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2012.02.07
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カテゴリ: 小説
12 雨の慕情 雨雨降れ降れ、もっと降れ

 今日も、桃子はドックランでポンコの帰りを待っていた。 もしかしたら、襤褸と一緒に帰ってくるかもしれない、淡い期待も抱いていた。人間と一緒のベンチにいるのが辛くて老人と襤褸のいる桜の木の下で、
 「ポンコ、いつまでも待ってるからね」と呟いている。
 「ポンコは生きてるよ、帰って来るよ」 老人がそういうと、本当に帰ってくるような気がしていた。

 ポンコは、必死に逃亡を続けていた。 いつしかドッグランに続く土手の上をとぼとぼ歩いていた。お腹も空いたし、疲れ切っていた。 虎鉄は撃たれて死んでしまった。愛も、仲間も、家族もみんな失ってしまった。楽しかった日々は夢幻だったのだろうか。これから、どうしよう、生きていけるんだろうか、絶望とは、希望のない状態をいうのだろうか。

 「んん?」懐かしい臭いが風に乗って流れてきた。桃子の臭いだった。「わん、わん、わん」 ポンコは狂気したように桃子を探した。桃子の耳にも懐かしいポンコの鳴き声が届いた。
 「ポンコだ!ポンコ、ポンコ」 桃子は土手を登った、ポンコが遠くから、走ってくる。
 桃子も走る、二人は再会を喜んだ、抱き合った、目と目が会った。涙が零れた、ポンコの尻尾はちぎれそうに揺れている。お尻を振ったのが間違いだったのに、すっかり忘れて大喜びしていた。


 「帰ろうか」老人は立ち上がってやっの思いで土手を登った。よたよたした足取りで苦しそうに、土手に腰をおろした。静かな目で、流れる水がゆっくりと渦を巻いているのを眺めていた。ぽたぽたと水滴が川面を叩きだしていた。

 老人は目を瞑った、雨が激しく顔を濡らしても暫く動かない。ぐらっと体が崩れて倒れこんだ。襤褸が老人の手を舐め、顔に舌を這わす、
 「永く生きてもおんなじことだった、お終いだ、あばよ」
 「くううん、くううん」と、襤褸は老人の顔に鼻を擦りつけて、雨ではなく、眼から涙をぼろぼろこぼしていた。
 「寒くなる、家に帰って暖めよう」 襤褸はそう考えて、老人の襟元を銜え、土手の上を引き摺るように引っ張って歩いた。

 ポンコと桃子も老人の異変に気づいた、桃子に「助けなくちゃ!」と合図して、走り出した。雨足が激しくなってきた。
 「襤褸、襤褸、ワンワン」とポンコが大声で叫ぶ、すると、川に沿った街道に一台の4WDの車が止まり、「いたぞ!、まだいたぞ!あのプードルも悪犬の仲間だ!」 車から降りて、捕獲団が追いかけてきたのだ。
 狙撃首はポンコに狙いを定めた、狙撃者は順造だった。
 「お父さん、止めて、ポンコよ、ポンコよ!」銃撃手は一瞬躊躇った、その隙にポンコは川上に向かって逃走した。
 「ポンコ、ポンコ待って」桃子は泣きながらポンコの後をがむしゃらに走る。
 「おい、あそこにも怪しい犬がいるぞ! ありゃあ、、人間を引き摺ってるぞ、あいつも殺人犬だな」狙撃手は襤褸に狙いを変えた。

 雨雨降れ降れもっと降れ、悲しい犬の話を流しておくれ。

(完)

作:朽木一空

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最終更新日  2012.02.07 10:46:36
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