福岡市のJR博多駅前で起きた大規模な道路陥没事故の現場は、ライフラインの仮復旧が終わってほぼ埋め戻され舗装の段階まで進んでいる。福岡市は土木や地質の専門家を集めた会議を開いて安全性を確認した上で道路の通行を再開させる方針だが、専門家の会議は現場事務所で開かれ福岡大工学部の佐藤研一教授ら6人らが参加している。福岡県警担当者らも同席して復旧工事の状況について工事の担当者から説明を受けた後、安全性に問題がないか意見を交わしたそうなのだが、これからの専門家会議の議論は「事前の地質調査が十分だったのかどうか」とか、「地盤条件に対して NATM という工法を選択したことに問題はなかったのかどうか」などが焦点となりそうだという。
この「地下鉄七隈線」の延伸区間の構造検討業務は「日本シビックコンサルタント」が手掛けたそうなのだが、さらに福岡市は有識者で構成する「地下鉄七隈線建設技術専門委員会」を設置して、地盤条件などを踏まえた施工上の注意点などを議論したことが分かっている。「 NATM 工法」区間を含む実施設計業務は「八千代エンジニヤリング」が受託しており、「地下鉄七隈線」延伸工事は大成建設 JV の工区を含めて現在は 3 工区に分かれて発注され、いずれの工区も事故直後から工事を中断したままだという。事故現場の西側に隣接する工区は銭高組・日本国土開発・九建 JV がシールド工法で駅間トンネルを掘進する計画となっているが、通行が再開しても工事を再開するめどはついていないという。
工事担当者は「現在はまだシールド機の発進たて坑を掘っている段階なので、今回の事故による影響は少ない」と話しているが、しかしトンネル工事や地下工事では仮設材や建機などのリース代が工事費に占める割合が大きいので、わずかな工程の遅れが工事費の増加につながりやすいとされているのだ。陥没事故のあった大成建設 JV の契約工期は平成31年の 3 月までなのだが工事を再開するめどはついておらず、事故による工期への影響や復旧費用などは現時点で不明だという。福岡市の JR 博多駅前の道路が陥没し建物前に大穴ができた「セブンイレブン博多駅前通店」など、複数の企業・店舗が休業を余儀なくされたわけなのだが、高島宗一郎市長は会見で「管理責任は市にある」と謝罪している。
陥没した穴の周辺の企業・店舗はしばらくの間陥落の影響を受けたのだが、今後の補償問題は「被害を受けた方は、まず福岡市側と話し合いで賠償を求めることになるという。福岡市や施工した大手ゼネコンを含む共同企業体が保険に加入していれば、その範囲では比較的スムーズに損害賠償が進むかもしれないが、福岡市は未加入だし JV の取りまとめ役である大成建設は「工事の個別案件についてはお答えしていない」ということで、加入の有無は分からないというのだ。補償金等の話し合いでまとまらなかったら場合裁判をすることになるが、陥没したのは市道だし自然災害ではなく福岡市営地下鉄の工事が影響してから、基本的には『道路や公の営造物の設置・管理に瑕疵があった』という「国家賠償法 2 条」が成立するという。
福岡市の賠償責任が問えるのではないかと弁護士は語っているが、瑕疵の認定が難しくても福岡市の注文・指図に過失があれば、注文者の損害賠償責任があるというのだ。建設会社にミスがあった場合は「調査や工事に過失があった場合は、施工を請け負った JV が共同不法行為の損害賠償責任を問われるわけなのだが、話し合いにしても裁判にしても原因究明は欠かせないというのだ。また事故と損害の因果関係やどの範囲で企業の損害を認めるかなど認定作業には困難が予想されているといわれており、福岡市は今後原因究明や賠償について弁護士などの専門家を交え迅速適切な解決を図るべきで、被害を受けた企業・個人も損害賠償請求に備えていくということみたいだ。
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