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会場となったせせらぎを望む展望台に案内されて来た参加者は、期待のあまり皆一様に顔を紅潮させ、大きく目を見開いて、その時を待っていた。ガイドは、そんな参加者の姿に軽くうなずいて見せると、自らも少しばかり大仰なしぐさで、会の始まりを告げた。・・・参加者の皆様、大変お待たせしました。地球上ではここでしか味わい得ない、貴重な名物料理です。必ずや皆様のご期待に沿うことを思います。お一人様1分間のご提供でお願いしております。さあ、どうぞ。ガイドの掛け声とともに、参加者一同は、背中に背負ったボンベに繋がっている酸素マスクをかなぐり捨てると、いっせいに「すーはすーは」と深呼吸をし始めた。深呼吸の音が谷間にコダマする、ここは唯一核爆発の影響を逃れた地球上最後の地。ガイドの声もコダマする。・・・完全な管理の元に、『天然の』『新鮮な』『そのままの』『まじりっけなしの』空気でございます。皆様心ゆくまでご堪能ください!・・・
2003/12/18
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・・・おっとガソリンが無くなりそう、そこのガソリンスタンドで給油して行くよ。了解!こんな場面はよくあること、車ならなんの問題もないものの、ことこれがUFOとなると・・・京都議定書は発効されたとはいうのだが、近頃の異常気象は止まる所を知らず、大洪水に砂漠化の加速、巨大台風に大竜巻の多発と、地球全体の荒れようは異常気象が日常といわれるぐらいになって来た。果ては大地震による大津波の発生とそれに起因する自転速度の変化にまで至っては、まさに手の付けられない有様である。多方面からの検証を重ねる学者連も、この大混乱にはまったくなんの打開策を見出すことは出来そうも無かった。そして、当たり前のことであるが、UFOとても宇宙空間を航行するにはエネルギーが必要なのだ。それがたまたま、ガソリンでなくて、惑星の自然エネルギーであるということ、かつまた、地球ではその採取制限が設けられていないため、取り放題であるということ。故に、このすさまじい荒れようを引き起こしているのだ。とは言うものの、乱獲、乱掘でさんざん自らも自然環境を荒らし捲くった地球人であれば、それは自明の道理であろうが、いまだ、誰もそのことに気が付いていない・・・・
2003/12/17
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その町では、事故の多い交差点の安全対策で悩んでいた。町の警察は、交通安全のキャンペーンをするのは勿論、カーブミラーを付けたり、信号の点滅時間を長くや短くといろいろと調節してみたりと、それこそありとあらゆる手立てを講じてみた。それでも、事故の件数はちっとも減る気配をみせなかったので、警察署長は頭を抱えていたのだった。そして、つまるところは、交差点で事故が多いのは、人為的なモノではないという結論にいたっての、神頼みならぬ幽霊払いとなったわけだ。事故の多い交差点に憑きモノの自爆霊を払う行事が、町をあげて徹底的に行われた。結果、あれほど頻発していた事故が、なんとぴたりと収まったのだ。警察署長は久しぶりに枕を高くして眠りについたのだが・・・・お払いした交差点のひとつ隣の交差点で、事故が多発するようになったのは、次の日からのことだった。警察署長はしばらく悩んだものの、あまりの事故件数の多さに、またお払いすることに決めたのだ。お払いの効果は勿論あって、その交差点では事故は起こらなくなった。そして、その隣の交差点では事故が多発するようになった。だから、またお払いをすることとなった。そして、その隣の交差点で・・・だから、またお払いを・・・そして、その隣の・・・だから、また・・・そして、ほぉら、そろそろあなたの町の交差点にたどり着くころ・・・・
2003/12/16
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・・・今度という今度は許せないぞ!頭から湯気を出して怒っている男が居る。・・・もう、絶対ただじゃおかないんだから!口を尖らせて若い女が甲高い声を出す。・・・我々の集めた食料を返せ、今すぐにだ!小さな体を精一杯伸び上がらせて兄弟が叫んだ。・・・今すぐによ!小さな声で後を続けたのは姉妹たちだった。・・・このままでは冬を越せないぞ、みんなで食料を取り戻しに行くんだ!握り締めたこぶしを振りかざすと、先頭を切って歩き出したのは、梢から飛び降りてきた血気にはやった若者たちだった。こうして彼らは、森の奥に向かってずんずんと、あるものは歩き、あるものは這い、あるものは飛んで、誰もが急いで進んだ。たどり着いたところは、勿論クマが住む洞窟の前だった。洞穴の入り口は枯れ枝でしっかり封印され、その上にはこんな張り紙が貼られていた。「季節柄、都合により『冬ごもり』いたします。御用の方は春までお待ちください。」タヌキにウサギにフクロウにサルは、クマの洞窟の前で、唖然とすると、一言つぶやいた。「『冬ごもり』ってなんだ?」そして、『冬ごもり』から目が覚めたばかりの春先のクマが、とても気が荒いのは周知のこと。誰も文句など言えるわけもない。
2003/12/15
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・・・長らくお待たせいたしました。来る12月14日にオフ会を開催いたします。奮ってのご参加を、こころよりお持ちしております。皆様におかれましては、これまで電波を通じてのみのお付き合いということですが、これを機会にご交友を深め、より有意義な関係を持たれることを楽しみにされておられることと思います。そのための会場としては、やや僻地ではありますが、沢山の方々にお集まりいただける場所をご用意いたしました。水と緑にあふれた素晴らしいところです、きっと皆様にご満足いただけることと思います。勿論、フィッシングやハンテイングなど、アウトドアの環境も楽しめます。では、皆様にお目にかかれるのを楽しみにしております。そして12月14日、地球の上空はあらゆる型のUFOで埋め尽くされた。
2003/12/14
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<ご挨拶>この度、都合により、ホームページを閉めることになりました。今までのご愛読とお付き合い、本当にありがとうございました。・・・えええ、閉めちゃうの?・・・どうしてぇ、楽しみにしていたのに。・・・止めないで、お願いします。・・・寂しいな~、どうして止めるの、止めるの止めようよ・・・少年のホームページには、挨拶を見た人々からの書き込みが続々と重なった。それを見ながら、少年はにんまりした。少年はにんまりしながら、これが13回目のご挨拶メールであることに、密かな満足を覚えていた。その昔、彼がうそつきの狼少年と呼ばれたことは誰も知らない。狼だ!狼が来る!狼なんてけして来やしないのに・・・・
2003/12/13
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チューリップの中にお姫さまがいる。幼いころの御伽噺だと思っていた。だから、あたり一面広がる花畑に来て、呼ばわる声に驚いた。・・・いらっしゃい、わたしはここよ。・・・いらっしゃい、わたしはここよ。真っ赤なドレスに身を包み、サフラン色のスカーフをはためかし、濃紫から淡紫に変わる幾重にも重なった裾を翻し、風車が送るそよ風にうち震えながら、花弁の奥から声がする。100万本のチューリップが咲き乱れる中で途方に暮れる。・・・いらっしゃい、わたしはここよ。・・・いらっしゃい、わたしはここよ。いくらなんでも、100万人の親指姫は多すぎる。
2003/12/12
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ふと見かけたチラシで申し込んでから、今年で三年目だ。故郷という甘酸っぱい表現に似合うようなそんないい思い出があるわけでもないのだが、なんとなく故郷からモノが届くのもいいかもしれないと思って申し込んだ。私の故郷にはすでに誰も縁者が居ないのだから、帰ることもない。思い出だけが故郷のすべてだ。一年目は、野菜と卵が届いた。同封された説明書には、新鮮な朝取りと書かれていた。それで作ったスープはどこなく日なたくさく、柔らかなにおいがした。二年目は、パンとベーコンだった。勿論、国産自家製の手作りの品だった。噛み締めるとじわっと口中に懐かしい味がふくらんだ。三年目の今日、何が届くのは楽しみだった。配達された箱はこれまでと違って妙に軽くて、不安になった。軽く振ってみたが、カサリとも音もしなかった。急いで箱を開けてみると、やはり何も入っていない。がっくりとしながら底を探ると、指先に紙切れが触った。紙切れにはこんな風に書かれていた。「故郷からの風をお届けします」ふわりと、箱から紙切れが舞い上がると、くるりくるりとまるで部屋中を踊るように漂い始めた。それを見ながら、確かに懐かしい人の声が私の名を呼んでいるのが、私には聞こえていた。
2003/12/11
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愛しい人、今年もクリスマスの時期が来た。・・・男はゆっくりと筆を走らせる。ワープロは嫌いなのだ。キーボードがカタカタと歯切りする音が耳に障る、それだけでなにもかもが台無しになる気がする。やはり、文字を書くのは万年筆に限る。愛用のアウロラ・アルティスはイタリア人らしい細やかな職人気質と貴族的な遊び心が出会った最高の万年筆だ。男はなじんだ重さを心地よく感じながら、筆を走らせる。愛しい人、あのクリスマスイルミネーションは覚えているだろうか。いつもはバスの発着のときだけほんの一時にぎわう駅前広場が、その時期は人であふれていた。広場の片隅にある町の伝言板も寒々とした街路樹も古ぼけたバス停もなにもかも飾り付けられて、目にも艶やかに夜を彩っていた。誰もがそのさまに口元をほころばせ、歩みさえも緩やかになり、次々と広場を通り過ぎていく。近くにある貧相な商店街も、このときだけはキラキラと明るく賑やかな装いなのが妙におかしいと、まるでうなされたように使うつもりもない雑貨を買いまわっていた君の姿が懐かしい。・・・男は書く筆を止めて、文字のかすれに目をやった。そして、男はインクをゆっくりと補充すると、ふーっと息を吐きながら、吸い取り紙に液をこぼした。ポトンと筆先から落ちたインクは、滲んでじわじわと広がっていく。それを見ながら男はもう一度息を大きく吐いた。愛しい人、今年のクリスマスはどうしているのか。君がいなくなってから何度目のクリスマスなのか、もう私には分からない。でも、クリスマスが来るたびに思い出すのだ。君の微笑み、君のしぐさ、君のささやき、君の柔らかなほほ、君のしなやかな手足、君の、君の・・・・・愛しい人、愛しい人、君にメリークリスマスを・・・男は、ゆっくりと読み直す。・・・愛しい人、愛しい人、文字は何度も何度も男にささやきを繰り返す。読み終わると男は満足そうに頷き、椅子の上で体をひねって後ろを振り返り「お待ちどうさま」と声を掛けた。うたた寝ていたらしい編集者は、声を掛けられてビクンと体を震わせると半分方目を開き、寝ぼけた声で「できましたかぁ」と聞き返した。男は「『クリスマスに寄せる恋文』まあ、こんなもんだろう」といって、プリントをスタートさせた。カシャカシャと軽い音とともに、紙が吐き出されてくる。編集者はあわてて起き上がると、床に撒き散らされる紙を拾い集めて、目を走らせる。「あ、ありがとうございます。」編集者は、拾い集めた原稿をページ順に揃えながら、男に言った。男は黙って、原稿をFDに保存すると、パソコンのスイッチを切り、椅子から立ちあがって、手を思い切りのばすと息を吸った。「これでアップします。」原稿とFDをかばんに入れると編集者は、あわただしく身支度をして出て行こうとした。男は、編集者を送ろうとゆっくりと玄関で待っていた。玄関まで来た編集者は、弾んだ調子で「明日デートなんです。」と言い「原稿が出来たおかげで、クリスマスが彼と過ごせます。」と男に、はにかんだよう顔を向けた。男は一瞬置いて、「じゃあ、今年こそ君にメリークリスマスを言えるわけだ。」と言うと、思い切り良くドアーを開けた。昨年もその前も、クリスマスには男は編集者を付き合わせて、徹夜で原稿を仕上げていたのだ。外はすっかり明るくなっていた。「メリークリスマス!」「良いお年を!」声を張り上げると、編集者は表通りに向けて足早に駆けて行った。男は、その後姿を目で追いながら、そっとつぶやいていた。・・・愛しい人、今年こそ、君にメリークリスマスを・・・・
2003/12/10
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サンタは、煙突のない今風の家に入りあぐねていた。彼は子供部屋と思しき橙色のカーテンが掛かっている部屋の窓にそっと近づくと、子供を起こさないように、用心しながら壁を抜ける呪文を唱えた。中空で待っているトナカイは、背中に雪が降り積もるのをじっと我慢している。部屋の中は、暖かい温風が満ちていた。サンタは額に浮かんだ汗をぬぐいながら、子供のベッドに近づいた。すると、寝ているはずの子供は、ぱちりと目を開けて、サンタを見て笑ったのだ。・・・ほら、プレゼントだよ!サンタは驚いたが、そこはぐっとこらえて、何食わぬ声を出し、プレゼントを子供に渡した。・・・ありがとう!子供は、ベッドの上に半身を起こすと、プレゼントを受け取ると、猛然と包み紙をむしりとり、中からミトンの手袋を取り出し、歓声を上げた。子供の無邪気な喜びようを、サンタは部屋を立ち去ることも忘れて、ただ息を呑んで見つめていた。・・・サンタさんには誰がプレゼントをあげるの?子供は、嬉しさで真っ赤にしたほほを、さっそく両手にはめた手袋でこすりながら、サンタに聞いた。サンタは、黙って笑いながら、子供の頭をひとつなでると、もう一度呪文を唱えると、ふっと外に出て行った。子供が、ベッドから飛び降りて、カーテンを押しのけ、もらった手袋で窓の曇りをぬぐうと、ちょうどトナカイが動き出したところだった。サンタは、見ている子供に向かって軽く手を上げると、そりは音もなく滑りだした。・・・今まで、わたしはひっそりとプレゼントを置いてくるばかりで、どんなに皆が喜んでいることかと、想像しているだけだった。今夜、初めて、その喜ぶ姿をこの目で見ることができたのだ。子供よ、わたしにプレゼントをありがとう。最高のプレゼントありがとう。サンタは、果てしない夜空を滑りながら、次の出会いを夢見ていた。
2003/12/09
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危機管理だか、安全対策だか、なんだか知らないけど、なにもかも秩序が有って、管理されてていやになるよ。そりゃバスも電車も時間通りに走ってるのはいいことだし、地震や火山の噴火もなくなったのはいいことだけど、世の中、まったく意外性ってものがなくなっちまうと、面白くないもんだな。本当につまらないよ。なにか思いがけないことでも起こってくれないものかね・・・まあ、おかげで暗い夜道も、こうして強盗の心配もしないで歩けるのは本当にいいことだけど・・・・???、なんだ、あの白いぼやっとしたものは?ええええ、ぎゃああああああ、ゆ、ゆ、ゆ、幽霊だ~そんなまさか!!!!慌てふためいて逃げてゆく男の姿を目で追いながら、柳の陰の幽霊は満足そうに頷いた。・・・こら!突然声を掛けられた幽霊が、びくっとしながら振り返ると、そこには定期巡視で通りかかった秩序管理委員が、苦々しい顔つきで立っていた。・・・だめじゃないか、勝手なことをして!管理委員は、幽霊にきつい口調で、説教を始めた。・・・秩序のある管理社会に不満を持つやからをなだめるために、ちょっとした驚きをかもし出すために、君の役目があるんじゃないか、困るよ勝手な行動をされると・・・・叱られて幽霊は肩を落としてしょんぼりとしてする。・・・君の持ち場は、あの曲がり角だろう、ここは違うじゃないか、守ってくれないとだめだよ、秩序が乱れるじゃないか!
2003/12/08
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・・・さあ、贈り物をお届けに来ましたよ。受け取ってください。地球人のみなさん、どこですかぁ?2×××年、地球に降り立った宇宙人は当惑しきった顔つきで、たたずんでいた。呼べど叫べど、声に応える地球人の姿はどこにもなく、荒廃しきった地球の様子から、それが最終戦争で全滅したと、宇宙人が気が付いたのは、しばらくしてからのことだった。・・・せっかく持ってきたのに、喜ばれると思ったのに・・・宇宙人は4本の腕でそっと抱えたボックスに向かって、寂しそうにつぶやいた。抱えたボックスには「平和の種」と文字が踊っていた。
2003/12/07
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あたしはどうしても、貴男と一緒になりたかったの。どんなことが起きても、離れたくなかったの。他の女に貴男をとられることなんて我慢ができなかったの。だから、願ったの、貴男と一緒いたいと・・・気のせいかな、なんか変じゃないか。そうかな。そうだよ。ほら、よく見えろよ。・・・さんさんと日に照らされた通りには、男の影が写っている、はずなのだが、友人が指を指す先には、まるで女性の影としか見えないものが在るだけだった。あぁ、願いは叶ったわ。私は貴男から離れない。どこまで、いつまでも、同行二人・・・
2003/12/06
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・・・ねえ、おじいさん、これ、なあに?ある日、僕は物置で、大きな茶色の箱を見つけた。いろんな色や形のシールが貼ってあるけど、すみっこなんかもうぼろぼろでとっても汚れていた。持ち上げてみようとしたけれど、すごく重くてぴくりとも動かなかった。箱には、おじいさんの名前が書いてあった。僕は英語スクールに行ってるからローマ字だって読めるんだ。・・・これかい、これはね・・・僕はおじいさんの手をひっぱって、物置につれてくると、聞いたんだ。おじいさんは、ちょっと驚いたみたいだけど、にこにこ笑って、教えてくれた。・・・これは、おじいさんのトランクだよ。僕のおじいさんは、世界中の海を船に乗ってまわっていたんだ。これはそのとき使っていたトランクなんだって、箱じゃないんだって教えてくれた。おじいさんは、懐かしそうにトランクのあちらこちらをなでながら、・・・ずいぶん、ぼろぼろになったなぁ~って、言っていた。・・・何が入っているの。僕が聞くと、おじいさんは、・・・この中にはね、若いころのおじいさんの未来が入っていたんだよ。って、少しだけ寂しそうな顔をした。・・・未来って、重いんだね、たくさん入っているから重いんだね。僕が言うと、おじいさんは、・・・そう、たくさんたくさんね、入っていたんだよ。って、言いながら、僕の頭をぐるぐるなでたんだ。僕には、おじいさんのぼろぼろのトランクが、なんだかかっこよく見えた。ある日、おじいさんは、海で溺れている人を助けた後、波に飲まれて戻ってこなかった。大好きな海に連れられて行ったんだと、パパは言っていた。お葬式の次の日、僕はおじいさんのトランクをもう一度持ってみた。あんなに重かったのに、トランクはとっても軽くて、僕が片手でも持ち上げられるぐらいになっていた。
2003/12/05
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・・・社長!ストレス解消の最高の方法を思い付つきました。それはなんだ、ぜひ聞かせてくれ。近頃生産性が落ちているこの会社では、その原因を探った結果、どうもそれは社員が一様に、きわめて深刻にストレスを感じているということであると判明していた。そこで、社長の命令一過極秘の専任プロジェクト体制で、ストレス解消の策を検討していたのだが、そのいい方法が見つかったというのだ。社長は、興奮を抑えきれない様子で報告が述べられるのを待っている。専任プロジェクト班長がやや緊張しながら報告し始めた。・・・ストレスの原因は一様に同僚との関係に起因していることがわかりました。何か気に入らないことがあっても、その相手が同僚であるということで、なかなかそれを相手にぶつけることが出来ず、それが各人の心に中に積もり重なっていることで、ひいては仕事の能率にも影響を及ぼすものだと思われます。・・・プロジェクトで分析を重ねました結果、その解消にはやはり心の中にあるものを外に出すことが必要であると、判断しました。そこで、社員一同に手鏡を支給し、朝礼時に、鏡を見ながら思いっきり悪口雑言をつくなり、罵倒するなり、日ごろ言いたいこと、我慢してきたことを、言うという方法を思いついた次第です。なお、この手法を実践するに当たり、つきましては、全社員に手鏡の支給をお願いするものであります。こうして、朝の朝礼時には、聞くに堪えない罵詈雑言が飛び交うようになったのだが、おかげで仕事の能率はずいぶんと上がったのだった。この会社では、いち早くクローン技術を導入し、優秀な社員をそろえたので有名であった。自分と同じ顔ばっかりでは、さぞかしストレスも溜まる事であろう。まして、それが社長とも同じと来ては・・・・・
2003/12/04
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3人の面接官の前には、緊張した面持ちの男性が一人座っている。男性に向けては厳しい質問が矢継ぎ早に飛ぶ。一言一言注意深く、男性は言葉を選びながら答えている。すべての質疑が終わり、面接官は満足そうに、男性に退席を促した。男性は、一礼すると部屋を出て行った。・・・どうかね?面接が終わって、部屋を出てきた男性に、社長が心配そうに聞いた。・・・AとCはいけません。なにしろ威圧的ですし、あれではお宅の会社のイメージも悪くなると思いますよ。男性は、すっかりくつろいだ様子で、答えている。・・・そうかそうか・・・社長はメモを乗りながらうなずき、早速面接官交代の思案をし始めた。面接官を決めるための面接である。優秀な人材を得るには、面接する方にだって相応の優秀さが在ってしかるべきなのだ。
2003/12/03
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・・・定期メンテナンスを実施いたします。なんのメンテナンスだっけかな?昨日の午後受け取った葉書には、メンテナンスの実施日は書いてあったが、なんのメンテナンスなのかは一言も書かれていなかった。・・・メンテナンスは、この葉書を受領された日の翌日午前3時から開始、終了は午前6時の予定です。ずいぶん早い時間からやるんだな、一体なんのメンテナンスだろうか。この間契約したCATVかな、それともインターネットだろうか、まさか朝早くから起こされるわけじゃないだろうな。6時だとちょうど起きる時間だな。連絡先は書いてあったが、問い合わせが多いのか、しばらくお待ちくださいとアナウンスが流れるばかりで、フリーダイヤルはつながらなかった。翌朝、いつものように目覚ましは鳴ったが、男は起きて来なかった。そして、男の顔の上には「ただいまメンテナンス中」の文字が明るく点滅している。男の職場では、課長がぶつぶつ言っている。また、メンテナンスが延びてるな・・・
2003/12/02
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・・・いかがですか、こちらがお勧めの新製品です。にこやかに笑う保険屋が見せるパンフレットには、「記憶バンク」と華やかな文字が躍っていた。・・・記憶バンク?なんだこれ?聞き返した私に向かって、待ってましたといわんばかりの調子で、保険屋はとうとうと述べ始めた。・・・お客様が覚えておかれたいことをお預かりさせていただくシステムでございます。特に楽しい思い出などお預けいただきますと、お歳を召されてから、利子をつけてお戻ししますので、楽しい思い出はより楽しく、若いころの体力と気力のままに、何度でも味わうことが出来るのです。なるほど、考えたものだ、保険もお金じゃなくて、記憶とは・・・楽しい記憶が戻るならそれはいいだろうなと思い、契約することにした。・・・本日は、お預かりした記憶が満期になりましたので、お約束どおりお戻しに上がりました。どうぞ、これから楽しまれますように・・・保険屋はそういって、スイッチを操作する。すると、目の前のベットで、ピクリともしなかった寝たきりの老人が、ぱくぱくと口を動かし始めた。そして、しわだらけの顔をゆがめてかすかに笑っている。
2003/12/01
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