桜の森の満開の下

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とも@ Re:ママ(11/18) この物語はおもしろいです。
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saku5319 @ はじめまして  可愛い、お話。私も転校した事あります…

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2006.08.20
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ビリー諸川/稲妻ロッカビリィ野郎 from MEMPHIS

稲妻に打たれてからというもの、人の心の中が見えるようになった。
 僕の彼女は、いつまでも夢ばかり口にして才能のない僕に見切りをつけ、最近知り合った取引先の営業マンに乗り換えようとしている。その営業マンは顔はイマイチだがおもしろくて仕事は出来るし、第一あたしはもう来年二十八なんだからそろそろ現実を考えなきゃいけなくて、贅沢なんか言ってらんないの、そんなふうに僕の彼女は思っている。
 僕はすっかりしらけてしまった。彼女はまだ僕に別れ話をしてこないが、近々フラれることは分かっているのだ。一緒に居ても楽しいわけがない。つれない僕の態度に、彼女が眉をひそめる。
「・・・どうしたの? 最近ちょっと変だよ」 
 よく言うよ、と僕は思う。だけど、おまえの腹の中は分かってるんだ、なんて言えないから、べつに、稲妻に打たれてから、ちょっと疲れやすいんだ、そう言って誤魔化す。
「病院行きなよ、稲妻に打たれたんでしょ?」
「いいよべつに、疲れなんて寝りゃ取れるんだから」
「そういう問題じゃないでしょ、何考えてんの?」
「うるせえな、俺は音楽だけ出来りゃそれでいいんだよ」
「音楽だけって何よ、だったらバイト辞めて音楽だけで食べてきなよ」
「うるさんいんだよおまえは、俺の人生に口出しするな」
 喧嘩を始めた僕と彼女の遥か西方の空で、雨雲が発達していた。稲妻に打たれて以降気になってしょうがない天気予報がそう告げていた。
 気象予報士の言葉を信じれば、雨雲は更に発達を続け、やがて僕の住む街の空を覆うだろう。
 激しい雨に交じって、またあの空を裂くような稲妻が街に落ちるだろうか。
 そう考えると興奮して居ても立っても居られず、僕は彼女との口論をやめてエレキギターを手にし、部屋を飛び出していた。稲妻の電気を利用してギターを弾くと、とんでもないメロディーが生まれるに違いない。曇りつつある西の空に向かって、僕は走り続けた。






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Last updated  2012.04.15 08:47:09
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