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ビル・エモット(吉田利子=訳)「日はまた昇る -日本のこれからの15年-」(草思社、2006.2)をブックオフで買って読んだ。筆者は、英国「エコノミスト」誌編集長で、日本のバブル崩壊を予測した「日はまた沈む」で有名になった人物である。2007秋からのサブプライム問題で日本も景気後退しつつあり、総理大臣も3年で3人も変わる政治状況の中で、2006年時点でどのような見通しをもっていたのか興味ある所もあり買った[105円]ものである。筆者の認識として、1980年代から1990年代に日本に何が起こったのかというと、「高い教育水準や高度な技術、企業内部の優れた調整などさまざまな長所をもった国が、株・不動産ブームを経験して、基本的規律とインセンティブを失った」ことである。確かにその面もあろう。しかし、それに続く2000年代前半に起こったことが更にひどかった気がする。企業の成果主義と学校でのゆとり教育、社会での金儲け主義で、一部残っていた長所が完全に失ったように思える。筆者は、「日本が着実で繁栄した信頼したカメであることを示せば、他のアジア諸国にとっては中国と対比しうる魅力的な存在になるだろう」と言い、「さらに競争と効率化と生産性向上を促す改革が続けば、日本はアジア太平洋地域の人々の繁栄と平和に役立つことができる」と述べてはいる。が、現状の政治情勢・経済状況を考えると、とても悲観的になってしまう。残念ながら、今回の本は役立たずと言われてもいたしかたなかろう・・・(星二つ:★★☆☆☆)日はまた昇る
2008.11.30
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川北義則(かわきた・よしのり)「男はちょっと硬派がいい」(三笠書房、2007.1)を図書館で借りて読んだ。題名に魅かれたものであるが、筆者は1935年大阪生まれの東京スポーツ新聞社OBで、現在もなお出版プロデューサで活躍中らしい。いかにも昭和一桁世代の、うるさい頑固おやじ風の文体であるが、読みやすいしなぜか心地よい。この世代は、説教なれているせいか、逆に説教臭くない表現方法が感じられる。恐らく一本筋が通った本物で本心からの「思い」の発露であるせいだと感じる。例えば、”当節はやり言葉で私が嫌いなのは、「自分探し」と「生きざま」の二つだ。どこか女々しい。語感もいやだが、この言葉の持つ自己陶酔感になじめない・・・”なんてフレーズは、よくいったと座布団三枚ほど差し上げたくなる。 むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく 芸能プロダクション「ホリプロ」受付ロビー単純だがこんな大人で生きていたいと思う。(星三つ:★★★☆☆)男はちょっと硬派がいい
2008.11.29
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NHK取材班「NHKスペシャル グーグル革命の衝撃」(NHK出版、2007.5)を図書館で借りて読んだ。2007.1.21に同名番組で放送されたものを書籍化したものだ。番組は、確か見た記憶がある。グーグルには驚かされる。自分自身も、1997年にPCをネットに繋いだ時(その時はダイヤルアップだった。今では光ファイバだが)、検索エンジンは非常に重要と思ったし、当時あまたあった検索エンジンの中でもグーグルの検索性能はすばらしいと思ったものだ。更には、最近ではピンポイントで住所から航空写真で自宅を見られる、グーグルマップ・グーグルアースには驚いたし、ストリートビューにも腰を抜かした。「こんな広範囲に」「これほど正確に」「しかも無料で」サービスを提供する企業があるだろうか。マーケティングや広告の市場ってわからないものですね。いつの間にやら、家庭でも仕事でも(おそらく学校でも)、何か調べるときにはネットで(すなわちグーグルで)やるような生活スタイルになっている。もちろん、検索結果がグーグルの決めた恣意的なやり方で表示されることや、論文や書籍と比較して信用度合が低いことは十分わかっているつもりである。しかしながら、2ちゃんねる程度でなく、ウィキペディア程度には信用したり引用したりしているのが実情である。こうして、情報が氾濫し多様性が広がったように見えて、人間の考え方そのものは徐々に画一化していくんだろうね。また、いつかは「甲殻機動隊 stand alone complex」のような世界にだんだん近づいていくんでしょうね。子供の時の未来が、透明チューブの中を自動運転の自動車が走ることを夢見たように、実際はまだまだ先のようには思えるけれども・・・そんなことを感じさせてきれる本です。(星三つ:★★★☆☆)グーグル革命の衝撃
2008.11.28
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東谷暁(ひがしたに・さとし)「世界金融経済の「支配者」 その七つの謎」〈祥伝社新書066〉(祥伝社、2007.5)を図書館で借りて読んだ。本のタイトルからは、トンデモ本のように思えるが内容はいたってまともで読みやすい金融経済の本である。現代の世界金融経済の鍵は「証券化」であり、あらゆる資産が証券化されて取り引きされているのが世界経済であると看破している。その象徴が、金融デリバティブ・ファンドマネー・M&Aの隆盛であり、米国ウォール街の投資銀行が総本山であることを言い切っている。この本が、今年になってサブプライムローン問題で生じた米国投資銀行(ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズ)の壊滅の、1年以上前に出版されていることに大切な意味がある。また、非常に分かり易く世界金融経済の仕組みや生い立ちを記述している。例えば、1980年代に米国でM&Aの画期的資金調達手法が開発され敵対的TOBが隆盛を極めた。それは、一つ:投資銀行ドレクセル・バーナム・ランベール社のマイケル・ミルケンが編み出したジャンク債のM&Aの資金調達に乱用手法と、二つ:ヘンリー・クラビス、コールバーグ、ロバーツのKKRが編み出したLBO(レバレッジド・バイ・アウト)という手法であるとの説明のくだりである。その他、中央銀行という世にも不思議な物語、グリーンスパン前FBR議長は神さまだったのか等全体を通じても記述は秀逸である。七つの謎を解明しているのかどうか不明だが、本のサブタイトルの「七つの謎」は、恐らく出版社が売らんがために勝手に付けたものと考えれば、あまり意味はないと考えて差し支えない。まったく経済・金融の予備知識がなくとも十分楽しめるし、少し知識があればもっと楽しめるのではないかと思う。もっと早くにこの本に出会っておきたかったとさえ思う。無条件に、お勧めです。(星四つ:★★★★☆)〈小ネタ集〉・レイダー(乗取り屋)、グリーン・メーラー(利鞘稼ぎ屋)の有名人 (*はユダヤ系) ソール・スタインバーグ * カール・アイカーン * アーウィン・ジェイコブズ * ブーン・ピケンズ アシャー・エイデルマン ジェームズ・ゴールドスミス * ビクター・ポズナー アイヴァン・ボウスキー * ヘンリー・クラビス * ロナルド・ペレルマン *・ヘッジファンドの有名人 ジョージ・ソロス〈参考文献〉エリック・アリスン「七人の乗取り屋」スーザン・ストレンジ「カジノ資本主義」世界金融経済の「支配者」
2008.11.21
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下川浩一(しもかわ・こういち)「「失われた十年」は乗り越えられたか 日本的経営の再検証」〈中公新書1842〉(中央公論新社、2006.4)を図書館で借りて読んだ。最近、苦手な経済・財政金融関係の本を借りているがその一環であった。この本は、バブル崩壊後の10年間の後、この不況を生産システムの改善で乗り切った自動車産業と、戦略不全の海外生産を行った家電・電子産業と、主役が交代していった流通産業の3つの産業における企業戦略を分析している。が、典型的でオーソドックスな”割とまとも”な詳細な経営分析に終始し、逆に大きなサプライズはないし新たな経営学的知見は少ない。また、筆者は経営学の先生だけあって、平成不況も「構造改革に出遅れた政策不況と銀行金融システムの動揺が重なった、複合的不況といえよう」とおよそ経済学的分析のない、経営学的表現で片づけている。(まあ、そういった表現の方が読む方は、分かり易くていいけどね)ちょっと残念なのが、内容と比較して本のタイトルが広すぎてどうかなと言う気がするが、無理なく読める点や安心して読める点などはお勧めです。(星三つ:★★★☆☆)「失われた十年」は乗り越えられたか
2008.11.20
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門倉貴史(かどくら・たかし)「官製不況 なぜ「日本売り」が進むのか」(光文社、2008.4)を図書館で借りて読んだ。日本の株は下がり続け、ワーキングプアが増え続け、年金財政が破綻寸前で、景気の不況がこれほどまでに深刻な状況に陥った主原因は、すべて「官」のせいという論調の本である。改正建築基準法の影響で住宅市場が低迷し、改正貸金業法の影響でヤミ金融が横行し、金融商品取引法施行の影響で貯蓄から投資へ国民金融資産が向かわず、日本版SOX法の影響で企業コスト負担が膨大になり、なんだかんだで官製不況であるそうだ。確かに、今の日本の政治は心底「三流」だと思う。また、官も全体としてみれば全く「三流」であることは間違いない。しかしながら、著者は紹介欄にあるように”エコノミスト”であり、もう少しまともな経済分析や政治の考え方を示してほしい。現象面から見て、別に間違いであるとは言えないにしても、根本原因が何なのか・前提条件を何に重きを置くのかによって、色々な切り口で結論や因果関係は言えると思う。要は、説得力や迫力に乏しい本である。この本を引用して知ったかぶりをするような輩がいないことを望む・・・ (星二つ:★★☆☆☆)〈用語集〉トリクルダウン(trickle down)効果:富裕層やニューリッチ層など豊かな人たちが消費をすると、あたかも水滴がしたたるように、そのおこぼれによって貧しい人たちも潤う効果のことクズネッツの逆U字仮説:国が経済発展をする初期段階では、経済成長の過程で国内の所得格差が拡大していくが、さらに経済発展が進むと、経済成長に伴って逆に国内の所得格差が縮小してくるという経験的な法則〈参考文献〉・門倉貴史「ワーキングプアは自己責任か」・盛山和夫「年金問題の正しい考え方」官製不況
2008.11.18
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上大岡トメ(かみおおおか・とめ)「キッパリ! たった5分間で自分を変える方法」(幻冬舎、2004.7)を図書館で借りて読んだ。ずいぶん前に、表紙のキッパリポーズとともにはやった本だが、かみさん用に借りたものだ。こういった「だめな自分をなんなく変える自己啓発本」について、売れる本は一定のパターンがある。表紙とか登場人物とか何がしかインパクトがあり、その上で一つ、自分を変える方法が意外と思わせるほど簡単なこと二つ、簡単そうに見えて何か意味が深そうに思わせること三つ、そして簡単なことを実際やらないと効果がないと言い切ること30分で読み切れる。ぺらっぺらっな内容の本だ。評価することにも値しないキッパリ!
2008.11.16
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佐藤治彦(さとう・はるひこ)「使い捨て店長」(洋泉社、2008.3)を図書館で借りて読んだ。最近、社会問題ネタの一連で題名から選んだものである。 チェーン店舗の店長の悲惨な労働環境が、これでもかというくらい記述してある。筆者は、「現代の奴隷制度」とも呼んでいる。それくらい、フランチャイズ制をビジネスモデルとする現代の企業(ファストフード・ファミレス・居酒屋チェーン・紳士服等)が、いかに儲けているか辛辣に批判している。 小泉元総理に始まる「構造改革」が、”ごく一部の超リッチな成金と真面目に働いても生活が苦しいワーキングプアを生み、日本に格差社会を生み出したものでしかない”と断言している。日本の雇用形態を、構造改革の名のもとに、終身雇用・年功序列制を廃し、早期退職制度という実質リストラを簡単に行える雰囲気を作ってしまったことに「使い捨て店長」の遠因があると指摘している。 これほどまでチェーン店の店長の悪い点を指摘して、店長になろうとする人がいるのだろうか。救いはないのだろうか。もっと上手にやって、幸せな例はないのであろうか。本当に、どこの店長も使い捨てられているのだろうか。人ごとながら、心配になってしまう。 悪い点ばかりを切り取って、それを繋げて、あたかもこれしかないような論調で何者かを弾劾するあるいは社会を不安に貶める手法は、これまでも度々あったように思う。筆者は、経営コンサルタントとして、テレビ・ラジオ・雑誌などで経済とお金について解説する人らしい(私は知らない)が、読後感の印象では、「とんでもない詐欺師」に近い感じがする。 読まない方がいいし、振り込め詐欺と同じで無視するに限る。(星なし:☆☆☆☆☆)使い捨て店長
2008.11.11
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湯浅顕人「ウィニー 情報流出との闘い」〈宝島社新書〉(宝島社、2006.6)を図書館で借りて読んだ。特に意味はないが、ウィニーの体系的知識を得られればと思って借りたものである。 自分が勤務している会社も、ここ2-3年で社給PCのデータ管理は格段に厳しくなった。USB等個人用メモリー使用は御法度だし、社外メール添付ファイルも強制暗号化等必要になった。これもあれも、恐らくはこの「ウィニー」のせいで間違いなかろう。 防護措置のある程度は、やむを得ないと思うし、無条件に協力もするが、なにか釈然としない気がする。というのも、自分を含めて大多数の人間は無関係だし、一人前の社会人なんだから、いけないことと大丈夫なことの分別はあるのが大多数であろう。でも、登山のパーティ(隊列)の移動速度を決めるのは、その中で最も体力のない人間のスピードになることと同じように、こういった社員の規則を決定するルールが、もっともモラルの低い人間の仕業の防止ルールになっていることが、問題の本質だと思う。 この本は、ある程度知っている人にはあまり面白くありません。もっと詳細に事例を調べるとか、経緯を時代背景を含めて詳しく解説するとかして欲しかった。得られたことは、ウィニー(Winny)の語源が分るくらいでしょうか・・・ (評価:星二つ ★★☆☆☆)ウィニー情報流出との闘い
2008.11.10
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松村劭(まつむら・つとむ)「三千年の海戦史」(中央公論新社、2006.6)を図書館で借りて読んだ。過去世界で起こった戦争のうち、海戦のみの歴史を取り上げた本である。戦争・歴史ものの本は、ジャンルとして好きだ。海洋国家と大陸国家の国家戦略の違いを分かり易く分析している本である。つくづく、ヨーロッパは、外交と軍事は車の両輪であり、その軍事力でもって第二次世界大戦前まではたびたび戦争を行っていたことを改めて認識する。本当に、今、現代がいかに平和な時代なのかがわかる。 英国の国防線は、英国の海岸線でもなれれば、英国海峡の真ん中にもない。 それは、大陸側の港の背中にある (ドレーク提督)また、これまで理解していた常識を覆すような表現にも出会う。例えば、・「帝国主義」とは、英国が植民地を維持管理することが重荷になり、植民地を「属領システム」(外交、防衛、内政、社会改革、産業インフラ整備等が必要)として扱うか、貿易のみを確保して植民地を半ば独立させて「連邦システム」にするかの議論が行われ、結果的に属領システムが採用され、これを「帝国主義」と呼んだにすぎない。すなわち、帝国主義ということばは、英国の内政問題としてうまれたものだったのである・もし第二次世界大戦において、日本が潜水艦でアメリカ輸送船団を攻撃する戦術を開発し、自国の船団防護に駆逐艦運用を重視していれば、太平洋における戦争の様相はかなり変わっていた。また、南太平洋の諸島に急速に拠点を設けるためにも、強襲上陸作戦ができるように日本陸軍を海兵隊化させることが必要であった。・ルーズベルトは「日独伊が無条件降伏するまで戦う」という、史上もっとも愚かな宣言を行った。戦争は政治の延長であって決闘ではない、軍隊の無条件降伏は通常成立する用語であるが、国家の無条件降伏という概念は国家の滅亡を意味し世界史的には極めて異例の概念である。これで、敵国市民に対する戦略爆撃も虐殺もアメリカの正義になった。日独が滅亡すれば「防共の壁」がなくなるとわかっていたとしても・・・実際、戦後「冷戦」構造が長く続いた結構おもしろい。お勧めです(星四つ:★★★★☆)三千年の海戦史<小ネタ>・世界五大名作戦 アウステルリッツの三帝会戦:ナポレオンVSロシア・オーストリア軍 アルベラの戦闘:アレクサンドロス大王 カンネーの戦闘:ハンニバル ロイテンの戦闘:フリードリッヒ大王
2008.11.08
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橘木俊詔(たちばなき としあき)「格差社会 何が問題なのか」〈岩波新書(新赤本1033)〉(岩波書店、2006.9)を図書館で借りて読んだ。最近数冊借りた、格差社会・貧困大国・下流・ワーキングプア等の社会問題の一連の最終版である。 さすがに筆者が、京都大学大学院経済学研究科教授の職にあるだけあって、内容は濃く切り口も鋭い。日本において、格差問題に関して何が起こっているのか、どこが問題なのか、どうすれば良いのかを豊富なデータ分析を通じて論述している。 この格差社会問題については、直接的には長期景気低迷と労働派遣法の緩和に代表される規制緩和が引金を引いているとは思うが、この問題の本質は「ゆっくりと・確実に」日本を蝕んでいることは明らかだ。こういうときには、ある臨界点を超えないと、本当の危機は広く社会に認知されないものではいかと思う。対策として、セーフティネットの改善や労働市場の流動化促進など示されるが、大きな流れもしくは既定路線は、通常「慣性」があって、ものすごく変えにくい。変わるべきものを変える、変えるべきでないものは変えない、そしてその二つを区別することができるように、身近な所から実行することが大切であろう。(評価:四つ星★★★★☆)格差社会
2008.11.02
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根井雅弘(ねい・まさひろ)「物語 現代経済学」〈中公新書1853〉(中央公論社、2006.7)を図書館で借りて読んだ。経済学の分野は、自身は全くの土地勘がなく、まずは分かり易く登場人物を理解する目的で読んだものである。 マーシャル、ケインズ、サムエルソン、ガルブレイス、ハイエクを押さえれば良いことが分かった。加えて、元プリンストン大学経済学部長のFRB(米連邦準備制度理事会)バーナンキ議長と、その親友で2008年度ノーベル経済学賞受賞のクルーグマン・プリンストン大学教授も最新知識として押さえる必要がある。 基礎知識としては、・「新古典派」経済学を体系化し、ケンブリッジ学派というきわめて強力な学派の創始者となったマーシャルの経済学 (社会改革とは無縁の自由放任主義、完全競争モデル、長期における経済システムの自己調整能力を期待。ミクロ経済学)・マーシャルの流れからでてきた「ケインズ革命」(乗数理論:消費は国民所得の安定的な関数なので、投資が決まれば国民所得と消費と大きさが決まる、ケインズ政策:消費を増やすための減税、投資を増やすための低金利、それでも足りない場合は政府自らが赤字財政をつくってでも公共投資を行うこと。マクロ経済学)・戦後経済学で、ケインズ革命に身を投じ一時代を画したサムエルソン〈1970年度ノーベル経済学賞受賞〉の「新古典派総合」(新古典派経済学とケインズ経済学のあいだの溝を埋める学派。骨子は、経済システムは自由放任に任せると世界的不況に陥ってしまう可能性があり、政府はケインズ流に総需要を管理し、できるだけ完全雇用に近い状態へ誘導すべき。ミクロ経済学とマクロ経済学の平和共存)・サムエルソンが学会の覇権を握っていた頃、ガルブレイスという個性的な異端派経済学者が言論活動(リベラル派:弱者に対して寛容で、政府の活動を許容)を行っていたこと・サムエルソンの「新古典派総合」が崩壊して以降、保守主義の経済思想が復活し、ハイエク・フリードマン〈1976年度ノーベル経済学賞受賞〉・ブキャナン〈1986年度ノーベル経済学賞受賞〉などの保守派(政府機能を最小限に抑えようとすること)経済学者が主流派となったこと。(失業率を自然失業率以下に下げようとする試みは、加速的なインフレをもたらすだけ。インフレ対策として、マネー・サプライのコントロール:貨幣供給量を実質経済成長率と歩調を合わせて増加させてゆくこと) 比較的、読みやすい本である。有益だった。(星三つ:★★★☆☆)物語現代経済学
2008.11.01
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