T・K's DAY CARRER

Jul 20, 2005
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カテゴリ: カルチャー
「働くことに真摯であれ」という英国には、ノブリス・オブリージュという精神が存在する。


ノブリス・オブリージュとは、その「家柄」、「階級」という「身分」の義務であった。守るべき領土と領民がいる特定の階級。

上流階級の子弟がパブリックスクールを経て、グランド・ツアー(大陸巡遊旅行)によって、それまでの教育の総仕上げをする。プライベート教育のことだ。
パブリックスクールでは、指導力と奉仕(Leadership & Service)という、人民を指導し、慈善事業や軍務などさまざまな分野で社会に奉仕を、学問と同時に叩き込まれる。

いま英国のおける階級制度「class system」の不平等もあり、いよいよ英国も、生得的地位が揺るぎはじめている。

こういった「家柄」と「教育」が結びついていない日本で、ましてやパブリックスクールなるものが存在しなくなったこの国では、企業や政治家、教育、また「働く側」へ、ノブリス・オブリージュの精神を取り入れることは、その精神の伝統と文化を乱すだけで、決して「進化」をしているわけではない。

大衆社会という現在の日本は、生得的地位ではなく、獲得的地位で成立している。
義務教育により、文化の喪失された環境からも、獲得的地位により社会進出を果たしているわけだ。これが「学歴」である。


このノブリス・オブリージュの精神を、企業、労働者に取り入れようという考えがあるが、日本と英国の違いを、長時間労働で比較してみる。
「働くことに真摯であれ」という英国における管理職の残業の理由。
     1.キャリアアップ
     2. 業績に対して責任
     3. 昇進の機
     4.スタッフを失望させないため
     5.同僚の敬意を得るため

日本におけるサービス残業の理由
     1.予定の期日に間に合わせる為
     2.その日中にやらなければならない為
     3.示しがつかない

     5.管理職であるため
自主的に自分のためにという理由は16%である。

 ※管理職以外では
     就業規則
     申請できない雰囲気


日本では、長時間労働=サービス残業であり、英国の回答とはこれほど相違する。
獲得的地位により経済的・社会的な成功者が、対極側の人間に対して、自発的に指導が行われるのだろうか。
労働者は仕事の意味づけや理想の職場を追求するようになり、組織は、社員を動機づけたり、職場の福利厚生を充実させたり、さまざまな研修・手法を使って、「よき労働者」と「よき雇用者」のマッチングを求め、「いかに安い賃金で人を働かせるか」の結果を得ようとしている。

いま、成果主義に変わった日本にも、ライフ・スタイル・バランスが普及しようとしているが、申請できる「職場」が普及するのだろうか。

ワーク・ライフ・バランス 
T・Kのディキャリア 過去エントリー
パク・ジョアン・スックチャ「会社人間が会社をつぶす」
・ ワーク・ライフ・バランスの背景
・ ワーク・ライフ・バランスの取り組み

ワーク・ライフ・バランス 
参考:濱口桂一郎「EU労働時間指令の改正案とその影響」(世界の労働2004年10月)
欧州生活労働条件改善財団は、ワーク・ライフ・バランス政策は、企業にとっては生産性と競争力の向上、労働者にとっては仕事の質の改善、職業訓練・能力開発へのアクセスの面で、大きな利益をもたらす顕著な証拠が見られるとしている。調査は、労働条件の改善、個人生活の充実、職業訓練やボランティアへのアクセスの向上のために、労働時間を生涯全般に渡って再配分できるよう、政策担当者が新しい時間と所得の選択肢を改善または創造していくべきである、と提案している。また、もし退職年齢が引き上げられ、職業生活が延長されるなら、政策担当者は、その代償として、人生でストレスを受けやすい期間により多くの有給休暇が取得できるよう保証すべきであると主張する。また、職業生活を通じた新しい労働時間の設定を可能にしていくためには、新しい社会保障制度の構築が不可欠であるとしている。

「いかに安い賃金で人を働かせるか」
これは先進国の企業は国内だけに止まらず、人件費の低い開発途上国に工場や農場を持ち、現地人を雇用し、不当に安い賃金で、苛酷な労働を強いることをはじめる。(昨日のエントリーで、産業革命後の例をあげているが、歴史は繰り返すのではなく、続いている?)

その一方、1940年代にアメリカのNGOから始まったと言われ、ヨーロッパを中心に1960年代から本格的にひろまったフェアトレード。
・・・【Fairtrade】その基準とは・・・
・・・貧困のない公正な社会をつくるための、対話と透明性、互いの敬意に基づいた貿易のパートナーシップ。
・・・アジアやアフリカ、中南米などの農村地域や都市のスラムなどに暮らす人々に仕事の機会を提供することで、貧しい人々が自らの力で暮らしを向上させることを支援。
・・・小規模農家や手工芸職人に継続的な仕事をつくり、農薬や化学肥料に頼らない自然農法や、生産地で採れる自然素材と伝統技術を活かした生産によって、持続可能な社会を目指している。

消費者の我々が、必需品をフェアトレードで購入すると、途上国の生産者たちが自立した生活を送ることに貢献できるというしくみだ。

自給自足の生活から、暮らしを向上させること。
これは、生存の欲求を満たす「労働」ではないだろうか。

「働くことに真摯であれ」という英国の文化と伝統を、単なる「義務と権利」に置き換えてしまう危険性。職業に対する意味づけや理想、動機付けよりも、いかに我々が貧困なのだと自覚したほうが良いのかも。働くことは生存の欲求なのだと。
中流家庭というレッテルを自ら剥がす時期なのではないか。





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Last updated  Jul 20, 2005 05:01:29 PM
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