「to U」という表記には、もちろん意味があるだろう。「U」は、“you”であると同時に、おそらく“universe”であろう。“utopia”も少し入っているかも知れない。小林氏とほぼ同世代の僕には、ジョン・レノンの手になるビートルズの傑作「Across the Universe」が思い起こされる。これは当時彼らがヒンドゥーイズムとともに一歩足を踏み入れていたチベット仏教の世界を詩的に謳い上げたたもので、ビートルズ自体の白鳥の歌になった。多少なりとも神秘性とライトな宗教的境地を感じさせる小林氏の指向性とも合致する。
さらに今回の作品のエンディングの音を聴いて、あ、これは“YES”かな?とも思った。小林氏の、サウンドによる暗喩であろうか。インテリジェントなブリティッシュロックバンドだったYESは、プログレッシヴの名でロックを小難しくした張本人でもあるが、すでに'70年代前半の時点で、歴史的名盤「こわれもの Fragile」(アルバム名)や、「全体保持 Total mass retain」(アルバム「危機 Close to the edge」の中の曲名)など、人間と地球環境の濃密な相互連関と脆弱性、そしてそれを保持しぬく意志を示し、歌詞としても、サウンドの表現でも、ポピュラー音楽がエコロジカルな視座による主張を打ち出す嚆矢となった。 ――こういうのを、マセガキなティーンエイジャーとして聴いて育った僕らは、筋金入りの環境保護指向者といえる。