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July 8, 2025
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カテゴリ: 抜き書き

「国家病」としてのドイツへの傾斜

「明治二十二年の憲法発布のときは、陸軍はまったくドイツ式になってしまっていた。/ドイツ式作戦思想が、のちの日露戦争の陸戦において有効だったということで、いよいよドイツへの傾斜がすすんだ」(同前)

明治の軍人を規定していた最も特徴的なものは、リアリズムや合理主義ではなく、経験主義や実験主義だと思います。ドイツが勝ったからそっちの方がいいというもので、現実に実験されたものを信じるというやり方です。そしてドイツの文化やシステムを取り入れたわけですが、彼らはまだ江戸人がドイツの服を着ているだけでよかった。司馬さんに言わせると、「自国を客観視するやり方も身に付いていた。」(同前)そうです。では、ドイツ色が濃くなった昭和の軍人はどうだったか。

(昭和の高級軍人は、あたかもドイツ人に化(な)ったかのような自己(自国)中心で、「独楽のように理論だけが旋回し、まわりに目を向けるということをしなかった」(同前)

もちろん、これはドイツの文化が悪いということではありません。司馬さんはそのあたりにも留意しています。

「以上はドイツ文化の罪ということでは一切ない。/明治後の拙速な文化導入の罪でもなかった。/いえることは、ただ一種類の文化を濃縮駐車すれば当然薬物中毒にかかるということである。そういう患者たちをにぎられるかどうかは、日本近代史が動物実験のように雄弁に物語っている」(同前)

昭和の軍人はドイツを買い被っているけれど、本当のドイツを知っている人はいない。ドイツ系者というのが「一種の国家病」だったと、司馬さんは強い調子で批判しています。

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Last updated  July 8, 2025 04:59:46 PMコメント(0) | コメントを書く


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