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伝えたい自然 と いのち の 尊さ
小説家 塩野 米松
「おはなし 絵本」シリーズを刊行
春、山の麓の水たまりにはぎっしりとしたカエルの卵が産み付けられています。しばらくたてば、オタマジャクシがいっぱい。川岸にふきのとうをとりに行って浅瀬をのぞき込めばメダカたちが群れをなして泳いでいます。ベランダに置かれたプランター。春に咲いたチューリップの球根は掘り出し、そのままにしてあったものです。夏の雨上がりの後に見たら、緑色の若い芽が点々と。
オタマジャクシやメダカは水から生まれてくるのかしら。植物は土から。子どもの頃はそう思っていました。後になって水だまりに卵を産んだのはお母さんガエル。メダカは水草に産み付けられた卵から、植物の種は風に乗って飛んできたのだと知りました。それでも、じゃあお母さんガエルはどこで生まれたのかな。風に乗ってきたタネにはどんな草から来たのかしら。たくさんの本を読み、少しずつ知識を得たつもりでしたが、いのちってどこから生まれてくるのか不思議のままでした。
ずいぶん前に出会った長良川の職猟師さんは「魚は川から湧いてくるんじゃ、親父もじいさんも言うておった」と。一昨年大阪の阪南市の港で会った老漁師は「魚は梅雨の頃にアマモの林から湧いてくる」と自信たっぷりに教えてくれました。皆さん、魚を捕って生きた人達です。魚のことなら何でも知っている名人達です。彼らが体験してきた実感なのです。
私は思いました。地球に最初の生命が出現したとき、確かにいのちは湧いて出てきたに違いないと。宇宙から隕石に乗ってきたかも、あったかい海の中で奇跡が起きたのかも。いずれにしろずっと遠い昔に湧いで出て、今に至るまでつながって、こんなに多くの命があふれているのです。
生命誕生のふしぎや驚きを描く
絵本は心に通ずる秘密の通路
この驚きを子どもたちに伝えたいと思って「塩野米松のいのち わくわく おはなし絵本」のシリーズを考えました。絵本は、驚き、感ずるもの。絵本は心に通ずる秘密の通路です。
シリーズの構成、文は主に私が担当しました。昨年 10 月に出した『ワニくんがやってきた ! 』(飯野和好・絵・翻案)は、まこと君の通う子ども園にワニの子が入園してきました。縁はいのちのお祭りみたいなところ。さあ何が起きたのでしょうか?
11 !
残りの 3 冊の刊行はこれから。今年 3 月に『わく』(村上康成・絵)。このシリーズの核心になる本です。いのちが海や山や空から、心からわき出してきます。その後に、都会の小さな公園が舞台の『いっぽんのき』(松木春野・絵)。山姥の 12 人の娘が世界中からお母さんのところに集まって森の生きものたちと大宴会。その日は 12 月 12 日。『やまんばの 12 人のむすめ』(小沢さかえ・絵)と続きます。ご期待を。 (しおの・よねまつ)
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