2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
全9件 (9件中 1-9件目)
1
顔がぴりぴりするくらい凍てついた空気に、やわらかい朝陽。小さな木の椅子と金属のバケツを提げて、湖の上をてくてく歩く。あまりの寒さに、歩いても歩いても目的地が近付かない。あとで気付くことになるのだが、一面に張った氷は予想以上に厚かった。いかにも、なカタチの木の椅子は物入れも兼ねていて、透明な容器には虫が、そして簡素なつくりの竿も入っている。バケツに入った炭は、寒さに押されながらもぼんやりと炎を上げていて持って歩いているうちに、グレーの手袋には美味しそうな焦げ目がついた。目的地に着くと、スクリュー式の道具でゴリゴリと穴を開ける。相当に深くまで回し続け、水がごぼっと溢れてきたら準備完了。(が、あまりに寒いのでぼんやりしているとまた薄氷が張ってくる)が、心優しいワタシは、エサとなるはずの虫を自然に帰してあげることに。…というか、針につけようとして手袋を外した指がまともに動かなくなり、容器をひっくり返してしまっただけなのだが。虫より先に私のカラダの方が凍結しかかっていてもはや為す術もなく、彼らがゆっくりと氷漬けになるのをただ眺めておりました。で、結局こんな朝早くから何をやってたかというと…わかさぎを釣った。…あれ、ちょっと違うな。わかさぎを釣りに行った。「わかさぎ釣り」をした。…つまり、坊主だったというわけで。なんとその場の面々、全員が。まったく持ってお寒い話。が、周りを見回しても、釣れた様子のグループが見当たらない。どうも時期が早すぎたらしい。しかし、釣れるまでは帰らないぞ!とはいかない状況。そんな意地より、寒さの圧倒的勝利。でもちゃんとわかさぎ定食は頂く。何処ぞの誰かが釣ったわかさぎは、予想通りきちんと美味しかった。結果は寒かったが、ここでこうしている状況自体が面白く凍って動かない表情筋をぴくぴくさせながら笑った。・・・すっかり固まったカラダを温泉で解凍して、今度はイチゴ狩り。極寒の湖から、舌だけは常春の世界へ。赤く色づいたイチゴは片っ端から一行のおなかへ消えていく。貸し切り状態のビニールハウスは、軽く追いはぎに襲われた後のようになってしまった。・・・ そういえば、今まで最も寒いと感じたのは京都の大原に行ったとき。手首から先が凍って地面に転がり落ちるかと思った。が、あの湖から立ち上る冷気は、いともあっさりと記録を塗り替えてしまった。肩から先が凍って落ちても、気付かないだろう。ロシアとか何とか、寒い国のお酒の飲み方をちょっとだけ理解できた数時間。ポケットからウォッカの小瓶が出てきたりするのはこういうシチュエーションなんですな、きっと。
February 26, 2005
コメント(0)
テーブルに置かれた寄せ鍋の具に、なぜかナスが混じっていた。…寄せ鍋にナス?妙なものを入れるんですねぇ、と言いながら顔を上げたところに遅れてきたメンバーが入ってきた。初めて会う人。でもどこか懐かしいような空気を持った人。それが誰を指すのかは、すぐにわかった。私と同い年だと言う彼は目の前に座り、言葉を選びながら話の輪に加わった。確かに、顔は似ていなくもない。が、あくまで「何となく」。話し方だって、彼はとっても物静かだ。それがなぜ、こんなに懐かしく感じるのだろう?鍋に伸ばした彼の手が視界に入り、はっとする。手の甲の大きさ、指の節々、爪の形。驚きながら目を上げてみる。おやおや、肩のシルエットがそっくり。鍋の底が見えてきた頃、席を立ってドアを開けようとする背中。ニットを着た肩甲骨の形に絶句。…顔が似てると、骨格まで似てしまうのか?ディテールが集まって、その人を形作る。記憶の中にある部品を、リアルで組み立てていったかのようだった。「何となく似ている人」から「そっくりな人」へ。それ以外の何者でもなくなった。だぶって見えて仕方がない。唯一違うのは、見慣れていた形の左手の薬指には指輪が控えめにはまっていてもう結婚5年目だという奥さんが隣でニコニコ笑っていたこと。・・・ずいぶん前のこと。先輩は言った。 「女はところてんみたいに出来てるから」??? 「次ができると、押し出されるんだよね。考えるのは、直近のことだけ」・・・数回継ぎ足した鍋の出汁も終わり、デザートまで頂き、もう終電近い。お開きお開き、とエレベーターに乗り込む。狭い箱の中、前に立つ彼。数代前に押し出された、ところてんを眺める私。
February 19, 2005
コメント(0)
一説によると 10歳の子供からすれば、1年間は一生の10分の1である。 時間が経てば経つほどその分母は大きくなり、分子を構成するモノの重みが減ってくる。 それが、「年を取れば時間の過ぎるのが早くなる」といわれる所以。だそうだ。時系列で物事を記憶することがおそろしく苦手なため何があったか大して覚えていない時間、というのを積み重ねるとまったくこれでいいのだろうか、と思うことがままある。上の説によれば、まぁそれも仕方ないということらしい。が、心の中に 何で一日は24時間しかないの? 何で明日は平日なの? 明日、ほんとに会社に行かなくちゃいけない? …私、帰らなくちゃいけない?というメチャクチャな疑問が湧いてくる瞬間もあるわけで。それは、毎日決まった時間割に沿ってランドセルに教科書を入れていたときには決して浮かんでこなかった感情。 時間は、流れていくモノであり決して戻らないモノであり 貯められないモノであり誰もに平等に与えられたモノである。私が自由に使える時間は、あとどれくらいあるのだろう。こんなことを思いながらも、自分はきっと平均寿命を全うするだろうというまったく根拠のない前提の下に、日々のほほんと過ごしてたりする。意外と、分母は大きくないかもしれないのに。
February 15, 2005
コメント(0)
ちと話をつけるかも 限界だ何だか電報みたいなメール。いつも其処此処に散りばめられている絵文字がない。その空白に、かえって表情が見えるというものだ。 このまま明日をむかえたくないから話をつける いってくるあぁぁ今頃、会社で大きな声が響いているに違いない。言い出したら絶対聞かない、後に引かない、いかにもそういう血筋な人だ。えらいことになってるだろうなぁ、ほんとに。携帯を閉じてちょっと想像してみたら、なぜかこんな言葉がアタマに浮かんだ。 「怒髪冠を指す」何でここで漢文が出てくるの?と首を傾げながら、しかし似合いすぎだこの言葉、と苦笑してしまった。どうか明日からは笑って仕事ができますように、髪の毛が逆立ったりしないで済みますように、日付が変わる前に会社を出られますように、と携帯越しに思った。
February 14, 2005
コメント(0)
なくしたピアスが見つかった。一目惚れで買った代物、しぶとく片耳だけつけるようになって久しい。なくした日のことは覚えている。片耳が軽いことに気づいた時、あぁ今日はほんとにアンラッキーだ、と思ったからだ。・・・どれを観ようかな、と上映プログラム一覧を眺めていたら背後から声を掛けられた。振り返ると30代後半とおぼしきカップルがいた。「良かったら代わりに観ませんか?僕たち急に帰らなきゃいけなくなったんで」感謝と恐縮しきりで受け取ったチケットは、まさに今から始まろうとしているプログラムの指定席。その時、世間では最も話題に上っていた映画だった。入ってみたら、その座席はちょうどいい位置。今日はなんだかラッキーだ。さっき食べたつけ麺も、待たされただけのことはあってとっても美味しかったし。あんなお店があるなんて知らなかったし。えぇ、この映画の幕開けのドラマティックさときたら、ほんとに息を飲みましたし。なのに。中盤から冗長な展開、そして朗々と流れ続ける歌。…子守唄代わりになってしまった。ロード・オブ・ザ・リングの時だって必死で我慢したのに。展開が冗長だから?ただ寝不足だったから?シートが気持ち良かったから?それともワインを飲みながら観たから?何でもいいが、とりあえず映画館で寝てしまったことに軽くショックを覚えながら、素敵な指定席を後にする。 ま、いっか。もともと転がり込んできたものだから。さっきのショックはとっとと忘れ、また幸せな気分で飲みに行く。そんなに芋焼酎好きなら、メニューには出してないけど…とカウンターの奥から取り出してきてくれた貴重品がとってもヒット。あぁやっぱり今日はラッキーだった、とラスト一杯を美味しく飲み干しついでにもう一軒行って、笑って一日を終える。…が、家に戻ったら片耳が軽いことに気づいた。・・・そういう日だった。だいたいピアスというものは、なくしたら最後だ。なくしたのが仮に自分の部屋だとしても、見つからないことがままある。あの映画には縁が薄かったけれど、1ヶ月以上も経って手元に戻ってきたこのピアスには、きっと縁がある。しぶとく片耳につけていた甲斐があったというものだ。そうしたら今度は、それ以上に大事な大事なピアスを落として泣きそうになった時のことを思い出した。当日、翌日とお店に二度も電話を掛けたことも、銀座で落としたピアスだってさ、海に指輪を投げたのと変わんないよ、などと思いつつ、下を見ながら歩いてみたりしたことも。だいたいピアスというものは、なくしたら最後だ。
February 13, 2005
コメント(0)
エスカレーターを駆け上がり、ホームをダッシュし、終電に滑り込んだ。先に店を出ようと決めたのがあと5秒遅かったら、きっと間に合わなかっただろう。息をついた。オールは好きじゃない。夜は眠るものだ。そんな安堵感はものの10秒も続かなかった。なんだか首回りが軽い。事態を飲み込もうと、満員の車内できょろきょろしているうちに渋谷から原宿への3分間が過ぎる。つまり、マフラーを落とした、ということだった。というか、実際は飛ばしてしまったのだった。走りすぎて。駅の構内に入る前にはあったのに。ショックのあまり、すっかり酔いが醒める。・・・皮肉なことに、家に戻って最初に目に飛び込んできたのは今朝届いたばかりの新しいカーテン。 家に帰ったら取り替えようっと。そう思って箱から出したままだった。何だか悲しくなりながら、新しくうちにやって来たカーテンを取り付けた。入れ替わりに出て行ってしまったマフラーのことをぼんやり思いながら。・・・翌朝、ベッドの中で携帯に手を伸ばし、そのまま小声でゴソゴソ電話を掛ける。JR渋谷駅に、立ち入ってもいない東急東横線渋谷駅に。 「…ありませんねぇ」そうこうしている内に、昨日連絡しておいた自宅の最寄り駅からも電話がかかってくる。 「該当するようなモノは届いてませんでした」・・・妙に物持ちが良い、捨てられないことは自覚していたが、ここまで来ると「モノに拘泥する」と言った方が正しい。土曜の午前中、他に用事のない渋谷まで出てきてしまった。どうやら、適当そうな駅員の生返事だけでは諦められないらしい。他のどれよりも気に入っていた代物。また買えばいいじゃないか、で片付けられなかった。同じものは売ってないのだ。そこが気に入って買ったのだから。そこまで気に入っていながら、走って飛ばしてなくした。よりにもよって、使い捨ての巣窟みたいな街で。まったく自分のアホさ加減が信じられない。後にマフラーがあるのを認識していたところから、ホームまで往復してみる。やっぱりない。あるわけがない。時計を8時間前に戻して。そこからやり直させて。あのままダーツを続けていれば、終電に走りこまなければ。VIP待遇で大事にされていた例のブツは、私の首を離れた瞬間から「落とし物」という、名前も所属もない宙ぶらりんな存在になってそのままどこかへ飲み込まれてしまった。一縷の望みは、ぷっつり絶たれた。早く暖かくなればいいのに、と思った。マフラーの要らない季節に。・・・特に用事のない渋谷。でも「駅周辺を往復」だけで家に帰るのはあまりにバカバカしい。が、買い物をする元気もない。服やアクセサリーといった身につけるものを選ぶには、それなりにエネルギーが必要なのだ。やっぱり帰ろう。が、ふと気が変わり、踵を返した。アタマに浮かんだお店へ一直線。買ったのは、手のひらサイズのテーブルブーケだった。カーテンに似合う色。早く春にならないかな、と思った。花のキレイな季節に。モノによってぽっかり開いた穴を、私はやっぱりモノで埋めようとした。
February 12, 2005
コメント(0)
さくら舞い散る中に忘れた記憶と 君の声が戻ってくる吹き止まない春の風 あの頃のままで君が風に舞う髪かき分けた時の 淡い香り戻ってくる二人約束した あの頃のままでヒュルリーラ ヒュルリーラさくら散りだす 思い出す 意味なく灯り出す あの頃また気になる変わらない香り 景色 風違うのは君がいないだけここに立つと甦る こみ上げる記憶 読み返す春風に舞う長い髪 たわいないことでまた騒いだりさくら木の真下 語り明かした思い出は 俺 輝いた証ださくら散る頃 出会い別れそれでも ここまだ変わらぬままで咲かした芽 君 離した手いつしか別れ 交したねさくら舞う季節に取り戻すあの頃 そして君呼び起こす花びら舞い散る 記憶舞い戻る気付けばまたこの季節で 君との想い出に誘われ心の扉たたいた でも手をすり抜けた花びら初めて分かった 俺若かったこの場所来るまで分からなかったが此処だけは今も何故 運命のように香る風暖かい陽の光がこぼれる 目を閉じればあの日に戻れるいつしか君の面影は 消えてしまうよ 何処かへあの日以来 景色変わらない散りゆく花びらは語らないさくらの下に響いた 君の声 今はもうそっと僕の肩に 舞い落ちたひとひらの花びら手に取り 目をつむれば君が傍にいる花びら舞い散る 記憶舞い戻る花びら舞い散る `ケツメイシ`
February 10, 2005
コメント(0)
「この時期の」ソニプラというところは、前に進むのも困るほど何だかものすごいエネルギーが充満している。同じ理由から、デパ地下のスイーツ売り場も混雑の極みなのだけれど眼に痛いくらいカラフルな雑貨やコスメが並ぶこのショップは他のバラエティショップに比べて、ついで買いの気分をくすぐるツボを知っている。このイベントにかこつけて、いろいろマイナーチェンジを試みる女の子のちっちゃい夢に火をつけるのがほんとにうまい。と思いつつも、さっさと通り過ぎようとした。今日はあんまり時間がない。 が、ちらっと目に入った色使いとデザインのセンスの良さに釘付け。思わず足が止まった。少しくすんだミントグリーンの地に、ゴールドの細いラインと上品なブルー、深いチョコレート色のマルチボーダー。あえて寒色メインでシンプルにまとめた、今年のゴディバのパッケージ。・・・プレゼントされる側には伝わらない。その一粒のチョコレートは、かじったら何が出てくるのか、あれとこれだったら、どっちが好みの味であるか、このパッケージはかわいすぎるかどうなのか…そんなことをディスプレイの前でじっと考え込んでいるということ。その一つの箱を選ぶために、どれだけ生産性のない時間を費やしたか、ということ。伝わらないことにまで考えをめぐらせるから、こんなにも品数が増えこんなにも人がごった返し、こんなにも売り場が楽しい。イヤでない混雑、というのも存在する。もっぱらプレゼントする一方、という性だから言えることかもしれないが。
February 6, 2005
コメント(0)
ひとり暮らしを実感するとき。さっきのコーヒーカップを片付けたくないとき。
February 5, 2005
コメント(0)
全9件 (9件中 1-9件目)
1