PR
カレンダー
カテゴリ
コメント新着
キーワードサーチ
ジャコモ・プッチーニ作曲、ラ・ボエーム La Boheme 、イタリア語上演 日本語・英語字幕 新国立オペラパレス、原作:アンリ・ミュルジェ、台本:ジュセッペ・ジャコ-ザ/ルイージ・イッリカ、作曲:ジャコモ・プッチーニ、指揮:パオロ・カリニャーニ、演出:栗國淳、出演:ミミ:ニーノ・マチャイゼ、ロドルフィ:マッティオ・リッピ、マルチェロ:マリオ・カッシ、ムゼッタ:辻井亜季穂、ショナール:森口賢二、コッリーネ:松位浩、ベノア:鹿野由之、アルチンドロ:晴雅彦、バルビニョール:寺田宗永、門番:秋本健、物売り:中川誠宏、軍曹:細岡雅哉、税理士:照屋睦、子供:本坊稜貴/境究武〔アンダーアスタディ)

少し前、 Madam Butterfly
を観た後、世界ではどんなオペラが観られているのだろう? 蝶々夫人なんで日本でしか公演されていないのではないか?というような興味から世界オペラランキングなるものを当たってみた。オペラ上演は圧倒的にヨーロッパの劇場である。劇場が沢山あり上演数が多いのはベルリン、モスクワ、サンクトペテルブルグ、パリ、ウィーン、ロンドンなど。日本での上演数は欧米の数に比べて殆ど誤差範囲内。そして、世界にはいろいろなオペラランキングがあるが、 Madam Butterfly
は 10
位辺りにいることが多いことが判った。 (
蝶々夫人観劇記は 2019
年 7
月 18
日記述。 )
上位の定連には魔笛( 2019
年 10
月 18
日の本稿)、椿姫 (La Traviata)
( 2020
年 2
月 13
日の本稿) ,
カルメン(未観賞)などのニャンスケに記憶のある題名と並んで La Boheme
の名が何処でも上位にあった。 La Boheme
って何だろう?
場内配布のあらすじを読み始めて直ぐにサラッと見えた。またまた言葉の壁で何でも無いことが見えてなかったのだ。ボエームとはhの発音が出来ないフランス語読みでのボヘミアンのことだったのだ。パリの一角カルチェラタンの周辺に集まってきた芸術化志向の流浪風の人々がボヘミアンと呼ばれるようになって来た。その連中の物語なのだ。
しかし、芸術家志望で集ってくる人々をボヘミアンという言葉で指すことはいつから始まっていたのであろう?これは観劇の後で調べたことなのだが、 Opera La Boheme の story の原作者とされている Henri Murger が 1851 年にまとめた、 Bohemian life を舞台とした小品集、 Scenes of Bohemian Life 、 の序論に見事な歴史的流れがまとめられている。( https://note.com/catotriptyque/n/ne969eb59d0e0 、2020/2/17 2:00 ) ニャンスケ的理解でまとめれば、ボヘミアの独孤性は 17 世紀宗教戦争の頃から始まる。宗教改革の先端を走ったボヘミアは神聖ローマと戦うことで、ヨーロッパの長い戦乱の時期、 30 年戦争が始まる。ボヘミアの民は流浪のロマの人々と重なる。 19 世紀に入りパリ周辺に集まってきた進取の気鋭盛んな芸術指向の人々が、ボヘミアスタイルと呼ばれるようになり、それをある意味で定着、そして公知にしたのが決定づけたのが Henri Murger であり、またそれを評判の opera として更に世界に広めたのがプッチーニであり、この作品 La Boheme だったのだ。初演 1896 年。指揮は若き日の、かの大指揮者、トスカニーニ。トスカニーニの音は、熟年期以降のものであれば、音盤とデジタル技術を通して、元の息吹が充分感じられるものを我々は聴くことが出来る。
若いミミは貧しいロドルフィの部屋に同棲する内に結核にかかってしまう。ロドルフィのミミの健康状態への危惧と分かれた方がミミの健康に良いのではないかという思いを、逆に気遣ったミミは、自ら田舎で静養すると偽り、分かれて街の片隅に一人住いする。やがて症状が重篤になる中で、ミミは懐かしいロドルフィたちの住む破れアトリエを訪れ、再開して、ロドルフィの部屋で死を迎える。的確にまとめられている配布されたあらすじは図として下に示す。
図2 場内配付資料より あらすじ 抜粋
ニャンスケはこのオペラを観つつも、様々な想念・疑念に囚われてしまった。
何だか似ている。一途に純な心を持った若い女性の、思う相手を心遣いながらの孤独な死。La Traviata, La Boheme, そしてMadam Butterflyまでも. さらに、La TraviataとLa Bohemeでは、死は、貧しさ・栄養不良とカラッとしない喚起と日差しの悪い居室に由来する、1950年代までは不治の伝染病とされていた、結核によるものであった。作者の視点は死に行くヒロインにおかれている。そして、La TraviataとLa Bohemeでは、前者は良家のボンボン、後者は貧しい画家であるが、何れを問わず、ヒロインの相方にも寄り添っている。蝶々夫人は一寸違い、ピンカートンは酷い奴という役割で終始していたように記憶。欧と米の違いなのだ。
今に至るまで、何処でもオペラの観客は低所得層ではない。日本の劇場入場料は異常である。一桁高い。だが、一桁値段が下がっても、観劇料は安くない。オペラ鑑賞は、欧米では正装である。勿論べらべらの安上着とボロネクタイ、引っかけられたら破けそうなロングスカートと肩の出たドレス、そんな服装でも、客席では兎に角正装。表に出るときは、中の服が見えないコートをピッタリ羽織り、早足で人通りの多い明るいところを、車(19世紀は 馬車)その他の手段を用いて最短距離で夕食の場、ホテルあるいは自宅等へ。そんな中流上流の客層が皆、貧しい若い女性の死の物語La TraviataやLa Bohemeを、素晴らしいオペラと称え、たぶん哀惜と感動と、喝采の中で観ていたのである。
今回観たヒロイン、ミミを演じたニーノ・マチャイゼは、ミミ役でデビューしたベテラン歌手で、ミミ役は当たり役なのだという。死の床での細く消え入るような歌声が会場隅々まで染み渡るように通っていく。これは素人ニャンスケの感覚では物凄い芸なのだ。もちろん、世界の主役級は皆やってのけていることなのではあるが!
プッチーニは現在頻繁に上演されているオペラ作曲家の中では最も現在に近い。ニャンスケ一行が観たのは、大いに楽しめたジャニス・スキッキ(2019年4月26日の記事)、悲劇的な若い女性を描いた蝶々夫人とLa Bohemeの3つだけであるが、古典的作曲家の時代から見ると背景となる題材が多様化して来ているように思える。
今回のボエームに関するまとめとして:ボヘミアンの生き様と野生・繊細・心揺さぶる愛の凝結した作品、それが舞台に具現できていた。喝采。
プッチーニ: 歌劇 ラ・ボエーム [DVD]
2026/9/20 深みと余裕を感じる高岡由季の… 2026.09.25
2026/9/5 駄作なのか後生に問う問題作な… 2026.09.10
2026/8/21 ブロードウェイ、ではなくウエ… 2026.08.26