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私はよく「ただで安全は買えない」と言っています。少し分かりにくいかもせれないので、説明させてください。
例えば、飲酒運転を撲滅するために、検問を厳しく行ったとします。さらに、飲酒運転をさらに厳罰化して、結果的に飲酒運転が大幅に減ったとします。
道路を安心して通行できるようになって万々歳と言いたいところですが、ただで安全は買えませんなんらかのトレードオフがあるのです。
例えば、このケースでは、取り締まりのせいで、地域の飲食店の倒産が大幅に増えてしまう、といったことが起きるかもしれません。
実際に、飲酒運転による交通事故で亡くなるかもしれなかった人数よりも、飲食店の経営に行き詰って自殺した人の数の方が多いんじゃないか、と言われるぐらい、地方の飲食店は冷え切っています。
一見無条件によいことのように思えることでも、それを実現すれば、なんらかの別のコストが発生する。ということはよくあることです。ですから、安心や安全のために何かを実行するときには、その分発生する別のコストも考えないといけないのです。
例えば、昭和 20 年代から 30 年代前後までは、日本の殺人事件は年間 3 千件程度もありました。これが、今は年間千件程度と 3 分の 1 に減りましたこれは、明らかに豊かになったからです。
大ヒットした映画『 ALWAYS 三丁目の夕日』などを見て「昭和 30 年代の方がよかった」といった感想を持つ人が多いのですが、その時代の方が殺人事件は多かったですし、婦女暴行事件だって、ずっと深刻でした。
当時の方が、届け出る人は少なかったでしょうから、統計数字以上のものがあったのではないでしょうか。
少年による殺人事件は、昭和 20 年代から 30 年代にかけては年間 400 件前後あったはずです。それが今、年間 100 件を超す年はありません。つまり、そのぐらい貧しいころの日本は、殺伐とした国だったのです。
犯罪と貧困はリンクしています。つまり、生活保護という制度は、治安を守るため、という意味合いもあるのです。
こうやって確立とコスト意識の話をすると、建設的で具体的な議論も生まれてきます
例えば、生活保護を治安維持のためのコストとして考えると、今はお金をかけすぎではないか————という考え方もあるわけです。
極論かもしれませんが、多少治安が悪くなって、千件ぐらい殺人が増えるかもしれないが、今生活保護のためにかけている年間 3 兆円の金が浮くのなら、そのぐらい仕方がないじゃないか————財政難がひどくなれば、そう言う見方が出てきてもおかしくありません。
あるいは、精神障害者による殺人事件というのは、統計的には、年に約 100 件前後あります。こうした統計を見て「こうした危険な人物は、全部閉じ込めてしまえ」といったようなこともいう人もいます。
これも数字で考えてみると、その 100 件の殺人を防ぐために、精神障害者を閉じ込めると、統合失調症だけで約 80 万人もいるわけですから、一人あたり年間 5 百万円で、総額 4 兆円ほどのコストがかかることになります。今の生活保護の予算以上のコストがかかるわけですから、「精神障害者はみんなぶちこめ」、などという暴論をその通り実行するのは、実は大変なコスト高になることも分かるでしょう。
こうやって、いろんな可能性を数字で考えていくことで、具体的で建設的に考えられるようになっていくわけです。確立やコストなど数字が伴わない議論は、どうしても感情的になってしまい、不安が残ります。
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