入っていく。怠惰な軍隊、終わりの見えない戦争などマイナスの雰囲気がぱぁっと晴れて、明るい青春時代-過去-に遡っていくイメージだ。皮肉屋のウォーには珍しく、本作には、このシーンをはじめとして美しく儚い描写が多い。この「美しさ」と「儚さ」を併せ持つ登場人物が、セバスチアンだ。 「魅惑的な美しさと自由奔放とも見える奇行とで飛びぬけて目立つ存在」だったセバスチャンとは、酔ったセバスチアンがチャールズの部屋に吐くといった、おおよそ美しくない出会いから始まる。ただし、その後セバスチアンは、チャールズの部屋に沢山の花を贈るという王子様みたいなフォローをするかと思えば、大学生にもなってアロイシアスという熊のぬいぐるみを抱えている、今でいうところの不思議ちゃんだ。 現在三十九歳、中年にさしかかろうとするライダーが懐かしむのは、青春時代の一角を彩った風変りな友人セバスチアン、そして彼らが最も生きやすい空気を作ってくれた青春の倦怠(The langour of Youth)、そして彼と共に生きた時代だ。第一次大戦後、市民階級が台頭し、貴族達が財産を切り売りしなければならなくなるのは、英国ドラマ『ダウントン・アビー』でも描かれた。今までなら何不自由なく親の財産を食いつぶして生きてきた貴族たちが、自分の力で財産を築く逞しき市民階級に次第に追いやられてゆく。チャールズが回想する過去の時代においてもその兆しは既に見えているが、セバスチアンは既に当時の貴族社会からも落ちこぼれている。実家を指して「あそこにぼくの家族が住んでる」とは言っても、「あれがぼくの家」とは言わなかったセバスチアンはどこにも居場所が見つけられない事を十分自覚しており、酒に溺れていく。上巻はチャールズが学校をやめると父親に宣言し、セバスチアンがとうとう退学になってしまう所までを描く。学園という一種のアルカディアを出て、下巻では大人の世界に踏み出した二人が、さあ、どうなるか。『中古』回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)KSC
November 18, 2018
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みなさん、こんばんは。横綱稀勢の里がいけませんね。負け続きです。休場してしまいました。BBCが制作したドラマ「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」を見ています。オリンピックイヤーにカルチュラル・オリンピックという企画が起こり、それにBBCが応えた形で作られたシリーズです。日本でも蜷川さんが上演しフォルスタッフ…吉田鋼太郎さんハル王子…松坂桃李さんのキャスティングでした。ホロウ・クラウンThe Hollow Crownヘンリー4世 PartIIHenry IV - Part IIExecutive Producer サム・メンデスほか出演サイモン・ラッセル・ビール 英国アカデミー賞テレビ部門最優秀助演男優賞ジェレミー・アイアンズ トム・ヒドルストン ミシェル・ドッカリー ジュリー・ウォルターズ イアン・グレン監督リチャード・エア父ヘンリー四世の軍に参加しホットスパーを倒したハル王子だったが、ロンドンに戻るとフォルスタッフら悪友との関係は昔のまま。そんな折にヘンリー四世が病気で倒れる。ヘンリー四世が死ぬ直前に和解したハル王子は、ヘンリー五世として父の後を継ぐ。ヘンリー五世誕生を知ったフォルスタッフは昔の馴染みとして恩恵を受けようとお祝いに駆けつけるが。 ホットスパーを倒して(フォルスタッフがちゃっかり自分の手柄にしてるが)ああやっと王子もまともになってくれた!と思ったのもつかの間、また昔の悪友と出歩いている。そりゃあヘンリー4世がっくりきますよね。でもウォリック伯がいいフォローをしてくれる。「殿下は異文化の中で他の言語を学んでいるだけ 時が来たら殿下は戻ってきます 人を見極める際の物差しとなる過去の悪さは強みに変わりますMy gracious lord, you look beyond him quite. The Prince but studies his companions Like a strange tongue, wherein, to gain the language, 'Tis needful that the most immodest word Be look'd upon and learnt; which once attain'd, Your Highness knows, comes to no further use But to be known and hated. So, like gross terms, The Prince will, in the perfectness of time, Cast off his followers; and their memoryShall as a pattern or a measure live By which his Grace must mete the lives of other, Turning past evils to advantages.」しかし王の気は晴れない。「巣をつくった蜂はめったに離れない 腐肉の味を忘れんのだ 'Tis seldom when the bee doth leave her comb In the dead carrion. 」TLで流れて来た時「単なるサービスショット」 と思ったが実はこの頃ハル王子は友人が「自分の前で自分の事をどう言うか」より「自分がいない時自分の事をどう言うか」を気にしている。この時も「妹と結婚するって言ってるのか?」とポインズに聞いた後長い間を取る。この『間』はもう一人の悪友、フォルスタッフの本音を聞きに行った場面でも繰り返される。屋根裏でフォルスタッフがハル王子の事を「中身はうすっぺら 料理番くらいしかできんA good shallow young fellow: a' would have made a good pantler, a' would ha' chipp'd bread well.」「王子が奴とつるむのは王子も同類だからさ」と散々こき下ろしているのを聞いて、いざ、フォルスタッフの前に現れた時。「お前俺のこと散々言ってくれたよなNot to dispraise me, and call me pantier andbread-chipper and I know not what?」と言うと、当然フォルスタッフは弁明する。本気ではないと。好きな女が王子に惚れるのを止めようとしただけで本心は違うんだと。「ハル 本当に違うんだ 信じてくれ」そう言ったフォルスタッフを、ハル王子がじーっと見つめる。で、何も言わずに去っていく。後々の事を考えると、ハル王子がフォルスタッフを見切ろうと決めたのは、この時だったのかも。マクベスなどシェークスピアにつきものの王と眠りの台詞をヘンリー4世はたったひとり、回廊を彷徨いながら口にする。ここはジェレミー・アイアンズの独壇場です。音楽も聞こえません。「もっとも貧しい臣民さえ寝静まる時間だ 安らかな眠りよ 大自然の優しい乳母よ 私が怖いのか 瞼の幕を下ろしてくれず五感を忘却に渡してもくれないO sleep! O gentle sleep! Nature's soft nurse, how have I frighted thee, That thou no more wilt weigh my eyelids down, And steep my senses in forgetfulness? 眠りよ なぜあばら屋に眠りは訪れる?居心地の悪い寝どこだろうと 飛び回る蚊の群れも気にしないくせに 香をたいた王の寝室の天蓋付きの寝台に眠りは来ない たとえ優しい調べに包まれていても 愚鈍な眠りの神よ 下品で汚れた寝床には寝る癖に なぜ王の寝台は夜警のように不眠にする?マストで居眠りをする少年水夫でさえ荒波をゆりかごにして眠りで目を閉じる その国は海を揺さぶり大波を立てその大波は怪物のようにうねり使者すら目覚めそうな轟音を立てるというのに 不公平な眠りよ 嵐の中ですら少年水夫に眠りを与えるではないか なのにこの静かなこの飢えなく静かな夜にお前を誘うためにあらゆる手を尽くす王は拒むのか?幸せな平民たちよ ぐっすり眠れ 王冠の頭に安眠は訪れないCan'st thou, O partial sleep! give thy reposeTo the wet sea-boy in an hour so rude; And, in the calmest and most stillest night, With all appliances and means to boot,Deny it to a king? Then, happy low, lie down!」王位簒奪の誹りを受け自らも責めずっと眠れなかった王がやっと眠れる時が来たと思ったらそれは永遠の眠り=死だったという。 王冠の重みがわかりますね。 王が死んだと思って王冠を持って行ってしまうハル王子。「私が王冠を受け継ぐMy due from thee is this imperial crown, Which, as immediate as thy place and blood, Derives itself to me.」とっても感動的な場面なのにこの後一波乱が。「眩暈がする…」とくらくら倒れ息も絶え絶えだったヘンリー4世が王冠がないのに気づくとすたすたやってきて、王座に座るハル王子を引きずり下ろす。理屈で考えたらあり得ない病人なのにジェレミー・アイアンズが長台詞で圧倒する。マクベスなどシェークスピアにつきものの王と眠りの台詞をヘンリー4世は回廊を彷徨い「王冠の頭に安眠は訪れない」と結ぶ。王位簒奪の誹りを受け自らも責めずっと眠れなかった王がやっと眠れる時が来たと思ったらそれは永遠の眠り=死だった。 父から子への遺言「覚えておけ 反抗的な連中は海外遠征に送れ 国外に注意を逸らせば過去の恨みは忘れる」国内の不満を解消する策として外に眼を向けさせる外交政策は現代にも通じる。「ヘンリアド」の中で唯一平和裏に王権が譲られるペア。 まだヘンリー4世の死を知らないフォルスタッフが「友達の事ネタに王子に話したら王子顔をくしゃくしゃにして笑うぞ」と言うシーンの後に感情を消したハル王子が着々とヘンリー5世の顔になっていくカットを続ける。ああこれはすっごい意地悪だなぁ。PartIに比べてドラマが少ないと言われるPartIIですが、どうしてどうして、一番濃かったフォルスタッフとハル王子の仲が少しずつ来るべき別れに向かってゆく、かなりドラマティックな回。PartIはいぎたなく寝ているフォルスタッフに「お前が時間なんか気にするのか?」と笑うハル王子から始まった。戴冠式にあの時の面影はない。ラストカットはヘンリー5世でなく茫然としたフォルスタッフの顔。二人で始まり二人で終わる二人のドラマ。 嘆きの王冠 ホロウ・クラウン ヘンリー四世 第二部 【完全版】 [ ジェレミー・アイアンズ ]楽天ブックス
November 17, 2018
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みなさん、こんばんは。大谷選手が新人王に選ばれましたね。こちらのドラマでも王が登場します。BBCが制作したドラマ「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」を見ています。オリンピックイヤーにカルチュラル・オリンピックという企画が起こり、それにBBCが応えた形で作られたシリーズです。日本でも蜷川さんが上演しフォルスタッフ…吉田鋼太郎さんハル王子…松坂桃李さんのキャスティングでした。ホロウ・クラウンThe Hollow Crownヘンリー4世 Part1Henry IV - Part 1Executive Producer サム・メンデスほか出演サイモン・ラッセル・ビール 英国アカデミー賞テレビ部門最優秀助演男優賞ジェレミー・アイアンズ トム・ヒドルストン ミシェル・ドッカリー ジュリー・ウォルターズ監督リチャード・エア リチャード2世を倒し、ランカスター朝を開いたヘンリー4世は、スコットランドおよびウェールズでの争乱、そして悪友フォルスタッフと共に放蕩を尽くす息子ハル王子に悩まされる。ホットスパーは父ノーサンバランド伯、ウスター伯らとともに反乱をおこすが、ハル王子はホットスパーを倒し、ヘンリー4世は勝利をおさめる。 まず冒頭に出てくるのがノーサンバランド伯にヘンリー4世が自分の息子を嘆く台詞。「悲しくなるな ノーザンバランドは立派な息子で幸せだ 我が息子ハリーの放蕩ぶりは目に余る おまえのハリーが私のハリーだったら」二人は同じ名前なんですね。片方は勇猛果敢で敵と戦っているのに、ハル王子は場末の酒場でフォルスタッフと酔っ払ってる。でも居場所は知らせてるんですね。 王権が神から与えられることなんてないのを王位簒奪した自分の存在で実証している、だからこそ自分の代だけでも王権をスムーズに渡したいヘンリー4世。演じるジェレミー・アイアンズ さすがの貫禄です。 王との会見を前に、予行演習をしていた王子とフォルスタッフ。最初王役を務めるのはフォルスタッフ。「よいか、王になったら今までの仲間は全部切り捨てろ。だがただ一人、フォルスタッフだけは大事にしろNo, my good lord, banish Peto, banish Bardolph, banish Poins, but for sweet Jack Falstaff, kind Jack Falstaff, true Jack Falstaff, valiant Jack Falstaff, and therefore more valiant, being as he is, old Jack Falstaff, banish not him thy Harry's company, banish not him thy Harry's company. Banish plump Jack, and banish all the world.」そして今度王の役になるのはハル王子。話し方をアイアンズに寄せてきてます。今度はフォルスタッフを散々にけなします。そしてハル王子は「フォルスタッフを捨てないで」と懇願する他でもないフォルスタッフ演じる王子を見つめて、ちょっと悲しそうな顔をします。そして「捨てる」と言うのです。ここだけ真顔なので、視聴者は「もう王子はこの時心を決めていたのだ」とわかるわけですね。ヴェルヴェットボイスのサイモン・ラッセル・ビールが懇願すると本当にかわいくて可哀そうで、ほだされたくなります。でも、王になることを決めているハル王子は揺るがない。立つ瀬のなくなったフォルスタッフは王子役として自己弁明を始めたところ、突然バードルフが知らせをもって入ってきます。邪魔されたフォルスタッフは、こう叫んで劇中劇をつづけようとしますが、結局さえぎられてしまいます。「芝居はしまいまでやらせてくれ。Play out the play.」フォルスタッフの芝居とハル王子の芝居は最初から違っていたのです。ホットスパーと対峙するときの台詞が大仰です。「私は皇太子だ I am the Prince of Wales; and think not, Percy,私と栄誉を分け合えると思うなTo share with me in glory any more:二つの星が一つの軌道で回ることはできない。Two stars keep not their motion in one sphere」ハル王子詰問の場。「王はちゃらちゃら街中に出て行くもんじゃない。有難味が薄れる」という父。「放蕩三昧の王子が豹変した方が後の喜びが大きい」と織田信長ばりの理屈を言う息子。身振り手振りを交えて叱責されるハル王子の受けの芝居もいい。 ハル王子のライバルとして登場するホットスパー(奥様役はダウントンアビー のミシェル・ドッカリ―) は最初から最後までずっと沸騰してる。ほんと、名は体を表す。酒場で皆とふざけつつも本心をモノローグで語るハル王子との差は最初から出てる。 妻が「あなた様子がおかしい。秘密を打ち明けて」 と夫に迫るシーンはシェイクスピア劇でよく出てくる。わかりやすいのが『マクベス 』(言ってます)今回ホットスパーは「女に言ったら秘密が漏れる(女はおしゃべりで秘密が守れない)」と断る。今だと顰蹙? コスプレが季節外れのサンタみたいなフォルスタッフ。戦った相手の数は盛るしハル王子の手柄は横取りするし狡くてだらしないキャラだけどそんな彼にシェークスピアが「名誉とは何だ?空気だ。ただのこけおどしだWhat is honour? a word. What is in that word honour? what is that honour? air. A trim reckoning! Who hath it? he that died o' Wednesday. Doth he feel it? no. Doth he hear it? no」という大切な台詞を託す。嘆きの王冠 ホロウ・クラウン ヘンリー四世 第一部 【完全版】 [ ジェレミー・アイアンズ ]楽天ブックス
November 16, 2018
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みなさん、こんばんは。APEC首脳会議が開かれますね。中国とインドで世界の人口の大半を占めていますが、この国には知る人ぞ知る数学の天才がいました。彼と英国の教授の交流を描いた映画奇蹟がくれた数式を見ました。奇蹟がくれた数式THE MAN WHO KNEW INFINITY出演ジェレミー・アイアンズ デヴ・パテル スティーヴン・フライ トビー・ジョーンズジェレミーノーサム1914年のイギリス。数学者としてケンブリッジ大学で生徒を教えているG・H・ハーディは、インドから届いた手紙に記されていた驚異的な発見に夢中になる。差出人であるラマヌジャンを大学に招き絆を育んでいくハーディだったが、ほかの教授たちは学歴もなく社会的階級も低いとして彼を拒絶する。偏見や差別にさらされた末に重い病を患ってしまうラマヌジャン。そんな彼に代わって、ハーディは数式を証明しようと立ち上がる。アインシュタインと並ぶ天才と呼ばれたインド人シュリニヴァーサ・ラマヌジャンとイギリス人数学者G・H・ハーディの友情が軸。しかし、実は二人は出会った時から一目ぼれ!という事はなかった。むしろハーディとの出会いは最悪。何せハーディときたら数学にしか興味がなく、インド人だからとやっかまれ、殴られたラマヌジャンが目の前にいるのに、彼の顔を注視することなく、あーだこーだと「君の公式はここが間違っていて云々」とやるのだ。それでなくても直感で公式を発表するラマヌジャンとそれをきちんと証明して発表しようとする石橋を叩くハーディは水と油で衝突しがち。「自分を呼んでくれたんだから」と穏やかに我慢していたラマヌジャンも、遂に「先生は僕を見もしないし知ろうともしない 先生は信仰もない 家族の写真もない 先生は何者ですか?ここに来るため多くを犠牲に 僕には何もない 顔のあざに気づいてます?僕には妻がいるんです」と爆発する。ただ、そういわれるとしゅんとなって反省しとことんラマヌジャンのために尽くすので、ハーディは決して悪い人ではない。テレビドラマ【シャーロック】では憎々し気なカルヴァ―トンを演じたトビー・ジョーンズが、二人の仲を取り持つ数学者ジョン・リトルウッドを演じる。「おそらくリトルウッドはハーディの想像の産物にすぎない ミスをした時責任転嫁するために」なんて言われるが、人付き合いの下手くそなハーディを陽に陰に支援する。「ラマヌジャンを王立協会員&フェローにしたい」というハーディの熱い思いに応えるために、何と戦地から駆け付けるのだ。背は小さいが、ハートは大きい。他、戦争に批判的な数学者バートランド・ラッセルも好印象。結核に侵され帰国して若くして亡くなったラマヌジャンだが、1976年ラマヌジャン最後の研究を記したノートが見つかった ベートーヴェンの10番交響曲に匹敵すると言われるそうで、インド人ならラマヌジャンの名前は皆知っているほどの有名人。奇蹟がくれた数式【Blu-ray】 [ デヴ・パテル ]楽天ブックス
November 15, 2018
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みなさん、こんばんは。今日もまたまた病気の話です。といいますか、偉人の死についてのお話です。病気で死ぬくらいならまだいいほう、という話が出てきますよ。偉人は死ぬのも楽じゃないHow they croakedThe Awful Ends of The Awfully Famousジョージア・ブラッグ河出書房新社生と死は時と場所を選べない。誰もが安らかな死を迎えたいと思っているが、有名人ほど周囲が生かそうとする。努力が実を結べばよいが、逆効果の場合もある。 たとえば、ツチハンミョウ。強い毒を持つカブトムシだ。何に使うのかといえば、つぶして乾かして粉にしたものを患部に塗るのだ。当然体は毒を入れられた時の、当然の反応をする。水ぶくれができる。するとそこから血を抜く。瀉血である。これが当代きっての効くと言われた治療だった。「悪い血を抜けば治る」と信じた故の行為だが、人工的に貧血状態を作るわけで、弱った心臓を更に弱らせる効果でしかない。ジョージ・ワシントンも、モーツァルトもツチハンミョウによって弱った命を絶たれてしまった。なんてことだ。 本書は19人の有名人の死を扱っているが、評伝にしては辛らつだ。例えばカエサルの章。カエサルは「善き独裁者」を実践する。金利を下げ、土地を分配し、植民地を築いて退役軍人を住まわせる。政敵にも恩赦を与えた。これはなかなかできることではない。許すより殺すほうがはるかに簡単だからである(今でもそう思っている人はいる)。新大陸発見に乗り出す冒険家コロンブスに関しては何が楽しくてそんなことをするんだろう。頭がいかれたに違いない。誰もがそう思った。(中略)たしかにそれなりには頭もいかれていた進化論を唱えたダーウィンは生物は長い年月をかけて進化し、一番強いものだけが生き残るとこの学者は考えた。あいにくダーウィン自身は弱いほうの部類に入る。あまり敬意を抱いて書いている文章ではない。くすり、と笑みがこぼれてしまいそうだ。 とりわけポカホンタスの章は、ディズニーアニメを見て夢を抱いている子供達には絶対に読ませたくない。だが、おそらくこちらが真実だろう。 二十世紀の初めまで、瀉血は続けられたらしい。少子高齢化社会で「高齢者が長生きすると云々」などと論議もかまびすしいが、わずか一世紀前を振り返ればこの始末。抗生物質、ありがたやありがたや。【バーゲン本】偉人は死ぬのも楽じゃない [ ジョージア・ブラッグ ]楽天ブックス
November 14, 2018
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みなさん、健康って大事ですね。健康診断受けましたか?昔は治らない病気がこんなにありました。聞いたことのない病もありますよ。世界史を変えた13の病History’s Worst Plagues and the Heroes Who Fought Themジェフリー・ライト原書房1518年、ストラスブールで若い女性が踊り出す。きっと楽しいことがあって踊っているのだろう。最初は周囲の人達もそう考えていた。ところが、彼女はいつまで経っても踊りを止めない。どころか、彼女は踊ることに全く喜びを感じていなかった。えええ‼それでどうして踊ってるの?映画『赤い靴』の実写版のようだ。彼女は通りで気絶し、目覚めるとすぐに踊り出し、そして何十人もの町の人々が彼女に続いた。足から血が出て骨が見えるほどだったというから明らかに異常だ。 これ、病気らしい。病気なら原因があるはずだが、現在に至るまでよくわかっていない。昔だから魔女だと言われても仕方がないが、町の人達は彼女を荷馬車に乗せて聖堂に連れていったそうだ。そういえば恐ろしい昔話として知っている『ハーメルンの笛吹き男』についていってしまう子供も、もしかしたらこの病気? 医療が発達して、世界史を変えてきた病の多くは根絶された。治療までの過程を描くとプロジェクトX医療版だが、本書はむしろ、治療が困難だった時代に人々がどう病と向き合ったかを描いている。ハンセン病の項では、ハンセン病が流行しているモロカイ島に出向いたダミアン神父の献身的な看護が描かれる。出発前に神父は司教から、感染しないための注意事項を散々聞いていたが、上陸直後その教えを全て破ってしまう。やがてダミアン神父は湯を足にこぼしたのに、少しも熱いと感じないことに気づく。発病したのだ。死後ダミアン神父は中傷されるが、病を憎んで病人を排除しなかった彼の生き方を著者は絶賛している。踊る女性に接した村人たちもダミアン神父も、病と病にかかった人とをきっちり分けている所がいい。憎むべきは病なのに、ともすると我々は病人をも忌避し、本書に記載されているロボトミーにおいては人格をも変えてしまおうとする。偏見は病ではないから厄介だ。だが、自分が自覚しさえすれば、いつでも、どこでも治せるのだ。世界史を変えた13の病 [ ジェニファー・ライト ]楽天ブックス
November 13, 2018
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みなさん、こんばんは。芸能界ではおめでたいニュースが続きますが、離婚のニュースも同じくらいありますね。歴史上有名なカップルの破局について書いた作品を紹介します。史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語IT Ended Badly:Thirteen of the Worst Breakups in Historyジェニファー・ライト原書房恋している時はみんな幸せだ。周りが全てバラ色に見えてくるし、ちょっとへこむことがあっても恋する人のことを考えれば心はウキウキ。 ところが恋にも終わりは来る。穏やかに終わりたいが、相手がいることなのでそうもいかない。とはいえ、この本に出てきたような別れ方はしたくない。何せ最悪は殺される。 「キャロライン・ラムとバイロン卿」。英国ドラマ「女王ヴィクトリア」で若き女王に熱愛されていたメルバーン郷は、妻に浮気されていた。浮気相手がバイロン郷だ。自分がした事は全部自分に返ってくるとわかっているはずなのに、「私だけは特別」と思いたいのもまた恋愛特有の心理。キャロラインはバイロンにつきまとい、何とバイロンの「あるもの」を要求。どうするのだそれを得て。魔女っぽく秘薬でも作るのか。恋にやつれた彼女は「骸骨みたい」とまで言われてしまう。ひどいよバイロン。 相手にけなされるという点で共通しているのが「ジョン・ラスキンとエフィー・グレイ」のカップル。エフィー・グレイ ラスキン、ミレイと生きた情熱の日々でも紹介したが、ラスキンはエフィ―との新婚初夜でショッキングなものを見てしまったらしく(いやー、アレをショッキングと言われても、さ…)、妻を生殺し状態に。だがエフィ―にとってラッキーだったことに、次のお相手ミレイが現れる。裁判沙汰にもなってすったもんだした挙句、離婚は成立。しかしミレイがエフィ―の妹によろめいたりとその後も前途多難は続く。まあ、恋愛だからね。「オスカー・ワイルドとアルフレッド・ダグラス卿」は同性愛カップル。オスカー・ワイルドとキャンドルライト殺人事件などというフィクションが作られるほど有名だった二人の仲も、ダグラス郷がワイルドを一方的にディスりまくるという最悪の結果に。それでもダグラスに反撃できないワイルド、恋は盲目。 この本を読むのは「自分の別れはこれよりまし」と思いたいから?何だか切ないなぁ。13という数の集め方が何だか意味深。12なら一ダースなのに、13は確か魔女の1ダースだったはず。不吉な話だからぴったりだと思った?史上最悪の破局を迎えた13の恋の物語 [ ジェニファー・ライト ]楽天ブックス
November 12, 2018
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みなさん、こんばんは。ムンク展が日本で開催中ですね。戦争の時にはナチスに多くの絵画が奪われたものです。そんな実話をもとにした映画黄金のアデーレ 名画の帰還を見ました。黄金のアデーレ 名画の帰還WOMAN IN GOLD出演ヘレン・ミレン ライアン・レイノルズ ケイティ・ホームズ ジョナサン・プライスダニエル・ブリュール エリザベス・マクガヴァン フランセス・フィッシャーモーリッツ・ブライブトロイ監督サイモン・カーティス音楽ハンス・ジマー冒頭。グスタフクリムトがアデーレを描いている。「Move a little to the left, please. Adele, you are restless. アディーレ もうちょっと左へ動いて 君は緊張してるね」「I worry too much, you know that.ええ 怖くて 」「何を怖がると? About what? 」「The future.未来を 」そして現代―アディーレの言っていた未来へパン。 この後も映画は過去と現在を行き来しながら、ウィーンのユダヤ人が次第に追い詰められていった経緯を描く。主人公のマリアもその一人。アメリカ在住の82歳のマリア・アルトマンは、グスタフ・クリムトが描いた伯母の肖像画で第2次世界大戦中ナチスに奪われた名画が、オーストリアにあることを知る。彼女は新米弁護士ランディの助けを借り、オーストリア政府に絵画の返還を求めて訴訟を起こす。法廷闘争の一方、マリアは自身の半生を振り返り……。ヘレン・ミレンはかわいい。ちょっと前にイギリスドラマで放映されていた『第一容疑者』シリーズでは男性社会の中で頑張るテニソン警部を演じていた頃は、きっつい顔立ちの怖いオネエサンだったのに、ストリップで町おこししようとする女性や現英女王を演じる彼女はかわいい。ついでだが「王冠が重くって」などとドキュメンタリーでコメントするリアル女王もきっとかわいい。彼女の実在の人物を演じる割合が、ここのところ増えてきているように感じる。ナチスに奪われた世界的に有名なグスタフ・クリムトの名画を取り戻すため、オーストリア政府を相手に返還訴訟を起こした女性マリアも実在の女性だ。とても82歳には見えないくらいおしゃれで「007のショーン・コネリーの気分だわI wasn't going to miss all the fun. This is like a James Bond film, and you're Sean Connery!」と子供みたいにわくわくしたかと思えば、クリムトの作品が美術館に留め置かれることになったと聞いて「あなた方は絵が奪われた状況を隠蔽しようとしてる 叔母が未来を知っていたらあれを書いたと?博士 あなたは私の叔母をご存知ない 叔母がこの判決を聞いたらオーストリア人と名乗るのを恥じたでしょう 恥を知れ!」と毅然とした態度で応じる。相対するライアン・レイノルズ演じる弁護士がまるでお坊ちゃんみたいで、ヘレン・ミレンとの俳優としての格がそのまま役柄にも反映されていたみたいだった。黄金のアデーレ 名画の帰還 [ ヘレン・ミレン ]楽天ブックス
November 11, 2018
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みなさん、こんばんは。アメリカの中間選挙が終わりましたね。引き分けみたいな結果でした。さて、アメリカはどうなるのでしょうか。日台合作映画一分間だけを見ました。一分間だけA MINUTE MOREファッション雑誌の編集者として働くワンチェン。仕事漬けの忙しい毎日を送る彼女の生活を献身的に支えるのが、同棲中の恋人ハオジエ(浩介=原作の名前の台湾読み)。そんなある日、子犬のゴールデンレトリバーのリラに一目惚れしたワンチェンは、ハオジエと協力してリラを飼うことに。2人で一緒に育て始めるが、ワンチェンが仕事にいっそう夢中になっていき、少しずつ生活のバランスが変化していく。言い争いやすれ違いが多くなり、ワンチェンの仕事にもトラブルが続く。次第に大切なものが見失われていくなかで、リラが余命わずかな病に侵されていることが分かる…。書いてみると分かる通り、ベタな内容。 えーと、ずっと映画を見ていて気になったのは、ハオジエは専業主夫なのか?という事。あまり彼が仕事をしているシーンが出てこなかったし、途中でリラの散歩中に知り合った女性の仕事を手伝っているので、自由人というスタンス?一切彼の仕事に関する説明がないので、途中で二人がリラの世話を巡って喧嘩するんだけれど「愛情云々はともかく、余裕のある方がするべきだな」とは思った。 原作では殺処分になるはずだったリラを拾ってくるが、映画では「拾ってください」の段ボール箱に入っていたのを拾う設定。まあ、殺処分という名称がきつかったからだろう。芸達者はゴールデンレトリーバー君。最初に出会った時にしてくれたハイタッチを病の身で一生懸命する末期に至る演技までこなしてくれる。一体どうやって教え込んだのだろう。目が垂れ目気味なので、じっと見つめるシーンでは自然に悲しい顔になる。人間のどんな表情演技も勝てないなぁ。前半かなりワンチェンが切れたりリラをなおざりにする場面があるが、その描写が嫌になったというレビュアーもいた。ヒロインの後の反省っぷりを際立たせるために必要だったのだろうが、どこまで嫌な人にするか、加減が難しい。一分間だけ [ ピーター・ホー[何潤東] ]楽天ブックス
November 10, 2018
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みなさん、こんばんは。本来アメリカ大陸に住んでいた先住民でありながら、インディアンは土地を取り上げられました。そして彼らが追いやられた先には石油があったため、彼等はにわか大尽になりました。そこから始まるきな臭い事件について書かれた本を紹介します。花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生デイヴィッド・グランKiller of the Flower MoonThe Osage Murders and the Birth of the FBI早川書房 映画『タルサ』のヒロインは、オクラホマに住む牧場主の娘チェロキーだ。その名の通り先住民の血を引く彼女は石油採掘の塔が倒れてきて父親を失い、最初は石油採掘にうんと言わなかった。「あなたのやり方が嫌いよ。貴方達石油業者は私達の土地にやって来て、小川を汚し、私達の牛を殺した、そして私の父もね。Because I don't like the way you operate. You oilmen come into our country, pollute the streams, kill our cattle, yes, and our men, too. 」「君はまるで子供みたい、いや、自動車に弓矢で向かっていった君の先祖みたいだ。土地の下には富が埋まっているというのに。You're being childish, like your Cherokee grandparents who shot arrows at the first locomotive. The wealth is under the ground, not on top of it. 」 油田が焼け落ちて、金の亡者になり果てた彼女が改心する。しかしあの時代、燃えたのは石油だけではなかった。 1920年代、禁酒法時代のアメリカ南部オクラホマ州。先住民オセージ族が「花殺しの月の頃」と呼ぶ5月のある夜に白人の夫を持つ先住民の女性が行方不明になり銃殺体で発見される。それは、オセージ族とその関係者20数人が、相次いで不審死を遂げる連続殺人事件の幕開けだった。 私立探偵や地元当局が解決に手をこまねくなか、のちのFBI長官J・エドガー・フーヴァーは、テキサス・レンジャー出身の特別捜査官トム・ホワイトに命じ、現地で捜査に当たらせる。 開拓のために先住民を追いやった地に、皮肉にも石油という遥かに大きな利権が埋まっていた。もともとの先住民達の暮らしも祖先の地も奪ったのだから、見返りにそれくらいいじゃないか。と、考えるほど当時のアメリカ人はお人よしではなかった。利権があるなら、そして法律に無知である相手なら、どこからでも、どこまででも、搾取しつくすのがアメリカだった。自由と平等は、あくまで彼等がアメリカ人と呼ぶ人種だけのもので、差別する側の先住民には与えないことが当たり前だった。 捜査官達は危険を顧みず潜入捜査を行い、真犯人を逮捕した。ところが彼等を指揮するフーヴァー長官の念頭にあったのは、正義感だけではなかった。本書の副題は「The Osage Murders and the Birth of the FBI」。この事件の解決によって名を売ったフーヴァーは、BI(Bureau of Investigation)でしかなかった部署をFederal Bureau of Investigation=連邦捜査局に押し上げた。歴代大統領の弱みを握り長くトップの座に君臨し続けた一方で、人種差別主義者でもあったフーヴァーは、この事件を忘れ去った。 だが、どうしても忘れられない人達がいた。最終章は彼等のためにある。自分が最も信じていた国と人に裏切られて、それでも生き続けなければならない人達の苦しみも悲しみも、「自由と平等の国アメリカ」の地下深くに澱んでいる。本書はやっとその深みにたどり着いた好著である。マーティン・スコセッシ&レオナルド・ディカプリオによる映画化決定。花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生 [ デイヴィッド・グラン ]楽天ブックス
November 9, 2018
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みなさん、こんばんは。毎日事件が新聞紙面やニュースをにぎわわせていますね。最初の頃の刑事がどんなだったか知りたくありませんか?こちらは小説のモデルになった事件を担当した最初の刑事についてのノンフィクションです。最初の刑事 ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件The suspicions of Mr.Whicher or the Murder at Road Hill Houseケイト・サマースケイル早川書房 『シャーロック・ホームズ』のレストレード警部、『名探偵ポアロ』のジャップ警部、『金田一耕助』の等々力警部…ミステリ小説では、警察は常に探偵の引き立て役だ。一般人でなく、捜査のプロが一目置く存在だと位置づけることで、探偵の優秀さを証明する。しかし、現実には我々は新聞やニュースで捜査関係者による犯人逮捕の記事を目にする。ならば現役刑事が、探偵に代わる能力の持ち主であるということだ。 1860年6月29日-30日。ヴィクトリア朝時代の英国で、3歳の男児サヴィル・ケントが惨殺された。行方不明になったのが夜で、子供なのだから行動範囲は狭い。素人判断でも「犯人は男児の身近にいた者」と見当がつけられる。しかし早々に証拠品となる“あるもの”が消え、悲惨な状態にあった遺体が遺族の感情を考慮して早々に埋葬され、捜査は難航。満を持してやってきたのは、スコットランド・ヤードのウィッチャー警部。 ヴィクトリア朝は、リアルタイムに現代我々が読むミステリ作家が生きていた。ウィッチャー警部を知っていたチャールズ・ディケンズは、以下のように描写している。「ひと目見ただけで部屋の中の家具の特徴を一瞬にしてつかみ、住人の正確な姿を描くことができる(中略)刑事たちの捜査は生きている駒を使ったチェスのようなものであり、どこにも記録はされていない」「品行には非の打ちどころがなく、並はずれて頭がいい。態度にのらくらしたところもこそこそしたところも、まるでない。鋭い観察眼と敏捷な理解力を感じさせる話しぶり。」「自分が何かを確信すると「わたしが生きているのと同じくらい確かだ」と言う。そして手がかりを見つけると「もうこれで十分!」と言うのだ」また、医師で作家のアンドルー・ウィンターも刑事達についてこう述べる。「のどもとまでボタンがきっちりかけられた巡査の上着をつかめないのと同じで…教則本の指示するとおりにだけ動き、考え、しゃべる機械」 決め台詞まであって、まるでホームズ。これほどの名刑事が登場するならば、難事件もたちどころに解決しそうだが、予定調和にならないのが現実の辛いところ。 前述のように証拠物件が存在せず、状況証拠と自白を含む証言に頼るしかない。お定まりのような地方捜査陣のスコットランドヤードからやってきた余所者刑事に対する反発もあって、捜査はなかなか進まない。当時この事件は世間の注目を集め、現代と同じようにマスコミが捜査状況を逐一報道するため、民衆とマスコミという、見えない敵がウィッチャー刑事を追い詰める。また、刑事という職業に対する世間の目も冷たかった。真相にたどり着いておきながら、全面解決できなかった刑事の無念はいかばかり。 義侠心や無念が、ミステリ作家達の共通認識としてあったかどうかはわからない。ただ、 6年後の1887年、アーサー・コナン・ドイルがサーロック店ホームズシリーズの第一作を書く。ワトソンのホームズ評は「推理や観察にかけては世に比類のない完全な機械」だった。最初の刑事 ウィッチャー警部とロード・ヒル・ハウス殺人事件 [ ケイト・サマースケイル ]楽天ブックス
November 8, 2018
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みなさん、こんばんは。村上春樹さんが母校に資料を寄贈するそうですね。膨大な数になりそう。さて、今日ご紹介するのは美しい歌声を持つヒロインの映画です。エール!LA FAMILLE BELIER/THE BELIER FAMILY フランスの片田舎の農家であるベリエ家は、高校生の長女ポーラ以外、全員が聴覚障害者。ある日音楽教師トマソンに歌の才能を認められ、パリの音楽学校で行われるオーディションを勧められたポーラは喜ぶものの、歌声を聴けない家族から反対される。家族のコミュニケーションに欠かせないポーラは、考えた揚げ句……。 原題はベリエ家。邦題は随分と情報をそぎ落として、彼らの気持ちをぎゅっと込めた。映画が始まってまず違和感を抱くのは、ベリエ家の食卓がいやに賑やかなことだ。賑やかというのは控えめな表現で、実はかなり皿をがちゃがちゃやる音がうるさい。彼等は聞こえていないので全然気にならないが、健常者は気になる。 これと全く逆のシチュエーションになるシーンが、クライマックスになる。ポーラの歌を発表会で聞きに来たベリエ家と同条件で、ポーラの歌や音が一瞬消える。そして歌い終わって皆が拍手した時に、再び音が戻ってくる。耳が聞こえる視聴者には音はいつか「戻ってくる」。しかしベリエ家には音が戻る事がない。歌の才能を持った少女だけが、家族の中で唯一健常者として生まれる。手話をして外界との接触を担当しているのが彼女だけなので、働き詰めの彼女の負担は大きい。それなのに父親が選挙に出ると言い出してますますベリエ家は多忙に。家族は彼女がいることが当たり前になっていて、これからも変わることはないと思っている。だがそうなると、彼女の夢は全く閉ざされる。これ、ベリエ家が明るくふるまっているからごまかされそうになるが、未成年の少女で抱え込むにはかなり重いテーマだ。社会福祉の手が入ってこないんだろうか。 彼女の才能を見出す音楽教師がいい。最初は「とばされて田舎の学校に来た!」と不満ばかりだったが、ポーラの声を聴いてからはあれこれと指導し、何とかしてパリの学校に行かせようとする。試験で急遽ピアニストを買って出るところからも、才能がないわけではないことがわかる。 ポーラを演じたルアンヌ・エメラはオーディション番組「The voice」のフランス版でデビュー。この番組はブラインド・オーディションという方式を取っているので純粋に声だけで選ばれたのだそう。エール!【Blu-ray】 [ ルアンヌ・エメラ ]楽天ブックス
November 7, 2018
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みなさん、こんばんは。柔道でロンドン金メダルの松本薫選手が引退を示唆しましたね。野獣なんて二つ名がついていますが、長く続けるのは難しいのでしょうね。二日続けて素晴らしい歌声を持つ主人公が登場する映画を紹介します。映画歌声にのった少年 を見ました。歌声にのった少年 YA TAYR EL TAYER/THE IDOL 紛争の絶えないパレスチナ・ガザ地区で暮らすムハンマド少年。彼の夢は“スター歌手になって世界を変える”こと。仲良しの姉ヌールと二人の友だちとバンドを組み、拾ったガラクタで楽器を作り、街中で歌っていた。だが、ムハンマドの声が“最高”だと信じるヌールは、「カイロのオペラハウスに出る」というとんでもない目標を立てる。 資金稼ぎと練習を兼ねて結婚パーティで歌い、聴く者に言葉を失わせる美しい声で人々を魅了していくムハンマド。だが計画は予想もしない形で終わりを告げる。ヌールが重い病に倒れ、両親が治療費を用意できないまま亡くなってしまったのだ。姉との約束を守るため、ムハンマドはガザの壁を越えて、オーディション番組「アラブ・アイドル」に出場することを決意する。 主人公のモデルとなったのは、人気オーディション番組「Arab Idol」に出場してスーパースターとなり、現在も歌手を続けながら国連パレスチナ難民救済事業機関に関わるムハンマド・アッサーフ。2014年の1カ月間に及ぶ爆撃によって、まだ壊滅状態だったガザで撮影は行われた。ハニ監督は、キャストにガザで暮らす子供を採用することにこだわった。 スポーツの祭典で世界の歴史が動き出す瞬間を私たちは最近見てきたが、文学や絵や音楽は、感情面で容易く国境を越える。美しい。楽しい。気持ちが良い。国と国との境目を開く第一のキーは、人間らしい感情だった。 だが実際に国と国とは違う。腎不全になったヌールにはっきりと選択肢を言う。「人工透析をするか、腎臓を買うか」片方は治療だが片方ははっきりと臓器売買だ。富裕層だけが違法手段(だが医師も認める)によって健康な体を手に入れ、貧困層は、ただでさえ病気にかかりやすい環境で、ただ死んでゆく。そうでなくても爆弾が落ちて生命が脅かされる。ムハンマドは呼吸困難でコンテストの途中倒れてしまうが、貧困層が自分たちと同じ出自のムハンマドにかける期待は私たちの想像を遥かに越えていたに違いない。 ラストで本物が登場し、優勝シーンは実際の映像が挿入される。映画でムハンマドが友人の助けを経て越境するシーンが出てくるが、実は違法だったらしい。パレスチナから外に出るのは難しく、リアルに描けば困る人が出るという理由でフィクションにしている。実際は映画よりもかなり過酷な事があったのではないか。歌声にのった少年 [ タウフィーク・バルホーム ]楽天ブックス
November 6, 2018
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みなさん、こんばんは。解放された森田さん、記者会見していましたね。勇気がありますね。さて、今日もヘレン・マクロイ作品を紹介します。牧神の影Panicヘレン・マクロイちくま文庫全体像ではないが、表紙絵に映っているのは牧神=パンで、Panic(原題)の語源でもある。そして同時に、Panとはギリシア語で「全て」を意味する。舞台となる山荘には牧神の像があり、文字通り全てを見ていた目撃者と言える。 アリスンの伯父が急死し、彼女は陸軍情報部の大佐から伯父が軍のために戦地用暗号を開発していたと聞く。その後、山中のコテージで一人暮らしを始めたアリスンの周囲で、次々に怪しい出来事が…。 何の能力も持たず組織に属してもいなかったヒロインが、渦中の人物の近くにいたばかりに、今度は自分自身がその渦に巻き込まれてしまう「巻き込まれ型」ミステリ。アリスンは従兄の勧めで老犬のアルゴスを連れてオールトンリーという人里離れた山間のコテージに移り住む。頼れる探偵ベイジル・ウィリング博士が登場しないノン・シリーズなので、ヒロインが自力で事件を解決し、姿を見せない不審者とも対決しなければならない。体が弱く老犬しか頼れないヒロインには、かなりハードルが高い。おまけに、元カレと元カレの結婚を阻んできた姉が偶然近くに住んでいて、プライベートでも雑音がうるさい。さあどうなる? 後書きも含めてかなりのページ数が暗号解読に割かれているが、それ以外の部分を読めば、犯人は比較的分かりやすい。牧神の影 (ちくま文庫) [ ヘレン・マクロイ ]楽天ブックス
November 5, 2018
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みなさん、こんばんは。ソフトバンクが勝って、日本シリーズが終わりましたね。二回続けてヘレン・マクロイ作品を紹介します。悪意の夜The Long Bodyヘレン・マクロイ創元推理文庫ウィリング博士もの最後の未訳長編。未訳理由はやはり探偵の出番がかなり少ないことだろう。何せウィリングが登場するのはp271中のp187、物語の7割だ。それまでは夫ジョンの死に不信を抱く妻アリスの独自行動が描かれる。読者はウィリング博士者だという事がわかっているので「いつ彼が出てくるの?」とイライラしたのでは。 やけに強調されるのは、冷戦時代人々がどのように感じていたか。「二つの対戦にはさまれた時代のヨーロッパは、いわば仮面舞踏会のようなものだった。そこでは圧制者は民衆に支持される指導者であり、民衆に支持される指導者が圧制者になった。平和主義者は戦争を始めたがり、戦士が平和のために祈った。自分の右手に自分の左手がなにをやっているか気づかせまいとするスパイや密告者がうごめく世界なのだ。よって、国務省の外交官は、スパイや密告者の左手にポケットのなかの小銭や機密書類を探られていても、気づかないふりをして右手の握手に応じなければならない。」「突然襲いかかる危機的状況というのは、長年、彼女にとっていわば日常茶飯事だった。身の危険にさらされたことも一度や二度ではない。しかもしばしば、そういう局面を勇敢にそつなく乗りきることが重大な使命だった。アリスのちょっとした言葉や身振りはすべて、国の代表であるジョンの仕事に少なからず影響を及ぼしたからだ。神経衰弱にかかってはならず、疲労を見せてはならず、短気を起こしてはならず、その他どんな些細な心の動きもあらわにしてはならなかった。つまり、口ごもったり、つっかえたり、まごついたり、状況にふさわしい言葉を探して迷ったりするのはご法度。機転が利かなくてぼんやりするとか、つまらないことや無駄なことをうっかり言ってしまうとか、そうした贅沢は決して許されなかったのだ。」 家族ですらスパイまがいの精神力が必要だったのだから、さぞやアリスも洞察力に優れていたのか?と思うが極めて普通で、息子が思いを寄せている相手として現れた女性に、かなりわかりやすく詮索している。解説にも書かれていたが、せっかくファム・ファタルっぽく登場した女性をやけにあっさり退場させたのがストーリーの単調さに祟ってしまった。悪意の夜 (創元推理文庫) [ ヘレン・マクロイ ]
November 4, 2018
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みなさん、こんばんは。日本シリーズ盛り上がっていますね。どちらを応援していますか?映画ロスト・エリア -真実と幻の出逢う森-を見ました。ロスト・エリア -真実と幻の出逢う森-THE DRIFTLESS AREA出演ゾーイ・デシャネル フランク・ランジェラ キアラン・ハインズ 両親を亡くし音楽家になる夢をあきらめたピエールは、故郷に帰り、バーテンダーとして人生を再出発させる。そんなある日、森を散策中、うっかり古井戸に転落してしまう。途方にくれて一晩過ごすが、次の日、偶然通りかかったミステリアスな女性ステラに助けられ、それがキッカケで2人は恋に落ちる。だがそれは、麻薬組織を巻き込んだ悪夢の始まりだった。 ネット上の感想が「とにかく不思議な映画だった」というのが多かった。確かにストレートに見て行こうとすると時々「あれ?」と思うところがあった。 例えば冒頭シーン。ステラに持っていく薔薇を抱えたピエールがヒッチハイクしようとするが、運転手のシェーンに20ドル取られたあげくに薔薇まで取られてしまう。怒ったピエールが石を投げるとシェーンにあたって車は脇に逸れる。運転手が気絶しているのをいいことに、ピエールはカバンに入っていた金と薔薇を持って逃げる。次のシーン。ピエールが「夢か」というので「ああこのシーンは実際に起こったことではないんだな」と当然思う。ところが別のシーンではシェーンが「金を奪われた!」とレンタルカーの会社社長にねじこみに行く。え?では実際に起こったことなの? わざと時系列を入れ替えているので「一体どれが最初の出来事なのか?」を見極めるのが難しい。かつ、ピエールの彼女であるステラが初登場シーンでは恐らく全裸(全体シーンは写さない)が、火事の中で全裸で逃げ出すとはどういうシチュエーションなのか、もしかしたら彼女はこの世の存在ではないのか?とも思える。ただピエールの幼馴染にも姿が見えていたので、実在の存在という線も捨てきれない。また、復讐を誓うステラに「自分がやるのではなくピーターにやらせろ」というフランク・ランジェラ演じるティム・ギアの正体も謎めいていた。一から十まで説明してくれるような親切な映画でないことは確か。ロスト・エリア -真実と幻の出逢う森- /アントン・イェルチン 【字幕・吹替え】【中古】【洋画】中古DVDテックシアター
November 3, 2018
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みなさん、こんばんは。ポール・マッカートニーの東京ドーム公演が行われています。友人は行ったそうです。興味はありますか?イタリア映画神さまの思し召しを見ました。神さまの思し召しSE DIO VUOLE/GOD WILLING出演ラウラ・モランテ 腕利きの心臓外科医トンマーゾは、傲慢な性格が災いし、周囲からは面倒がられ、妻カルラとの仲は冷え切っていた。医大に通う優秀な息子アンドレアが自分の跡を継ぐことを願っているが、ある日神父になりたいと告白されてしまう。そこでトンマーゾは、息子が慕うピエトロ神父の正体を暴くために、信者を装い教会に潜り込むが……。 冒頭はトンマーゾの俺様っぷりが炸裂。手術を終えた彼が成功を伝えると、せっかく患者の家族が「まさに奇跡です!」と感激しているのに「いや、俺の腕がいいから」とあっさり。終わったばかりのドラマ『ブラックペアン』の渡海か君は。理想通りの人生で、唯一計算違いだったのは娘ビアンカとその婿ジャンニ。娘がロクに料理ができないものだからしょっちゅう実家にやって来る。不動産業をやっているジャンニの俗物っぽい喋り方がトンマーゾには耐えられない。トンマーゾも決して聖人君子ではない。部下の医師に手術を任せようとしなかったり、太めの看護師に「ダイエットしろ」ときっぱり言ったり、自分が一番偉いと思っている。そしてその事を隠そうともしていない。 ここまで主人公の唯我独尊っぷりを見せられたら、十中八九皆が「さあ誰か彼をぎゃふん!と言わせてくれないものか」と思うようにストーリーが巧みに誘導されている。そして彼を奈落に落とすのが、あろうことか爽やかな微笑みの息子。トンマーゾは彼にこそ期待をかけていたのに!このシーンは可笑しくて可哀そう。「実は相談があるんだ」と息子が前フリをしたものだから周囲はすわ「ゲイなのか?」と色めきたち「何を言われても“心は一つ”と言え。」と打ち合わせまで済ませてしまう段取りの良さ。ところが彼が言ったのは神父になるという答え。正面切って否定するわけにもいかず、説得を振られた母親は「お母さんこそ可哀そうだ。意味のない人生を送ってきて」と言われてやけ酒をあおる。本人の悪気のない告白から家族が今までの軌道を外れて右往左往するなか、いち早く気を取り戻したのはやはり自信家のトンマーゾ。「いい加減な奴に違いない」と身分を偽って息子をたぶらかした(とトンマーゾは思ってる)ピエトロ神父に近づくがあっさりとバレてしまう。医師として神はおろか、目に見えないものを信じないトンマーゾと、目に見えない神の意思を信じるピエトロ神父。勿論最初はトンマーゾが頑ななのだが、成り行きで彼の仕事を手伝ううちに身の上を聴いたり話を聞いたりするうちに、いつしかほだされていく…という予定調和の物語。前半のトンマーゾの威張りっぷり、自信家っぷりがよほどすごくないと、後半の落差が生きてこない。他人がどう思っているのかまるで意思に介さずずばずば言ってるトンマーゾには、今まで友達なんていなかったんだろうなぁ…。ピエトロ神父は彼と正反対で敷居が低くて聖書の説話をうまくアレンジして若者の子心をつかんでしまう。ビアンカが最初興味を持ってアンドレアの聖書を読むけれど系図ばかりでさっぱり。でも映画で『ナザレのイエス』を見て宗教にはまる、というエピソードがあるけれど、例え入り口は何であろうと、神は迎えてくれるとでも言いたげ。 第28回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞。神様の思し召し [ マルコ・ジャリーニ ]楽天で購入
November 2, 2018
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みなさん、こんばんは。オリンピックの記録映画は河瀬直美監督が担当するそうですね。ドキュメンタリー出身だから向いてるのではないでしょうか。さて、森鴎外の娘をご存知ですか?今日は彼女の評伝を紹介します。贄沢貧乏のマリア群ようこ角川書店美内すずえ氏漫画「ダイナマイト・みるく・パイ」で、父親が娘の事を、こう評する。「お上品なフランス(現物がないので記憶曖昧。御存じの方訂正乞)パイに、ダイナマイトをぶちこんだようなものだからな。」本書の森茉莉氏は、まさに『ダイナマイト・みるく・パイ』だ。読んだ当初は「一目で令嬢育ちとわかるマリア」や「中老の御婦人には違いないが、中身は少女で、十三、四の心境」という表現に戸惑った。他人が言うのならわかるが、なぜこの人は、自分をこうも誉められる?自分からは、こういう事は言わないものでしょう。やっぱりこの人、普通じゃない。謙譲を美徳とする教えを叩き込まれた身は、ため息をつく。普通じゃない、という評価。普通に育った人が、前述のような言い方をすれば、きっと正しい。ところが、彼女の育ち方は、〝普通〟ではなかった。「友だちの御木本商店(今のミキモト)」で大粒真珠を買うのは序の口。戦前のパリで、現地購入した衣装(おそらく、プレタポルテ)を身に纏う。映画で描かれる所のハイソサエティそのものの、贅沢な暮らしぶり。それが日常だった。また、父、鴎外から与えられた愛情も半端ではない。父親は娘を可愛がる。大概娘は男親に似るからだ。しかし、「父の体は大きな樹で、父の顔は葉むれ。葉の間にある花から滴る蜜を私の唇は上を向いて呑み下す」(文章そのままではない、要約)(文章そのままではない、要約)という、いささか性的な意味合いを感じるこんな文章を娘に書かせる父親は、そういまい。〝普通〟でない育ち方をした人に、〝普通〟の物差をあてるのは、どだい間違っている。最初から〝森茉莉氏のスタンダード〟を受け入れておけばいい。ところが、ハイソな認識を受け入れて読み始めた、彼女の後半生は、甘い夢の世界ではなかった。 年を取れば、人は丸くなる。一つは、「衝突があるけど、いつも自分が勝つわけじゃない。」という現実を知るため。もう一つは、怒るエネルギーが枯渇するため。それが、〝普通〟に年を取るという事だ。だが彼女はとことん、〝普通〟を突っぱねる。時には、こう自分に言い聞かせて。「私はだから憎まれても平気である。ほんたうは平気ではないのだが、書いて行くためには平気でなくてはならないのである。」出来過ぎたコメントをするTVのアナウンサー、出来過ぎたコメントをするTVのアナウンサー、意地悪な質問をする作家、常識以外はわかってくれない消防署の署員。過去において、自画自賛を躊躇しなかった彼女は、彼等に対し、激しい怒りの感情をあらわにする事をも、またためらわない。時代がどんなに変わろうと、終始一貫して、肩で風切る『ダイナマイト・みるく・パイ』だった人、森茉莉。天晴れな人。そして、ある意味幸せな人。もう一度、ため息をつく。さっきとは別の意味をこめて。贅沢貧乏のマリア【電子書籍】[ 群 ようこ ]
November 1, 2018
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