3月というのは退職とか転勤のシーズンなのだが、今 60 歳で定年を迎えた人の多くが再雇用制度を利用して引き続き同じ組織で働き続けているという。東京都が行った「高年齢者の継続雇用に関する実態調査」では、 86.1 %の事業所が「継続雇用制度の導入」をしており、定年到達者の 65.8 %が継続雇用されているそうなのだ。ところが再雇用というのは会社の規模や仕事の内容だけでなく、社内での立場といった諸々のことを考える必要があるといわれている。 60 歳以降も会社に残れると安心だからと「何となく再雇用」に応じて働き始めるのは考えもので、働く上で最も大切なことである「自分が必要とされている」状況が確実に存在していなければ、後で「こんなはずではなかった」ということになってしまうというのだ。
私のように技術職であればそれまでと全く同じことをすればいいわけですが、もそも「再雇用制度」や「雇用延長」がこれだけ一般的となった理由は「改正高年齢者雇用安定法」にあって、この法律によって雇用を希望する人に対しては原則として最長 65 歳までは雇用が義務付けられることになったのだ。公的年金の支給開始年齢が段階的に 60 歳から 65 歳へと引き上げられるのに伴う改正なのだが、ただし多くの中小企業ではこうした法律ができる前から 60 歳以上でも働いている人がたくさんいたのだ。それは大企業と違って毎年新卒社員を採用するのが難しく人材はとても貴重で、長年仕事を続けてきてそれなりのスキルと知識を持った人に、 60 歳になったからといって辞めてもらっては困るからだという。
働く上で最も大切なことである「自分が必要とされている」状況が確実に存在しているからで、サラリーマンにとって仕事をする上での最大のモチベーションは「報酬」ではなく、仕事のやりがいもっと具体的に言えば、自分にどれだけの権限と責任が与えられるかが大きいのだ。ところが大企業の再雇用の場合はどうかというと、大企業というのは多くの場合は個人のスキルで成り立っているわけではなく組織で機能しているとされている。ごく一部の特殊なスキルを持った人以外の代わりはいくらでもおり、それに毎年新卒の若い人がたくさん入ってきるので「ぜひとも会社に残ってもらいたい」という気持ちは会社側にはほとんどないという。「法律で義務付けられたから仕方なしに 65 歳まで働かせてあげる」というのが本音だというのだ。
退職者の一部には「再雇用になったら仕事は同じなのに給料だけが大幅に下がる」とか、「役職が何もなくなるのでプライドを傷つけられる」といったことで、再雇用を否定的に見ている人がいますがそれは大きな間違いだという。給料が下がったり一兵卒として働いたりするというのは当たり前のことで、経験者はそんなことはあまり気にならないというのだ。再雇用を経験して一番嫌だとされるのは、「権限と責任」があまり明確ではなかったことのようなのだ。「再雇用」という制度はまだ始まって間がないため決して成熟した制度とは言えず、あらゆることが試行錯誤の真っ最中だということで、再任用者はどこまで自分の責任と権限があるのかがはっきりしないと実に居心地が悪いというのだ。
自分に与えられる権限の大きさとそれに伴う責任の重さが仕事に取り組む上での最大のインセンティブになっており、再雇用の場合はそれまでに持っていた権限と責任は大きく縮小することになるが、たとえ縮小したとしてもそれが明確であれば問題は少ないというのだ。ところが多くの企業においてはその「権限と責任」が明確に示されていない場合があるし、まわりも接し方に気を遣うこともあってそんな状況で働くのはつらいということなのです。再雇用で働くのであればまずは会社とよく話合ったうえで自分の役割や権限と責任がどこまで与えられるのかをしっかりと確認しておくことが大切だということのようなのだ。
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