政府は閣議で廃案になり続けている「共謀罪」の構成要件を改め、犯罪を計画・準備した段階で処罰可能にする「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を決定したという。「共謀罪」を盛り込んだ法案が過去 3 回廃案となった経緯を踏まえ、謀議だけでは犯罪にならないようにするなど要件を厳格化し対象犯罪を 277 に絞り込んだそうなのだ。政府が今国会での成立を目指すという「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」が閣議決定された日に、永田町の首相官邸前では雨の中で法案に反対する集会が開かれ、「共謀罪の新設反対」とか「密告社会は許さない」などとシュプレヒコールが上がっていたが、集会には主催者発表で約300人が参加し出勤前のサラリーマンらの姿も見られたそうなのだ。
法学や政治学などの専門家でつくる「立憲デモクラシーの会」は、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、「立法の合理性、必要性に深い疑念が残る」などと反対する声明を発表している。声明では国際組織犯罪防止条約を批准するために必要との政府の説明について、「条約の本来の趣旨を超え、異なる目的のために乱用されている疑いがある」と指摘し、「話し合いは民主主義の土台だ。民主主義の根幹を否定するような法案は絶対に許さない」と声を荒らげたという。京都三鷹市から参加した老人は「母から戦争はある日突然起きるのではなく、国民の手足をしばり、口を閉ざしてからやって来ると聞かされていた。共謀罪は戦争につながる第一歩だ」と閣議決定を憤っていた。
「共謀罪は必要」との立場だという女性ジャーナリストが懸念するのは「乱用のおそれ」で、「捜査当局の大変な武器になるのは間違いない。組織の暴走を抑止する仕組みも考えないと、大変なことになる」と語ったいる。そして今の自民党への視線も厳しく「党内に暴走を防ぐ抑止力がなくなっている。審議を尽くさず賛成しているだけでは、国会議員として機能したことにならない」と釘を刺している。「今の議論を聞いていると、政府側はガタガタだ」というのは地方の首長なのだが、政府が「現行の予備罪では対処できない場合がある」と根拠に挙げたクーデター未遂事件の東京高裁判決では、「あまりにずさんな計画だったため予備罪の適用を退けられたケースだったことから「共謀罪」の必要性を証明するものではまったくないという
近くの参院議員会館では安全保障関連法などの抗議活動をした「SEALDs(シールズ)」の元メンバーらが設立した新団体「未来のための公共」が記者会見し、大学生の福井周さんが「テロ対策は現行法で十分に対応可能だ。必要以上に解釈の余地を残せば国家権力による恣意的な運用が行われ、市民の政治的自由が侵害される」とする声明を読み上げたという。出版社に勤める埼玉県朝霞市に住むサラリーマンは出勤前に法案に反対する集会参加し、戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」に触れて、「共謀罪が導入されれば同じように、やってもいない犯罪をでっち上げられ、巻き込まれるかもしれない。密告社会になるのではないか」と不安そうに話していたという。
この法案は一部の組織犯罪の容疑者のみならずすべての国民に影響を及ぼしかねないとされているが、277もの犯罪に関して共謀した疑いがあれば一般市民のメールに、ライン・電話が監視・盗聴されかねないというのだ。日本社会が一億総監視社会になるかもしれないという大きなリスクをはらんでおり、国会承認された国際組織犯罪防止条約を締結するための国内法整備で、政府は 20 年東京五輪・パラリンピック開催に向けたテロ対策と位置付けているとは思えないというのだ。テロ対策も条約とは無関係とし「十分な説明もないまま数の力で押し通せば民主主義に対する国民の信頼を損なう」と批判しているが、野党は捜査権乱用の懸念があるとの立場で今国会最大の対決法案となりそうだとされている。
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