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猛暑から身を守る
恒常的な脱水に注意
早稲田大学人間科学学術院教授 永島 計さん
ながしま・けい 博士(医学)。「認定産業医」。 日本スポーツ協会公認スポーツドクター。京都府立医科大学大学院修了後、同大学附属病院研究委、イエール大学ア学部ピアス研究所プスドク研究員などを経て現職。専門は生理学。特に体温・体液の調和機能の解明。
ポイント
① 体温調節機能の〝働き過ぎ〟を避ける
② 体重や尿の力から体の水分量を確認
③ 適度な運動と規則正しい生活リズム
体温のコントロール
人間や動物は、自分たちの生存にとって有利な温熱環境を選びながら生きています。例えば、人間は、部屋が暑ければ冷房をつけるし、屋外では(他の動物と同様に)少しでも日陰のある所を選ぼうとします。
それでも十分に体温が調節できない場合、人間は二つの機能を使います。
一つは皮膚に流れる血管を拡張させて体表への血流の流れを活発にします。これにより皮膚表面から熱が外に出やすくなります。もう一つは汗をかいて皮膚から水分を蒸発させる方法(気化熱の利用)です。
これらの反応は主に、脳の視床下部と呼ばれる自律神経の中枢となる部分でコントロールしており、自律性体温調節といいます。
人間はこのように優れた機能を持っているのですが、連日の暑さの中で、この機能を過剰に働かせており、それが自律神経に過度な負担をかけています。その負担がストレスの原因や、免疫力の低下につながり、体調不良や夏風邪になりやすくなってしまうのです。
水分不足で夏バテに
暑い夏を乗り切るためには、①水分補給とバランスの良い食生活、②適度な運動、③規則正しい生活リズムの基本が大切です。
① 水分補給とバランスの良い食生活 夏バテの大きな原因の一つは脱水です。熱中症は、汗のかき過ぎで脱水症になり、これを原因として気分が悪くなったり、けいれんを起こしたりすることにつながります。
熱中症予防のため、水分補給を意識している人も多いと思いますが、連日、暑い日が続いている状況では「恒常的な脱水」にも注意してください。特に日中、炎天下で仕事をしていて、短い期間で体重がグッと減ったという人は、脱水の可能性があります。一日にトイレに行く回数が減っている場合も危険です。自分の体重を毎日計測したり、尿の量が減っていないかをチェックしたりして、自分の体の中の水分量を確認し、脱水のサインを見逃さないようにしましょう。
水分をとる際にスポーツドリンクを飲む人もいると思います。短時間で多くの汗をかく場合には大事なことですが、それほどでもなければ、水や麦茶による水分補給で十分です。高齢者などは、あまり汗をかかないので、塩分の強いスポーツドリンクを飲むと、むしろ塩分過多の弊害が大きくなる可能性もあります。
水分と関連しますが、暑さに対抗するために大切なのが血液の量です。これはバランスの良い食生活を中心に、特にタンパク質の高い食品を積極的に取ることで、適切な血液量を維持することができます。
② 適度な運動 筋肉量を保持する運動が大切です。汗をかけば体の水分はもちろん失われますが、筋肉の中の水分は貯水湖のように働き、脱水による体への負担をやわらげてくれます。
日頃から、運動習慣のある人は汗をかきやすく、疲れにくい体を維持しています。反対に運動習慣のない人は、汗をうまくかけないので体温が上がりやすくなり、結果的に疲れやすい体になってしまいます。
具体的な運動の方法については、個人差がありますが、 20 ~ 30 分程度、少し息が上がるくらいの運動を週に3~4回ほど行うと、効果があると思います。かえって疲れそうな気がしますが、日射の影響がないところ、気温の高くない朝方や夜に実施してみてください。早歩きや、軽いジョギングなどがおすすめです。
③ 規則正しい生活リズム 前述の通り、体温は自律神経がコントロールしています。その自律神経を整えるために意識したいのが、規則正しい生活リズムです。
日中にたくさん汗をかいて、スポーツドリンクを飲んで水分や塩分を補ったといっても、それで体が回復できるわけではありません。入浴や睡眠を通して、体を休ませることも意識しましょう。
連休やお盆の期間は、生活リズムが乱れがちになりますが、休み明けに体調を崩さないためにも、規則正しい生活リズムを心がけましょう。
危険な暑さの警告
汗を上手にかく人と、そうではない人の話を述べましたが、たとえ上手に汗をかける人でも湿度が高いところでは熱中症のリスクが高まります。反対に気温が高くても湿度が低ければ、ある程度、水分補給できていればリスクは低減します。
こうした気温、湿度の影響に加え、日射・輻射(熱異動)の要素を組み合わせた指標が「暑さ指数」です。この数値が31以上の場合は、熱中症のリスクが極めて高くなるので十分注意が必要です。
今年4月からは、「熱中症警戒アラート」より一段上の「熱中症特別警戒アラート」の運用が始まりました。翌日の日最高暑さ指数」が、広範囲にわたって 35 以上となることが予測される場合に発表されます。これは、過去に例のない危険な暑さを警告し、自分だけでなく周りの人も命を守るよう呼びかけるものです。
汗をかく能力には個人差があります。一般的に年齢を重ねていくと、体温調節機能は衰えていくので、高齢者は注意が必要です。慢性疾患を抱えている人、降圧剤や睡眠薬を使っている人、体温調節機能が発達中の子どもたちも、同様に注意してください。
気象庁の向こう 3 カ月( 8 ~ 10 月)の天候の見通しによれば、全国的に減稲よりも平均気温が高くなることが見込まれています。
今後も警戒アラートなどの指標を軽視することなく、適切な冷房の使用などの対策をして、夏の後半と残暑を健康に過ごしていきましょう。
新型コロナウイルス感染症の発熱との違い
新型コロナウイルス感染症の発熱と熱中症の発熱の見分け方の一つに、「発汗があるかないか」があります。感染症の発熱は、体が「体温を上げようとしている状態」であり、発熱している人は寒いと感じ、熱を逃す必要がないので、体温が高くても汗をたくさんかいてはいません。対して熱中症の初期の発熱は、体が「体温を下げようとしている状態」で熱いと感じ、汗をたくさんかいているのが特徴です。
【健康 PLUS+ 】聖教新聞社 2024.8.10
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