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良い夢を見るために
公認心理士 立田英子さん
まつだ・えいこ 公認心理士。 臨床心理士。東洋大学社会学部社会心理学科教授。 専門は臨床心理学、パーソナリティ心理学、健康心理学。夢の専門家としてメディアに多く出演。著書に『夢と睡眠の心理学——認知行動療法からのアプローチ』(風間書房)、『一万人の夢を分析した研究者が教える今すぐ眠りたくなる夢の話』(ワニブックス PLUS 新書)など。
☝ ポイント
① 気がかりなことは〝棚上げ〟してみる
② 「悪い夢」と「悪夢」の違いを知ろう
③ 〝光や音〟〝掛け布団〟なども関係する
〝オリジナル映画〟
最近、どんな「夢」を見ましたか?
私たちの脳は、日々、五感で得た情報を記憶しています。情報量は膨大で、記憶したことは、その人なりの経験則に基づいて、整理整頓されているといわれています。
その分別作業は就寝中に及ぶことも少なくありません。作業中に、脳の中の記憶のかけらがランダムにつなぎ合わされ、脳の中のスクリーンに映像化されたものが夢の正体です。
意識と無意識にある記憶の情報が入り交じった、自分だけの〝オリジナル映画〟とでも言えましょうか。
睡眠中には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が約 90 分周期で交互に訪れます。レム睡眠の最中は、脳は起きているのに近い睡眠状態になり、私たちが長編大作の夢を見るのは、たいていレム睡眠です。
夢は、生活環境の影響を受けます。幼児から 90 代までの 1 万人以上に調査してきましたが、年齢層によって〝最近見た夢〟の特徴は異なります。
10 ~ 20 代では「学校」「アルバイト」「友人」「推し(好きな有名人)」、 30 ~ 60 代は「仕事」「家族」などが目立ちます。 70 代以降になると、旧友や亡くなった家族と知人が多く出てくることも分かっています。
悩みや体調の影響
悩みや不安を抱えていると、楽しくなかったり、苦しかったりする「悪い夢」を見やすい傾向があります。
とはいえ、葛藤を抱え、悪い夢を見てしまうことすべてが、心の健康に悪影響なわけではありません。起きた時に辛い気持ちにはなりますが、それは、脳が問題を好転させようと頑張っている〝しるし〟だからです。
ある芸人の方は、舞台に立つと、披露する内容を忘れてしまう夢をよく見ていたそうです。良い夢ではないかもしれませんが、夢の中でプレッシャーや不安といった感情を処理しているのです。また、〝より良い芸の披露のための予行演習〟をしているのに近い状態だと言えます。
不安の中で悪い夢を見たとしても、悲観するのではなく、物事に真摯に取り組む自分を認め、前向きな気持ちで夢を捉えていってほしいと思います。
注意が必要なのは、体調が関係していて悪い夢を見る場合です。
溺れる夢を頻繁に見る、ある水泳部の高校生がいました。楽しく練習に通い、タイムに問題があったわけでもありません。調べていくと、蓄膿症で通院中であることがわかりました。息詰まりによる睡眠中の息苦しさが、夢に関わっていたようなのです。
また、小さい頃から、風邪をひいて体調が悪くなると、決まって同じ夢を見る方もいました。こういったケースでは、まず病気の治療や体調を整えていくことを優先する必要があるでしょう。
夢の原因となる日常の課題はすぐには解決できず、対処する手はあるのか、と思う方も多いのではないでしょうか。
一つは、悩みを〝棚上げ〟する方法です。気がかりなことを抱えたまま寝るのではなく、いったん気持ちを切り替えるのです。好きな音楽を聴いたり、アロマを活用したりして、リラックスするのがいいでしょう。
それでも、もんもんとするときは、誰かに相談してみるのもよい方法です。人に話すことで、心が軽くなる場合があります。
「悪夢」には注意
心理学では、「悪い夢」と「悪夢」は別物と考えます。
先述した悪い夢の場合、楽しくない夢ではあるものの、朝まで眠り続けられます。
一方、悪夢は、忘れたいのに忘れられない記憶により、途中で目が覚めてしまう特徴があります。また同じ夢が繰り返し登場する時には、トラウマ(心的外傷)が関係している可能性があります。
悪夢が続くと不眠になりやすく、うつ病などを引き起こしかねません。精神医学的には、悪夢は「睡眠障害」のひとつとして認識されています。そのため、大人のみならず、子どもが見た場合も、夢のないようにきちんと耳を傾け、原因を探って対処することが重要です。
治療法の一つとして、「イメージ・リハーサル・セラピー」があります。悪夢の筋書きを〝ハッピーエンド〟に変える認知行動療法です。
日本では、「悪い夢」と「悪夢」への認識が乏しく、悪夢が〝たかが夢のことでしょう〟と軽く捉えがちです。しかし、本人が夢を見るのがつらいと悩んでいるとしたら、心療内科や睡眠外来などを受診するように勧めましょう。
睡眠環境の改善を
夢は、精神面の悩みや体調とともに、入眠前の心身の状態も関係します。よい夢を見るためには、次の点に留意し、睡眠環境を整えておきましょう。
〈光や音〉
外部の光や音は、できるだけ遮ります。間接照明を活用するなど、くつろげる空難が、よい夢を見るためのポイントです。
〈掛け布団〉
重い掛布団だと、重いものがのっている夢を見るなど、夢に影響するケースがあります。重過ぎず、心地よい掛布団を使うとよいでしょう。
〈トイレ〉
尿がたまった状態で入眠すると、「トイレ」や「水」にまつわる夢を見てしまいかねません。就寝前は、きちんとトイレに行くようにしましょう。
自分なりの〝入眠のルーティンング(日課)〟をつくっておくことも、良い夢を見るために大切です。
健やかな生活と睡眠を心がけながら、良い夢に彩られる秋にしていきたいですね。
夢日記のススメ
自分が見た夢を日記に付けていく「夢日記」。ノートの見開きを 1 日分として、左のパージに「その日に見た夢」と「前日に現実に起こった出来事」の半分ずつ書きます。右ページには、「今晩見たい夢」を記します。
夢の記憶は目覚めた瞬間から薄れていくため、夢を見た直後に書くのがポイント。
夢日記を見返すと、気になっていたことや不安に感じていたことなどが明白になります。自分の心の状態を知るとともに、夢であると自覚しながら夢を見ること(明晰夢)ができるようになるかもしれません。
なぜ〝金縛り〟に遭うの?
体が疲れ過ぎかつ脳が興奮していると、入眠直後、脳は覚醒しているのに、筋肉が弛緩して急速に力が抜けていきます。すると、体がまひした状態になって動けなくなるのです。これが〝金縛り〟のメカニズムといわれています。
「誰かが体の上に乗っている」などの体験をした人もいるかもしれませんが、これは心霊現象ではなく、頭はさえているのに、体が思うように動かないため、押さえつけられているような圧迫感を覚えることが原因です。こうした幻覚を「入眠時幻覚」と言います。
金縛りにあった時は、落ち着いて指先や目を少し動かしたり、ゆっくりと呼吸してみたりしましょう。金縛りから解放され、自由に動かすことができるようになります。
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