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岸田理生作品の魅力
岸田理生アバンギャルドフェスティバル実行委員会会長 吉野 翼
独特な台詞回しとリズムで不変な題材を豊かに表現
私と岸田理生との出会いは学生の頃。当時私は、演劇講座に入っていて、その口座での一年に一回の校内演劇発表講演、その演目が岸田戯曲賞にも入賞した岸田理生の代表作「糸地獄」であった。その頃の私は岸田理生についての知識はほぼなく、「糸地獄」という難解な戯曲に役者として四苦八苦したものである。
しかしながら、その戯曲に書かれていた言葉にひどく感銘を受けた。美しくも淫らな台詞、情景の描き方、心象風景を彩る言葉、発語する台詞と音のリズム。それまでにもさまざまな戯曲に触れて来たが、初めて「言葉そのもの」に魅了された。いま思えば、当時中高生だった生徒たちの発表公演でやるには些か相応しくない大人の戯曲であったと思うが、私はその出会いに感謝している。
暦の名を持つ女郎たち、女を操る女衒の男たち、そこに現れる母を探す記憶喪失の少女、そして禁忌の親殺し。発表公演が終わった後、生徒の親御さん達が学校に苦情が来たのは今や良い思い出話。その後、私は岸田理生や寺山修司のファンとなり、「アングラ」の世界にどっぷり浸かっていくことになった。
岸田理生は、 1946 年生まれ、 2003 年に大腸癌で亡くなるまで、さまざまな活躍を見せた人物である。
寺山修司の「天井桟敷」に参加後、「哥以劇場』「岸田事務所+楽天団」「岸田理生カンパニー」と次々と精力的に団体を設立し、劇作家・演出家・シナリオ作家・小説家・翻訳家として活動。 1984 年「糸地獄」にて第 29 回岸田國士演劇賞を受賞、 92 年 オーストラリア国際女性激賞を受賞、 92 年 オーストラリア国際女性劇作家会議に参加、 2001 年 第 3 回アジア女性演劇会議( AWT )実行委員を務めた。
そんな岸田理生の魅力はやはりその「言葉」である。彼女の言葉の力はまるで魔法のように人々の内面に染み込む。その独特な台詞回しと節は、あるときは音楽的に、あるときは短歌や詩のように、あるときは風のように心象と情景を対象に刻む。正に人間の声や身体を先天的な楽器のように捉えているようである。
作風は時代によって異なるが、決して真には交わらない男と女という性別、社会への風刺、恋を探す人間の様など、不変的な題材に真っ向から挑んでいた。
岸田理性について詳しく知りたい方は、大阪大学出版会から研究所『岸田理性の劇世界』(岡田蕗子著)も出版されているので是非お手に取って頂きたい。
◇
岸田理生が亡くなってから、理生さんを偲ぶ会代表・宗像駿氏が毎年、岸田理生アバンギャルドフェスティバル(リオフェス)という演劇祭を開催していた。
岸田理生の命日 6 月 28 日近辺にさまざまな団体が岸田理生の作品を上演するという企画。私も縁が繋がり、フェスティバルには 11 年連続で参加、そして本年から宗像駿氏より規格を継承し、同フェスティバル実行委員会代表に就任する運びとなった。
今後は「アングラ」という芸術文化の発展、岸田理生作品の周知促進、そしてまだ見ぬ世代への継承を掲げ、このフェスティバルを通して活動していくことを目標としている。
(よしの・たすく)
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