金融広報中央委員会は今年の「家計の金融行動に関する世論調査」の結果を発表したが、 1 世帯当たりの金融資産保有額の平均は前年比 73 万円増の 1,151 万円と、 2 年ぶりに増加しているが、中央値は前年比 20 万円減の 380 万円と 4 年ぶりに減少している。金融商品別の構成比をみると預貯金等は前年比 1.2 ポイント減の 54.1% だが、有価証券等は前年比 1.9 ポイント増の 18.0% となっており、「金融資産を保有していない」と答えた世帯は前年比 0.3 ポイント増の 31.2% と過去最高を更新している。更に銀行等の預貯金口座または証券会社等の口座に残高がない世帯は前年比 1.1 ポイント増の 14.1% に増加しており、安倍政権での金融緩和や財政政策をテコに景気は回復したとされるが「実感は乏しい」との指摘は多いという。
安倍政権が最も強調したのは「デフレからの脱却」と「経済の好循環」で、その実現のため登場したのが「金融政策」・「財政政策」・「成長戦略」の「三本の矢」からなるアベノミクスだった。そんな失敗ではないかとされる言われているアベノミクスに関して、身内である自民党の 岸田文雄政調会長が衆院本会議の代表質問で、安倍晋三首相に「アベノミクスをはじめとする政策の先に、どんな社会や目標を見ているのか」と、日本の将来像を問いかける場面があったそうなのだ。ポスト安倍を狙う岸田文雄政調会長は「野党や国民に上から目線で臨んでは信を失い、まっとうな政治も行えない」とクギを刺したうえで、「今の安倍政権には短期的なビジョンしかないと遠回しに言ったもの」と言われている。
第一の矢つまり日銀による異次元緩和が的を外したのは明白で、物価上昇率は9カ月連続でマイナスとなり、「2年程度で物価上昇率2%」はかすりもしなかった。第二の矢の財政政策は毎年のように何兆円という経済対策が打ち出されたが効果は持続していない。法律に盛り込まれた消費増税を理由に2度も延期しなければならなかった事実は、好循環が起きていない証しに他ならないというのだ。安倍首相は有効求人倍率の上昇や雇用の増加を成果として強調するが、数字の改善が雇用の改善とは限らないとされ、高齢化に伴う介護要員の需要増や建設・運輸業界の人手不足が有効求人倍率を押し上げているだけで、経済構造の変化が高賃金の雇用を生み人々が希望の職を得るという望ましい姿はまだ遠い状態だという。
アベノミクス最大の罪は重要な課題を先送りし将来世代に回すツケを一段と膨らませたことだと言われているが、今年度末の国と地方を合わせた長期債務は1094兆円となる見込みで、安倍政権発足時から約160兆円増えているという。アベノミクスの理論的支柱とされた 経済学者の浜田宏一内閣官房参与は、かつて日銀の金融緩和だけで経済が立ち直ると考えたがそうならなかったと誤算を認めたうえで、原因を財政政策の踏み込み不足としもっと強力な財政のテコ入れと金融緩和を組み合わせる必要があると説いている。こうなると一段と借金は増えるが経済学者の浜田宏一内閣官房参与は「国の借金であれば消費者金融などとは違って返済期限もなく、将来世代に繰り延べすることもできる」と指摘しているそうなのだ。
安倍首相は衆院選後に初めて開いた経済財政諮問会議で「3%賃上げの実現を期待する」と経済界に5年連続で賃上げを要請したそうだが、長期政権が確実になったことを踏まえて経済界への圧力を強める考えだとされている。しかし今年の春闘の賃上げ率が4年ぶりに2%を割り込むなど企業の慎重姿勢は根強く3%の賃上げが実現するかは見通せない。安倍首相は「『人づくり革命』を断行する」と述べ、幼児教育・保育などの無償化を進める方針も示したそうなのだが、教育費の負担軽減を通じて少子化に歯止めをかけるとともに、子育て世代の消費を底上げするのが狙いだという。消費税増税は遅くとも来年度前半までに判断する必要があり、それまでに増税で腰折れしない力強い経済を実現することが求められるというのだ。
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