T・K's DAY CARRER

Jul 27, 2005
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カテゴリ: カルチャー
フランクルは、「夜と霧」で次のように語っている。

ヴィクトル・エミール・フランクル 池田香代子訳『夜と霧』(新版)みすず書房

その「死」を自ら選択したのが、原口統三だ。
《その時、彼ははたちだった》

『悪魔が今日、かういふ名刺を作ってくれた。
原口統三 慢性孤独病のマゾヒズム患者』

原口は、昭和21年に19歳10ヶ月で入水自殺を果たす。
悪魔が名刺を作ってくれたのは、昭和19年の17歳の頃ではないかと思う。


そういう原口の文は難解で、彼を理解する要素は何もない。
森有正、橋本一明らの追懐を読み、認識できるのは「死への衝動」と「拒絶する愛」である。

『それは永久に秘密であり、不可解なことである、原口統三の死への志が、今ここに上梓されたささやかな小冊子“二十歳のエチュード”で明らかにされるなどと、何人も考えてはならないし、また事実において理解することのできる人は一人もいないだろう。』とある。

・・・何人も考えてはならないし・・・
人の死を、理論や思想で独断的に認知して、明らかにすることは考えてはならないのかもしれない。
それは、社会的獲得地位に甘んじた家庭から、自分は特別な存在として「生きることは素晴らしいと全ての人が思えるように」などと嘯くような言葉を残すこと同じなのかもしれない。
「全ての人」とは、一体何を指すのだろう。狭い視野からのコメントなのか、世界の人々を無視しているのか・・・。

「死」や「生」を憧憬し、崇拝するものではないと思う。
私達は、生まれたときから人としての生涯を完結する「死」への旅に、叶わない希望にも意味の問題に正しく答え、苦悩を受け入れてこそ「生きる力」を保ちながら、運命や宿命へと進んでいくだけだ。

その苦味の「味わい」を知らずにして、「生」を急ぐ必要はあるだろうか。
「死」とは「生」を急ぐほど、早くやってくるものなのかもしれない。


追記
私にとって大変興味深いところがある。

『表現と自己との分離。
表現は生れ落ちたとたんに自己から離れて、独立する。
すなわち自己は常に自己だけの孤独な時間の流れを通る。


僕は自分のにせよ、
他人のにせよ記念碑に礼拝するのがいやだった。』

原口統三は、赤城に来てからも絶えずペンを握り続けたという。
ランプの灯で書きつづけ、時々疲れた眼をあげて
「生きている間は絶えず表現していなけりゃならない」
と言ったそうだ。
1946年10月2日  赤城山にて自殺未遂。
1946年10月25日 厨子海岸にて入水。
《その時、彼ははたちだった》

faithfulさん からいただいたメールから
「赤旗の編集部で該当部分だけ送ってくれました。」

ありがとうございました。
※faithfulさんからいただいたトラックバックの記事
定本・二十歳のエチュード(原口統三)

共産党の上田氏とノーベル賞受賞者小柴昌俊氏の対談記事
・・・日経2月6日「私の履歴書」
・・・「しんぶん赤旗」2月2日日曜版19頁

上田
彼のフランス文学は相当なものだった。同じ部屋にいたとき、午前中、原口がベッドでずっと寝ているんだよ。心配して「どうした?カゼでもひいたか」と聞いたら、「ゆうべ横浜港の人足に行って疲れた」というんで胸をつかれた。
両親が「満州」にいて仕送りが途切れ、大変だったんだな。君もいっしょに行ったのか、米軍の荷役に?

小柴
行ったんだよ。それで二人でサボって貨車の中で、米軍の食糧を食ってた。
「レーション」っていって兵隊に配る箱入りの弁当、あれを積んだりする役目だけど、二人で貨車の中に隠れちゃって食ってた。
上田

そうか。僕が小柴の部屋を出た翌年、彼が自殺するっていいだしてね。生きていたらいい仕事したのにな。当時の天野貞祐校長も心配して、みんなで説得したんだが、四六年十月逗子の海岸に入って亡くなったね。

小柴
感受性が強すぎて耐えられなかったのかもしれんな、 あの敗戦後の世界は

定本二十歳(はたち)のエチュード 筑摩書房
二十歳のエチュード 角川文庫
二十歳のエチュード 光芒社reproduction





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Last updated  Jul 27, 2005 04:32:45 PM
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