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在日米軍基地
川名 晋史 著
米軍と国連軍の「二つの顔」
中央大学教授 佐道 明広 評
現在、日本周辺の安全保障環境の悪化を背景に、日米安全保障協力が急速に進展している。先般の日米首脳会議で、日米の統合作戦指揮強化が合意されたのは、その象徴的事例である。こうした日米協力の進展は、日本の安全保障政策の基軸が日米安保体制にあるからであり、日米安保体制の基本的性格が、「基地と軍隊の交換」と呼ばれるものであることもよく知られている。しかし日本が提供する財米軍基地についてはさまざまな問題が指摘されてきたし、沖縄の普天間基地移設問題のように、現在も大きな政治課題となっているものもある。この在日米軍基地の持つ政治的、歴史的意味について、「米軍と国連軍という二つの顔」という新しい切り口で分析したのが本書である。
たしかに、本土の4カ所、沖縄の3カ月の米軍基地は国連軍後方基地に指定されており、日本国内に9カ国の連絡将校が駐在している。米軍基地であり交連軍基地でもあるということはどのような意味を持つのか、本書の分析による指摘は重要なものばかりである。もちろん、軍事に関する情報は飼料役制約も多く、その点について著者は性急な結論を避けながらも興味深い論点をいくつも提示している。
例えば、在日米軍基地問題として現在も議論になっている普天間基地の移設問題について、なぜ日の子でなければならないのか、国外異説ができない理由も含めて、『国連軍基地』という補助線を入れることで著者が提示する仮説は極めて興味深い。
著者が指摘するように、これまで在日米軍基地に関数議論は、国会、ジャーナリズムにとどまらず研究においても、日本と米国の関係で語られることがほとんどで、国連軍について触れられることは不思議なほど少なかった。しかし、議前協議の問題にしても、日米間の「密約」問題にしても、国連軍を視野に入れて見えてくることが多く、また重要であることに、いまさらながら驚かされる。二〇一五年の安全保障法制の整備、さらに国家安全保障戦略の策定等によって何が変わったのかという意味も、またオーストラリアやイギリスとの安全保障協力の進展も「円滑化協定」との関係でみていなければならない点など、今後の政策転換を考えるうえで重要である。
著者の言うように、在日米軍基地は必ずしも日本を守るための存在ではない。地位協定の本質は「派遣国側の要員と財産を保護することにある」そして、「戦後の日本、乃至極東の安全は日部の二カ国間だけでなく、国連軍を通じた多国間の枠組みによって維持されている」という指摘は重い。
戦後の安全保障政策は、憲法と日米安全保障体制の関係を中心に複雑な構造となって理解がしにくくなっている。しかし政策の転換が行われている現在、日米軍基地がどのような意味を持つのかを考え、理解することは重要である。その点で本書は在日米軍基地問題を考える時の必読文献の位置をといえる。多くの人に熟読を勧めたい。
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かわな・しんじ 1968 ~ 1973 』で猪木正道賞特別賞。
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