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2012.12.09
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カテゴリ: その他
初等理科教育に書いた全国学力・学習状況調査(理科)の結果の考察の続き。

3.「わかり直し」のある授業を

 この「わかったつもり」を超えるためには,学習の過程の中で,子どもたちに「わかり直し」を伴った深い理解を促すことが必要である。そのためには,観察・実験の結果から観察・実験の意味や方法を振り返らせたり,情報や考えの妥当性を判断させたりするための工夫が必要である。
 ここでは,二つの実践を紹介する中で,そのポイントについて考えてみる。

(1)失敗から「わかり直し」を促す

 ここでは,4年「水の状態変化」で「水の沸騰」について調べる場面を紹介する。
 まず,教科書通りの装置を準備し実験する。アルミニウムはくでふたをした500mlのビーカーに150mlの水と沸騰石を入れ,温度計の液だめの部分を水の中央にくるようにセットしアルコールランプで加熱する。
 もちろん,水の温度が100℃くらいになるとさかんに泡が出はじめ,水の温度が上がらない状態が続く。
 普通,教師はこのことを「沸騰」ということを伝え,どの班の実験結果がちょうど100℃にならないことから「水はおおよそ100℃で沸騰する」とまとめる。もちろん,子どもたちも納得するであろう。

 そこで,あえて次のような装置で二回目の実験をする。アルミのふたを外したビーカーに水の量を250mlに増やし,温度計の液だめの部分は,水の上部にくるようにセットするのである。
 アルコールランプで加熱をはじめると,水の温度が85℃を超えた頃から大きな泡が出はじめ,89℃以上に温度が上がらなくなった。このことを目の前にして,子どもたちは,「沸騰するのは100℃のはずだけど」と疑問をもつことになる。
 その後,「アルミニウムはくのふたをしていないから冷えたんじゃないの?」「水の量が増えて温まった水が上の方にいっている間に冷めたのでは」「じゃあ,1回目の実験ももっと工夫すれば,100℃に近づくっていうこと?」と,「水の沸騰」について理解を深めていくことができた。
 今回,あえて「上手くいかない」実験を取り上げたのだが,このことによって,子どもたちは「なぜ上手くいかないのか」と演繹的な思考をしたり,「水の量」や「温度計の位置」など具体的な実験方法の検討をしたりすることになり,「わかり直し」が促されたのである。

(2)素朴な「わからない」から「わかり直 し」を促す

 次に,5年「ものの溶け方」で,いろいろな実験後に「水に溶けた食塩がどうなったのか」について考える場面を紹介する。
 ここでは,水に溶けた食塩の様子を図にかかせ,説明させた。教科書にも食塩の小さな粒が水の中に広がっている図が示してあるからだろうか,ほとんどの子どもがこの「小さな粒」を使って説明する。実際には,粒の大きさや形に違いがあるものの,そのことに対して疑問の声は上がらなかった。
 そんな中,一人の子どもが「『小さな粒』って,どのくらいの大きさなのかわからない」と発言する。すると,多くの子どもたちは「食塩は水に溶けると見えないくらいに小さくなった」と説明した。食塩の粒を水に溶かし,その一粒一粒が段々と小さくなりながら消えていく様子を観察したからだろう。
「食塩が小さな粒になって見えなくなった」。このことに,多くの子どもたちが「だから,見えなくなった」「食塩はなくなったわけではない」と納得する。
 しかし,その説明にも「でも,目に見えないくらいに小さくなったのなら,重さは減るんじゃないの?」と質問が続く。
 この「わからない」によって,全ての子どもが自分の考えを見直すことになった。

「だったら,加熱したとき水と一緒に蒸発するんじゃないの?」
「水が蒸発するとまた出てくるんだから,食塩の粒は小さくなったんじゃなくて,ばらばらに分解されて小さくなって見えなくなったんじゃないのかな。それを加熱すると,ばらばらになったものが集まって,もとの大きさではなく形も違う食塩が出てくる。」
 このように,一人の素朴な「わからない」が,「食塩を水に溶かすと小さな粒になる」ということについて,より具体的で論理的な思考や説明を促したのである。
 ただし,今回の実践では,たまたま子どもの「わからない」を取り上げることができたのだが,いつも「わからない」が生まれるわけではない。やはり,日頃,教師が問い返して具体的な説明を求めたり,子どものちょっとした表情の変化を見逃さず,隠れた「わからない」を取り上げたりすることが必要であろう。

4.おわりに


 しかしながら,教師によって準備が整えられた観察・実験を一度行うだけでは,子どもたちを「わかったつもり」にするという自覚を教師自身がもつだけでも,授業は大きく変わるだろう。
 私も今回の調査を「きっかけ」に,これまでの授業も見直していきたい。

【参考文献】
西林克彦「『わかる』のしくみ 『わかったつもり』からの脱出」(新曜社,1997)





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最終更新日  2012.12.09 13:43:35
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