選挙といえばお馴染みのテレビの開票速報で、衆院選だと選挙の結果によって政権が交代するわけだが、今回の選挙でも消費税の増税をどうするかは各党で主張が違っている。選挙結果は私たちの生活にも密接に関係していることから、報道機関はいち早く選挙結果の大勢を伝えることに全力を挙げ、開票開始時間の 20 時を過ぎた瞬間から「ほんとに確実なのかよ、というか 1 票でも確認したのかよ」と言いたくなるペースで大物政治家の当確報道が流れていくのが恒例行事となっている。出口調査や前回までの結果など複雑なノウハウが詰まったものだし簡単に教えてくれるものではないが、私には「 なんかいろいろやってるんだよ、まあ信じておきな 」ではどうにもしっくりこないところがあるのだ。
多くの市や町で開票作業が実際に始まるのは、おおむね午後9時頃からだが、報道機関はその前からさまざまな調査を重ねている。電話による世論調査や投票を済ませた人たちに直接聞き取りなどで確認する出口調査がその代表となっている。私は経験ないのだが投票所の近くで報道機関の腕章をした調査員が、声を掛けているのを見たことはある。それが出口調査で1960年代後半に米大統領選などでテレビ局が実施したのが最初といわれている。かつてはいろんな団体の組織票ががっちりと固まっていて、その票がどうなるのかを取材して判断していたというのだが、今は浮動票や無党派層といって支持政党がいない人たちが多くて従来の取材では判定できなくなったことから始まったという。
日本では1990年前後から速報性を重視するために導入され、今では新聞社や通信社にテレビ局など多くの報道機関が行っており、各種調査は公示前から行っていて繰り返してやることで情勢の変化を読み取っていくという。報道機関の出口調査は報道以外の目的に利用しないという条件の下で各市町選挙管理委員会の許可を得て行っているが、無記名だからプライバシーも守られるという。調査結果にこれまでの取材を加味して判断するわけだが、例えば候補者の街頭演説だと記者はどれくらい人が集まったか、聴いている人たちの反応はどうかなどを見て「風」がどう吹いているのかを気にしながら取材している。ほかにも開票作業が始まってからだと開票所内で取材しどの候補が有利なのかを調べているという。
選挙開催が決まるとメディア各社は一斉に事前調査に乗り出し、通常は無作為に抽出した電話番号などをもとに誰に投票するか、どの政党に投票するかといった質問を行い事前の投票予測をまとめる。出口調査は速報のためだけでなく年代や支持政党や重視した政策なども尋ねることで、有権者の投票行動を分析する目的もあって、小選挙区制度になってから特定の政党が一方的に大勝することが多くなったが、民意が本当にそこまで強く支持しているのか議席の数だけで判断できなくなっていることもあって、「ほかに、投票したい政党や候補者がいなかったから投票した」というのも調査で分かるというのだ。報道各社とも正確な報道のため出口調査の調査員が声を掛けたときはご協力をお願いしますという。
またいくつかの選挙事務所を訪問し相手の陣営がどれぐらいの票を取りそうかといった内容を取材しメディア記者ならではの予測を行うそうで、過去の実績や候補者の知名度に組織票などをもとに議席数や当選予測を行うという。こうして事前の予測がまとめられある程度の議席数や誰が当選しそうかといった内容がメディアにて公表されることになるのだ。ただしこれはあくまで事前の予想でアンケートや質問を回答してくれた人が実際に投票に行くかはわかないし、選挙事務所の予測が外れる可能性だってあることから、実は選挙の当選確実を出すために統計学が利用されているという。出口調査では実際に投票した候補者や政党名を聞き集計していき、統計学では 95 %以上の信頼度があればおおよその予想ができるというのだ。
どれぐらいの人数を聞けばよいかは候補者の数や候補者の人気度や接戦地域かどうかといった観点で異なってくるが、 96 人に聞けば誤差 10 %以内で 384 人に聞けば誤差 5 %以内でその候補者の得票率の予想される範囲を 95 %の信頼度で求めることができるという。統計上の 95 %の信頼度とは 100 人いたら 95 人は予想された範囲内の回答を行っているという意味で、選挙の場合には速報が外れればメディアの信頼をなくすため、回答を得られる人数を多くすることで信頼度を高めているという。ただし統計によるデータ分析時には注意点があって、年齢や男女など実際に投票に行った人と偏りがないように無作為に抽出する必要というのだ。
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