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元卓球部裏部長

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2005/07/24
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今日は映画について。
もちろんネタバレしています。


監督:マーティン・スコセッシ 脚本:ポール・シュレイダー

「Taxi Driver」が好きなので、見ました。
知らない人のために言いますと、監督と脚本が同じ人なのです。

映研の先輩がこの作品について、こう評していました。
「邦題のつけ方が最悪だ。」
かくしてこの作品を見た後、その言葉に賛同することになりました。

確かに、この映画は救命士の話です。


そのせいなのかどうなのかは知りませんが、どうやら多くの人がこの作品に対して酷評をしています。
見るのがつらい、重い、ニコラス・ケイジが期待はずれ、脚本が最悪。
「Taxi Driver」の出来の良さゆえの期待を裏切られた人もいるようです。
ですが、果たして本当にそうでしょうか。

結論から言うと、僕はこの作品を高く評価します。

やはり、「Taxi Driver」の続編とまで言われるだけに、通ずるところは多々あります。
舞台は大都会、日々の生活は主人公を蝕み、周囲の環境は絶望の影にただ深みを持たせるのみ。
そして、独善的な正義が彼の精神を支配していく。
幻想的でありながら、どこまでも現実的な光の渦の中にその過程が描き出されます。

ただ、違うところが一つ。
独善性が自己の枠を超え、爆発した後に何が残るのか。

そもそもの独善の個人性が、公的に認められる形になってしまったからです。
それはリアリティーを欠き、ベトナム戦争帰還兵である主人公にとって、自らの傷を深める結果であるはずなのです。
もちろんそれが彼の空想の中の話で、スコセッシがベトナム戦争におけるアメリカの言動を暗に批判していた可能性もあります。
ですが、どちらにしろ彼の正義の結末としてはあまりに都合が良すぎる。

一方、「Bring Out the Dead」(あえて原題を使わせてもらうわけですが)ではどうなのか。

そしてそれは焦りになり、目の前のメアリーを救おうとし、夜のニューヨークをアルコールを片手に駆け巡り、救えなかったローズの幻影に苦しむ。
彼は自らの正義のありかを模索し、苦しむうちにやつれていく。
以前は正義は彼とともにありました。
命を救う度に、彼は自らを特別な存在であると認識できたのです。
それが、今はできない。
同僚の救命士を見るにつけても、正しいこととは何なのか、見失っていきます。

彼が最後に辿り着いた結論が、苦しむものの命を絶つということでした。
それはあまりに独善的な行為です。
しかし、そうすることによって、彼はローズから許しを得ることが出来ました。
それが彼が作り出した幻影だとしても。
それは同時にメアリーからの許しでもあり、正義は再び彼の元に戻ったのです。

全てが彼の個人的な結末です。
自己完結に過ぎません。
ですが、どの独善的な正義も最後はそこに行き着くのではないでしょうか。
それが誰にも罰せられない限り、です。

「Taxi Driver」で得られなかった結論が、この作品では得ることが出来た。
その点で僕は、「Bring Out the Dead」を評価したい。

辛い、重い、それは当たり前のことです。
人間はどこかに必ず独善性を持っているのであり、それが無くて日々の生活を精神が耐えることは出来ません。
それは無意識の心のうちに隠れているのであり、暴かれるのを拒みます。
スコセッシはそれこそを描きたかった、そんな気が僕にはするのです。
そしてニコラス・ケイジはそれを見事に演じきった。
ただそれだけの話です。

もしくは、エンタテイメントとは何かという議論になるのかもしれません。
ニコラス・ケイジがコメディによく出るからといって、彼に常にコメディを求めるのは酷な話です。
彼の柔軟な演技力は、多彩な役を作り上げられるのですから。

命を救えない救命士の疲れは、顔に表れ、見ているものを悲痛にさせます。
しかし、「Bring Out the Dead」死をもたらした者には、許しを得て、安らかな寝顔が見られるようになるのです。





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Last updated  2012/04/15 07:48:33 AM
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