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生家のこでまり甘やかな退屈 「乗りますか」ふるさと経由春の雲 故郷の苜蓿の香は濃かりけり 祖父の遺影褪せた賞状春夕焼4月25日のプレバト俳句。お題は「ふるさと」。今週は3人の昇格試験のみ。内容も不作でした。◇犬山紙子。生家のこでまり 甘やかな退屈こでまりの生家よ 甘やかな退屈(添削後)悪いとはいわないけど、とりたてて良いとも思えない。とくに「甘やか」という語は、幼少体験の形容として安易に使われがちだと思う。◇フジモン。「乗りますか」ふるさと経由春の雲ふるさとや 乗ってゆくかと春の雲(添削後)原句はあまりにも意味不明。まさか雲がバスの幻想だとは思わないので、たんなる三段切れに見えてしまう。添削句は、觔斗雲キントウンのような雲の擬人化ですが、上五の「ふるさとや」は具体性に乏しいし、切れ字の「や」も意味のある詠嘆とは思えない。◇千原ジュニア。故郷ふるさとの苜蓿もくしゅくの香は濃かりけりわざわざ故郷以外の苜蓿と比べる必要はない。目の前の苜蓿だけを描写すればよいのだから、助詞は「は」を使わずとも「の」で十分だと思う。下五は2音で「濃し」と書けるところを、切れ字を使って「濃かりけり」と書いてるけど、その是非はともかく全体的に内容が薄いと思います。◇清水アナ。祖父の遺影 褪せた賞状 春夕焼句材は悪くないけど、典型的な三段切れで、6・7・5の字余り。とってつけたような季語も弱い。なぜこれが「才能アリ」なのか分からない。どうせなら7・7・5にして、祖父の遺影と褪せた賞状 春夕焼と、せめて三段切れを回避すればかろうじて「才能アリ」でも容認きるかなあ…って感じ。/木曜、夜7時からはプレバト!!\清水アナが次回のお題に挑戦!🔥お久しぶりです!!🎊🥳#清水アナの俳句道場#プレバト pic.twitter.com/8P6bgz5VCj— 「プレバト!!」毎週木曜よる7時【公式】 (@prbt_official) April 24, 2024犬山紙子の絵は色エンピツの次元を超えていた!お母さんメッチャ美人だった。▽過去の記事はこちらhttps://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12
2024.04.29
夜どら「VRおじさんの初恋」では、アバターでのバーチャルな恋愛が描かれてますが、高齢の男性どうしが、おたがいに性別や年齢や容姿を変え、どちらも少女の姿をしてるので、当然ながらリアルとのギャップに直面する形になる。◇でも、将来的に、アバターでの生活のほうがリアルよりも長くなれば、リアルとのギャップは気にしなくなるだろうなと思う。現段階でのバーチャルリアリティは、おもに視覚や聴覚の体験しかできないのだろうけど、近い将来には、嗅覚や味覚や触覚での疑似体験も可能になるだろうし、五感での体験が可能になれば、アバターをとおしたバーチャルな生活は、リアルな生活を上回ってしまう可能性があります。◇以前も書いたように、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202403130000/わたしは、人間が《身体に縛られた存在》であるのに対して、AIは身体をもたず《純粋に精神的な存在》でありうる、…と思ってるわけだけど、じつは、人間も、アバターでの生活ができるようになれば、かなり身体の呪縛から解放されるんじゃないかしら?実際、アバターをとおした人間関係なら、容姿や年齢や性別で差別されることなく、純粋に互いの人格や能力を尊重しあう形で、コミュニケーションがとれるようになるはず。◇とくに仕事上の人間関係については、なるべく早くアバターへ移行すべきですよね。そのほうが、声がデカいだけのパワハラおやじや、容姿だけが優れたイケメンや美女ばかり出世するような、おかしな状況を終わらせることができるし、出勤する際の身だしなみに、ムダな時間的・経済的コストを費やす必要もなくなる。そして、なにより、外見にとらわれることなく、本当の意味での能力主義で人材を評価できるようになる。そのほうが社会のポテンシャルを正当に引き出せるし、ひいては国力を高めることにもなります。国や企業は、このイノベーションにおいて後れを取るべきではなく、むしろ一刻を争う課題じゃないでしょうか。VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.04.28
テレ朝「Believe~君にかける橋~」を見ました。脚本は井上由美子です。建設事故をめぐる物語ですが、話の前提に無理があるんじゃないかしら?◇たしかに、たとえ業務上過失だとしても、多数の死傷者が出るような事故を起こしたら、わたしも実刑にするのが当然だと思うし、とても執行猶予で済まされる話ではありません。執行猶予で済む話じゃない!しかし、かりに事故原因として、A.自社の設計変更による過失B.下請け会社の意図的な手抜きの2つを仮定した場合、どちらも人災ではあるけれど、自社の責任が大きく問われるのは、どう考えてもBじゃなくてAのほうでしょ!!自社の設計ミスのせいで橋が崩落しました…なんて言ったら、企業の信用はガタ落ちです。それよりは、下請けの手抜き工事のせいにしたほうがまだマシ。まして、わざわざ下請けの手抜きを隠蔽するために、自社の設計ミスを装うなんてありえない。設計ミスのほうが、よほど自社の信用を損ねるはず。設計ミスは《不可抗力の事故》じゃなくて《人災》でしょ!悪徳業者に発注した責任よりも、安全な設計すら出来ない無能さのほうが問題でしょ。そんな企業に大規模事業を任せられない。まあ…おおかた小日向文世が、手抜きした下請け会社からキックバックを得てるとか、そういう裏があるのだろうとは思うけど、かりにそうだとしても、キムタクが小日向文世の要求を呑むこと自体が変。自分が罪を背負うばかりか、会社にとってもダメージにしかならないのだから。会社の罪を背負ったキムタクの立場は、財務省の罪を負った佐川宣寿にもちょっと似てますが、小日向文世が、会社の犯罪をキムタクに背負わせるなら、よほど彼の弱みを握って、餌をぶらさげて、従わざるを得ない状況へ追い込まなければ無理です。キムタクが、ただ会社を守るために罪を背負ったとしたら、あまりにお人好しがすぎてアホとしか言えません。…アホかなとは思うけど同情はしない。『Believe』初回 “狩山”木村拓哉、逮捕の理由にネット同情「これはエグい」(ネタバレあり) #びりーぶ #木村拓哉 @believe_tvasahihttps://t.co/sT4xd3aXyC— クランクイン! (@crank_in_net) April 25, 2024
2024.04.27
NHK「VRおじさんの初恋」。全32話のうちの第15話まで来ました。ちょうど半分の折り返しですが…ホナミの中の人の死期が迫ってる感じ。◇今回のドラマには、設定の新しさとインパクトにおいて、5年前の「腐女ゲイ」に匹敵するものを感じます。実際、内容にも「腐女ゲイ」との共通点があって、《本当の自分とは誰で、本当の相手とは誰か》…についての混乱がテーマなのよね。◇よるドラ「腐女子うっかりゲイに告る」は、女子高生の告った男子がゲイだった…という話。そして、そのゲイの男子高生は、ネットで交流するゲイの先輩に相談に乗ってもらってて、その人はエイズで亡くなってしまうのだけど、死後に彼の家を訪ねてみたら、じつは自分より若いローティーンの少年だった…という話。いずれにしても、リアルな正体が見た目とは違ってて、どちらが真実の姿なのか驚き混乱してしまう設定です。◇今回の「VRおじさん」は、いちばん純真で美しく見えるヒロインが、じつは死期の迫ったお爺さんだった…という話。それ以外の登場人物は、みんな心がねじけて一癖あるキャラばかり。なお、死期の迫っているヴァーチャルな美少女は、銀河鉄道の夜のカンパネルラにも重ねられており、宮沢賢治の物語と同じように、タイタニックのモチーフも取り入れられてます。フィルハーモニック・オーケストリオン《タイタニックモデル》#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】第14回のご視聴ありがとうございました✨旅を再開したナオキ(#倉沢杏菜)とホナミ(#井桁弘恵)。新世界ホールでのオフショットをどうぞ📸自動演奏楽器の音色もステキでしたね…🎶#VRおじさん#野間口徹#坂東彌十郎本編は配信中📱https://t.co/NVfOJHwz3i pic.twitter.com/xvSQj0o4hG— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 23, 2024そして、ヴァーチャルな世界では、少女どうしがハグやキスをする場面もあって、見た目には女性の同性愛に見えるのだけど、じつは双方ともに異性愛を感じてるはず。そして、リアルな姿になったとき、それが男性の同性愛だったことに気づく!しかも、高齢男性どうしの同性愛なのですね。これは、考えうるもっとも極端な例ではあるし、えげつないけれど、ありうる話だろうと思う。かりに性別が違わなくても、アバターの姿とリアルな姿とで、年齢や容姿が違うなんてのは、いくらでも起こりうる。…もっとも、このドラマの場合、死期の迫った高齢男性にとっては、若い命に対する憧憬のほうが上回って、相手が男なのか女なのかは、どっちでもよくなってるのかも。◇これは、ある意味で《入れ替わり》の物語ともいえます。すなわち、心が別の身体に乗り移ってしまう話。ただし、大林宣彦の「転校生」や、新海誠の「君の名は」の場合は、本人の意思で別の身体になるわけじゃないけど、アバターの場合は、あくまで本人の意思で別の身体になるわけなので、むしろアバターでいるときのほうが、その人の本性が現れてるともいえる。したがって、アバターのほうこそが真実の自分で、むしろリアルのほうが偽りの姿というべきかもしれません。◇とはいえ、アバターでいるときの関係が、リアルな関係への橋渡しだとすれば、どうしてもリアルに戻ったときの姿を意識せざるをえない。どちらを真実の自分と考えるか。どちらを真実の相手と考えるか。そのことに混乱してしまいますよね。たとえば、俳優さんなどの場合も、「恋人役の相手に恋愛感情を抱いてしまう」…みたいな話をよく聞きます。演じてるときの関係と、演じてないときの関係の境界が曖昧になって、どちらが真実なのかが分からなくなる。リアルのほうを真実と考えてしまったら、アバターでいるときの関係は宙に浮いてしまう。でも、アバターでいるときの関係が、お互いにとってかけがえのないものなら、たとえリアルな姿とのギャップがあったとしても、その関係を捨てる必要はないんじゃないかな…。◇そう遠くない近未来に、人間がアバターでいる時間のほうが長くなれば、リアルな姿に戻ることを意識しなくなるのかも。たとえ性別や年齢や容姿が、リアルなときとは大きく違ってても、そこへ戻ることを意識する必要がないなら、おたがいにアバターの姿のまま、友情や恋愛を育むことも可能なのかなと思います。◇◇◇ちなみに昨夜の第15話は、なんてことのない内容だったけど、それぞれの登場人物のセリフに、ちょっとずつ毒があったりして、やりとりがとても面白かったので、その一部を以下にメモしておきます。佐々木:クッキーどうぞ加藤 :もらうと返さなきゃいけないので要らないです佐々木:お返しなんて気にしないで、どうぞ加藤 :佐々木さんが気にするかどうかは気にしてません。自分が気になるのが嫌なんです佐々木:そうですか*堀 :お見舞い行くならスケジュール調整しますから、何なりと 飛鳥:要らない。どうしても必要なら葵に行かせる堀 :社長、家族にだけは優しくないっすよね 飛鳥:遺伝じゃない? *佐々木:澤田さんが見て来いって。もしものことがあったら寝覚めが悪いって直樹 :ひどい言い方だな 佐々木:優しさを素直に言えない人、多いですよね直樹 :澤田さんは違うでしょ*直樹:アイスコーヒー「L」ください荒井:今日は寒いですけど直樹:寒い時ほど飲みたくなります荒井:風邪ひかないように*荒井:若いのに現金って珍しいよね加藤:払う実感ないと美味しくないからちょっとしたセリフのやりとりに脚本のセンスを感じる。それとも原作どおりなのかしら?VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.04.25
テレ朝「Destiny」第3話。今回もあっという間だったー!!学生時代にはふざけたキャラだったのに、すっかり影のある男へと変貌した真樹(亀梨和也)。でも、そこは元カレと元カノ!嫌いで別れたわけじゃないし、いくら婚約者がいるとはいえ…やっぱり再会したらキスしちゃうよね~むしろ影のある真樹のほうが素敵w婚約解消は必至?今回の内容は、ほぼ前回にほのめかされた内容の確認。あらたに分かったことといえば…失踪中の真樹が海外でNGOの活動をしてたこと。そして祐希(矢本悠馬)と連絡を取り合ってたこと!いつから連絡を取り合ってたか分からないけど、すくなくともカオリの十三回忌のときには連絡を取っていた。何故それを妻の知美(宮澤エマ)に隠してたのか謎です。かたや知美は、学生時代にカオリ(田中みな実)と共有してた情報のことを、いまだに奏(石原さとみ)に隠している。知美とカオリが、環境エネルギー汚職事件について何を知ってたのか、まだ明らかではありませんが…どうやら知美はそのことで罪悪感を抱いてる。カオリ「トモが最初に言ったんじゃん。もしこれが本当だったらって。だから調べたんだよ」 知美 「でも、もしこれが事実だとしても、それはあの2人の問題で…」カオリ「わたし、べつに真樹のこと好きでも何でもないよ」 pic.twitter.com/ThYEFH4rEY— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 15, 2024カオリが運転してた車のハンドルには、真樹の指紋が付着してたらしいけど…そのこと自体は、さほど不自然にも思えない。むしろ謎なのは、真樹の腹部と頭部の怪我!…これって紛争地でのNGO活動に関係がある??その真樹の主治医は、やはり奏の婚約者(安藤政信)のようですが、真樹を「お呼びだてした」と言ってたので、連絡先を把握してたのでしょうか?そして、もちろん、放火事件における逮捕の件も謎です。◇やはり奏の父(佐々木蔵之介)は1988年ごろ、鹿児島地検で野木浩一郎(仲村トオル)の同僚だった。奏が、父の宿敵かもしれない野木浩一郎に向かって、ベラベラと公私混同なことを喋ったのは、たしかに迂闊でお粗末だったと思うけど…そもそも野木浩一郎は何しに来たのかしら??そして、大畑節子(高畑淳子)は何かを知ってるの??…ついでに、この人誰だっけ???演じてるのは川島潤哉?亀のこだわりかな😊「223」は亀の誕生日、「086」は亀のまれた西暦「'86」だよね‼️ #Destiny pic.twitter.com/byRtNte9Df— ryuryuko (@ryuryuko_223) April 23, 2024
2024.04.24
朝ドラ「虎に翼」on NHK。吉田恵里香の脚本の非凡さが、話が進むほどに際立ってきてる感じです…。前の記事にも書いたとおり、大森美香の手法に倣ってる面もあると思うけど、ただそれだけじゃないことが分かってきた。◇大森美香の手法というのは、簡単にいえば、ヒロインを不幸にしないこと。そのもっとも典型的な例が「あさが来た」です。周りに不幸なキャラは登場するけれど、ヒロインは基本的に幸福な家庭に生まれ育って、幸福な家庭に嫁いで、幸福なままに人生を終える。これが、朝ドラにもっとも適したスタイルであることを、2015年の「あさが来た」は強力に証明したと思う。いまのところ、今回の「虎に翼」も、その手法に倣ってるように見えます。しかし、吉田恵里香の脚本は、たんに大森美香の方法論を真似てるだけじゃない、…ってことが、だんだん見えてきました。◇第一に、この「虎に翼」は、たんなる伝記ドラマではない のですね。社会的なテーマを扱ってますが、それはけっして過去の話ではなく、きわめて現代的な内容になっています。朝ドラが、ここまでアクチュアルな問題に挑んだことは、過去に例がないんじゃないかと思う。◇これまでも吉田恵里香は、テレ東で「チェリまほ」を書き、NHKで「生理のおじさん」「恋せぬふたり」を書いており、果敢にジェンダーの問題に取り組んできてる。今回の「虎に翼」でも、現代社会におけるフェミ議論を挑発したりと、社会的なテーマをしたたかにエグってますし、それを朝のエンタメの枠組みのなかで巧く見せてます。こういう面においては、むしろ大森美香の「シッコウ」などを上回っている。◇わたしは、NHKの「恋せぬふたり」は見ましたが…残念ながら、テレ東の「チェリまほ」は見てなかったし、NHKの「生理のおじさん」は終盤部分を見ただけ。もともとNHKが、ジェンダーや月経の問題に取り組んでることに、ある程度の注目はしてたつもりだけど、脚本家の吉田恵里香のことは意識してませんでした。しかし、NHKは、彼女のポテンシャルを見抜いてたのでしょうね。この若い脚本家の能力をうまく引き出してると思います。◇第二に、失礼を承知で言いますが、今回の「虎に翼」には、美男も美女も登場していません。ヒロインは美女ではないし、そのお相手になる男性もイケメンではない。つまり、メインのキャラのなかに、典型的な美男や美女がひとりもいない。唯一「美女」と呼べるのは石田ゆり子だけだと思う。第4週には、いちおう岩田剛典が登場してますが、彼も一般的な「イケメン」の役回りとは違っていて、むしろ悪役になりそうな雰囲気を漂わせてます。こういうところも、従来の朝ドラのセオリーを大きく破ってますが、おそらく意図的なのでしょうね。◇すなわち、このドラマは、男性はもちろん、女性にさえも、「美」の役割=ジェンダーを求めてないのですね。そのこと自体がとても政治的だといえる。実際のところ、女に対して安易に「美」を求めるのは、本来ならポリコレに反するはずなのだけど、いまのところ、NHKにも、民放にも、その倫理規範にまともに向き合ったテレビ番組は、ほぼ存在していません。報道番組も含めて、あらゆるテレビ番組は、意識するとせざるとにかかわらず、ほぼ例外なく女に「美」を求めてしまっています。でも、今回の朝ドラは、そのことにすら抗ってるように見える。この公式ツイートはおそらく意図的なミスリード。🐯 #トラつばプレイバック 🪽寅子たちを温かく出迎えてくれたのは、クラスの中心的存在・花岡悟。花岡に「あなた方は開拓者。本当に尊敬している」と言われ、ほうけてしまう寅子たちです☺#朝ドラ #虎に翼#伊藤沙莉 #土居志央梨 #桜井ユキ #平岩紙 #ハ・ヨンス #岩田剛典 pic.twitter.com/Ehh0RqQBKy— 朝ドラ「虎に翼」公式 (@asadora_nhk) April 21, 2024 これもミスリードになってました。🐯 #トラつばオフショット 🪽無事に迎えた直道と花江の結婚式👰🏻♀️家族での記念写真&新婚夫婦2ショット!この二人ならずっとラブラブでいてくれる気がしますね…🥰#朝ドラ #虎に翼#伊藤沙莉 #石田ゆり子 #岡部たかし#上川周作 #森田望智 #永瀬矢紘#赤間麻里子 #横堀悦夫 #小須田康人 pic.twitter.com/7rPjvKERhn— 朝ドラ「虎に翼」公式 (@asadora_nhk) April 3, 2024
2024.04.23
「いざ月へ」宇宙ごっこの半仙戯 ふわっとふらここ 水平になる手前 廃校のぶらんこは夜よに揺れており 故郷ふるさとと同じ遊具や春の風 初虹や背中を押され漕ぐ子供 小さな手わが背押したる春の暮 ブランコと母待つ夕暮れ花吹雪 子らが去り未だ明るし遅日かな4月18日のプレバト俳句。お題は「ぶらんこ」。◇森口瑤子。ふわっとふらここ水平になる手前8+10 の破調。先生いわく「体感的」な句ですね。動画的でスローモーションっぽい。形式も内容も、なかなか独創的でした。◇梅沢富美男。廃校のぶらんこは夜よに揺れており廃校のぶらんこ夜よるを揺れており(添削後)廃校や 夜がぶらんこ揺すりおり(添削後)夜を「よ」でなく「よる」と読めば、助詞「は」を不用意に使わなくて済むよね。先生の添削は、よりホラーな感じを強めてます。◇清水アナ。「いざ月へ」 宇宙ごっこの半仙戯はんせんぎ春の季語「半仙戯」はブランコの別称。秋の季語「月」との季重なりです。もともと、天にも昇る気分のことを「羽化登仙うかとうせん」と表現するらしい。すなわち、羽が生えて仙人のように天に昇るがごとき心地のこと。そこからブランコ遊びのことも「半仙戯」と呼ぶのですね。すなわち、半ば仙人になるがごとき遊戯ってこと。なので、半仙戯を月に結びつけて、「ブランコを漕いだら月にも行けそう!」みたいな類想はけっこう出てくるし、そういうイマジネーションを詠んだだけなら、わざわざ「宇宙ごっこ」と説明する必要はない。…余談ですが、加古宗也の句に、昼の月蹴り上げて来よ 半仙戯という、やはり季重なりの句があります。↓こちらのサイトを見ると、http://www.haisi.com/saijiki/hirunotuki1.htmじつは「昼月」の句には季重なりが多く、ほとんどの場合、これを秋の季語とは見なしてないっぽい。かたや、芝不器男の俳句には、鞦韆ふらここの月に散じぬ同窓会ってのがある。こちらは夜の月ですね。鞦韆(ブランコ)は季節を問わず存在するし、月も季節を問わず存在するけれど、やっぱり「月」が綺麗に見えるのは秋だから、これは秋の句として読むのが妥当かなと思う。しかし、一般的には春の句と解釈されるようです。ためしに、季重なりを回避すべく、時事ネタを取り入れた改作ですが、月面の邦人 吾子の半仙戯としてみました。これなら春の句として疑義はないと思う。/木曜、夜7時からはプレバト!!\清水アナが次回のお題に挑戦!🔥立派だから自信は持てる!💪#清水アナの俳句挑戦#プレバト #MBS #TBS pic.twitter.com/odlDYpOwkr— 「プレバト!!」毎週木曜よる7時【公式】 (@prbt_official) April 13, 2024◇南果歩。ブランコと母待つ夕暮れ 花吹雪ブランコに母待つ夕や 花吹雪(添削後a)ブランコと母待つ夕暮れに一人(添削後b)この2つの添削案はいただけない。一方の(添削後a)は、「ブランコ」と「花吹雪」の季重なりを容認した形。それならそれでいいのだけど、中七が「母が待つ」なのか「母を待つ」なのか、いまいち分かりにくい。助詞を加えれば、母を待つぶらんこの夕 花吹雪のように解決できます。他方の(添削後b)は、「ブランコ」の擬人化を容認した形。しかし、せっかくブランコを擬人化したのに、最後に「一人」と書いちゃったら意味ないでしょwブランコと一緒なら一人じゃないって話なわけで。いずれ凡句にはちがいないけれど、ぶらんこと揺れて母待つ夕間暮れ のように書けば擬人化する意味はあります。◇水田信二。子らが去り未だ明るし 遅日かな公園の子らが去りたる遅日かな(添削後)まずは中七で切れてるのが欠点です。子ら去りて未だ明るき遅日かなと書けば、すくなくとも形式的には整う。しかし、そもそも、「子供が帰るころになっても明るいのが遅日」と考えるべきなのだから、たんに季語を説明しただけの内容でしたね。◇…さて、今回は平場に「才能アリ」が3人いましたが、いずれも評価が甘いと思わずにいられない。蓮見翔。故郷ふるさとと同じ遊具や 春の風まあ、ぎりぎり「才能アリ」ってところでしょうか。句材も悪くないし、形式も出来てるし、とくに瑕疵はないけれど、よくもわるくもシンプルすぎるかなと思う。◇近藤千尋。小さな手わが背押したる春の暮小さき手のわが背を押せる春の暮(添削後)作者いわく、子供の手に「仕事への励まし」を感じた、とのこと。実際のところ、身体的に「背中を押した」のではなく、精神的に「背中を押した」と解釈することもできるし、それならそれで成立します。たとえば親の《転職》や《再就職》の句とも読めるし、あるいは《離婚》や《再婚》の句とも読めます。かたや身体的に「背中を押した」と解釈した場合、《孫が年寄りの背中を押して階段や坂を登らせてる》と読めるから、字面だけでブランコの句とは分からない。◇キスマイ二階堂。初虹や 背中を押され漕ぐ子供形式的には出来てますが、近藤千尋の句と同じように、身体的に「背中を押した」のではなく、精神的に「背中を押した」とも解釈できる。そのうえで、子供が漕いでるのは、《三輪車》なのか《自転車》なのか、《ボート》なのか《ブランコ》なのか、まったく分からないだろうと思います。これを《ブランコ》の句だと断定できるのは、評者自身が兼題写真の先入観に囚われてるからです。▽過去の記事はこちらhttps://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12
2024.04.22
NHK歴史探偵「平安のスーパースター 空海」を見ました。今年は空海の生誕1250年にあたるそうです。大河「光る君へ」も平安時代が舞台ですが、空海が活躍したのは平安初期で、藤原道長や紫式部よりも200年ほど前の人です。774 - 835:空海966 - 1028:藤原道長970? - 1014?:紫式部北海道から鹿児島にいたるまで、さまざまな空海伝説が3000ほどもあるそうです。しかし、その真偽はかならずしも定かでない。ぶっちゃけ、かなり嘘っぽい(笑)。番組では、富山県上市町の護摩堂にある弘法清水を取材してました。いわく「空海が杖で地面を突いたら水が湧いた」ってやつ。空海は、ふつうなら10年はかかる唐での修行を3ヶ月で終え、日本人ながらも中国密教の正統な伝承者になったほどだから、さぞかし超人的な能力の持ち主だったのでしょう。しかしながら、地面を杖で突いただけで水が湧いたりはしないよね。そもそも空海が入唐する前の29才(西暦802年)のときに、ほんとに富山なんぞへ行ったかどうかも疑わしい。◇番組では言及しませんでしたが、こうした真偽の怪しい伝説に関連して、よく知られたものに、いわゆる《大同2年伝承》の問題がありますよね。たとえば、「大同2年に神社仏閣が創建された」「大同2年に鉱山が開坑された」「大同2年に火山が噴火した」「大同2年に温泉が湧いた」「大同2年に鬼が退治された」…などの伝承が日本各地に存在しており、その多くが空海や坂上田村麻呂の事績と結びつけられる。しかし、考古学的には、ほとんどデタラメっぽい。大同2年:円仁や空海、坂上田村麻呂に関連した伝承で、この年号がよく使われる。空海が日本に帰国した年がこの年と言われることも多いが、史実としてはっきりとしない。東北各地の神社の創建に関する年号はこの年とされる。茨城県の雨引千勝神社の創建はこの年である。早池峰神社、赤城神社なども同様である。また福島県いわき市の湯の嶽観音も、この年の3月21日に開基されたとある。清水寺、長谷寺などの寺院までこの年に建てられたとされ、富士山本宮浅間大社も、大鳥居の前に堂々と大同元年縁起が記載されている。香川県の善通寺をはじめとする四国遍路八十八ヵ所の1割以上がこの年である。各地の小さい神社仏閣にいたるまで枚挙にいとまがないほど、大同2年(807年)及び大同年間(806 - 810年)はそれらの創建にかかわる年号である。阿仁鉱山や尾太鉱山が発見された年号にも使われている。高根金山、吹屋銀山をはじめとする各地の鉱山の開坑も、大同年間や大同2年とするものが多い。那須連峰の茶臼岳旧火山の噴火、尾瀬ケ原の燧ヶ岳の噴火、蔵王刈田岳の噴火、秋田駒ヶ岳の噴火もこの年である。会津磐梯山の噴火は大同元年だが、その噴火を鎮めるために、大同2年に山麓に恵月守が建てられたといわれる。日光の男体山で旱魃を静めるために勝道上人が祈祷したのもこの年である。三湖伝説で八郎太郎が大災害を起こすのもこの年である。八溝山や森吉山、気仙郡などの鬼退治もこの年と伝えられている。山形県の肘折温泉に伝わる「温泉之縁起」史料の中に、大同2年あるいは大同年間に温泉が開かれたという記述がある。江戸時代の安永年間に相原友直が仙台藩の風土を記した『平泉雑記』の「田村将軍建立堂社」では、田村麻呂建立とされる仙台藩内の堂舎21ヶ所を挙げ、それらの観音は「大同2年」のものが多く、悉く信用が不足していると述べている。それらの記述を受けて1955年に堀一郎は、研究対象の寺院の地区を東北地方に広げ、12社をあげ研究している。https://ja.wikipedia.org/wiki/807%E5%B9%B4史実では、大同2年(807年)の前後に、坂上田村麻呂や空海にかんする次の事績があります。延暦17年(798年)坂上田村麻呂が清水寺を建立。延暦21年(802年)坂上田村麻呂の蝦夷征討によりアテルイが降伏。弘仁14年(823年)空海が真言宗を立教。しかし、かつては、「坂上田村麻呂による清水寺の建立」も、「空海による真言宗の立教開宗」も、大同2年(807年)の出来事と考えられたらしい。中世では清水寺の建立を「大同2年」と説くのが一般化していた。謡曲の『田村』、『花月』、室町物語の『田村草子』では全て大同2年は清水寺の建立に関わる年号とされている。https://ja.wikipedia.org/wiki/807%E5%B9%B4大同2年、唐で恵果阿闍梨から伝授を受け真言宗第八祖となった弘法大師空海は、京にのぼって平城天皇から真言宗宣布の勅許を得たとの記述が『金剛峯寺建立修行縁起』に登場するそうです。ただ通説では、大同4年7月に太政官符が下るまで空海は太宰府に留め置かれたり和泉の槙尾山寺に滞在したりしていて、上洛していないことになっています。また大同2年11月8日、大和の久米寺で『大日経』を講讃したとされていますが、これもあくまで伝説であるとして学術的にはスルーされているようです。とはいえ、伝統的にはこの「大同2年説」が最も重視されていて、実は高野山でも、明治39年(1906年)に金堂で「弘法大師開宗1100年記念法要」が厳修されたといいます。http://ww35.tiki.ne.jp/~komyoin/buddhism-and-society202310.htm◇今回のNHKの番組では、空海伝説が日本各地に残っている原因として、のちの高野聖による布教活動を挙げてました。つまり、彼らこそが、デタラメな空海伝説を日本中にばらまいたってこと。でも、たぶん高野聖だけじゃなく、山伏の影響もありますよね。奈良時代の南都六宗が「都市仏教」だったのに対し、平安時代の密教が「山岳仏教」だったこともあり、それは修験道の形成に大きく関係してるはず。簡単にいえば、山の神々を仏教へ統合する神仏習合の過程で、修験道が体系化されていったのだろうし、その結果、日本各地の山伏たちも、密教の伝道者として活動したにちがいない。◇土着の神々への信仰が、仏教のシステムを借りることによって、概念化され、体系化され、歴史化されていったなら、山伏や高野聖のような密教系の勢力によって、作為的な「正史編纂」が行われた可能性もあります。古事記や日本書紀の場合もそうですが、つねに正史というのは権力者に都合よく記述される。おそらく日本各地の「大同2年伝承」も、なんらかの権力側の意図によって作られたのだと思う。はたして「大同2年伝承」が、口承史なのか文書史なのかは分からないけれど、たとえば経典を学んだ密教僧にとって、土地の歴史を文書化するぐらいは容易だったはずです。◇とくに坂上田村麻呂が平定した蝦夷の地域において、デタラメな歴史は作り放題だったはず。大河ドラマ「光る君へ」でも、都の人々の識字率の低さを紫式部が嘆いてましたが、蝦夷の人々ならなおのことだったろうし、そもそも歴史を記述する文化すら存在しなかったでしょう。おそらく蝦夷の土地の歴史記述は、坂上田村麻呂による平定以降に始まったのだと思う。蝦夷の人々にとっても、仏僧が土地の縁起や由来を文書化してくれることが、ありがたく思えたのかもしれません。たとえ、それが権力側に都合のよい捏造だったとしても。◇おそらく「大同2年伝承」は、すべての歴史を「大同2年に始まった」とする神話であり、逆にいえば、それまでの土着の歴史を、すべて「なかったこと」にするような捏造だったでしょう。それはちょうど、「ビートルズからすべてが始まった」とか、「はっぴいえんどから日本のロックが始まった」とか、そういう神話と同じ発想のものであって、過去の歴史を「なかったこと」にしたがる人たちは、いつの時代にも存在するのだろうなと思います。NHK 総合 04/17 22:00 歴史探偵 平安のスーパースター 空海 📱NHKプラスで配信予定💻 #nhkgtv #歴史探偵 https://t.co/oZhNQOGYK1— NHK総合 (@NHK_GTV) April 17, 2024
2024.04.21
映画「ラ・カリファ」がついに劇場公開されるらしい。映画が無名なのに、昔からエンニオ・モリコーネの音楽だけが有名で、日本盤のサントラも何度か発売されてましたよね。映画「ラ・カリファ」の音楽は、NHK特集「ルーブル美術館」で使われて有名になった。わたしは、だいぶ前に、この映画をYouTubeで観たことがあります。もちろん原語音声で字幕もなかったけど、おおよその内容は分かりました。ロミー・シュナイダー演じる労働組合のリーダーが、企業側の工場長と禁断の男女関係になる話。いちおう社会派作品なのでしょうね。音楽は素晴らしいけれど、映画としては可もなく不可もない印象だった。日本のモリコーネ受容には、大きく3つの段階がある。1964年:セルジオ・レオーネ「荒野の用心棒」1985年:NHK特集「ルーブル美術館」1988年:ジュゼッペ・トルナトーレ「ニューシネマパラダイス」NHKの番組も含めてですが、エンニオ・モリコーネという音楽家は、いろんな意味で日本との因縁があるように思います。1.荒野の用心棒1964年の西部劇「荒野の用心棒」は、黒澤明の時代劇「用心棒」を無断でパクった作品です。(訴訟のすえに和解してリメイク扱いになってますが)つまり、黒澤明の「用心棒」の物語をそのまま借用して、イタリア人の西部劇に仕立ててしまったわけですね。本来の西部劇は、あくまで米国の開拓時代の物語だから、イタリア製の西部劇ってのは、いわば架空の「無国籍映画」なのだけど、この「荒野の用心棒」が成功したことで、イタリア製の西部劇が量産されることになった。そうして成立した無国籍映画の謎ジャンルを、淀川長治が「マカロニウェスタン」と名づけたので、日本ではその呼称が定着してます。◇エンニオ・モリコーネの出世作も、クリント・イーストウッドの出世作も、この「荒野の用心棒」だったといえます。※撮影時のイーストウッドは英語で台詞を喋り、公開時には各国の言語に吹き替えられたようです。モリコーネの音楽は、口笛とムチの音を使用した斬新な様式でしたが、楽音でなく具体音を用いるのは、いわば現代音楽的な手法だったかもしれません。モリコーネは純音楽の作曲家を志してたので、もともと映画音楽のことは軽蔑してたようですが、このときの仕事が認められて以降、有象無象のB級映画から、パゾリーニやベルトルッチなどの芸術映画まで、多くのイタリア映画で音楽を手掛けることになる。◇黒澤明の映画は、スターウォーズのようなSF映画や、手塚治虫などの漫画に影響を与えてるだけでなく、じつはマカロニウェスタンというジャンルにも関係してる。黒澤明の「用心棒」がなければ、モリコーネが映画音楽の分野に進出することもなかったし、パゾリーニやベルトルッチの音楽を手掛けることもなかった。クリント・イーストウッドが俳優として飛躍し、のちに監督として活躍することもなかったかもしれません…。2.ルーブル美術館エンニオ・モリコーネの名前は、マカロニウェスタンの音楽を手掛けた作曲家として、ある程度は日本の映画ファンに知られることになったし、1984年には、やはりセルジオ・レオーネの作品で、「Once Upon a Time in America」もヒットしましたが…それでも一般のモリコーネの認知度はまだ低かったはず。彼の名前がお茶の間でも注目されたのは、翌85年のNHK特集「ルーブル美術館」によってです。この番組でモリコーネの音楽がふんだんに使われた。◇わたしも当時、毎月の放送を欠かさず見てました。いまでも番組のオープニングは覚えてます。ルーブル宮殿の空撮映像にあわせて印象的な音楽が流れ、画面の右下に「エンニオ・モリコーネ」とテロップが出る。でも、当時のわたしは、「えん、にお、もり、こーね??」と呟くばかりで、それが何語なのか、曲名なのか人名なのか、はたまたグループ名なのかも分かりませんでした。わたしのような視聴者は日本中にいたらしく、やがて新聞記事に「NHKに問い合わせが殺到」と書かれ、番組の放送が終わった翌年には、そのTVサントラがレコードになりました。◇その音楽は、じつは番組のオリジナル楽曲ではなく、モリコーネの既存の映画音楽の寄せ集めであり、その中心になっていたのが、映画「ラ・カリファ」(La Califfa)映画「ある愛の断層」(Questa specie d'amore)…などの70年代初期の音楽だったわけです。音楽を選定していたのはNHKではなく、番組を共同制作したフランスの民放局でした。オープニングで流れていたのは、「恋の始まりと終わりに」(Prima E Dopo l'Amore)という映画「ラ・カリファ」の2分足らずの挿入曲で、番組ではわずかに再生速度を変えて使っており、サントラ盤では「永遠のモナリザ」と曲名を変えている。再生速度を変えることについては、当然ながらモリコーネが不満を示したようですが、最終的には折れたのでしょうね。結果的には日本での知名度が大きく高まり、のちに大河「武蔵」を担当することにも繋がった。ちなみに、NHKの番組テーマになった挿入曲も素晴らしいけれど、海外で有名なのは映画のタイトル曲「La Califfa」のほうで、その優美なメロディには歌詞もつけられ、サラ・ブライトマンなど多くの歌手がカバーしてます。ちなみに、NHKのドキュメンタリーシリーズは、それまでにも「シルクロード」で喜多郎を発掘してたし、その後も「大黄河」では宗次郎の音楽に、90年代には「映像の20世紀」で加古隆の音楽に光を当てます。ある意味では、モリコーネの音楽も、NHKのドキュメンタリーシリーズで認知を広めたといえる。3.ニューシネマパラダイスそしてNHK特集「ルーブル美術館」から3年後に、映画「ニューシネマパラダイス」が公開されて大ヒット。そのテーマ曲が泣く子も黙るモリコーネの代表曲になった。でも、あの映画音楽は、モリコーネにしては、だいぶ甘くて分かりやすいと思う。本来のモリコーネの音楽は、けっして万人受けするような作風のものではなく、どちらかというとビターで渋い音楽です。わたしが思うに、彼がオスカーを逃しつづけた理由もそこにある。実際、1988年の米アカデミー賞において、モリコーネの「アンタッチャブル」の音楽は、坂本龍一の「ラストエンペラー」の音楽に敗北しました。本来なら、ベルトルッチの「ラストエンペラー」の音楽も、モリコーネが担当していたはずですが、かりにそうだったとしても、やはりモリコーネはオスカーを逃したと思います。なぜなら、モリコーネの音楽は、坂本龍一のようなキャッチーさに欠けるからです。モリコーネはオスカー受賞を望んでたらしいけど、その機会は若い日本人にあっさり奪われてしまった。しかも、よりによって、ずっとコンビを組んでいたベルトルッチの映画で!かたや「ニューシネマパラダイス」の音楽については、あまりにモリコーネらしからぬ作風のために、「じつは息子が書いたんじゃないか?」…という、まことしやかな噂さえあります。もしかしたら、みずからの作風をねじ曲げて、俗受けしそうな映画のために、俗受けしそうな音楽を書いたのかもしれませんが。【中古】ラ・カリファ 楽天で購入 ラ・カリファモリコーネの甘美なメロディが心に沁みる─。伝説の女優ロミー・シュナイダーが許されぬ恋におちる女性を演じた社会派メロドラマが、待望の日本初公開!本作のテーマ曲は、数あるモリコーネのスコアの中で人気の高い曲♪👏劇場情報↓https://t.co/npcyrT5O0U pic.twitter.com/CXvh5ylp2Z— エンニオ・モリコーネ特選上映 (@morricone_ss2) April 18, 2024
2024.04.20
テレ朝「アリバイ崩し承ります」SPを見ました。浜辺美波×安田顕×成田凌による探偵ミステリー。80年代風のベタベタなアイドルコメディですが、お風呂で特大コロッケ&電話とか、柄本時生のオネエ検視官とか、メッセージを告げる祖父の振り子時計とか、いつもの定番ネタも板についてたし、謎の儀式または変身ポーズ。ヘタっぴいな「時をかける少女」の鼻歌も可愛かったです。浜辺美波も「時を戻す少女」の意味でなら、いちおう原田知世の遺伝子を継承してるね。▶ https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202304180000/ヘタクソな鼻歌。キャスト陣も、容疑者役に矢本悠、高梨臨、雛形あきこ、チョイ役に間宮祥太朗や松本若菜など、なにげに豪華でした。◇今回のスペシャル版は、いちどアリバイを崩してからのどんでん返しなど、90分ドラマらしい展開になってたし、映像的にもなかなかお洒落で楽しかったです。ただねえ…いつものことだけど、無駄に込み入ったトリックにしてるだけで、犯罪動機に無理がありすぎるよね(笑)。まあ、それはレギュラーシーズンのときからだし、テレ朝サスペンスならではのクオリティだけど。アガサ・クリスティ「エッジウェア卿の死」。いちおうツッコんでおきますが…相続欠格にならないうちに殺してしまえば、遺産がらみの殺人とカムフラージュできるのに、わざわざ無関係な人を殺して、相続欠格になってから殺すって変でしょ!それから、部屋を90度模様替えした後に、死体を覗けるはずがないってロジックも強引。たんに部屋に入れば死体は見つけられるわけで。料理人だったのに、とつぜんの刃物恐怖症で仕事をやめたって話も、まったくリアリティに欠けました。ところで、美波の話によると、撮影は2年半以上も前だったとのこと。なぜこのタイミングの放送になったのかしら?朝ドラ&ゴジラ明けまで、あえて温存してたのか。いったんお蔵入りしたのを、ここにきて引っ張り出したのか。今回のエンディングでは、謎のアリバイプランナーを登場させて、続編も匂わせてましたが、いずれにせよ、スペシャル版を放送したってことは、「科捜研」や「捜査一課長」と同じように、テレ朝サスペンスの定番化を狙ってるのかな。(といっても、これは東映の制作じゃないけどね)アリバイ崩し承ります Blu-ray BOX【Blu-ray】 [ 浜辺美波 ] 楽天で購入
2024.04.20
テレ朝「警視庁捜査一課長」。今回でスペシャルは10回目。12年前のシリーズ第1作以来の、斉藤由貴×朝倉あき=東宝シンデレラ共演!宝塚の咲妃みゆは舞台千尋のリンですね。猫のビビちゃん(by 黒豆)は最後の出演だそうです。◇以下はネタバレ!別れた旦那から5000万円をせしめようと、狂言誘拐を偽装した母親(by 杉田かおる)。しかも、誘拐させようとしたのは実の娘じゃなく、両親を事故で亡くして引き取られた親戚の娘。血の繋がらない娘のために、別れた旦那が5000万円も用意するわけないでしょ!そんなに親切な旦那なら離婚しなきゃよかったのに!…と思ったら、あやまって実の娘のほうが誘拐されてしまった。◇ガチャ運がよすぎるのか、大福(by 斉藤由貴)みたいに、勘がよすぎる永井杏子(by 朝倉あき)。さすがは東宝シンデレラのファイナリスト!(またの名を準グランプリとも言いますが)注文も聞かずに、客好みのパフェを作ってしまう能力もさることながら、子供のころからアイスの棒も当てまくっていた。犬並みの嗅覚。わたしが子どもだったころ by NHK。とはいえ、「アイスの当たり棒をもってくる娘を誘拐しろ」って、そんな不確実な指示で大丈夫なのかしら?ほんとに当たるかどうか分からないし、そもそも、そんなに確実に当たりを出されたら、駄菓子屋のほうが商売あがったりでしょw案の定、当たっちゃったのは実の娘のほうで、マジで誘拐されたうえに5000万円も持ち逃げされた。◇偽装誘拐の実行犯の男は、持ち逃げした5000万円で会社を立ち上げ、令和の承認欲求モンスターに変貌!ちなみに承認欲求モンスターの名前なら、「飯根望いいねのぞむ」のほうが分かりやすいと思うけど、「飯吉望いいよしのぞむ」ってのは、微妙に分かりにくい。そんな令和の承認欲求モンスターも、昭和生まれのパワハラ体質がバレて、世間のキャンセルカルチャーにさいなまれ、ひたすらエゴサしまくる日々を送ってる。そして殺人のアリバイ工作に用いたのは、寝台特急「サンライズ出雲」の時刻表トリック(by 西村京太郎)?なお、演じていたのは、由貴ちゃんとライブで共演したばかりの橋本さとし。各事務所のOKが出たので昨日の立川バースデーライブの全員写真を。🎵#斉藤由貴#鈴木蘭々#ソニン#橋本さとし#立川智也#佳尚#草間信一#細田幸子#是永巧一 pic.twitter.com/vmiGrMMNB8— 是永巧一 (@KORE1225) March 18, 2024寝台特急「サンライズ出雲」の殺意 (新潮文庫) [ 西村 京太郎 ] 楽天で購入 ◇昭和生まれの姉が、生前に和菓子職人を目指してたので、平成生まれの血の繋がらない妹も、その遺志を継いで昭和レトロなパティシエに。しかし、SNSでの拡散を避けるべく店を移転しつづけ、人呼んで「さすらいのパティシエ」になってしまった。それを追っかけるAI男子も、デジタルデトックスの欲求が高じるあまり、令和の見守りストーカーになっちゃったのね。昭和の盗撮ストーカーよりはマシだけど。AIで偽画像を作ったり、なりすましSNSを立ち上げたりして、推しパティシエのアリバイ工作までやっていた。◇殺された押尾貴代の名は、「推しヲタかよ!」ってのが由来な気もするけど、とくに推しがいたようには見えません。むしろ彼女も承認欲求モンスターだった。パワハラされた腹いせに、偽造したアイスの当たり棒で、上司から5000万円を強請ろうとしたものの、万引きしたらしき昭和のおみくじ器からは、《認められたいと願うほど認められず》という大凶の結果が出ていたのですね。そして占いどおりに殺されてしまった。◇さらに名前ネタに言及すると…杉田琴音は過ぎたことね。今戸希菜子はイマドキな子。片石堅郎の名も由来が不明だけど、硬いし堅牢ってことかしら??永井多恵は自責の念に長いあいだ耐えてきた。そして「最後の昭和の子」だった昭子はともかく…血の繋がらない杏子の名前は、やっぱりネタ元がいまいち分からない。わたし的に思い浮かぶのは、ニコニコ日記の永井杏(by 大森美香)なのだけど。
2024.04.19
夜ドラ「VRおじさんの初恋」。第9~10話を見ました。特別列車のチケットで隠しワールドへ。そして約束の場所での祈りと別れ。◇たしかに宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」って、現代のVRの世界みたいだなと思いました。この世ならぬ世界。性別のない世界。この世で生きることを諦めた人たちの世界。井桁弘恵が、本当にファンタジックな美少女に見えます。#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】\第10回は今夜10:45放送!/第9回をプレイバック🎥「好きで好きで、どうしようもないんだ!」直樹=ナオキの熱い告白が胸を打つ名場面です😌#VRおじさん#野間口徹#倉沢杏菜 #井桁弘恵続きは NHKプラスで配信中📱https://t.co/xEKx9dxfnR pic.twitter.com/x8cctyzJGU— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 16, 2024 #夜ドラ【#VRおじさんの初恋】\第9回はあす夜10:45放送!/教えて!VRおじさん👀列車のシーンはどうやって撮影したの?Point💡➀巨大LEDモニターで動く風景を再生②列車の揺れは人力で!https://t.co/2I0dQC4RRe#VRおじさん #野間口徹 #倉沢杏菜 #井桁弘恵 pic.twitter.com/SvpRn7VAVG— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 14, 2024 VRおじさんの初恋 (ZERO-SUMコミックス) [ 暴力 とも子 ] 楽天で購入
2024.04.17
テレ朝「Destiny」第2話を見ました。◇野木浩一郎(仲村トオル)はヤメ検の弁護士なのね。検察時代には辻英介(佐々木蔵之介)の同僚だった模様。しかし、20年前の環境エネルギー汚職事件!野木は辻と対立し、「検察による事件の捏造だ」「主任検事による自白の強要だ」と主張。その後、辻が自殺しました。野木と辻は同僚だった?20年前の環境エネルギー汚職事件。検察による捏造を主張。検事から弁護士に転向。しかし、カオリ(田中みな実)は、「奏(石原さとみ)のパパは自殺じゃない。殺されたんだよ」と言ってました。そして、真樹(亀梨和也)も父に向かって、「あんたが殺したんだろ?辻英介を!」と言ってましたね。真樹は車のなかでカオリに何を聞いたのでしょう?そして、事故の原因は何だったんでしょう?何か事情を知ってるっぽい知美(宮澤エマ)と祐希(矢本悠馬)。ちなみに、今回の薬物事件も、20年前の事件と同じ構図です。弁護士についた野木浩一郎が、「警察による不当逮捕」と主張し、民事党幹事長の次男の川越拓海は、処分保留のまま釈放されて不起訴になりました。なお、てっきり真樹は火傷で救急搬送されたのかと思いましたが、なぜか「頭部外傷と腹部強打」の症状があるようです。主治医は奏の婚約者の貴志(安藤政信)っぽい。なぜ真樹は放火事件で逮捕されることになるのでしょう??
2024.04.16
石原さとみ×亀梨和也「Destiny」第1話。何の予備知識もなかったけど、引き込まれて、いっきに観ちゃった。面白かったー。意外にも、吉田紀子のテレ朝のドラマだったのね。でも、これって、完全に《奥寺佐渡子×塚原あゆ子》の路線。TBS「Nのために」「最愛」みたいな考察系。3年前の「最愛」では、宇多田ヒカルがED曲を歌ってましたが、今回は椎名林檎が歌ってる。そういえば、田中みな実って「最愛」の橘しおりじゃーん!Nのために Blu-ray BOX【Blu-ray】 [ 榮倉奈々 ] 楽天で購入 最愛 DVD-BOX [ 吉高由里子 ] 楽天で購入 ◇石原さとみ&亀梨和也は、23才~35才までの12年間を演じるらしい。ちなみに実年齢でいうと…石原さとみは37才!亀梨和也は38才!もう2人とも立派なアラフォーね…でも、ちゃんと大学生に見えました!亀梨和也もバリバリに走ってたし、石原さとみも20代と30代を演じ分けてたし。すばらしいですね。◇検事だった石原さとみの父(=佐々木蔵之介)は、自殺だったの?他殺だったの?そこに亀梨和也の父(=仲村トオル)が絡んでる?田中みな実は、いったい何を知ってたの?宮澤エマは、その話をぜんぶ聞いたの?カオリ「トモが最初に言ったんじゃん。もしこれが本当だったらって。だから調べたんだよ」 知美 「でも、もしこれが事実だとしても、それはあの2人の問題で…」カオリ「わたし、べつに真樹のこと好きでも何でもないよ」 pic.twitter.com/ThYEFH4rEY— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 15, 2024◇最後のシーンでは、亀梨和也が救急搬送されてましたが…あらためて冒頭のシーンを見返すと、亀梨和也は放火の容疑で逮捕されて、石原さとみの取り調べを受けようとしてる。余談ですが…吉田紀子のドラマといえば、一般的には「Dr.コトー診療所」ですけど、わたしがいちばん印象に残ってるのは、2000年の「お見合い結婚」なのよね。もう四半世紀前!!松たか子とユースケサンタマリア。今作とはぜんぜんタイプの違うコメディでした。
2024.04.16
NHK大河「光る君へ」第14話。貧しい女児に文字を教えようとした主人公。しかし、その意義は誰からの理解も得られぬまま、苦い挫折を味わうことになりました…。◇なぜ紫式部は、不倫男の官能小説「源氏物語」を書いたのか?!もしかして日本人の識字率を上げるためだった?!たしかに、どんなに「文字を覚えましょう♪」と呼びかけても、バカな貧乏人にはその意義が伝わりませんよね。貴族の学問など、平民が生きるうえでは何の役にも立たない!!…みたいな先入観もあったでしょうし。◇ならば、エロいポルノ小説を書いて世間にばらまこう!そうすればバカな貧乏人たちも、必死になって文字を学ぼうとするにちがいない!…みたいな発想があったのかしら?たしかに、その意味でなら、ポルノ小説にも社会的な効用はありますよね。いわば文字を学ばせるための「釣り」として。◇まあ、当時は著作権もないし、印税収入もないので、小説家などという職業もまだ存在しませんし、かといって、紫式部もただの余興で書いてたわけじゃなく、平民のためのボランティアで書いてたわけでもない。通説によれば、当時の文学作品は、お妃候補のサロンを盛り立てるための呼び物だったらしい。他の妃よりも、天皇が娘のもとを訪れてくれるよう、そのサロンを楽しく盛り立てる。彰子サロンを盤石にするため、『源氏物語』の作成から製本までがプロジェクトとして組まれたわけです。そのサロンを挙げての物語作りとPRのパトロンが、彰子とその父・道長であり、実質的な最高責任者が紫式部でした。https://diamond.jp/articles/-/336452?page=2◇でも、このドラマのなかでは、藤原道長も、紫式部も、清少納言も、もっと高い「志」をもってそうな感じがしますよね。もしかしたら、道長や倫子さんらがパトロンになって、日本人の教養と識字率を高めるための社会事業として、紫式部に王朝文学の制作を委託した…みたいな話かも。◇実際のところ、紫式部に、平民の識字率を上げようとの構想があったかは不明だし、そもそも書写された「源氏物語」が、ひろく平民にまで読まれたとの記録も存在しないはず。でも、もしかしたら平民だって読んでたかもしれない?!すくなくとも貴族の男女の教養を高めるうえで、紫式部の官能小説には社会的な効用もありましたよね。やっぱり学問って、楽しくなけりゃ広まらない。そういう発想は現代の教育行政にも必要だと思います。◆◇ #光る君へ ギャラリー◇◆【第十四回】星落ちてなお本日4月7日(日)[総合] 夜8時00分[BS・BSP4K] 午後6時00分[BSP4K] 午後0時40分▼あらすじhttps://t.co/4N5Ptdi9CQ▼相関図https://t.co/TynuXZrLUS#吉高由里子 #まひろ #紫式部 pic.twitter.com/pE8YEXfooO— 大河ドラマ「光る君へ」(2024年) (@nhk_hikarukimie) April 7, 2024
2024.04.14
↓2ヶ月前の記事にも書いたとおり、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202402280000/U-NEXTの1ヶ月見放題カードを、誤まって2枚も買ってしまったので、「せっかくだから元を取らねばっ」と、2ヶ月で映画30本観るつもりで意気込んだものの…1ヶ月以上経っても4~5本しか観れず…その後、春ドラマが終わったタイミングの、残り半月でスパートをかけるつもりが、体調を崩して映画どころではなくなってしまい…ようやく最後の1週間でラストスパートをかけ、なんとか期限までに以下の11本を観ました。大林宣彦「時をかける少女」沖田修一「子供はわかってあげない」相米慎二「魚影の群れ」ジャン・コクトー「双頭の鷲」ジョン・フォード「怒りの葡萄」ウォシャウスキー兄弟「マトリックス」濱口竜介「ドライブ・マイ・カー」ジャック・ドゥミ「シェルブールの雨傘」川島雄三「女は二度生まれる」ロバート・スティーヴンソン「ジェーン・エア」周防正行「舞妓はレディ」何事もギリギリに追い込まれなければつくづく物事ができない人間なんだなと、われながら痛感しました(逆に、追い込まれると出来てしまうのが不思議なんだけど)まあ、映画以外にも、「峰不二子という女」などのアニメ数本と、TVerで見逃したドラマやバラエティ、読み放題の雑誌なども見ることができたので、なんとか元は取れたかな、と思う。いろんな映画をつまみ食いしてたので、最初のほうだけをチラッと観たまま、中途半端にしてしまった映画もかなりある。◇夏ドラマか秋ドラマが終わったぐらいのタイミングで、またこのサービスを利用してもいいかなとは思うけど、1200ポイントの使い方がちょっと難しいのよね。端数を余らせるのももったいないし、ポイントの利用期限が異様に短い(チャージから90日間)のも難点です。
2024.04.14
遅ればせながら、朝ドラ「虎に翼」第1週を見ました。これってもしや「シッコウ‼」の続き??テレ朝のドラマでは、織田裕二から伊藤沙莉が「子ども六法」をもらい、本格的に法律を学びはじめるところで終わりましたが…NHKでは、石田ゆり子から戦前の「六法全書」を買ってもらって、そこから伊藤沙莉の法律家人生がスタートするっぽい。 目指すのは執行官じゃなく弁護士だけど!!ドラマのテイストも、どことなく大森美香が脚本を書いてる??と思わせるような雰囲気があって…そういえば、小林薫も「青天を衝け」の父親だったし、キャストの面子がなんとなく大森ドラマっぽいのよね。ってことで、かなりわたし好みな作風。◇なお、主人公が「梅丸少女歌劇に入りたい」と言ってたのは、たんに前作ブギウギをネタにしただけかと思いきや…ヒロインのモデルの三淵嘉子は、ほんとうに宝塚のファンだったようです。ブギウギ的にいえば、梅丸じゃなく花咲のファンだったのですね。嘉子は、男役の雪野富士子の大ファンでした。雪野は宝塚少女歌劇団雪組の男役でしたが、1934(昭和9)年に退団、若くして亡くなりました。https://news.yahoo.co.jp/articles/73500afd69bc299a8e79461519410f3d85c81a50?そして、母親の実家が四国の香川だったのも史実らしい。三淵嘉子の両親は香川出身なのですね。嘉子の父・武藤貞雄は四国・丸亀の出身で、地元の名家・武藤家に入婿して一人娘のノブと結婚した。ノブもまた当主・武藤直言の実子ではない。彼女の実父は若くして亡くなり、6人の子だくさんだった一家は生活に窮してしまう。そのため末っ子だった彼女は、伯父の直言に養女として引き取られた。https://news.yahoo.co.jp/articles/36935cc265b7af889bd8767ed68c7b80b2d411d8?ある意味で、ヒロインの母親の境遇は、笠置シヅ子にも重なる部分があるかもしれません。…かたやヒロインの父親は、香川から東京帝大へ進んだ超エリートなので、タダで銭湯に入るアホのおっちゃんではありません。【#ブギウギ 登場人物紹介💃】アホのおっちゃん:岡部たかしいつも薄汚い格好をして、よく酒に酔っているおっちゃん。大工仕事が得意。なぜか、おっちゃんだけはいつもタダで銭湯に入っている。#アホのおっちゃん pic.twitter.com/0wTKH1f3tu— 朝ドラ「ブギウギ」公式 (@asadora_bk_nhk) September 4, 2023 ◇それにしても、去年の卯年は、大河も朝ドラも「兎」だらけだったのに、なぜか今年は辰年にもかかわらず、タイトルが「虎に翼」でヒロインが「寅子」とは…これいかに??しかも苗字が「猪爪」で、初週のサブタイトルが「牛を売る」って、やたらと動物だらけだし!トラが、イノシシの爪と翼を生やしてウシを売ったら、辰年の龍になるってか??いまにも龍になりそうな虎。描いたのは北斎ではなく娘の応為だとわたしは思う。【展覧会情報】あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)では、10/6~11/19、「北斎ー富士を超えてー」展を開催。北斎の晩年に特にスポットを当てる。イギリスの大英博物館では同様の展覧会が5/23~8/13に開催。詳しくはhttps://t.co/3Cd7mSZZ0P pic.twitter.com/HDLCB3tnkI— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) March 29, 2017
2024.04.11
磯田道史が、読売新聞で富雄丸山古墳のことを書いてます。▶磯田道史の古今をちこち「もう1人の埋葬者 破格の謎」◇奈良の富雄丸山古墳の話は、NHK「古代史ミステリー」第2週にも出てきましたが、卑弥呼(3世紀)よりも後で、倭の五王(5世紀)よりも前、すなわち「空白の4世紀」に造られた円墳です。前方後円墳ではないので、たぶん大和政権の王墓じゃないはずですが、それでも直径109mという国内最大級の円墳です。きっと「丸山」という地名も、この円墳に由来するのでしょうね。◇この円墳には、頂と麓に、すくなくとも2つの棺がある。磯田道史は、頂の棺の埋葬者は「記紀神話に出てくるレベルの王権の功労者たる豪族」麓の棺の埋葬者は「盾持ち人のような祭祀の女性」…だと推察しています。そして注目すべきなのは、祭祀の女性を埋葬したらしき麓の棺のほうです。足元に「9本の竪櫛」があり、棺を封じる粘土に「蛇行剣」と「盾形銅鏡」が貼りつけてあった。◇一般に注目されているのは、巨大な「蛇行剣」と鼉⿓⽂の「盾形銅鏡」のほうですが、磯田道史が注目してるのは、むしろ「9本の櫛」です。日本書紀によると、イザナギは、イザナミのいる黄泉国から逃げ帰るときに、8人の黄泉醜女に櫛を投げつけたとされてます。(櫛の歯の一本一本がタケノコに変わったらしい)磯田道史の推測は、9本の櫛は「イザナミ+8人の醜女」の分ではないか、(あるいは、それにちなんでいるのではないか)…ってことですね。◇一般に、黄泉国の出入口は、島根の出雲にあったと考えられますが、その出雲には「8」という数がよく出てきます。そもそも「八雲立つ出雲」といわれるし、そこは八百万の神々が集う土地でもある。怪物の八岐大蛇ヤマタノオロチは、八人の娘を食べて、八つの頭と尾をもってる。そして秋田では、八岐大蛇が八郎太郎になったんじゃないかと思います。黄泉醜女も、やはり八人なのですね。◇一方、棺の外側に貼りつけてあった蛇行剣は、日本最古かつ最大のものであり、長さが2.37mという東アジア最大の鉄剣です。蛇行剣は西日本各地で見つかってますが、もともと、それらは、ヤマタノオロチから抜き取った「草薙剣」に由来する、…との説があります。蛇の体内から抜き取ったために、ぐにゃぐにゃに曲がっているのかもしれません。クサナギという語も、じつは「草薙」の意味ではなく、「臭蛇クサナギ」「串蛇・奇蛇クシナギ」の意味ではないか、との説があります。この場合の「ナギ」は、鰻ウナギの「ナギ」と同じ語源で、すなわち蛇のことだというわけです。◇草薙剣(≒串蛇剣)は、スサノオが八岐大蛇の尾から抜き取り、のちにヤマトタケルの東征のために授けられました。スサノオも、八岐大蛇と戦う際に、クシナダヒメの姿を「櫛」に変えて頭に挿しました。櫛になったから「クシナダヒメ」だという説もある。ヤマトタケルの妻オトタチバナも、夫の身代わりとして入水し「櫛」の姿で葬られています。いずれにせよ、女性の櫛には、男性を守護する霊力があったのでしょう。
2024.04.10
春落葉片方だけのスニーカー われ反抗期春夕焼の海岸へ 入社式一人馴染まぬコンバース 厚底や挫く心と青い春 運がつき裏を覗けば散る桜 風光るピボットの軸は逞し 花衣運転席のスニーカー スニーカー踵に昨日の桜かな4月4日のプレバト俳句。お題は「スニーカー」。◇ペナルティ・ヒデ。春落葉 片方だけのスニーカー取り合わせが美しい。何らかの欠落をテーマにしてると思われますが、「なぜ片方しかないのか」という詩的な想像が膨らみます。とはいえ、「子供の靴が片方落ちてた」という作者の説明を聞くと、意外につまらないけどね。◇村山輝星。われ反抗期 春夕焼の海岸へわれ反抗期 春夕焼の砂を行く(添削後)われ反抗期 春夕焼の波見つむ(添削後)前回もマセた俳句だったけど、今回もマセた俳句。いきなり7・7・5の破調にしてくるのも、冒頭から客観写生のルールを破ってくるのも、なかなかにふてぶてしい!上五で「われ反抗期」と説明(宣言?)からはじまる型破りは、とりあえず句の個性として是認しますが、下五の「海岸へ」も、描写というよりは説明っぽいので、そこは添削のように映像化するのが正解でしょうね。◇梅沢富美男。花衣 運転席のスニーカー字面からは、女性を三人称的に描写した句に見えるので、まさかジジイの一人称の句とは驚きです。梅沢がスニーカーで車の運転をしてるのも意外。字面だけを見れば、> 自分で車を運転する女性で、> 最近は着物にスニーカーを合わせる人も多いけど、> この人はちゃんと下駄や草履に履き替えるのねと解釈するはず。まあ、俳句の形としては出来てるし、梅沢にしてはムダのない構成のシンプルな佳作です。◇金子恵美。入社式 一人馴染まぬコンバース入社式 一人は白きコンバース(添削後)中七の「馴染まぬ」が説明くさいので、添削句ではそれを映像化してますが、わたしは上五の「入社式」も、やはり映像ではなく状況説明に見えます。もし「入社式」を映像化するなら、たとえば8+10の句またがりですが、入社式の列 吾あのコンバース白しのように出来ます。◇キスマイ横尾。風光る ピボットの軸は逞し掲載決定だそうですが、わたしならボツです。スラムダンクヲタクの内輪ウケの評価としか思えない。これを解説なしに句集に掲載したら、はじめて読む人には意味不明だと思います。先生は、森迫永依の「旗源平」を前書きにすべきと言ったけど、「旗源平」なら調べれば分かることだし、これといって誤読の余地などもありません。しかし、以前の「1on1」や今回の「ピボット」は、一般に共有されてない単語であるばかりか、調べてみても、その意味が多岐にわたるので、それこそ前書きに「スラムダンク最高!」とでも書かなければ、バスケの句だとは特定できません。また、季語の選択も意外に平凡なのだけど、動詞の季語のあとに名詞が来るので、終止形なのか連体形なのかを読み迷うし、(古語のラ行四段活用は終止形と連体形が同じ)助詞の「は」を使う必然性も乏しい。さらに、この場合の「ピボット」は動作(ステップ)のことなので、「ピボット」と「軸」が重複するとは思いませんが、むしろ体の軸を形容する言葉として、「強し」ではなく「逞し」を選んだことに違和感を覚えます。日本語として「軸が逞しい」という言い方は変です。ためしに、陽春のゴール ピボットの軸強しとしてみました。ちなみに「ゴール」以外にも、「シュート」「コート」「ドリブル」などの語を使えば、前書きがなくともバスケの句だと伝わるはずです。◇石山アンジュ。厚底や 挫く心と青い春我が青き春 厚底に挫く足(添削後)上五の「厚底や」からして、もうギャグとしか思えません(笑)。すなわち「厚底だなあ!」ってことよね。季語をさしおいてギャルの靴を詠嘆しちゃった。ちなみに、厚底ブーツかと思いきや、厚底スニーカーで足を挫いたとのこと。ギャルにとっては切実な問題だったのだろうけど、はたから見るとコメディにしか見えないので、失礼ながら笑いを抑えられません。なお、青春の意味で「青い春」と書いたら、それは季語ではありません。通常なら、これが最下位だろうと思います。◇川﨑麻世。運がつき裏を覗けば散る桜靴底に糞ふんか 桜の散りしきる(添削後)下には下がいましたwふつうなら「運が尽き」と読むはずなので、おおかた賭けマージャンにでも負けて、不良学生が体育館の裏に行ったとか、不良オヤジが裏社会を覗いたとか、…そういう話なのかと思いましたが、靴の裏にウンコと桜の花びらが付いてたって…そこに何の詩情があるんでしょうか??…よく30点ももらえましたね。ウンコを踏んだ自虐川柳とも思えるけれど、わざわざ「運」の字を使ってるところを見ると、ウンコだけでなく桜のオマケもついてて一層ラッキー!…みたいなポジティブシンキングなのかもしれません。◇清水アナ。スニーカー 踵に昨日の桜かな中八を回避するだけなら、「踵」ではなく「底」や「裏」にすれば、とりあえず中七にはなるのだけど、それよりも上五で切れるのがよくないですね。とくに「かな」で締める場合は途中で切らないほうがいい。ためしに、(切れ字の「かな」は使いませんが)靴底に昨日の桜まだ紅しとしてみました。/木曜、夜7時からはプレバト!!\清水アナが次回のお題に挑戦!🔥どうにかしたい気持ちはあった!🥲#清水アナの俳句挑戦#プレバト #MBS #TBS pic.twitter.com/MfF1XgKTyC— 「プレバト!!」毎週木曜よる7時【公式】 (@prbt_official) April 3, 2024 ▽過去の記事はこちらhttps://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12
2024.04.08
NHK大河「光る君へ」。毎週欠かさず見てます!だいたい4分の1が終わった感じ?◇正直、大石静には何の期待もしてなかったのだけど、想像を超える面白さにびっくりしてます。簡単にいったら、オジサンたちが権謀術数に明け暮れるかたわらで、女子たちが「ウフフ、オホホ」とお喋りしたり恋したり、…ってだけの話なんだけどwなんでこんなに面白いんでしょうね。◇柄本佑と吉高由里子は、けっして現代的な「美男美女」ではないけれど、2人とも目が切れ長で和風顔だから、あれこそ平安時代の「美男美女」だと信じたくなるし、いまさらながら絶妙な配役だと感心します。そして音楽の冬野ユミは、黒島結菜の「アシガール」のときにも、甘くてファンタジックな曲をつけてましたが、今回もまた、かなり自由自在に、平安ファンタジーっぽい甘美なテーマ音楽と、ジャズもまじえた現代的な劇伴をつけてるのが良い。◇若手のキャストたちが、毛筆草書を吹き替えなしでやってるのも凄いけど…馬を乗りこなして「打毬」をやってたのも凄かった。あの「打毬」という競技は、ハリポタの「クィディッチ」に似てましたが、紀元前6世紀ごろのペルシャの発祥で、日本の「打毬」のほうが英国の「ポロ」より古いのだと。たぶんハリポタの「クィディッチ」は、英国の「ポロ」をもとにしてるのだと思います。◇さて、前回の大河も「ファンタジーだ!」と叩かれましたが、今回はそれをも凌ぐ超絶ファンタジーwいちおう考証担当者は7人くらいいるらしいけど、資料が少なくて分からないことが多いのか、事実関係を考証してるのは倉本一宏ひとりだけ。紫式部と藤原道長 (講談社現代新書) [ 倉本 一宏 ] 楽天で購入 そのほかの担当者は、建築とか、芸能とか、和歌とか、料理とか、おもに社会風俗の考証をおこなってるようです。まあ、平安時代の社会風俗をドラマで再現するだけでも、歴史研究をうながす意義は十分にあると思う。そのほか、「下っ端の藤原氏より後ろ盾のある源氏のほうが身分が上」みたいな当時の事情を知れるのも面白い。◇ちなみに、ただひとり事実関係の考証を担う倉本一宏でさえ、「紫式部と道長が幼馴染みなんてことはありえない!!」と断言してますwここ最近は毎年3人くらいで分担している時代考証ですが、今年はどうも私1人しかいないらしい。紫式部と道長が幼なじみだという設定から出発しているのですが、実はそもそもこの設定自体が史実に反します。NHKが制作発表の段階で発表してしまったため変えられないので妥協することにしましたが、実際には、2人が幼なじみだったということも恋仲だったということもあり得ません。https://www.todaishimbun.org/drkuramoto_20231228/その前提からしてファンタジーだとしたら、「道長の兄が紫式部の母を道ばたで刺し殺した」なんて事実もありえないわけで…逆にいったら、ほんとうの史実はどこにあるの??って話。◇わたしが思うに、ここまでの4分の1の内容は、おもに《藤原兼家の権力闘争》の史実を中心に、フィクションをまじえて作ったのだと思います。とくに、花山天皇の退位(寛和の変)とか、そのあとの高御座「生首」事件とかは、それなりの資料にもとづいていたはずです。もちろん、当時の資料それ自体が捏造だったら、それすら史実じゃない可能性もありますがw◇前回の大河が「ファンタジーだ!」と叩かれたわりに、今回の大河にその類の批判が少ないのは、もともと大部分の視聴者が、過去の少女漫画や少女文学をとおして、いわゆる「王朝ファンタジー」に慣れてたからでしょう。大和和紀『あさきゆめみし』1979山岸凉子『日出処の天子』1980氷室冴子『ざ・ちぇんじ!』1983氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク』1984逆にいうと、そういう「王朝ファンタジー」に慣れてない人たちは、そもそも今回のドラマを観てないよね。なので、視聴率は低いけど、そのぶんバッシングも相対的に少ないってこと。それをもって作品の優劣を論じても意味がありません。◇結局のところ、視聴者の多くは、慣れ親しんだイメージに近ければ納得するし、そうでなければ「史実と違う!」といって騒ぎ出す。たとえば司馬遼太郎を愛読してきた人たちは、それが「史実だ」と思い込んでるし、かたや大和和紀の漫画などを読んできた人は、そこに「歴史の実態がある」と思い込んでいる。そういう素人の視聴者が、ネットなどで繰り広げてる「史実論争」ってのは、ほとんどの場合、クソほどの価値もないバカ論争ではあるのだけど、かりにファンタジーであったとしても、凝り固まった歴史のイメージが変わっていくことは、それなりに意味のあることだと思います。すくなくとも、これまでのような、男性小説的な《戦国武将劇》への偏重から脱して、少女漫画的な《平安貴族劇》が増えることも、中世史への関心を高めるためには必要なことだし、今後は《江戸町人劇》なんかも増えたらいいと思う。◇なお、今作が「平安ファンタジー」であることは、安倍晴明の祈祷から始まったことに象徴されてますが、じつは、このドラマの中で、藤原兼家と道長の2人にかぎっては、陰陽術をぜんぜん信じてないという設定になってます。とくに藤原兼家は、安倍晴明のインチキを見破ったうえで利用してますね。実際、高御座「生首」事件が史実だったとすれば、兼家は《穢れ》に対する迷信をあざ笑いながら、血で汚れた高御座のうえに、平然と自分の孫を座らせたことになります。◇たしかに現代人から見ると、安倍晴明の陰陽術はインチキに見えるけれど、近代医学がまだ存在しなかった時代、つまり細菌やウィルスの知識がなかった時代に、不可解な伝染病で人がバタバタ死んだりすれば、たとえ荒唐無稽な迷信だとしても、《穢れ》や《清め》や《禁忌》などの概念には、たんに宗教的な意味合いだけでなく、おそらく衛生上の合理性があったはずなのよね。現代人でさえ、目に見えないコロナウィルスにおののき、デマを信じたり、差別的になったりするのだから、中世の人々が迷信に頼るのも至極当然の話。そう考えると、迷信を無視することはきわめて困難だったと思う。◇そんな怖れを知らぬ藤原兼家も、そろそろ死期が迫ってるっぽいので…今後の焦点は、やはり主人公の結婚?!(お相手はネタバレになるので触れません)そして、序盤にくらべれば、だいぶ史実に則した内容になるはずですが、倫子さん or 彰子さん付きの女房になるのでしょうね。(誰の女房だったかについて諸説あるようです)たとえ「紫式部と道長が幼馴染み」ってのがファンタジーとしても、その2人が藤原氏だったのは間違いないし、年齢が近かったのも事実だし、(道長が4才上との説や12才上との説あり)倫子さんと親しい間柄ってのも、それなりに根拠はあるようです。平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 (NHK出版新書 707 707) [ 倉本 一宏 ] 楽天で購入
2024.04.07
NHK「プロジェクトX」が再開。多少は現代に見合ったコンセプトへ刷新されたかと思いきや、あいかわらず巨大プロジェクト礼賛番組でした。これじゃあ夕方にやってる「水戸黄門」の再放送と変わらない。つまりは思考停止した高齢者向けの自己愛番組。そして、このような「巨大プロジェクト礼賛」が、能登半島の復興をもないがしろにする、大阪の「賭博カジノ万博」へ直結するのかと思うと、むしろ寒気がします。おりしも、台湾の地震対応の素早さを見せつけられて、日本の行政による災害対応が、台湾の宗教団体にさえ劣ることが分かった今、アホみたいな「巨大プロジェクト礼賛」番組を、NHKの公共放送がゴールデンタイムに垂れ流したところで、もはや日本が後進的な貧困国なのは隠しようもない。その事実を素直に認めて、国家ぐるみの構造改革を促す番組を作ったほうが、よっぽど生産的ではないでしょうか??災害が起こるたびに、「自衛隊はよく頑張った!」「被災者はよく我慢した!」みたいな自画自賛をいつまで繰り返すつもりなのか。◇土建屋の巨大事業に予算を回すことしか考えていない、旧態依然たる政治家には早めに集団自決してもらって、まともな予算の使い方ができる国へ変貌しなければなりません。「雑魚寝ジャパンとの差が」台湾地震、発生から4時間でプライバシー配慮の避難所完成…玉川徹氏も日本の対応を疑問視#SmartFLASH #SNS #テレビ朝日 #台湾 #玉川徹 #能登半島地震https://t.co/w62H1m4jOk— SmartFLASH (@info_smafla) April 5, 2024台湾の大地震で犠牲者がこれほど少なかったのはなぜか? 内外の専門家らが解説(クーリエ・ジャポン)https://t.co/0i9GBTQKUZ— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 6, 2024
2024.04.06
朝ドラ「ブギウギ」を見終わりました。世評は悪くないようだけど、個人的にはちょっと物足りなさが残りました。それは脚本のせいでもあるし、キャストのせいでもあるし、笠置シヅ子の生涯をドラマ化することの難しさのせいともいえる。◇笠置シヅ子は、日本のポップス史における最重要歌手なので、NHKが大々的に取り上げるにふさわしい人物にはちがいないけど、だからといって「朝ドラ」にふさわしいキャラクターかどうかは微妙だったのかも。不世出の歌手にもかかわらず、あっさり引退して美空ひばりにその座を明け渡してしまったので、全盛期はほんの数年間にすぎないし、それが敗戦直後の混乱期という異常な時代だったのも、ちょっと朝ドラ的には扱いにくい理由だと思う。さらには、出自が複雑だったり、未婚の母だったり、薬物中毒の疑い(←これはあくまで疑惑の域を出ないようです。しかも当時はまだ覚せい剤が違法じゃなかった)があったり、娼婦たちとの不思議な連帯があったり、自分の持ち歌を他人に歌わせなかったり、横領事件や誘拐事件に見舞われたり、いろいろとネガティブな面もあるので、それらを朝ドラ的なオブラートに包みながら脚本化するのは難しい作業だったでしょう。◇もっとも、最近の朝ドラは、たとえば「エール」の古関裕而や「スカーレット」の神山清子や「らんまん」の牧野富太郎みたいに、けっこうネガティブな面をもった人物でも果敢に取り上げてるし、あげくは「カムカム」の安子みたいに、わざわざネガティブな要素の強い架空の人物を作りあげたりもしてるから、その勢いで笠置シヅ子を取り上げるのも不可能ではなかったはずだけど、それでも今回のミッションが成功だったかどうかは微妙です。すくなくとも個人的には、これが笠置シヅ子の伝記ドラマの決定版というには物足りないし、ちょっと大胆さに欠けたと思う。主演の趣里は、東京出身にもかかわらず「コテコテの小柄な大阪人」というキャラをうまく演じてましたが、その歌唱パフォーマンスは迫力に欠けました。もちろん、趣里も、菊地凛子も、あくまで女優であって本業の歌手じゃないのだから、歌唱シーンが「なんちゃってパフォーマンス」になるのは仕方ないけど(その点でいえば李香蘭を演じた昆夏美の歌唱シーンは素晴らしかった!)、重要なのは歌唱力の問題ではなく表現のスタイルの問題なのです。おそらく演出上の方針として、笠置シヅ子の下品なまでの禍々しいパワーを再現しようという意志が最初からなかったんだと思う。趣里のパフォーマンスは、どちらかというとキャンディーズのランちゃんを彷彿とさせるような上品で可愛らしいパフォーマンスだったし、笠置シヅ子がスターだった時代の異常な雰囲気を体感させるような迫真性にはほど遠かった。…しつこいようですが、やはりわたしは「田村芽実が主演だったら…」ってことを考えてしまうのだけど。田村芽実がヒロインだったらこうだった!グルーヴ感が桁違い!歌唱シーン以外の部分でも、笠置シヅ子がスターだった時代の描写には物足りなさを感じました。曲がヒットして以降も、もっぱら家庭人としての面ばかりが強調され、およそスターらしさが見えなかったからです。端的にいって地味だった。たしかに、まだテレビもなかった時代だし、笠置シヅ子自身も庶民的なキャラの人だったから、のちの美空ひばりみたいな大スターっぷりとは違ったかもしれないけれど、すくなくとも映画や雑誌では顔が知られていたのだから、もっと一般のファンに熱狂される様子が描かれてもよかったと思う。戦後に「東京ブギウギ」で頂点に立った全盛期のスターっぷりが物足りなかったために、結局のところ、この主人公がいちばん輝いたのは、少女だった頃の《大阪の銭湯時代》だったんじゃないかしら?と思えてしまうし、そこから先の人生はすこしづつ尻すぼみだったように見えてしまうのです。◇最後の引退劇もいまいち納得感に欠けた。主人公が語った「羽鳥善一の歌にとって最高の人形ではなくなった」というセリフは、肥満を理由に引退した史実にもとづいてるのだろうけど、せっかくドラマ全体のエンディングにするのなら、もっとそれに見合うだけの物語を仕立てて欲しかったです。水城アユミを「大和礼子の娘」した設定は、とても素晴らしいアイディアなのよね。それでこそ平凡な引退劇を、ドラマのエンディングにふさわしい物語へと転換できるはずだった。つまり《大和礼子の娘にエンタメの未来を託す》という美談に仕立てれば、この物語は大団円のうちに終わったはずなのです。ちなみに水城アユミのモデルになったのは、美空ひばりよりもむしろ江利チエミだったらしい。江利チエミの母(谷崎歳子)は東京少女歌劇団を経て吉本興業で活躍したスター女優であり、父(久保益雄)はその吉本興業の専属ピアノ奏者で、両者ともに笠置シヅ子とは旧知の仲だった。なので、水城アユミを「大和礼子の娘」にした設定は、あながちフィクションではないのですね。しかしながら、美空ひばりと江利チエミを掛け合わせて「大和礼子の娘」に仕立てた設定は十分に活かされなかった。そもそも水城アユミとの出会いのシーンからして微妙な感じでした。せっかく大和礼子の娘に(赤ん坊のとき以来)再会したのだから、そこは母娘のように感動的なハグをすべきだったでしょ!たとえ「持ち歌」にかんする確執があったにせよ、それを乗り越えて水城アユミに未来を託す美談にすれば、きっと感動的なエンディングになっただろうと思う。物語的に考えたら、歌手の引退という突然の決断は、たんに羽鳥善一への恩義に報いて済む話ではないのです。東京へ送り出してくれた父と母の恩義にも報いねばならないし、幼馴染のタイ子ちゃんへの恩義にも報いねばならないし、大和礼子や歌劇団の盟友たちの恩義にも報いねばならない。さらには、自分に希望を託してくれた亡き弟や愛助の思いにも報いねばならない。それらをすべてひっくるめて納得感のある引退劇にするためには、やはり大和礼子の娘へとバトンを渡し、彼女にエンタメの未来を託す美談に仕立てるべきでした。へたに「さよならコンサート」みたいなフィクションをでっち上げるよりも、史実どおりに紅白を最後のステージにして、そこで水城あゆみにエンタメの未来を託すエンディングにしたほうがよかったと思う。ついでにいえば「義理と人情」をドラマの結論にしたメッセージも(スマイルカンパニーとジャニーズ事務所じゃあるまいし!)まったくの時代錯誤としか思えないので、むしろ終戦後の混乱期から復興期への転換を後押しするような、希望に満ちたメッセージで終わらせて欲しかったです。実際のところ、笠置シヅ子と美空ひばり(あるいは江利チエミや雪村いづみ)との違いは、その時代背景の違いでもあったのです。つまり、戦中・戦後の混乱期に禍々しいエネルギーを放った笠置シヅ子と、「もはや戦後ではない」といわれた復興期に明朗な希望を託された美空ひばりとでは、そもそも時代から求められたものが違っていた。笠置シヅ子の引退劇は、そのような時代の変わり目を象徴するものにしてほしかった。◇さらに苦言をいえば、2人体制による脚本も文句なしに成功したとは言いがたい。前々から言ってることだけど、シナリオ全体を共同で練りあげるならともかく、ただパートごとに分担するという手法はあまり感心できません。今回の「ブギウギ」の場合、脚本家の交代でテイストが損なわれるほどの問題は生じなかったけど、さすがに技量の差までは隠しきれませんでした。とくに戦時中のパートは脚本家の力量不足が顕著だった。笠置シヅ子は、戦時中の苦難よりも、戦後の「出産」「恋人との死別」というスキャンダルのほうが大きな苦難だったから、そちらをメインの脚本家が担当し、代わりにサブの脚本家が戦時中パートを担当する形になったのだろうけど、残念ながら、えなりかずきをはじめとするバンドメンバーのキャラ立ちは弱すぎたし、地方巡業のエピソードも心を動かすだけの要素には乏しかった。淡谷のり子と特攻隊のエピソードや、服部良一の上海でのエピソードについても、ただ史実の上っ面をなぞっただけで、十分にエモーショナルな物語とはなっていなかった。史実にもとづきながら、それをエモーショナルな物語に仕立てるのは難しいことだと思うけど、それこそが脚本家の腕の見せどころなのだし、もうちょっと脚色の技量を発揮してほしかったです。◇そして、笠置シヅ子の伝記ドラマを作るうえで、いちばん難しいのは生まれ故郷の四国・香川の問題だったかもしれません。おそらく香川には「実母の実家」「実父の実家」「養母の実家」「養父の実家」「実母の嫁ぎ先」の5つの家があるはずですが、それらの家との関係についてNHKがどれほど把握できていたのか分からないし、そのファミリーヒストリーをむやみにほじくり返すことの難しさもあったかもしれない。ドラマに登場したのは、法事のおこなわれた「実父の実家」と、葬儀のおこなわれた「養父の実家」と、異父兄弟のいる「実母の嫁ぎ先」だったのですが、それにかんしてさえ史実どおりではなく、おそらく何らかのフィクションに仕立てる必要性があったのではないかしら?実際、娘の愛子が実母と対面するシーンなどはフィクションだった可能性が高い。愛子のモデルになった娘の亀井ヱイ子さんは、放送前のイベントに柳葉敏郎と一緒に出てきたりしてたようだけど、あまり詳しい情報が出てこないせいもあり、いろんな出版物や情報番組などをとおして史実ネタに尽きなかった前作の「らんまん」に比べると、ちょっと煮え切らないようなモヤモヤした感じも残りました。とはいえ、フィクションを交えてでも、娘を捨てた笠置シヅ子の実母を描く意味はあったと思います。上白石萌音の「カムカム」を見たときは《娘を捨てる母親の物語》がかなり踏み込んだものに思えたけれど、むしろ今回の「ブギウギ」を見て思ったのは、昔も今も親子が離れ離れになるのは珍しいことじゃなく、それほど異端視すべきものでもないのだってことですね。今回のドラマでは、いちおう実母との再会が感動的に描かれてましたが、実際には疎遠なままの場合もあるだろうし、わだかまりが消えない場合もあるだろうと思います。笠置シヅ子 その言葉と人生 [ 亀井 ヱイ子 ] 楽天で購入 余談ですが…NHKは「名曲アルバム」や「クラシックTV」や「歴史探偵」などの番組でも、笠置シヅ子関連の内容を放送してました。それらを見てあらためて知ったのは《美空ひばりが横浜から誕生した必然性》もさることながら、《服部良一と笠置シヅ子が大阪から誕生した必然性》も確実にあるってこと。要するに、街が才能を育んだのですね。以下は、上記の番組からのメモです。・道頓堀には江戸時代から芝居小屋が並んでおり、そこで文楽も始まった。・笠置シヅ子は3才から日本舞踊や三味線を習い、芸事が身近にあった。・大阪松竹座が大正12年に現在と同じ場所に建てられた。・関東大震災によって人口移動が起こり、大阪が日本最大の都市になった(大大阪時代)。・道頓堀にダンスホールや劇場が林立し、道頓堀ジャズが隆盛した。・関東大震災から10年ほど経って大阪発の娯楽文化が東京へと逆流した。・松竹が東京に設立した楽劇団の副指揮者に服部良一が就任した。・服部良一が笠置シヅ子に求めたのはジャズのような地声唱法だった。・朝鮮特需に乗じた「買い物ブギ」は「東京ブギウギ」をも超える売上になった。ちなみに、わたしは「ラッパと娘」も三連符のリズムからなるブギウギだと思ってましたが、NHKの解説によれば、同じ三連符のシャッフルビートでも「4拍ならスイング」「8拍ならブギウギ」と分類するようです。そこからすると戦前の「ラッパと娘」はブギウギじゃなくてスイングなのですね。いずれにしてもシャッフルビートは日本の音頭と同じだから、服部良一と笠置シヅ子が作った「ご当地ブギ」の数々は、ある意味では「ご当地音頭」みたいなものだったと思います。やがて、このシャッフルする8ビートのブギウギは、均等な8ビートのロックンロールへと発展するわけですね。◇…ところで、このたびWikipediaを読んで知ったことですが、一般に使用されている「笠置シヅ子」という名前の表記は、歌手を引退したあとの女優時代のものであって、歌手時代の正式な表記は「笠置シズ子」なのだそうです。知らなかった!!わたしも慣例にならって「シヅ子」と書いてますが、歌手時代の彼女のことを書くならば、厳密には「シズ子」と表記するのが正しいのだろうと思います。
2024.04.05
だいぶ時間が経っちゃいましたが、テレ朝「アイのない恋人たち」が終了。◇近年の遊川和彦の作風とは違ってて興味をひかれました。遊川のドラマは、日テレの「女王の教室」や「家政婦のミタ」で成功して以降、だいぶワンパターンだったから飽きてたのよね。でも、今回はオーソドックスな作りが逆に新鮮だった。現代の若者の恋愛や親子関係のサンプルを、ありったけにぶち込んだような内容でしたが、さしずめ「男女7人」の現代版って感じ?ドラマだけに、いろんなエピソードが極端に詰め込まれてたけど、ひとつひとつの話は現代の若者のリアルなんだろうな、…と思いながら見てました。もはや恋愛することは労力でしかないのね。ほんの些細なことが相入れなくても上手くいかないし、上手くいったとしても、短い期間で終わってしまう。◇若手の演技派7人の組み合わせも面白かったです。福士蒼汰×前田公輝×本郷奏多岡崎紗絵×深川麻衣×成海璃子×佐々木希とくに福士くんは、わたしが見たなかではいちばん良かったと思うし、彼のキャラにも合ってました。ちなみに、なぜ脚本家の設定にしたのでしょうね。遊川が自分自身を投影するにはあまりに若すぎて青臭いし、だれか後輩の脚本家にモデルでもいたのかしら?◇しかし!!結末がいかにもテキトーなのは相変わらずのパターン(笑)。遊川のドラマは、収拾がつかないほど色んな問題をぶち込んでしまうので、最後はいつもテキトーな終わらせ方になる。さすがにバッドエンドじゃ希望がなさすぎるし、なんとかハッピーエンドにしたかったのは分かるけど、そうはいっても、あからさまに手の平を返すようなハッピーエンドは、強引すぎて失笑するしかありませんでした。
2024.04.04
苗代の桜や鬼の住まいする 刑務所を囲む桜の仄白き 幽谷のロッジの夜明け白き飛花 花月夜冒険譚に挿す栞 束の間を正気の母と花の道 さくらさくらむすめのたましいのいろ 濠の端の羽音走りて初桜 花曇昼夜の区別なき赤子 花月夜学童終わりのチャンバラ戦 我が運命夜櫻に問う生も死も 祖父逝きて今朝の櫻の寒き色 出郷の車窓を叩く飛花落花 青光りせり750ccに花吹雪 風吹かば花の色なる城下町 校庭に響くピアニカ春の雲 祖父逝きて今朝の櫻の寒き色3月28日のプレバト俳句。春光戦のお題は「桜」です。決勝進出したのは梅沢、千賀、ジュニアの3人。優勝は千賀でした。◇森迫永依。花月夜 学童終わりのチャンバラ戦チャンバラの続く公園 花月夜(添削後)チャンバラの続く団地や 花月夜(添削後)十分に佳作です。9位の評価は低すぎる。添削する必要もない。前回の「旗源平」の句も、平家物語のような風情があったけど、今回も歌舞伎に見立てたような面白さがある。なお、先生は、「花月夜」から「学童終わり」への展開を、夜から夕方へ時間が逆行してる…と言いましたが、それは間違った解釈というべきです。中七の「学童」とは、一般的に「学童保育」のことであって、共働き・ひとり親家庭などの子だという示唆です。そうでなければ、わざわざこの単語は使いません。ふつうに「学校帰り」と書けばよいのだから。放課後の学童保育が終わるのは18時以降だし、家に帰っても留守番せざるをえない境遇だからこそ、学童たちは月夜になってもまだ遊んでるのです。作者がそれを説明しないせいもあるけれど、先生をふくめ、誰一人その意図を汲み取れていない。前回の「旗源平」の句もそうでしたが、今回もまた不当な評価に貶められてしまった感じ。ここまでくると、視聴者はMBSへ苦言を呈してもいいのでは??追記:原句の「戦」の要不要について。ここでのチャンバラは、見世物や演目でもないし、無邪気なごっこ遊びというだけのものでもなく、男の子のストレス発散の憂さ晴らし、ちょっと乱暴なゲームとも読めますし、貧困や寂しさにも負けない明るい逞しさとも読める。そうした意味で、この「戦」の字の多義性というのがある。下6の字余りではあるものの、撥音「n」が二箇所入ってリズム上の字余り感は少ない。◇森口瑤子。束の間を正気の母と花の道中七の「正気」でドキッとさせる。下五の「花の道」は、もちろん桜咲く並木道のことですが、比喩的な意味の「花道」とも読めます。◇的場浩司(予選句)。我が運命さだめ 夜櫻に問う生も死も満開の夜櫻に問う生も死も(添削後)満開の夜櫻に我が生を問う(添削後)内容が観念的で、ベートーベン並みに暑苦しいですね。しかも、その発想はわりに凡庸というべき。◇的場浩司(Tver限定)。祖父逝きて今朝の櫻の寒き色こっちを提出してれば決勝進出だった!!…と先生絶賛の句。時間と視覚と肌感覚と心情が、無駄なく描写されていて、たしかに非の打ちどころがありませんね。因果関係のような叙述によって、実景に心情をのせていく形式も的確です。◇千原ジュニア(予選句)。刑務所を囲む桜の仄白き終止形で「仄白し」と書くほうが、客観写生の原則に適ってますが、これを連体形で終わらせた形は、「仄白きこと」という感嘆・詠嘆の省略にも見えるし、たとえば「仄白き悲しさ」「仄白き優しさ」など、作者の印象を言い含めるような効果も与えます。通常なら避けるべき手法ですが、この句にかんしては許容したくなります。◇千原ジュニア(決勝句)。青光りせり 750ccななはんに花吹雪バイクに花吹雪、という句材は凡庸です。かりに評価すべき点があるとすれば、それを「青光り」と描写したことの独自性だけ。なお、連体形で「青光りせる750cc」と書けば、光ってるのはバイクだけですが、いったん終止形で切って倒置法にしたことで、場面全体が光ってるようにも見えるのですね。しかし、表現に多少の工夫を加えたところで、やはり句材そのものが凡庸なのは否めない。◇キスマイ千賀(予選句)。幽谷のロッジの夜明け 白き飛花幽谷のロッジ 夜明けの飛花白し(添削後)そもそも「夜明けの幽谷」に霧のイメージがあるので、下五の「白」の情報は重複にも思えるけど、添削のようなカット割りと語順にすれば、その「白さ」をさらに強調する効果が生まれますね。◇キスマイ千賀(決勝句)。出郷の車窓を叩く飛花落花車窓に桜吹雪という句材は凡庸なのだけど、上五の「出郷」は経済効率の良い言葉だし、中七の「叩く」の表現にも意外性がありました。季語の「飛花落花」も、漢字四字で動画的なイメージを与える熟語だけど、そのわりに音数も少なくて効率的です。車のスピードのせいもあるとはいえ、バタバタするほどの桜吹雪だったのでしょうね。◇梅沢富美男(予選句)。苗代なわしろの桜や 鬼の住まいする下五の「住まいする」は、韻文的な言い回しなのかもしれませんが、悪くいえば、ムダに字数を埋めただけ。かりに、中八・下五で「苗代桜に鬼の棲む」と書けば、(もしくは上五・中七で「鬼の棲む苗代桜」と書けば)残りの5音分でもう一要素を加えられます。これまでも梅沢は、「日焼けを剥く子」「剪定の音」など、わずか7音で書ける内容に17音も費やして、剪定や鋏の音の霏々として一心に日焼けの鱗はぐ子かなみたいにスカスカな句を作ってるけど、今回も12音あれば書ける内容なのです。そもそも、下呂市の「苗代桜」は、苗代に咲いてるからそう呼ばれるのではなく、「苗代へ植える頃に咲く」ということが由来なので、それを「苗代の桜」と書いたら意味が違ってきます。固有名詞の「苗代桜」ではなく、一般名詞の「苗代」に咲く桜としか読めなくなる。まあ、それならそれで、ひとつの幻想句としては成立しますが、それを予選1位と高く評価するのはどうなんでしょうね。◇梅沢富美男(決勝句)。風吹かば花の色なる城下町夕風や 花の色なる城下町(添削後)句材そのものが凡庸なのですが、たんなる取り合わせにするよりも、「風が吹いたので花の色になった」と因果っぽい書き方にするほうが幻想的なので、添削句よりは原句のほうがいいかなと思う。◇キスマイ横尾。花月夜 冒険譚に挿す栞下五の「挿す栞」だけを見ると、挿さない栞があるんなら持ってこい!…ってことになりますが、たんに「冒険譚に栞」と書いただけでは、A そこに読みかけの本があるB いま本を閉じたC これから本を開くなどの解釈が生まれてしまうので、Bであると明示するためには動詞を省けない。そのうえで、先生は、「栞挿す」か「挿す栞」かの選択について、先に「栞」を出したらネタバレになるので、原句のように「挿す栞」と書くのが正解としました。しかし、それは「季語よりも栞が主役」と言ってるのに近いし、いつもの先生の説明とも違ってます。いつもなら、「動詞に軸足を置くか、名詞に軸足を置くか」という観点で判断するのだから。あらためて比べてみます。A: 花月夜 冒険譚に挿す栞B: 花月夜 冒険譚に栞挿すBのほうは動作に軸足があるので、「読書を終えて花月夜へと視線を移す」って感じになるし、そのぶん季語が立ちます。Aのほうは「栞」に軸足が置かれるので、そのぶん季語が脇役に回ってしまいかねない。とはいえ、全体としては「読みかけの冒険譚」の映像が残るので、先生が「ファンタジーっぽい」と言ったように、季語の「花月夜」と「冒険譚」のイメージが、たがいに幻想的に響き合って重なる感じもあるのだけど、その効果はAでもBでも変わりありません。なので、「栞を主役にしすぎずに季語を立てる」のなら、動詞に軸足を置いたBのほうが正解だろうと思います。◇犬山紙子。さくらさくら むすめのたましいのいろさくらさくら 子のたましいのさくら色(添削後)原句は6+4+7=17の破調。すべて平仮名で書いてますが、子供の視点で書いてるわけじゃなく、むしろ親の視点で書かれてるのよね。前段の「さくらさくら」が娘の歌声なら、そこにかんしては平仮名で書く必然性があるけど、後段まで平仮名で書く必然性があるかは疑問。しかしながら、実際に、さくらさくら 娘の魂の色と漢字で書いてみると…なんだか「自分の娘」じゃなく「若い女」の句に見えるし、鬼滅の禰豆子みたいな世界観に見えるかもwかたや添削句のほうは、字余りで6+7+5と調子を整え、子供の「魂」とその「色」を平仮名で表記してます。その意図は理解できるけれど、なんとなく「亡き子の追悼句」のように読めるし、やはり原句とは意味合いが違ってるように感じる。ためしに6+8+5にして、さくらさくら むすめのたましいさくらいろ…としてみたのですが、これまた「うら若き娘」の色香に見えてしまうかもwってことで、いまいち解決策は見つからず、結局、原句が最適解かもしれません。◇フルポン村上。花曇 昼夜ちゅうやの区別なき赤子こども花ぐもり 夜を泣き昼を泣く赤子あかご(添削後)原句の「昼夜の区別なし」は説明的だし、赤子が「泣いてる」のか「遊んでる」のか、それも字面からは判然としないので、その意味では添削句のほうが優れてます。ただし、添削句は、説明が描写へと訂正されたぶん、描いた時間が「夜から昼まで」になり、季語の「花曇」の時制までぼやけてしまう。原句の場合は、「昼夜の区別なし」ってのが描写ではなく、赤子についての抽象的な説明だからこそ、時制はあくまで「花曇」の日中なのですね。…ってことで、これもちょっと直しにくい内容ですが、漢語の「区別」を使わずに説明を短くし、赤子が「泣く」という情報を加えるなら、花曇 昼夜ひるよるなしに泣く赤子と出来ます。◇中田喜子。濠の端の羽音走りて初桜濠の端を羽音走れり 初桜(添削後)NHK俳句の村上鞆彦の言葉を借りると、4つの「ha」の押韻はクドいとも言えるし、とくに「端」と「初桜」の語には、押韻ありきみたいな作為性を感じる。とはいえ、添削句のように、適切な助詞や切れを用いて、意味と構成を明確にすれば、ただ言葉遊びに溺れたかのような作為性は、だいぶ緩和されるかもしれません。◇清水アナ(Twitter)。校庭に響くピアニカ 春の雲よくいえば素朴なのですが、あまりに内容が凡庸すぎました。中七の「響く」も不要だし、季語もだいぶつまらないけど…なんとなく、この季語の選択は、フォスターの「静かにねむれ」っぽいよね。/木曜、夜7時からはプレバト!!\清水アナが次回のお題に挑戦!🔥ちょっと攻めすぎた…😭#清水アナの俳句挑戦#プレバト #MBS #TBS pic.twitter.com/oDga5MZgMK— 「プレバト!!」毎週木曜よる7時【公式】 (@prbt_official) March 25, 2024 ▽過去の記事はこちらhttps://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12
2024.04.01
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