見知らん街ガイド_『パリ時代』と神戸生活日記

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神戸男

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2020.01.17
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カテゴリ: 日々の出来事
神戸の震災から25年が経った。
今年も市役所南の公園で慰霊の式典が行われた。
今日。私はその時間、午前5時46分52秒。神戸市灘区の都賀川の河川敷にいた。
震災25周年。同時刻。亡くなられた方々に心から黙祷を捧げた。
 25年前。
我が家は建物を建て替えたばかりだった。私が1階を写真スタジオに使うため、長さ9m×幅6m×高さ5m、厚さ25㎝のコンクリートの箱を地中1.2mの深さで組み立て、その上に2、3階、小屋裏と積み上げた建物は幸いにして無傷だった。
 4階の小屋裏で寝ていた私は、大きくズンッと沈み込んだ感覚で目が覚め、次ぎに、南北の激しい揺れに夜具が8畳程の部屋の奥から小屋裏の入口まで、移動させられていた。
何事が起こったのか分からないまま、部屋を出ると、目の前の見慣れた光景は大きく姿を変え、私の住んでいる横町の家並みは、私の家と、向かいの並びの2階建ての家2軒だけが残っていて、後はぺちゃんこになって、屋根瓦の海の様になっていた。
細かな埃が空気中を漂い、人の声も、鳥の声も全く聞こえず、不気味なほど音が無かった。

 我が家には飼い猫がいて、その姿が見えず、狭い小屋裏部屋を名前を呼びながら探してみると、天窓から外に逃げようとしたと見えて、まん丸に目を見開き、窓枠に必死にしがみ付いていた。
私の声が分かったのか、とんでもない声を張り上げて鳴き始めた。
余程怖かったと見えて、体は硬直したままで窓枠から離れようとしなかった。
 怪我がなかった近所の人達総出で、倒壊した建物の中に閉じ込められた人達を救出する。
有り難いことに横町の住民は軽い怪我はあったけど大事に至った人はいなかった。
 私はと言うと前年のクリスマス明け、写真撮影の準備中に脚立の足が折れて落下、右腕を単純骨折していて、救援活動の何の助けにもなっていなかった。
出来ることは、仕事で使うB1サイズのパネルに近所の住人の安否情報を掲載する役目を仰せつかり、石膏で固められた右腕ながら、役に立とうと頑張っていた。

 震災から何ヶ月が経過して、少しずつ日常が戻りつつある頃に、市から区画整理の案が出て、折角残った我が家は取り壊されてしまった。
今は新しい家が建ち、区画整理で町内は一変し、震災前の面影はほとんどなく、お隣さんもお向かいさんもこの地を去り、昔ながらのご近所さんはいなくなってしまった。

 今年もその日を迎えた。
テレビでは慰霊祭や、鎮魂の思いを伝える番組が放送されている。あの震災を題材にした番組やドラマが放送されるが、私は一切見ない。そして1月17日午前5時46分52秒、私は慰霊祭には参加しないで、ただ、ただ、河原を歩き続け、その時間に歩みを止め、黙祷を捧げた。


 あの日、フワフワと火の粉が飛んでいた。
火の粉とは呼べないような大きな塊が、音もなく、風もない生暖かい大気の中を漂ってくる。
慌てて、手で落とし、踏んで火を消した。遠くから火の粉が幾つも、幾つも漂ってくる。そのうち、小さな小さな火が、崩れている家の古くて乾いた瓦礫に燃え移り、火の手が上がる。動ける人が、手を尽くして、瓦礫に閉じ込められた人を助け出そうと懸命に動く。閉じ込められた人の家族が助けを求める。みんなが一丸となって瓦礫を掘り起こす。
 火事は辺りの瓦礫や残った家も次々と焼きつくしていった。人の命までも。

 ある人は助けを待ち続けて、瓦礫の中で息を引き取った。

でも返事は返って来なくなった。それでも残された人は、その場を離れられないでいた。
 ある人は、瓦礫の中に取り残されたまま、火の手が回ってしまった。
家族は一縷の望みを持って、励まし、残された時間をどんな想いで過ごしたのだろう。
最後の最後まで、言葉を掛け合った家族は、どんな気持ちでその場を離れたのだろうか。
瓦礫に閉じ込められた犠牲者は、どんな思ったのだろう…。
 そう考えてしまう。
家族を失った。しかもほんの少し離れた場所で…息づかいが聞こえていたかも。手を継いでいたかも…。何も出来ず、家族の最後をみとった人達の気持ちなど、私たちに分かろうはずがない。

 私はその日、その時間。私が体験した事と、目の当たりにした出来事と、その出来事から学んだ事を噛みしめながら、喪に服すこととしている。
 6434名の犠牲者に黙祷。
 安らかにお眠り下さい。





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Last updated  2020.01.17 12:43:27
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