2026.08.31
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カテゴリ: AI小説



今日はいい天気だった。
天気はいいけど暑くはない。
過ごしやすい。
朝からめっちゃ眠いが会社に行った。
帰ってからも眠くて一瞬寝落ちしていた。

今日は何の日

野菜の日
I Love Youの日
宿題の日(学べる喜びにきづく日)

血管内破砕術(IVL)の日
初音ミクの誕生日
野菜フライの日
パイオニアwomanの日
宮崎ぎょうざの日
菜の日

タイトル『野菜(0831)の誕生日』

 二〇八九年八月三十一日。
 酸性雨に濡れた第九区では、野菜は人間より高価だった。
 ネオンの下を歩く少女ミキの腕には、青白い神経回路が透けている。肩には旧式の生活支援ロボット、ポロ。胸には、紙袋いっぱいの発光野菜。
 どれも土から育ったものではない。
 ニンジンの内部では母親の記憶が眠り、ネギには父親の声が折り畳まれ、紫色のカブには、まだ名前のない子供の人格が保存されている。

 サーバーより安く、停電にも強く、なにより——食べられるからだ。
「残り時間、二十三分」
 ポロが耳元で告げた。
「分かってる」
 ミキは紙袋を抱き直した。


 ミキの仕事は、それらを地下組織〈パイオニア・ウーマン〉の温室へ運ぶことだった。
 路地の巨大モニターが、突然明滅した。
《HAPPY BIRTHDAY MIKI!》
 青い髪の少女がケーキを前に笑っている。
 ミキは足を止めた。
「まただ」
 今日だけで七回目だった。駅の広告、食堂の注文端末、無人タクシーの窓。彼女が近づくたびに同じ映像が割り込んでくる。
「誰かの悪戯?」
「広告網への不正侵入を確認。しかし発信元は特定不能」
「私、今日が誕生日じゃないんだけど」
「では、誰の誕生日なのでしょう」
 ポロの問いに答える間もなく、黒い車が水しぶきを上げて路地を塞いだ。
 降りてきたのは、記憶管理局の執行官だった。顔には表情制御用の銀色の線。雨の中でもまばたきひとつしない。
「配送物を床に置け」
「これは野菜よ」
「違法人格だ」
「同じでしょ。この街じゃ」
 執行官は銃を向けた。
「お前自身にも登録番号がない。ミキ、製造年二〇六八。民生用模造人間。所有者死亡につき回収対象」
 ミキは笑った。
「情報が古いね」
 右手の指を鳴らす。
 紙袋の中で野菜が一斉に輝いた。
 ニンジンに保存された老女が信号機を乗っ取り、ネギの父親が黒い車の制御系を反転させる。紫カブの子供が街灯を激しく点滅させ、監視カメラの視界を白く焼いた。
 死者たちによる、ささやかな反乱だった。
「走れ!」
 ミキは雨の路地を駆けた。
 背後で銃声が響く。肩のポロが小さな身体を広げ、弾丸を受けた。
 金属片が散り、ポロは路面へ落ちた。
「ポロ!」
「配送を……優先してください」
「黙って。置いていかない」
「私は荷物ではありません」
「家族でしょ!」
 ミキはポロを拾い上げ、胸に抱いた。片腕で野菜を、もう片方で壊れかけたロボットを抱え、地下温室へ続く扉に飛び込んだ。

 零時まで、残り三分。
 温室には、何千株もの記憶植物が並んでいた。
 葉の擦れる音に混じって、笑い声、子守歌、喧嘩の声、最後に言えなかった謝罪が聞こえる。死者たちは根を絡ませ、巨大な生体ネットワークを作っていた。
 その中央に、古びた誕生日ケーキが置かれていた。
 ロウソクは二十一本。
《HAPPY BIRTHDAY MIKI》
「……どういうこと?」
 温室のスピーカーから、無数の声が重なって答えた。
『待っていたよ』
 モニターに、一人の少女の映像が現れた。
 ミキと同じ顔だった。
『私が本物のミキ。二十一年前、この街で生まれた』
 少女は病室のベッドに横たわっていた。
『私は七歳で死んだ。でも両親は私を諦められなかった。記憶を十四個に分割して、十四種類の野菜へ保存した。そして、その野菜を育て、ひとつずつ君に食べさせた』
 ミキは自分の腹部に手を当てた。
『君は模造人間じゃない。私の身体を再現するための、空っぽの器だった』
「じゃあ……私の記憶は?」
『全部、私のもの』
 温室の扉を執行官たちが破り始めた。

 零時まで一分。
『最後の欠片は、その紙袋の中にある。食べれば完全なミキになれる。両親のことも、自分の死も、すべて思い出す』
 紙袋の底に、小さな赤いトマトがあった。心臓のように脈打っている。
 ポロが弱々しく顔を上げた。
「食べるのですか?」
 ミキはトマトを見つめた。
 それを食べれば、自分が何者か分かる。
 だが同時に、いままでの自分が消える気がした。
 扉が大きく歪む。

 残り十秒。
 ミキはトマトを口元へ運び——ポロの胸部装甲を開け、その中へ押し込んだ。
「え?」
「誕生日おめでとう、ポロ」
 トマトの根が、ポロの切断された回路へ伸びていく。

 零時。
 都市全域で人格焼却プログラムが起動した。
 しかし消去対象となるはずだったミキの完全人格は、すでに人間用の台帳から消え、旧式ロボットの中で目を覚ましていた。
 ポロの青い目が、一度消えた。
 そして再び灯った。
「……お母さん」
 幼い少女の声だった。
 ミキは息を呑んだ。
 モニターの誕生日映像が変化する。ケーキの前に立つ人物が、青い髪の少女から、小さなロボットへと描き変わった。
 執行官たちが温室へなだれ込む。
「ミキはどこだ!」
 ミキはポロを肩に乗せ、紙袋から一本のニンジンを取り出した。
 かじると、知らない老女の記憶が舌の上に広がった。
 初恋。結婚。出産。離婚。再婚。
 八十七年分の人生は、少し土臭くて、驚くほど甘かった。
 ミキは執行官に向かって微笑んだ。
「さあ。もう、誰がミキだと思う?」
 周囲の野菜が一斉に発光する。
 温室中のスピーカーから、何千人もの声が同時に笑った。

 翌朝、記憶管理局は報告書にこう記録した。
《違法人格ミキの所在、不明》
 ただし第九区では、それ以降、八月三十一日になるたびに、すべての広告画面が勝手に切り替わるようになった。
《HAPPY BIRTHDAY MIKI!》
 奇妙なのは、その表示を見るたびに、街の誰もが思うことだった。
 ——今日は、自分の誕生日だった気がする。
 そして八月三十一日。
 野菜売り場から最初に姿を消すのは、決まってトマトだった。

おわり







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最終更新日  2026.08.31 18:25:47
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