加藤勝信働き方改革担当相は大手新聞社などのインタビューに応じ、長時間労働の是正に関し「国際比較したうえで是正されるべきだ。その立場で議論していかなければならない」と語り、国際的な労働時間の水準を参考にして是正目標を設定すべきだとの考えを示した。 また、長時間労働の是正は「働き手にとってプラスなだけではない。生産性の向上により企業側の収益拡大にもつながる」と述べ、企業側に協力を求めた。今月下旬にも初会合が開かれる安倍晋三首相が議長の「働き方改革実現会議」の位置づけについては、「首相が問題解決の先頭に立ち、取り組む場だ。ここで一元的に議論して政府全体としての答えを出す」と説明。厚生労働省などで似たテーマを扱ってきた既存の組織とは性格が異なると強調した。
この「働き方改革実現会議」のメンバーや運営方針なのだが、16人のメンバーのうち労働者側は1人だけで使用者側は2人だけで、残りは安倍晋三首相ら閣僚が8人と学者ら5人で構成されており、公労使3者が同数の労政審と比べると労働者側は4~5人少ない計算となります。労働政策を公労使3者の合意を得て進める「3者構成原則」を骨抜きにして、政府主導で決定する狙いが鮮明です。「働き方改革実現会議」は安倍首相が議長となり、加藤勝信働き方改革担当相と塩崎恭久厚生労働相の2人が議長代理を務め、世耕弘成経済産業相、松野博一文部科学相らも参加。有識者メンバーとして、元おニャン子クラブで女優の生稲晃子さんを起用することで話題となっている。
その他のメンバーとしては連合の神津里季生会長や経団連の榊原定征会長に全国中小企業団体中央会の大村功作会長の労使代表のほか、政府の同一労働同一賃金検討会で座長を務める水町勇一郎東大社会科学研究所教授らも加わっている。有識者の代表となる生稲さんは乳がん治療と仕事を両立させていることなどから、がん患者の社会参画などの面での発言を求める狙いとみられるという。生稲さんは 2011 年に乳がんが発見され腫瘍を部分切除する手術を受けたが、 2012 年夏と 2013 年に 2 度の再発が確認され 2013 年の暮れには乳房を全摘出し、後に再建の手術を受けたことも明かしているのだ。そしてガンの治療を続けながら女優・タレントとして活躍を続けていることが選考の理由だという。
第3次安倍晋三再改造内閣で安倍首相が「最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方改革」だというのだが、政府が新設する「働き方改革実現会議」の概要が判明し、関係閣僚や学識経験者のほか「長時間労働の是正」といったテーマについて迅速な合意形成が図れるよう、経団連や連合など労使の代表をメンバーに加えている。今月に初会合を開いた後月1回程度のペースで開催し来年3月までに具体的な「実行計画」を策定する方針だという。経済政策「アベノミクス」の柱となる「同一労働同一賃金」に関しては、年内に指針をまとめ関連法案の早期国会提出を目指すというが、加藤勝信働き方改革担当相は「同一労働同一賃金」に関して「日本の雇用環境を踏まえながら議論を進めていきたい」と語っている。
安倍政権のやり方はいつもこうなのだが厚労行政を新設大臣の下でやることによって、労働者の権利がないがしろにされる危険性が高まることが問題とされ、政治学者の五十嵐仁氏は「労働政策に関する重要事項は、本来なら厚労相の諮問機関である労働政策審議会で議論して決めることになっています。労働者と使用者の利害が対立することが多いため公益・労働者・使用者の各代表10人ずつで組織される労政審が答申を出すことは、国際労働機関が示す国際労働基準になっているが、働き方改革の会議を置くとなると、政権と財界のやりたいように物事を進めることが可能になって労働者側の意見は無視され、使用者側の論理で決めたことを、3者構成の労政審に押し付けることになりかねません」と危惧している。
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