再出発日記

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2012年04月24日
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カテゴリ: 洋画(11~)
「水曜日のエミリア」


ハーバード大出身の才媛のナタリーは、渋い弁護士にひとめぼれ。けれども彼には奥さんと男の子がいた。不倫を実らせ、生まれる赤ちゃんと男の子といい家族を築こうとした矢先に誕生三日目で赤ちゃんがなくなってしまう。と、いうところから始まる等身大の女性をナタリーが演じている。

継母としてのナタリー、赤ちゃんを失くした喪失感、前妻との葛藤、父親との葛藤、失敗を繰り返し、けれども子供と少しずつ良い関係を築きかけた矢先にナタリーは一番こだわっていたある秘密を打ち明ける。

夫の言葉は女性にはきついだろうな。
「君は愛する人に厳しすぎる。(だから結婚生活は)もう無理だ」
確かに彼女は厳しすぎる。女性には分かってもらいたいのだが、男はやっていけないと思うこともあると思う。けれども、ナタリー目線で話が作られているので、彼女が厳しくなった原因や、それでも母親として少しずつ成長していっている様子などが丁寧に描かれているから、最後の落し処に男の私も納得はするのである(女性は反対にあの夫が謝らなかったことに腹を立てているかもしれない。そこは議論のあるところだ)。

私としては、厳しくてもナタリーならば大丈夫です。

「ステキな金縛り」
良くも悪くも、三谷コメディ。本人自身が「ワクワクする法廷ミステリー、ドキドキするホラームービー、大爆笑の幽霊コメディ、主人公エミの成長物語、まさかまさかの感動ドラマ」と言っているように、起承転結、最後にしんみりという枠にいろんな仕掛けをちりばめた「幽霊コメディ」である。

仕掛けは例えば、誰が幽霊が見えて誰が見えないか、というところから起こるドタバタ、幽霊界の独特なルール、幽霊が起すちょっと素敵な奇跡、というところか。幾つかは成功している。



それはそれで、ありうるコメディだと思う。これも、やがて50年経ってこの映画がもし古典の部類でずっと見られていたならば、一つ一つのセットに、出てくる俳優に、時代性を感じて懐かしがる人がいるのかもしれないが、私はダメだ。

「そなたは知性も勇気もあるが、ひとつ足りないものがある。それは自信だ」という落ち武者六兵衛の言葉の中に、三谷監督の思いはたぶんある。それに励まされる自分もいる。だから笑いしかない映画だとは決して言わない。要は昔から繰り返し言っている気がするが、「性に合わない」のである。

「三銃士」
ハリウッドの日本アニメ化が止まらない。キャラクター重視、無宗教、十二分に戦った後は敵役が新たな敵と戦うために見方になることも可能。

ここの出てくる主要人物の一人も死なないというのが、それを象徴しているだろう。或いは、ダルタニアンがコンスタンスを助ける時に三銃士の一人が言う「祖国は何とかなる」という発想が、とっても日本的。

本来の「三銃士」が実はダルタニアンが主人公だったのと同じように、この作品の主人公は私的にはミレディ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)である。アクションの一番美味しいところは七割がた彼女が攫っている。「悪女ミレディ」という題名にしたほうがいいくらい。

けっか、とっても退屈しないエンタメができたと思う。もっと日本アニメ化しようとしたならば、彼女の過去を少し描いて同情を買うような描写があって、最終的に三銃士に少し味方すればベスト。そこまで出来なかったのは、ハリウッドがまだ思い切っていない証拠。

あと少しだ。頑張れ。(←何が?)

「はやぶさ/HAYABUSA」
冒頭から宇宙工学関係者にしかわからないような専門用語がびしばしと出てきて、ああだからおたく体質の堤幸彦が監督に選ばれたのか、と納得した私でした。けれども、物事は何であれ突き詰めれば、立派な仕事ができるんです。

監督 堤幸彦
出演 竹内結子 (水沢恵)
西田敏行 (的場泰弘)

佐野史郎 (川渕)
山本耕史 (田嶋)

あの竹内結子が最後まで「美人」に見えないという、素晴らしい役つくりをしていた。その他の人々も、実際のモデルそっくりの役つくりをしていたらしく、この堤さんのこだわりは「20世紀少年」とは違い、成功していると思う。竹内結子はめがねとダサい服装、常におどおどとした目つきと、ぴょんぴょんと跳ねる癖で、金にならない学者志望の20代女性を上手く表現していた。

一番最後に、歴代の日本製衛星がずらりと出てくるのであるが、みんな通信や気象、オーロラ観測や放射線、太陽観測など軍事とは関係ない衛星ばかりで、ペンシル型のロケットが日本の最初の実験ロケットであることさえも、なんだか誇りたくなったのでした。日本ロケットの父、糸川氏が言った言葉、「失敗ではない、成果なのだ」とか、日本の純粋に宇宙の秘密を探る知的活動に誇りを持ちたくなる映画でした。

日本映画には珍しい群像劇と言っていい作品。しかも、データを読むだけではあるが、異常にせりふが多い太った人がほとんど素人のような風貌をしているのも、リアル感があってよかった。「はやぶさ」の成功がなければ、全然注目されない地味で職人的なこういう知的世界を知ることができてよかった。

「ミッション・8ミニッツ」


死ぬ直前の記憶が残っていて、いわゆるその「残留記憶」の世界を立ち回って爆弾の設置場所を探し当てたりするというのはいい。ありえるかもしれない、とも思う。軍はしきりに過去は変えられない、という。その理屈も分る。なぜ彼がそのミッションに選ばれたのか、という理由も予測はついた。

ところが、最後の落とし処が上手いこと意表をつくものであった。決して騙されたのではない。この落とし処はなかなか上手い落とし方だったので、後で考えると矛盾もあるのであるが、まあいいかな、と思うのである。

ところで、これは矛盾ではないのであるが、最後鏡に映った彼の姿はスティーヴンスではなく、ショーンのものであった。それはそれで、とっても哀しい結末かもしれないと思えなくもない。

前作ではちゃちなセットを使ってSFを造っていたが、今回は思いっきりリアルな描写だった。そうか、金さえあればこんな映像もこの人は作れるのだ。

「1911」
もしかしたら、初めて孫文を正面から扱った映画なのではないか。また、日本で公開されるには珍しい「革命」映画である。その意味で、その意味でのみ大いに意義のある作品であった。

孫文とは不思議な男で、ヒトラーやムッソリーニのように軍事的カリスマ性が一切ないのにも拘らず、国の運命を変えてしまった男である。私は台湾に行き、上海にも行ったが、この近親憎悪の国の両方で未だに尊敬を集め、慕われているという事実が一つの奇跡のように感じる。

そういう孫文の魅力が充分に出て、辛亥革命100年にふさわしい映画が出来上がった、とは残念ながらいえないモノであった。

歴史好きの中国人民にとっては当たり前の話が日本では良く分からないまま、すらっと通り過ぎるのである。例えば、黄興が絶体絶命の砲弾直撃からどうして生還できたのか、或いは黄興が一人で旗を持って馬で駆ける場面があるが、あれば史実なのか。或いは黄興は司令官と言いながら、前線で小隊長の役割もしていたり、大活躍をしていたがあれは史実なのか。等々、主に黄興の描写があまりにもかっこよく描かれすぎで、かえって興ざめをしてしまう。

孫文の欧州での説得は失敗に終ったかのような描写だったのに、何故か成功している。漢陽攻防は敗戦だったのにもかかわらず、いつの間にか革命軍のほうが清朝を退位まで追い込んでいた。なぜ?袁世凱の説得は失敗だったかのように描きながら、いつのままにか退位まで追い込んでいた。なぜ?

結局、あまりにも駆け足で歴史をなぞっているために映像的には素晴らしいのに、革命宣伝映画のようにしか思えないのである。あまりにも残念だ。

辛亥革命は中国国内では今までどのように描かれて来たのだろうか。作られてきたのだろうか。孫文の理想は三民主義「民族、民生、民主」であるが、民主を蔑ろにする現代中国で、果たして孫文は未だに鬼門なのではないか。

と、まあ映画に関係ないところでいろいろ考えた教養映画でした。





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最終更新日  2012年04月24日 22時34分21秒
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