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膝の痛みを防ぐ四つの方法
一宮西病院整形外科部長人工関節センター長 巽一郎さん
たつみ・いちろう 医師。膝のスーパードクター。大阪市立大学医学部を卒業後、同大学附属病院整形外科に勤務する中で米国メイヨー・ウリニック、英国オックスフォード大学で世界最先端の技術を体得。手術の腕はもちろん、すぐ切らないドクターとして注目を集める。 2020 年から現職。
「立つ」「座る」などの日常の動作を支える膝。負荷が高いからこそ、痛みや不安がある人は少なくありません。膝の名医である愛知・一宮病院の整形外科部長の巽一郎さんは手術の高い技術に加え、保存両方で痛みを取ることに努めており、国内外から患者が訪れます。膝の健康のポイントを聞きました。
膝の関節が消耗する理由
膝は、体の中で最も大きな関節で、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある関節を指します。
膝には、平地を歩いている時は体重の 5 倍、階段を降りている時は体重の 8 倍の力がかかりますが、膝の軟骨がその力を受けとめ、日常の生活を支えています。だからこそ膝の軟骨は消耗しやすく、すり減ってくると、大腿骨と脛骨が直接接触して痛みが生じます。これを「変形性膝関節症」と呼び、ひざ痛の多くを占めます。 70 年代の女性の約 7 割が「変形性膝関節症」というデータもあります。
原因は主に三つ。「姿勢の崩れ」「適正体重オーバー」「筋力の低下」です。中でも「姿勢の崩れ」と「適正体重オーバー」がひざ痛の原因の約 8 割に当たります。
まずは「姿勢の崩れ」。頭が体の前に出る〝ニワトリ歩き〟の人が多く、骨盤が後ろに傾いた状態になります。これに運動して大腿骨が外側にねじれ、膝も外側に向き、 O 脚になります。膝の内側に多くの負荷がかかり、内側の軟骨がすり減ってひざ痛を起こします。日本人に最も多いタイプです。
また、体重が増えれば増えるほどに、膝関節の軟骨がかかる日かは増え、すり減りを加速させます。
次に筋肉量も膝痛に関係しています。太ももの筋肉は膝関節のサポーターと覚えてください。膝が痛い時、サポーターで保護すると痛みが楽になるように、太ももの前と裏側に筋力が膝を守ってくれています。その筋力が落ちてくると、歩行時に大腿骨がぐらぐらと揺れ、軟骨がどんどんすり減ってきます。
対症療法は悪化の原因
膝を痛めると、多くの人は湿布や鎮痛剤で痛みを止めようとします。それは根本的な治療ではなく、痛みをまひさせながら、日常動作を続けて軟骨をさらにすり減らしていることにほかなりません。
人間には自然治癒力があります。膝の軟骨は、すり減っても少しでも残っていれば、再生させることができます。しかし、痛みを止める対症療法を続けてしまうと、軟骨を全くなくしてしまうことに繋がります。
これを防ぐためには次の四つの対策が有用です。私の下に来院される方に行っていることでもあり、多くの方が手術をすることなく、膝の痛みから卒業されています。膝がいたくない方にとっては予防法として効果があります。
1、 足放り体操
膝関節は関節包という袋で覆われていて、これが伸びたり縮んだりすることで、軟骨の栄養素の分泌が促され、軟骨の再生につながります。そのための運動が「足放り体操」です。
膝関節の軟骨は約 7 割が水分です。膝を長時間動かしていないと水分が偏り、軟骨は乾燥した状態になっています。この状態で立ち上がったり、歩いたりすると、軟骨を大きくすり減らしてしまいます。だからこそ、「足放り体操」を寝起きの朝一番の習慣にすることが大切です。
ベッドで寝ている人はベッドサイドに座って、布団で寝ている人は近くにいすを置いておき、起きたら、その椅子に座って行といいでしょう。
デスクワークなど長時間、同じ姿勢を続けて立ち上がる際も危険です。立つ前に、この「足放り体操」を実践するといいでしょう。(①~④を両脚で行ってください)
① 両手を組んで、太もも裏から脚を持ち上げます。
② 膝を伸ばします(この後、太ももと膝裏の力を完全に抜きます)。
③ 脚がストンと落ちて、膝を振り子の支点として揺れます。
④ 揺れを止めないよう、両手でももを上げ下げします。 30 回程度、太ももの筋肉を使わずに両手で振り続けてください。
2、 体重の維持・減量
適正体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
私は手術の日である、忙しい火曜日に行っています。手術室で私のおなかが鳴り、看護師に大笑いされたこともありますが、手術自体は集中力が上がります。空腹だと仕事の効率が落ちると心配する人もいますが、その逆です。私の患者も実践し、糖尿病の多くの方が薬を飲むことなく、症状を改善しています。
3、 歩き方
正しい姿勢は膝への負担を減らします。歩く際は、頭が前に出る〝ニワトリ歩き〟に注意します。立っている時は、骨盤の真上の位置に頭が来る理想の姿勢です。歩き方のポイントの一つは、頭が前に出ないよう、かかとからの着地を意識することです。
そして靴底の減り具合いを見て、かかとの外側が減っている人は O 脚、内側が減っている人は X 脚と考えられます。 O 脚の人は「内もも歩き」、 X 脚の人は「一直線歩き」を習慣にするといいでしょう。
一直線歩き( O 脚に歩く)
後ろ脚は前足のほぼ前に出して、小指重心で一直線に歩きます。
内もも歩き( X 客に歩く)
かかとから着した際、膝を少し内側に入るイメージで歩きます。
4、 筋肉トレーニング
太ももの筋肉は膝関節を守る自然の装具です。また、筋肉量を維持するのは膝だけでなく、体全体の健康を守ることにもなります。ハムストリングス(太ももの裏)、大腿四頭筋(太ももの前)、臀筋、背筋、腹筋の五つの筋肉を鍛えられる「一石五鳥体操」を紹介します。
① あおむけに寝て、片膝を立てます( 90 度に膝をまげる)。
② 両手を床につけて腰を浮かせます。腰が上がらない場合、手で支えます。
③ 片膝を立てた脚と並ぶよう、もう一方の足を頭からつま先まで一直線にのばします。
④ 伸ばしている脚を上げて元の高さに戻すことを 30 回程度、繰り返します。
※①~④を両脚で行ってください。
【健康 PLUS+ 】聖教新聞 2025.3.15
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