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養命酒製造 株式会社 代表取締役会長 河村昌平
小説家・山本周五郎の 3 部作の一つに、『ながい坂』があります。下級武士の子として生まれた主人公は、幼い頃、屈辱的な事件を経験します。その時の屈辱をはね返そうと、主人公は学問・武道に励み、やがて、ある藩主にその実力が認められ、藩の重責を担うまでになります。
ところが、藩の跡目争いに巻き込まれ、頼りの藩主は幽閉、自身も弾圧を受け、身を隠し、下町でひっそりと暮らすようになるのです。しかし彼の胸中には、幼い頃、教師が語った教訓が生きていました。
「人の一生はながいものだ、一足飛びに山の頂上へ上がるのも、一歩、一歩ろしっかり登っていくのも、結局は同じことになるんだ、一足飛びに上がりより、一歩ずつ登るほうが途中の草木や泉や、いろいろな風物を見ることができる」(『ながい坂』新潮文庫)
既成の秩序に疑問を抱きながらも、自身の立ち位置をしっかり見据え、彼は自身が生きるべき道を、一歩、一歩、着実に進んでいくのです。初心を貫いていく。そのぶれない生き方に、私自身、とても感銘しました。
今、世界はグローバル化し、人々の価値観も多様化しています。知・情・意————。そのバランスを、どう取っていくか。そのためには、対話を通し、互いの着地点を見出していくしかありません。
そういう意味からも、今のリーダーに求められるのは、「コミュニケーション力」です。「人の話をよく聞く力」「本質を見抜く力」「時代の流れを読む力」「話す力」の四つ、中でも大切なのは「聞く力」です。
以前、こんな映画を見ました。がんを患った女性。治る見込みはない。その女性に何とか元気になってもらいたいと切に願いながらも、自分の力ではどうすることもできない。できることといえば、女性のそばにいて、女性が語る言葉に耳を傾けることだけ。でも私は、この話を「聞く」という姿勢そのものが、一番の「愛」だと思うんです。
権威主義的な人、カリスマやワンマンな人は、もう社会で通用しない時代だと思っています。一人一人の個性を存分に尊重しながら、全員を生かしていくようなチームワークが大切です。そうしたことを実現できる「コミュニケーション力」の高い人が、時代を担うリーダーにふさわしいと思います。
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