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人類と気候変動の7万年史
福井県年縞博物館 学芸員 北川淳子 さん
年縞とは何か
年縞とは、湖底などに1年に1枚ずつ退席する、縞模様になった泥の地層です。水月湖の底には、春から秋にかけてプランクトンの死がいなどの有機物による暗い層、晩秋から冬にかけて主に黄砂や鉄分の鉱物粒子による明るい層がたまります。
明暗いったいの縞模様が毎年できるので、樹の年輪のように、過去の次官を図るための「物差し」となります。現在の固定には 2024 年の年縞が作られつつあり、1万枚下には1万年前の年縞があります。水月湖には厚さにして 45 ㍍、時間にして 7 万年分の年縞が途切れることなく積み重なっているのです。このような湖は世界でも例がありません。
当館は、 45 ㍍の年縞を 100 枚のステンドグラスに加工して、一直線に展示しています。いわば、現在から過去へと 7 万年の「時」をさかのぼる回廊です。平均すると、年縞の 1 年分の厚さはわずか0 . 7㍉。 1000 年でも 70 ㌢ほどです。積み重なった年縞が上から圧縮し明日ので、過去へ向かうほど 1000 年の幅は短くなります。
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奇跡の湖 水月湖
水月湖に年縞が形成される地理的条件として、次の四つがあります。
① 水深が深く、流れ込む大きな河川がないこと。 大量の水や土砂が入り、湖底がかき乱されることがありません。
② 山々に囲まれた地形。 周囲の山々に風がさえぎられるため、波が立ちにくく、湖水がかき混ぜられません。
③ 生物のいない湖底。 湖底は無酸素状態で生物が生息できず、年縞が生物に壊されることがありません。
④ 埋まらない湖。 断層の影響で年縞がたまる速度より早く沈降しているため、堆積物で埋まることがありません。
こうした好条件がそろう湖は世界的に珍しく、水月湖はまさに「奇跡の湖」なのです。
標準の年代の物差し
水月湖の年縞には二つの学術的な価値があります。一つは、一つは、冒頭に申し上げた、過去の時間を計るための「物差し」としての価値です。
考古遺物の年代を決定する方法に放射性炭素(炭素 14 )年代測定があります。動植物に含まれ、時間の経過とともに一定の割合で減少する炭素 14 の存在比率を計算して年代を決める測定法です。しかし、動植物に含まれる炭素 14 の量は時代ごとに異なるため、時代によっては数百年から数千年のズレがありました。
試行錯誤を経て、年縞を数える作業と、年縞の中に保存された葉化石の放射性炭素年代測定を行った結果、年代ごとの炭素 14 の量が明らかになり、この測定の精度が飛躍的に向上しました。そして 2012 年、水月湖の年縞が「世界標準の年代の物差し」として、国際会議でその価値が正式に認められたのです。
環境のタイムマシン
もうひとつの価値は、過去の風景をよみがえらせる「環境のタイムマシン」ということです。年縞の中には、花粉や火山灰、地震や洪水の跡など、過去の出来事を語る、さまざまな証拠が含まれています。これらを丁寧に取り出して分析することで得、水月湖周辺の環境を復元できます。
花粉の種類や量を調べると、当時の植生景観がよみがえります。植物は寄稿を反映しますので、気候が変われば植生も変化します。植生の遷移を調べることで、過去の気候を復元できるのです。例えば、約 2 万年前の水月湖周辺は、亜高山帯に生えるシラカバやコメツガの杜が広がっていました。気温は今よりも 10 度以上も低かったのです。
当時は年縞の分析結果をもとに、 7 万年前から現在までも水月湖周辺の植生変化を映像で再現しました。
火山灰を調べれば、噴火して火山を特定できるほか、噴火の年代や規模などがわかります。環境や気候に与えた影響を知る手掛かりにもなるでしょう。年功からはまた、地震や洪水がいつ起こったかを正確に知ることができます。災害の履歴は、防災への活用が期待されています。
私たちの未来を考える
水月湖の年縞に刻まれた 7 万年の歴史は、気候変動を繰り返す地球に適応しながら生き抜いてきた人類の記憶でもあります。
展示の最後は「年縞と私たちのこれから」をテーマに、気候変動の仕組みや、進行する温暖化との付き合い方などを紹介し、年縞を通して見える、これからの地球の姿を展望しました。
地球環境は今、大きな岐路に差し掛かっています。私たちの未来を考える上で、年縞は重要なメッセージを与えてくれるでしょう。
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