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元卓球部裏部長

元卓球部裏部長

2005/07/28
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カテゴリ: カテゴリ未分類
渋谷のセンター街にあるカレー屋があります。
インドの本場仕込みのカレーで、味がいい。
でてくるナンもいつも焼き立てで、アツアツです。

その店の従業員に、あるインド人の方がいます。
彼は客引きのため、いつも店の前で1人立っています。
便宜上、彼を容姿から判断して「ムトゥ」と呼ぶことにしましょう。

ムトゥはいつもその場所に立っています。

遠い異国に出稼ぎに来たのでしょうか。
日本文化に魅入られたのでしょうか。

ですが、日本にいるところから考えると、日本嫌いなんてことは無いでしょう。

しかし、世間の風はムトゥに冷たく吹きます。
センター街という、絶好の立地条件にある店にもかかわらず客足はなかなか伸びないようです。
狭い店内でありながら、夕食時でも空席が目立つほどです。

そして、ムトゥが客寄せに店の前に出てきます。
それでも客はなかなか来ません。


必然的に、ムトゥの顔も険しくなってきます。
「ニホンジンは外国人につめたいネ。」

ムトゥは腕を組んで虚空をにらみます。
祖国のことを思い出しているのかもしれません。
ムトゥの眉間のしわは深まるばかりです。


彼には希望があった。
夢があった。
祖国の味を日本で食べてもらおう、みんなに喜んでもらおう。
そう思って、遠き異国までやってきたわけです。

小さい頃、母に言われた言葉を思い出します。

 遠く離れても、同じ星を見つめることが出来るのよ。」

ムトゥは空を見上げます。
ですがこの東京の空には、星なんて見えやしません。
星に祈りを捧げることも出来ず、彼は俯きます。


ムトゥ、君はがんばっている。
君の努力は察するよ。


でもね、ムトゥ。

店に客が来ないのは、あなたが入り口にいるせいで誰も店に入れないからです。



ええ、もうお察しのこととは思いますが、以前書いた店のことです。


というわけで、今日も行ってきたわけですよ。
だってうまいんだもの。

でも、今日はこの前と違った。
僕が入店した時にすでに5人の日本人が!
カップル一組と、だいたひかるみたいなお姉さんと、おっさんがカレーを食べていたんです。

僕は胸を撫で下ろして席に着きました。

しばらくすると、カップルが席を立ち、だいたひかるも出て行きました。


嫌な予感が頭をよぎります。

先程も書いたように、この店にはめったに客が入ってきません。
今この店には、客は僕とおっさんのただ二人。

やられた。
嫌な予感は、現実へと変貌していきます。

待ってくれ、おっさん。
このほうれん草とマッシュルームのカレーを食べ終わるまで、もう少しでいい待っていてくれ。

しかし、焦れば焦るほどカレーの熱さが僕の舌を焼きます。
これでは、この前と同じ展開になってしまうじゃあないか。

「ごちそうさま。」
僕の思いも虚しく、おっさんは無情にも店を出て行きました。

そして、残された僕。
周りには店の従業員たち。

そうか、そうだったのか!
僕は、まんまと騙されたわけだ。

初めに日本人を配置しておくことで僕に安心感を与えておいて、
後からまた僕のことをインドへと引きずり込むつもりだったんだな。

僕の頭上を異国の言葉が飛び交う。
吸った空気までもがインドのもののように感ぜられる。

ここは、インドだ。
どうしても認めざるを得ない、ここはインドなんだ。

このためだったのか。
このために店の前にいたんだな、ナトゥ。
君までが僕のことを裏切ったんだな。


今日は僕の負けだ。
大人しく、カレーを食べて帰ることにしよう。





でも、次こそは!
そう胸に誓い、店を後にするのでした。




参考

「国旗はためく元に」

「でも、味はいい。」





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Last updated  2005/07/28 09:40:18 PM
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