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2008.08.17
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カテゴリ: カオス(混沌)
「あらら」
女性が微笑んだ。
「なかなか難しいのね」
「そうですね。サンプルが無いですから」
「サンプル、か」
ジェイクが難しい顔をして顎を撫でた。
女性がジェイクに目配せする。
「サンプルですよ」
リアナが頬に手を当て、ため息をつく。

「サンプルは、無い事は、ない」
「そうです。サンプルが―――」
リアナはバッと顔をあげた。
「サンプルがあるんですか!?」
リアナの言葉に、ジェイクは肩をすくめた。
「ま、な」
「どこに!?どこにですか!?」
「落ち着いて、リアナさん」
女性が微笑みながら言った。
「サンプルを提供するのには、本人の了承が必要よ」
「もちろんです!」

「本人?」
ジェイクが笑った。
「ま、そのうちわかるさ」



「陽動部隊は俺とスコット、それにネイオ、ローグ、アレックス、グリッグ、シュナイダーで行く。工場へ向かう連中はパウロ、グレイ、ドイル、カトリーナ、レイだ」
「大丈夫なのか?」

グリッグがひきつった笑みを見せる。
「たぶん、な」
「よし、皆、全力を尽くせ。夜明けまでにジープの場所に戻れなかった奴は置いていく」
クロウはそういうとライフルをがしゃりと鳴らし、歩き出した。
陽動部隊が慌てて続く。
「………さて、行くか」
ドイルが言った。
パウロが頷き、再び歩き出した。
「なんだか心配です……」
まだ新米<SAS>のカトリーナが不安げに言う。
ドイルはカトリーナがサブマシンガンを固く握っているのを見て微笑み、彼女の肩に手を置いた。
「大丈夫さ、きっと」
「そうでもないぞ」
突然、今までずっと黙っていたレイが口を開いた。
「俺の従兄弟のアランはあっさり殺された。奴らは強い。脅威的に」
「だけど、やるしかないだろ?」
グレイが肩をすくめて言った。
「部品が無いと帰れないんだから」



サイレンは鳴りやんでいなかった。
ヴェノムが凄まじい勢いで通りを歩き、サーチライトで隅々を照らしている。
「何か計画でも?」
「ああ、もちろんある」
ネイオの言葉に、クロウは物陰の向こうをのし歩くヴェノムを眺めながら言った。
「さっきの丘からフィアの司令施設らしきものを見つけた。そこらへんで混乱を起こす。ついてこい」
クロウはそう言うとサーチライトに気をつけながら歩き出した。
「そんなにうまくいくのかねぇ……」
ネイオはため息をつくと、クロウに続いた。
ヴェノムの歩行音が遠くから聞こえてくる。
「なー、クロウ」
突然、最後尾のスコットがクロウに声をかけた。
「どこかで会わなかったか?」
「そうか?」
クロウが先の通りをうかがいながら言う。
「覚えがないが」
「うーん、そうか?お前を見ると、妙にリッカーやアローンの事を思い浮かべるんだけど」
「覚えないな。それよりも、ここが司令施設だ」
「…………こんなに警備甘かったっけ?」
「ま、俺がソリッド・スネークという事で」
「をい」
「とにかく!」
ローグが会話に終止符をうった。
「逃げましょう!」
次の瞬間、凄まじい戦吼が背後から響いた。
クロウが振り返ると、リッカーがいた。
よだれをぼたぼたとたらし、筋肉を蠢かせている。
他のリッカーと違い、剥き出しだった脳が薄い皮膚で覆われていた。
「またこいつか!」
ネイオが叫ぶ。
「入れ!早く!」
アレックスが叫び、一行は正面から司令施設に向かった。
クロウが扉を蹴破る。
一行は銃を構え、エントランスホールに突入した。
だが、予想外にもエントランスホールはもぬけのからだった。
「罠という気しかしないんですけど」
「ローグ、黙れ!あの部屋だ!行くぞ!」
クロウは先の扉を指し示し、走り出した。
リッカーが獰猛な唸り声をあげ、彼らの後を追ってくる。
戦吼がエントランスホールに轟いた。



「これだ!あったぞ!」
グレイが勝ち誇って部品をかざした。
カトリーナがパチパチと控えめに拍手する。
「直るの?」
「ああ。すぐだ」
グレイはそう言うと腰からドライバーを取りだし、通信機を直し始めた。
その間、ドイルはグレイの真上のキャットウォークから、上空の満月を眺めていた。
月が屋根の穴を通して光を工場の中に投げかけている。
「帰れるのかな……、イギリスに」
ドイルはしみじみとつぶやいた。
このまま異国の地で死にたくない。
その時、ドイルはふと気づいた。
工場の窓の向こうを、何かがチラリと横切ったのだ。
「…………」
ドイルは無言でサブマシンガンを構えた。
「ここをこうすれば……ほら、できた!」
グレイの声が聞こえた。
どうやら通信機が直ったらしい。
「通じますか?」
カトリーナだ。
「!」
ドイルは息をのんだ。
間違いない。
また窓の向こうを何かが横切った。
「グレイ!カトリーナ!パウロ!レイ!」
ドイルは声を張り上げた。
「気をつけろ!何かが―――」
次の瞬間、工場の壁が轟音と共に突き破られた。
カトリーナの悲鳴が響く。
工場の壁ががらがらと崩れた。
キャットウォークが大きくきしみ、片方が落ちていく。
「くっ!」
ドイルは急激に坂と変わりつつあるキャットウォークを走り出した。
崩壊した壁の向こうからヴェノムが現れた。
サーチライトの光が土煙の巻き上がる工場内をめまぐるしく動く。
その光はキャットウォークを走っているドイルを捉えた。
ヴェノムが4本の頑丈な足を動かし、工場内をスムーズに動き出す。
ガトリングが火を噴き、次々にレーザーがキャットウォークに弾けた。
「うわわわわ!?」
ドイルは必死に走った。
キャットウォークが激しく揺れる。
格子状の床がドイルの足の下できしんだ。
ドイルは後ろを見た。
ガトリングから撃ち出されたレーザーが凄まじい勢いで迫ってくる。
ドイルは前を見た。
キャットウォークのゴールは遠い。
ドイルは目をつぶった。

南無三!

彼は心の中で唱えると、キャットウォークから飛び降りた。
彼の頭上でキャットウォークがレーザー弾を次々に浴び、ひしゃげる。
ドイルは工場の床に転がり落ちると、身体中の痛みをこらえて叫んだ。
「カトリーナ!グレイ!返事をしろ!パウロ!レイ!」
「ドイル!こっち!」
ドイルは顔をあげた。
カトリーナが工場の出口で叫んでいる。
ドイルは立ち上がると急いで走り出した。
ヴェノムが工場の機具を無残に踏み潰しながら歩き出した。
ガトリングからレーザーが嵐のように放たれ、床や機具に炸裂する。
ドイルは転び、あちこちに擦り傷や切り傷をつくりながらも足を止めなかった。
ようやく、出口についた。
カトリーナが彼を支え、走り出す。
2人は工場と工場の間の狭い道を走っていた。
「大丈夫ですか!?」
「あ、ああ………」
次の瞬間、工場の壁を突き破り、ヴェノムが飛び出した。
カトリーナが悲鳴をあげる。
ヴェノムが彼らを認め、明らかに彼には狭い道を走り出した。
工場の壁がどんどん破壊され、最初の工場が轟音と共に崩壊し始めた。
カトリーナが再び悲鳴をあげる。
ドイルは崩壊している工場から飛んでくる瓦礫やガラスの破片からカトリーナを庇いながら叫んだ。
「カトリーナ!そっちの工場に飛び込むぞ!」
「え!?」
ドイルは有無を言わさずカトリーナの体を抱き締めると、窓からもう片方の工場に飛び込んだ。
窓を破り、中にダイブする。
カトリーナの悲鳴が響いた。
ドイルは身体中の傷の痛みに顔をしかめながらもなんとか立ち上がり、カトリーナを助け起こした。
だが、ヴェノムもまた工場に突っ込んできた。
壁が崩壊する。
ヴェノムは崩壊する壁の瓦礫を浴びながらも、かまわずミサイルを撃ち出した。
ミサイルが工場の二階にぶつかり、火花と瓦礫をぶちまける。
だが、ドイルは気づいていた。
ヴェノムは彼らを見失っている。
彼は自らの手榴弾を取ると投擲した。
ただし、窓の外だ。

爆発

ヴェノムがそちらを向き、ガシャガシャと足を動かして工場から出ていった。
「よし、今だ。急ごう」
ドイルの言葉に、カトリーナはガクガクと頷いた。



一行は不気味な光沢のある通路を走っていた。
リッカーが彼には少し狭い通路に無理やり体を突っ込み、追ってくる。
「うわあああああああああ!」
グリッグが恐怖に満ちた悲鳴をあげた。
リッカーが長い舌をちろちろと動かし、巨大な爪を繰り出してくる。
「あの部屋だ!あの部屋!」
先頭のネイオが叫んだ。
通路の突き当たりは少し開けた空間で、その先に扉がある。
ネイオは扉を開けると、すぐに飛び込んだ。
一行が続々と飛び込む。
だが、1人足りなかった。
「シュナイダー!何してる!?」
クロウが叫んだ。
シュナイダーが通路でうずくまり、何かしている。
「シュナイダー!」
シュナイダーが顔をあげた。
しかし、リッカーが彼のすぐ側に迫っていた。
リッカーが戦吼をあげ、前腕を振り上げる。
シュナイダーは慌てて走り出した。
だが、時、既に遅し。
爪がシュナイダーの背中をかすめ、3つの赤い筋を作った。
血の赤だ。
シュナイダーが悲鳴をあげ、うずくまる。
リッカーが歓喜の唸り声をあげ、口を大きく開いた。
だが、その大きな口に飛び込んだのは銃弾だった。
リッカーがひるみ、後退する。
クロウだ。
シュナイダーはつらそうな顔をしながらも立ち上がり、走り出した。
リッカーが体勢を立て直し、怒声をあげた。
が、次の瞬間、リッカーの足元で猛烈な爆発が起きた。
リッカーが悲鳴をあげ、血霧と焦げた肉片が散乱する。
シュナイダーが笑いながら部屋に駆け込んだ。
「手榴弾をいくつか床にしかけたんだ!リッカーめ、ざまあ見ろ!」
「それよりも傷だ!」
クロウは急いでシュナイダーの背中を診た。
見事に皮膚が斬り裂かれている。
クロウは黙ってシュナイダーの顔を見た。
シュナイダーの顔が青い。
自らの運命を知ったのだ。
その時、スコットが叫んだ。
「おい!この扉、電子ロック式だぞ!」
確かに、扉は凄く頑丈な金属製だったが、錠をかけるにはパスワードが必要だった。
扉の隣には電卓のようなものがある。
どうやら、5ケタの数字がパスワードらしい。
「―――ッ!まずいぞ!」
クロウが叫んだ次の瞬間、閉じた扉に猛烈な衝撃がぶつかった。
スコットが吹っ飛ぶ。
リッカーだ。
「扉を抑えろ!」
アレックスが怒鳴り、皆、慌てて扉を体で抑えた。
戦吼と共に再び衝撃がぶつかる。
扉が開きかけた。
皆、必死の形相で扉を抑えているが、リッカーの力には及ぶべくも無い。
「ローグッ!錠をかけろ!」
シュナイダーが扉を体で抑えながら叫んだ。
ローグが焦った表情をする。
「ええっ!?でも僕、パスワードなんて………」
「わかってる!見つけろ!」
「見つけろって……」
ローグは文句を言いながらも電子ロックに向かい合った。
「5ケタか。37564?」
「みなごろしだと!?不吉な事を!」
シュナイダーが叫んだ。
ローグはシカトして入力した。
違う。
「18782?」
「いやなやつ、か」
「黙っててください!」
ローグは怒鳴ると再び入力した。
違う。








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最終更新日  2008.08.17 19:22:50
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