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松の油でジェット機
武庫川女子大学名誉教授 丸山 健夫
松明と書いて何と読むか? 答えは、タイマツである。
古来、松の木の切り株の木片を束ね、火を付けあかりにした。古い株ほど上質だったという。
松には大量の油分が含まれている。昭和 19 年、石油の輸入を止められた日本政府は、燃料自給のための油の利用を国策として。松の根からの油なので、松根油と呼ばれた。松の切り株を掘り起こす過酷な勤労奉仕が、全国の村々で展開された。
松は寒冷地でも生育するだけあって、その油は低温でも変質しない。そこで上空高度から飛来する米軍の空爆機に松根油が使えるとの触れ込みだ。
採取された松の切り株を、直径5センチ、長さ30センチ程度に刻み、大きな円形の鉄が間に入れ、密封して蒸し焼きにする。仮名の底には穴を開けておき、出てくる油の液体や気体を管で導き、冷却して分離する。樹齢100年以上、伐採後20年以上経過した松の根なら、百貫(375キログラム)の切り株から一升瓶40本ぐらいの松根油が得られたという。
だが今から考えると、本当に松の油で飛行機が飛んだのかと疑いたくなる。実は松根油で飛行機は飛んだ。それも日本初のジェット機だ。
昭和20年8月7日、終戦の一週間前、場所は千葉県木更津飛行場。松根油を燃料としたジェットエンジン2基を積んだテスト機が、高度600メートルを約12分間飛行したのである。
設計ではドイツのジェット戦闘機を参考にしようとしたが、飼料をのせた潜水艦が撃沈され、結局は純国産でつくりあげた。
日本のジェット機開発のルーツがここにある。そしてよく話題となるバイオ燃料が、すでに戦前、実用化の一歩手前まで到達していたのである。
【すなどけい】公明新聞 2024.2.16
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