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ヘンリー・チェスブロウ(大前恵一朗訳)「OPEN INNOVATION(オープンイノベーション)」(産業能率大学出版部、2004.10)を借りて読んだ。ハーバード大のチェスブロウと言えばこの本であり、研究開発の企画部門にいるもので「オープンイノベーション」の概念を知らない人はいないだろうと思える程に有名な著書である。 一企業がもはや単独で、研究開発・技術開発を行いイノベーションを引き起こす製品やサービスを生み出すことができない時代になったので、他と連携・協調するオープンなイノベーションが必要だとの論旨である。これは、シスコのイノベーション戦略が世界中のベンチャー企業を調査し、これに投資・吸収合併(M&A)する方式をとったこと、インテル・マイクロソフト・Amgen・Genzymeといった大企業は、非常にイノベーティブな会社ではあるが、自らはほとんど研究開発を行わず、他社のイノベーションを活用する戦略をとっていることを理論付けた著書である。 従来の、中央研究所を中心としたクローズドイノベーションが時代遅れになった理由を、筆者は、その1:優秀な外国労働者の増加と流動化、その2:ベンチャー・キャピタルの登場、その3:製品ライフサイクル短縮化に伴う企業内で棚上げされたアイデアの流出、その4:外部サプライヤーの増加(アウトソーシング先の充実) を挙げている。 外部の知識を評価し、内部の知識に足りない所を補うことは研究部門の重要なミッションだとは思うが、クローズドイノベーションが我が国で時代遅れになっているかどうかについては、理由のその1~その4があまり当てはまらないのではないかと感じられる。本当に、クローズドイノベーションからオープンイノベーションにパラダイムシフトする必要があるのだろうか。例によって、いつものように欧米式のマネジメントスタイルを無批判に受け入れようとしてはいないだろうか。逆に、冷静に考える必要はあるかと考えさせられる本である。(星三つ:★★★☆☆)Open innovation
2008.08.29
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小屋知幸「お払い箱のビジネスモデル The Outdated Business Model」(洋泉社、2006.5)を借りて読んだ。最近、ビジネスモデルに興味があり、とある人からの推薦もあって読んだものである。著者は、株式会社日本総合研究所主席研究員であり、経営コンサルタントを行っている人物である。 ヤマト運輸の宅急便も、ファミリーレストランのセントラルキッチン方式も、回転寿司もマーケティングシステムとオペレーションシステムがビジネスモデルを支える車の両輪であり、新しいビジネスモデルが創造されるときには必ず、両面でのイノベーションをともなうことが必然であるということが論旨である。そして、このイノベーションは市場構造の変化のサイクルがあり、成熟・出現・新旧交代・確立のサイクルを繰り返し、業界をこの面で俯瞰するとすでにそのビジネスモデルが「お払い箱」なのかどうかを分析することができると述べている。 具体的には、モバイル通信、放送、広告、個人向け証券サービス、クレジットカード、コンビニエンスストア、小売、アパレル、外食、人材、介護の分析を行った各ビジネス分野において、モバイル通信・クレジットカード市場は成熟段階にあり新たなビジネスモデルの芽がでてこようとしており、放送・人材市場は出現段階にあり新たなビジネスモデルが出現しつつあるとしている。すなわちこれらの市場では旧来のビジネスモデルは、危ないビジネスモデルでお払い箱になる可能性が高いことを示唆している。 面白いけれど、説教臭さがいまいちである。(星三つ:★★★☆☆)お払い箱のビジネスモデル
2008.08.28
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安室憲一=ビジネスモデル研究会「ケースブック ビジネスモデル・シンキング」(文眞堂、2007.4)を借りて読んだ。著者は、兵庫県立大学(旧神戸商科大学)教授であり、文部科学省(独立行政法人日本学術振興会)科学研究費補助金研究成果の研究成果をベースに編集した著作であり、研究リーダーとして代表している。 論述内容として参考になった点は、以下のとおりである。・手元に優れた技術や特許があっても、それを活かすビジネスの仕組みがなければ、 技術は価値を生まない。MOTの本質は、「技術」や「特許」にあるのではなく、 技術を利益に変換するビジネスモデルのデザイン(設計)にある。・脚注:榊原「イノベーションの収益化」、延岡「MOT入門」も、ほぼ同じ問題意識 から優れた研究成果を世に問われている。・アファー(Afuah, 2004)は、ビジネスモデルを「儲けるための仕組み」と定義。 ビジネスモデルの概念のもとで、バーニー等の提唱する「資源ベース視角」と、 ポーター等が提唱する「ポジショニング」の統合を目指している・本書のビジネスモデルの定義は、「顧客の満足を目的として、技術やノウハウを 利益に変換する仕組みの構築」・VRISA分析(顧客価値、希少性、模倣可能性、代替可能性、専有可能性)が有効・日本型VC(ベンチャーキャピタル)のビジネスモデルの特徴 1、スタートアップ企業に投資するのではなく、IPO間近の企業に集中して投資 をしてきた 2、投資先に対するVCの関与は非常に限定的 3、地域や業種に関わりなく幅広く分散する傾向 4、VCファンドの投資家構成が、主として企業子会社 5、人事慣行や報酬体系が日本的 読後感としては、こういった経営学者が執筆された文章は、これまで見慣れているせいか、無理なく読むことができた。経営学の戦略論における大きな2つの流れである、M.ポーターの「ポジショニング論」とB.J.バーニーの「RBV(Resource Based View)論」を、ビジネスモデルで統合するという考え方は、斬新でかつ言われてみればなるほどと感心する切り口であった。 一方、ビジネスモデルの評価方法として、アファーのVRISA分析(残念ながら知らなかった)を分析フレームワークとして用いることについては、ケースの分析手法としては簡便で使い勝手の良い手法だとは思うが、真にビジネスモデルの優れた点を浮き彫りにする面では十分ではないと思える。(この点は、筆者も序章(P.17)や結章(P.253)で指摘しているとおりである) 具体的には、個々に取り上げている事例について言うと、・経営学のマーケティング分野及びSCM(サプライ チェーンマネジメント)分野で非常に有名な、ザラや H&M、アリババについては、VRISAの観点で切り 刻むことで、かえってその「優れたビジネスモデル」 が、全体として分かりにくくなっている ・事前に全く知識のなかった、ポンプレウやスチュー デントフォン、ISS、秋川牧園、ホテル1、タイ私立 病院については、VRISA分析でその特徴を記述し ているが、「ビジネスモデルとして、他社と比べて どの点が真に優れているのか」が、よく分からな い印象がある ・逆に、ギャランツや韓国映画産業、いろどり等は、 (前項と反対のことを言っているが、)比較的ビジネス モデルの特徴がよくわかった。しかしこれが、分析 手法の良い点なのか、取り上げた事例が良いのか、 筆者が良いのか判断しかねる 評価を総じて言えば、「分析ツールとして十分使えるけれども、これが完成形だとは思えない」といったところである。(星三つ:★★★☆☆)ケースブックビジネスモデル・シンキング
2008.08.27
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トニー・ダビラ、マーク・J・エプスタイン、ロバート・シェルトン著(スカイライトコンサルティング株式会社、矢野陽一朗訳)「イノベーションマネジメント 成功を持続させる組織の構築」〈ウォートン経営戦略シリーズ〉(英治出版、2007.2)を買って読んだ。イノベーション関係に興味があったためである。 この本の要旨は、企業がイノベーティブな組織となるための「7つのイノベーション・ルール」を明確に定義していることに特徴がある。7つのルールとは、次のとおりである。1、(イノベーションの)戦略とポートフォリオ(を決定する際)に強力なリーダーシップを発揮する:組織のトップが明確な指示を与えれば、それは組織全体に行き渡る。そしてイノベーション活動そのものだけでなく、それを促進する行動に対しても、モチベーション、支援、報奨を与えることになる2、(イノベーションを)会社の基本精神へ反映させる:日々の業務の一部にすべき3、(イノベーションの規模とタイプを経営)戦略と合致させる:どのようなイノベーションがどの程度必要なのか見極めなければならない。勝つための戦略(新しいテクノロジーあるいはビジネスモデルを市場に出すことだけに力を注ぐこと)と負けないための戦略(競争し続けることが目的であるためインクリメンタルなイノベーションの割合が高い)がある4、創造性と価値獲得のバランスをとる5、抵抗勢力を押さえ込む6、(社内外にイノベーションの)ネットワークを構築する:イノベーションの土台になるのは、会社内外に張り巡らされた、人や知識のネットワークである7、(イノベーションに適切な)評価指標と報奨制度を設ける ペンシルベニア大学ウォートン校MBAは、ハーバード大学MBAとならび経営学上、特に有名校であるが、ハーバード大が「考えさせること」を主眼とする一方、ウォートン校は「明確な答えを提示すること」に主眼があり、この文化が書籍にも表出しているように思える。 その他、内容的に気になる個所は、次のとおりである。・アウトソーシングすると全体のプロセスのスピードアップにつながる部分としては、イノベーションに転換できるような優れたアイデアを開発する、アイデア形成の作業・イノベーションは全社で均等におこるものではなく、程度もばらばら。組織でイノベーションを創出・維持していく上で大切なのは、常に全員がイノベーション・プロセスに携わらなければならない、との考えを捨てること。全員がいつでも参加できるようにしておくことは大事だが、全員が常に参加するもの、と考えるのは間違いである。・マネジメントシステムは、イノベーションを起こすためのメカニズムといえる。大企業ではイノベーションは不可能だという主張があるのは、イノベーションは管理すべきものであって偶然の発生に任せるものではない、という基本的な考え方が一般に浸透していないことの表れである。・組織やプロセスは元来、創造性とは相容れないものだと勘違いしている経営者は多い。実際には、組織は、正しく構築し利用すれば、むしろ創造性を高めることができる。(「知識の源泉:イノベーションの構築と持続」2001年、ダイヤモンド社)・イノベーション・システムには5つの重要な役割がある。イノベーション・プロセスの効率アップ(例:ステージゲート方式)、社内外に適切なコミュニケーションルートを作る(例:クロスファンクショナルチーム)、複数のプロジェクトとチームをできるだけ少ない負担で運営できるよう調整する役割(カリフォルニアとロンドンとインドの三ヶ所のオフィスが一つのシステムを共有)、学習に関する役割(ナレッジマネジメントシステム)、関係者のさまざまな目的を一致させることである・イノベーションにはいくつか相反する側面があるが、それを調整するのがマネジメントシステムである。テクノロジーとビジネスモデル、ラディカルイノベーションとインクリメンタルイノベーション、創造性と価値獲得、ネットワークとプラットフォームなど、各種システムの統合に関係するのは、イノベーション戦略とポートフォリオである。そのためのマネジメントシステムは、バランスの内容にあったものを選択すべきである。・学習には、行動の学習と学習の学習がある。イノベーションのマネジメントには、ナレッジマネジメント(知っていることを最大限活用する)とともに、イグノランスマネジメント(何を知らないのか、またその無知が何を意味するのかを意識する)も必要である。 このように、気持ちよいほど論旨は明確で、純粋に断言する所がこ気味よい。この分野に興味があるものにとって優れた書物であることは間違いない。(星四つ:★★★★☆)イノベーション・マネジメント
2008.08.26
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D.パッカード(David Packard)著(伊豆原弓=訳)「HPウエイ -シリコンバレーの夜明け」(日経BP出版センター、1995.10)を図書館で借りて読んだ。最近、日本HPの方と知り合いになり、ヒューレット・パッカード社のことを知っておこうとしたものである。 1930年にスタンフォード大学に入学したパッカードは、すぐにビル・ヒューレットと出会う。二人はいつか事業を起こすことを決めていたが、パッカードは1934年に卒業しGE(ゼネラル・エレクトリック)社に入社、ヒューレットは大学院進学後MIT入学し修士号を取得する。1938年秋、無線工学権威のフレッド・ターマン教授を通じ、二人はカリフォルニア州パロアルトのアディソン街367番地のガレージで仕事を始める。ここが、「シリコンバレー発祥の地」である。ちなみに会社名は、1939年1月1日の二人の「コイントス」の勝者で決まった。 読みやすく読みごたえもある。HPは、偉大な企業ではあるが日本では存在感に乏しいのが現実で、いまいち心から共感できない面がある。(星二つ:★★☆☆☆)(その他小ネタ)・AEA(米国電子工業会)は第二次大戦中の軍需関連の発注の配分を公平にするために生まれた・プロジェクトを選択する目安として、製品の全期間にわたる予想利益が製品開発コストの6倍以上でなければならないという基準を採用
2008.08.06
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深澤真紀「平成男子図鑑 リスペクト男子としらふ男子」(日経BP社、2007.6)を読んだ。けっこう笑える。イマドキの男子を23種記述してる。平成男子は、20代30代のいわゆる団塊ジュニア世代で、仲間を誉めあう(リスペクト男子)、据え膳食わない(草食男子)、たまには酒飲めよ(しらふ男子)・・・などなど。 団塊ジュニア世代は、豊かな日本に生まれたにもかかわらず、10代でバブルがはじけて20代に「失われた10年」を生きなければならなかった。世の中からは、「負け組」だの「下流」だの「ワーキングプア」だの「格差」だの「品格」だの言われてきた世代である。もちろん世代を一くくりにすることは本質を見誤ることになるし、危険なことだとは思うが、いつまでも男子のままという訳にはいかないでしょ、大人になりましょ・・・ (星二つ:★★☆☆☆)平成男子図鑑
2008.08.04
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細谷功「地頭力を鍛える」(東洋経済新報社、2007.12)を読んだ。地頭(じあたま)とは耳慣れない言葉だが、地力(じりき)を発揮するの底力の意味であるので、本来持つ「頭のそこじから」で理解すればよい。2年位前に、初めて会社の人事関係の会話で聞いた。その文脈は、”あいつは地頭が良いので、うんぬんかんぬん・・・”だったと記憶する。 筆者の言う地頭力の本質は、「結論から」・「全体から」・「単純に」考える三つの思考力と断言している。そしてこの三つの思考力は訓練によって鍛えることができると、筆者は読者に希望を与える。また、訓練のための強力なツールとなるのが「フェルミ推定」であるとこれまた有無を言わせず断言して、方法論をも示している。フェルミとは、電子工学をかじったものであれば、フェルミ粒子・フェルミ分布・フェルミ準位など聞き覚えはあるものの、フェルミ推定とは初めて聞く。 「頭がいい」とは、「物知り」・「機転が利く」・「地頭がいい」の要素、すなわち「知識・記憶力」・「対人感受性」・「考える力」の3つの軸で三種類あると指摘する。学校の科目で言うと、「社会、英語」・「国語」・「数学、理科」といったところかな。 要は、対象となるある個別に計測するには不可能な具体的な課題を、抽象化して・モデル化して計算を実施し、再度具体化させて解法を見出す思考プロセスを強調している。また、訓練には「自分だったらこうする」というのを常に考えることでうまくいくと説いている。 嫌味や自慢もなく好感のもてる内容である。お薦めです(星四つ:★★★★☆)地頭力を鍛える
2008.08.04
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野村進「千年、働いてきました -老舗企業大国ニッポン 」〈角川oneテーマ21 C-123〉(角川書店、2006.11)を読んだ。長寿企業は実は日本だけに集中しており、なぜなのかそして会社の寿命は何で決まるのか、つぶれない会社の持続力の源を実事例を通じて探っている本である。 世界最古の会社は、西暦578年飛鳥時代から続く大阪天王寺にある建築会社の「金剛組」である。金剛組と宮大工の関係は、日本相撲協会と相撲部屋の親方との関係に近い。各々の相撲部屋が競い合って相撲協会を支えるのと同じく、宮大工の各組も切磋琢磨しつつ技術を磨き、管理が主業務の「世界最長寿のゼネコン」を、1400年以上の間、支え続けてきた。 内容は面白い。(星三つ:★★★☆☆)千年、働いてきました
2008.08.04
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