うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2010.05.23
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カテゴリ: 子規玩味
正岡子規(まさおか・しき)

裏口の木戸のかたへの竹垣にたばねられたる山吹の花


小縄 こなは もてたばねあげられ 諸枝 もろえだ の垂れがてにする山吹の花


(小縄で束ね上げられて、たくさんの枝が垂れにくいようにされた山吹の花。)


水汲みに 往来 ゆきき の袖の打ち触れて散りはじめたる山吹の花


まをとめの なほ わらはにて植ゑしよりいく とせ 経たる山吹の花


(今はもう妙齢の隣の娘が、まだ幼い子供だった頃に植えてから、何年経ったのだろう、この山吹の花は。)


歌の会開かんと ふ日も過ぎて散りがたになる山吹の花


我が いほ をめぐらす垣根 くま もおちず咲かせみまくの山吹の花

(わが いほり を巡らせた垣根に、隈もないほどに咲かせてみたい山吹の花。)
*「みまく」は「みまくほし(き)」(見たく思う)の省略形。


あき人も ふみ くばり人も きちがふ裏戸のわきの山吹の花

(出入りの商人も郵便配達人も行き違う、裏戸の脇の山吹の花。)


春の日の雨しき降ればガラス戸の曇りて見えぬ山吹の花


ガラス戸のくもり拭へばあきらかに寝ながら見ゆる山吹の花


春雨のけならべ降れば葉がくれに黄色乏しき山吹の花

(春雨が連日降り続いて、葉蔭に黄色の乏しい山吹の花。)
* けならべ:「日並べ」。「連日」の意味の上古語。




明治34年(1901)晩春、東京・根岸の自宅( 子規庵 )で、不治の病床に臥して詠む。
歌集「竹の里歌」(明治37年・1904)





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Last updated  2010.05.23 16:27:11
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Comments

くまんパパ @ 新仮名づかいの悲劇ですかね、旧仮名に変更します(^^) New! 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…
くまんパパ @ 短歌では、ありですね(^^) 七詩さん、そうですね、同感です。 私も…
七詩 @ Re:ニヒルなれども面白し(06/08) くまんパパさんへ あの「世の中にたえて…
くまんパパ @ ニヒルなれども面白し 七詩さん、いつもありがとうございます(^^…
くまんパパ @ めっきり蒸し暑くなってきました やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
くまんパパ @ のんびり行きたいですね(^^) やすじ2004さん、いつもありがとうござい…

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