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第1編 人類の生活処としての地
東京学芸大学名誉教授 斎藤 毅
第1編は「日月および星」や「地球」の章の後、「島嶼」「半島および岬角」で構成されています。いずれも自然地理学的な説明の後、人々の暮らしと環境との関りに移ります。
第1章 日月および星
ここでは「地上現象の総原因としての」という副題が付き、天体としての天文学的な記述とともに、時間、暦、方位など尽現生活を律する基本的な事象が、神話にまで及びます。特に「日本人と大要」との一節を設け、「国号を『日本』となし『日の丸』を国旗となし(中略)日本国民は、太陽と一種独特の交渉を表するものと謂うべし」とあり、太陽に対する感性的なかかわりが強調されています。
ただ現在では、バングラディシュや北マケドニアなど、太陽を国旗に描く国は日本以外にも幾つか見られます。
一方、月に関しては百人一首にある「月見れば/千々に物こそ/悲しけれ/わが身ひとつの/秋にはあらねど」が登場。月を観て、先立った夫をしのぶ歌でしょうか。
他方、月や星を描いた国旗は多く、大平湯戦争の激戦地ペリリュー島のあるパラオは平和な夜を願ってか、青地に満月を描き印象的、また、陰暦のイスラム諸国では新月を描いたものが多く、新年への願いが込められています。こうした人々の願いや想いのこもる克己を大切に扱うのは、国際理解への第一歩かもしれません。
第2章 地球
この章では、地球の形状や大きさとともに、その運動や水界・陸界などの自然地理の記述の後で、人間生活との関係に迫ります。
所で、もし今、牧口師が『人生地理学』の改訂を試みたら、ここにプレートテクニクスの理論が加えられたことでしょう。地球の表層はいくつかの移動するプレート(岩盤)でできており、それがちぎれたり、一方が他方に滑り込んだりすることで、火山活動や大地震が発生するとみる理論です。師は同時に、地球の温暖化問題にも触れられたかもしれません。
それにつけても終戦直後の「社会科」創設で中等教育の地理化の諸単元のうち、人文地理が地学、とくに李下に組み込まれたのは、両者の関りを重視する地理教育の立場からは大変、不幸なことでした。必修化された高校の「地理総合」が期待されるところです。
【 地理学者 牧口常三郎の『人生地理学』—その精読の試み】聖教新聞 2024.5.19
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