「現役キャリア官僚」が小説の形で書いた告発本である「原発ホワイトアウト」が話題を呼んでいるそうなのだが、電力会社に政治家と国の各省庁の癒着を描いた内容に、菅直人元首相もブログで「私の知ることと共通する点が多い」と反応しているそうなのだ。「原発ホワイトアウト」という本は発売1カ月で6万5千部と新人の作品としては異例の売れ行きになっているそうで、作者の名前は「若杉冽」という偽名となっているのだ。公開している著者略歴には東京大学法学部卒業で国家公務員1種試験合格し現在でも霞ヶ関の省庁に勤務となっており、「現在も霞が関の省庁に勤務」するキャリア官僚ということだけに、本の内容も覚悟の上の内部告発だと思われているそうなのだ。
現役キャリア官僚が書いたとされる「原発ホワイトアウト」のサブタイトルは「原発はまた必ず爆発する」となっており、原発という甘い蜜に群がる経産省や電力業界に政界の内情が赤裸に書かれているそうで、さすが「権力の現場」に詳しいキャリア官僚が書いたと思わせる場面が随所に登場するそうなのだ。いま永田町や霞が関ではこの本の作者を「犯人捜し」が行われているそうなのだが、この小説にも福島原発のプルサーマル計画に反対していた佐藤栄佐久前福島県知事の逮捕劇が出てくるのだ。実弟の不正土地取引に絡んだとされ佐藤栄佐久前福島県知事は収賄の疑いで検察庁に逮捕されているのだが、収賄額はゼロ円という摩訶不思議な汚職事件だったのだ。
福島原発のプルサーマル計画に反対していた佐藤栄佐久前福島県知事は、東京電力の原発事故隠しにも敢然とした態度で臨んでいるのだが、それゆえ小説では東京電力がモデルとおもわれる「関東電力」から実弟の不正土地取引を仕込まれるのだ。伊豆田清彦知事は踏んではならない原子力村の利権という虎の尾を踏んだということなのだ。菅直人オフィシャルブログでも「原発ホワイトアウト」を読んだ感想として、「原発再稼働に反対する知事を陥れる工作など原子力ムラの実態が赤裸々に書かれている。私が総理の時の『海水注入を中止した』という嘘のキャンペーンも原発ゼロを言い出した総理をやめさせる狙いで原子力ムラが仕組んだもので、知事に対する謀略と同じだ」と書いているそうなのだ。
また「電力連盟広報部」と本の中で名付けられた部署がマスコミを監視し、圧力をかける姿も生々しく書かれているのだが、原発事故が発生した3・11の時点で勝俣東京電力会長がマスコミ関係者を中国で接待旅行に連れて行っていたこととも符合するし、ネット上で電力業界を擁護しまた反対者には組織的に罵詈雑言を浴びせるための組織も紹介されているそうなのだ。確かに官邸だけでなく経済産業省や原子力規制委員会の内情に詳しく、事実だとすれば原子力ムラに詳しい官僚の内部告発とも受け取れているそうなのだ。本の中では電力会社が政治献金や選挙支援によって政治家を操ったり世論を誘導したりする構図が描かれており、小説という形になっているがモデルがほぼ特定できる登場人物もいるみたいなのだ。
執筆を知っているのも家族だけだそうなのだが、新聞の取材に応じた著者の若杉さんによると「直接見聞きしたことと、間接的に聞いたことが半々」と語っていたそうなのだ。業界団体の反対派潰しの手法や政治家や官僚を手なずける手練手管が臨場感たっぷりに描かれている執筆のきっかけは昨年末の政権交代で、安倍政権になり「政府・業界・政治が再稼働に向けてひたすら走っていこうとしているのは国民をバカにしている」と感じ、若杉さんから出版社側にアプローチしたそうで、小説を書いたことはなかったが2カ月ほどで一気に書き上げた。すでに所属する官庁では犯人捜しも始まっているというが「カミングアウトしてしまえばそこで終わり。できるだけ長く省内にいて発信し続けようと思っています」と語っているそうなのだ。
キーワードサーチ
コメント新着