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2012.01.03
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カテゴリ: 小説
11-4 林檎の気持ち

 顔中白い包帯で巻かれ、目だけが無我を見つめている。木枯らしがびゅーと二人の間を駆け抜ける。
 「無我さんは手紙で愛してると書いてくれたわ 私の容姿が悪くてもいつかは、愛が通じると思っていたの。でも、もう無理ね、顏がないんですから」
 「愛にどんな意味があったんだろう、愛してるってどういうことだろう、僕にはわからない」
 「逃げていいのよ、誰だって美しいものがいいんだから、美しくなければ愛は悲劇ですから」
 「愛に悲劇はありません。愛があると思うから悲劇がはじまったのです」

 沈黙の空気の中を、枯葉が吹雪のように散ってくる。秋が深まり、蝮も冬眠の季節だ。弱井君にもらった赤い林檎をズボンで拭う。みつこさん林檎を齧る、ポタリと涙が林檎を濡らす、言葉が見つからない無我、枯れ枝をぽきっと、折っている。

 赤いリンゴに口びるよせて

 りんごはなんにも言わないけれど
 リンゴの気持ちはよくわかる
 リンゴかなしや かなしやリンゴ

 無我さんが悪いんじゃない。同情と愛情は違う、今、愛してると言われたら、私は無我さんを愛さない。無我さんの虚飾が喜ぶ愛は嫌いです。愛は本当じゃなくちゃ意味がない。 無我さんなんにも言わないけれど無我さんの気持ちがよくわかる。無我さん悲しや、悲しや無我さん
 辛いのは私より無我さん。顏を探しに葛谷を後にするみつこさん。峠の上から、もう一度、振り向くと、「透明人間みたいだね」 弱井君なんにも言えず、落ち葉を足でかき回しながら、べそをかいていた無我。
 だれがいうのか さ、よ、う、な、ら

作:朽木一空

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最終更新日  2012.01.03 09:26:14
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