マンションなど集合住宅のベランダでの喫煙に対する視線が厳しくなっているが、近隣住民の喫煙による受動喫煙で悩む人たちが全国組織の被害者の会を結成したところ、約2カ月半で会員が約820人集まり不満が高まっていることが浮き彫りになったという。公共スペースや店舗などでの喫煙のあり方が議論になって久しいが、「ホタル族」などによるプライベート空間での喫煙についてもルール作りなどを巡って議論を呼びそうだという。「どんな人が住んでいるのか分からず、なかなか言い出せませんでした」という40代の女性は、階下の男性のベランダ喫煙に苦しんだ。2年ほど前、室外から強いたばこのにおいが漂いはじめ、せきが出た。ストレスで顔にアトピー症状などの健康被害が出たため病院を受診した」というのだ。
診断書を手に警察に相談したところ警察官が間に入って話をしてくれ、階下の男性は1年前にベランダでの喫煙をやめてくれたそうなのだ。ベランダ喫煙については家族に気遣って夜間のベランダでたばこを吸う姿が「ホタル族」とも呼ばれかつて話題になったが、一方で近くに住む人たちが人間関係の悪化などのトラブルを懸念して喫煙被害を訴えにくい現状があるのも事実として報告されている。そんな中で 全国組織「近隣住宅受動喫煙被害者の会」が5月中旬に結成されたが、会員登録は7月末時点で全国の約820人に上り事務局は「会員がここまで増えるとは想定外だった」と驚く。全国組織「近隣住宅受動喫煙被害者の会」はベランダ喫煙の対策強化を求める法律や条例の制定を国や自治体に求めることを考えているという。
全国組織「近隣住宅受動喫煙被害者の会」の広報担当者は「ベランダというプライベートな空間での喫煙を一斉に禁じるのは難しいと思うが、近隣から苦情が出た時に、喫煙者や管理会社に対応を取ることを義務づけたい」と語っている。福岡市中央区港には全面禁煙の新築賃貸マンションが登場したというが、昨年12月から入居者を募集し入居開始前に全48戸が埋まったそうで、不動産管理会社の担当者は「この早さで埋まるのは珍しい。関心の高さを感じた」と話している。受動喫煙問題に取り組む弁護士は「当事者同士で話をするとトラブルに発展する恐れもあるので、まずは管理会社に相談するほうがいい。苦情が出た場合に備え、管理会社はベランダでの喫煙禁止を明文化するなどの対応を検討すべきだ」と話している。
マンションのベランダは「共用部分」で利用については管理規約などで規定することができ、マンションの購入者である「区分所有者」はそれぞれの「専有部分」に接するベランダの専用使用権が認められ日常的に使用できるのだ。タバコの煙が喫煙者だけでなくその周辺で煙を吸い込む人の健康にも悪影響を及ぼす恐れのあることは公知の事実で、もしも喫煙者が他の居住者に著しい不利益を与えていることを知りながらベランダでの喫煙を継続し、防止措置を何もしない場合には喫煙者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求することもあり得るとされているというのだ。実際に管理規約よりも詳細なルールを定めたマンションの使用規則がベランダでの喫煙を禁止していない場合でも損害賠償請求を認めた裁判例もあるという。
このケースでは住人がぜんそくでタバコの煙によって強いストレスを感じていることなどを直接真下の住人に伝えベランダでの喫煙をやめるよう告げたそうで、また管理組合もベランダでの喫煙に関して回覧・掲示をしたそうなのだ。しかしその後も配慮することなく自室のベランダで喫煙を継続したという事案で、裁判所はベランダで喫煙を継続したことが不法行為になると判断し精神的な損害の請求を認めたいう。この裁判例のように再三の注意にもかかわらずベランダでの喫煙を継続するなどした場合、損害賠償請求が認められることがあるとは言え同じマンションでの近隣トラブルは避けたいもので、居住者同士が気持ちよく暮らせるよう管理規約などでベランダでの喫煙に関するルールを定めて紛争を防ぐことが望ましいというのだ。
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